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トリプルネガティブ乳がん治療でタキサン系抗がん剤が使われなかったのは問題でしょうか?

[管理番号:12682]
性別:女性
年齢:31
病名:
症状:
投稿日:2025年05月02日

田澤先生

はじめまして。まず初めに、この病気と闘う多くの方々を支えてくださっている先生の素晴らしいご尽力に、心より感謝申し上げます。先生のご健康を心よりお祈りいたします。

先生のウェブサイトに掲載されている多くのQ&Aを拝読し、たくさんのことを学ばせていただきました。私は日本に住んでいる外国人で、2024年12月に左乳房のトリプルネガティブ乳がんと診断されました。腫瘍の大きさは20.7 x 17.6 x 16.4 mmで、グレード3、Ki-67は80%、リンパ節転移はありませんでした。BRCAの遺伝子検査は陰性でした。

胸部MRIは撮影されましたが、なぜ全身検査が含まれていなかったのかは分かりません。その検査結果に基づいて、医師からはステージIからIIAの間と説明されましたが、腫瘍が2cmを700マイクロメートル超えていたため、より慎重を期す目的でIIAと診断されたようです。

私はEC療法(エピルビシン+シクロホスファミド)を4クール受けた後、部分切除手術を受けました。現在は放射線治療の開始を待っている段階です。

ご質問の前に、私の病理結果の主な情報を共有させていただきます。

標本サイズ:90 × 85 × 30 mm

組織型:浸潤性乳管癌(硬癌型)

残存腫瘍:非常に小さい浸潤癌が2病巣残存。これらを含む範囲の合計は約7 × 0.6mm。

個々の病巣サイズ:0.8 mmおよび0.2 mm。

脈管侵襲(ly, v):なし(ly0, v0)

断端:陰性(腫瘍なし)

核グレード:2b

Ki-67増殖指数:ホットスポットで約90%

術後病理学的TNM分類:ypT1bN0M0(術後ステージ:ypStage IA)

以下がご質問です:

日本のトリプルネガティブ乳がんの標準的な化学療法では、ECの後にタキサン系薬剤(パクリタキセルやドセタキセル)を加えるET療法が一般的であり、またタキサン系は第3世代の有効な薬剤であることを、治療後に知りました。私の治療ではECのみでタキサンが含まれていなかったことが、他の患者さんと比べて予後に影響するのではないかと不安に思っています。先生のお考えをお聞かせください。

今からでもタキサン系の抗がん剤を追加投与できる可能性があるか、主治医に相談すべきでしょうか。それとももう遅いのでしょうか。

米国ではステージII以上のトリプルネガティブ乳がんに対して、術前に免疫療法と化学療法を併用するのが標準治療とされています。私の場合、免疫療法は行われませんでした。主治医に尋ねたところ「化学療法が効かなかったときに使う」と説明されましたが、この違いは日本の治療ガイドラインによるものなのでしょうか。

日本乳癌学会の効果判定基準によれば、私は4クールのEC療法でGrade 2b(やや有効)との判定でした。もしタキサン系を併用していれば、相乗効果によって病理学的完全奏効(pCR)に至っていた可能性はありますでしょうか。

完全奏効は長期予後を示す強力な指標とされていると理解していますが、わずかに残存病変があった私のようなケースでは、無病生存率および全生存率にどの程度の影響があるとお考えですか。

病理学的定義によると、浸潤癌のサイズが1 mm未満であればypT1miと分類されるとされています。私の場合、2つの病巣はいずれも1 mm未満であり、合計面積も1 mm未満です。それにもかかわらず、病理報告書ではypT1bと記載されています。これはなぜでしょうか。

恐怖が私を麻痺させています。慰めの言葉ではなく、不確実性を減らすための明確な情報を求めています。どうかご助言いただけますと幸いです。

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。

日本のトリプルネガティブ乳がんの標準的な化学療法では、ECの後にタキサン系薬剤(パクリタキセルやドセタキセル)を加えるET療法が一般的であり、またタキサン系は第3世代の有効な薬剤であることを、治療後に知りました。私の治療ではECのみでタキサンが含まれていなかったことが、他の患者さんと比べて予後に影響するのではないかと不安に思っています。先生のお考えをお聞かせください。
⇒担当医の考えには「anthracyclineだけでも、十分に効いたから、taxaneしなくてもいいのでは?」という気持ちがあるのでしょう。

そもそも抗癌剤は(術前にしろ、術後にしろ)「遠隔転移の制御のため」にあるので(局所がよく効いたからといって)triple negativeに対する標準治療であるtaxaneを省くべきではないと思います。

今からでもタキサン系の抗がん剤を追加投与できる可能性があるか、主治医に相談すべきでしょうか。それとももう遅いのでしょうか。
⇒全然遅くないですよ。

米国ではステージII以上のトリプルネガティブ乳がんに対して、術前に免疫療法と化学療法を併用するのが標準治療とされています。私の場合、免疫療法は行われませんでした。主治医に尋ねたところ「化学療法が効かなかったときに使う」と説明されましたが、この違いは日本の治療ガイドラインによるものなのでしょうか。
⇒日本の治療ガイドラインでは①「免疫チェックポイント阻害剤(pembrolizumab)を用いた術前抗がん剤」は②「anthracycline+taxaneのみの術前抗がん剤」もしくは
普通に③「術後の抗癌剤」も選べるし、そこに順位はありません。

シンプルに… 「免疫関連有害事象を避けようと(早期だから必要無しと)」②を選択したのでしょう。

日本乳癌学会の効果判定基準によれば、私は4クールのEC療法でGrade 2b(やや有効)との判定でした。もしタキサン系を併用していれば、相乗効果によって病理学的完全奏効(pCR)に至っていた可能性はありますでしょうか。
⇒それはありますが、「別に術前に投与してpCRになる」のであれば、(残りを)術後に投与すればいいだけの話です。

完全奏効は長期予後を示す強力な指標とされていると理解していますが、わずかに残存病変があった私のようなケースでは、無病生存率および全生存率にどの程度の影響があるとお考えですか。
⇒かなりの勘違いです。
それは「術前に使用すると完全緩解として目に見える」というだけで、術後に同じものを投与すれば「当たり前ですが」同等の予後となります。

病理学的定義によると、浸潤癌のサイズが1 mm未満であればypT1miと分類されるとされています。私の場合、2つの病巣はいずれも1 mm未満であり、合計面積も1 mm未満です。それにもかかわらず、病理報告書ではypT1bと記載されています。これはなぜでしょうか。
⇒うっかりミスでは?

ypT1miですね。

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再質問をする場合、下記日付以降にしてください。
(回答が公開されてから2週間後)
2025/5/16
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