[管理番号:12608]
性別:女性
年齢:67
病名:
症状:
投稿日:2025年04月01日
先月母が乳がんと診断され、乳がんプラザ上の驚くべき量の知見に助けられております。
現在は県内の市民病院を受診していますが、明後日、転院の意向も含めて主治医と今後について話し合う機会があります。そこまでに治療方針をある程度固めたいと考えております。
お忙しいところ恐縮ですが、もし可能であればご意見をいただけますと幸いです
右乳房:トリプルネガティブタイプ, Ki67:30-40%, 5.3センチ, 皮膚浸潤あり, リンパ節転移あり, ステージⅢC(場所は未確認)
左乳房:ルミナルタイプ, Ki67:10-20%, 1.9センチ+1.7センチの2つ, リンパ節転移なし, ステージⅠ
MRI, CT, 骨シンチ所見なし、HBOC未検査(血縁内前立腺がん複数あり)
現在の主治医の治療方針
・キイトルーダによる術前・術後補助療法
・両側全摘
・放射線治療
リンパ節郭清の範囲については「レベルIIまでで、レベルIIIは他でもあまり行われない」という説明を受けています。
進行している右に合わせた治療方針は理解しつつ、左の状況も考えると手術先行の方が良い可能性があるのでは?という疑念から、同様のQAも見つけることができずご質問させていただきます。
ご質問
・今回のトリプルネガティブを含む両側乳癌のケースにおいて、キイトルーダによる術前術後補助療法は選択肢となり得るのでしょうか。
・右単独であれば術前キイトルーダの選択も、やや高齢ではあるが元気+孫が生まれるタイミングで前向きなど検討すると、手術先行と同等に合理的と考えていますが相違ないでしょうか。
・左単独であれば手術先行+Oncotypeによってホルモン療法or化学療法が合理的と考えていますが相違ないでしょうか。
・このまま進めると左は6か月の術前化学療法後の摘出となることで、リスク(※)が増大する懸念があると考えていますが相違ないでしょうか。
※手術時の腫瘍縮小による見落とし・腫瘍拡大・リンパ節の拡大・副作用によって手術不可となるケースの発生など
・最初の質問がNoの方向であれば親族相談の上転院含め検討したいと考えていますが、事前に主治医に確認しておくべきことはありますでしょうか。
田澤先生からの回答
おはようございます。 田澤です。
現在の主治医の治療方針としてはキイトルーダによる術前術後補助療法+双方全摘+放射線となっています。
リンパ節郭清の範囲についてはレベルⅡまでで、Ⅲは他でもあまりやっているところはありません、という回答と記憶しています。
進行している右に合わせた治療方針は理解しつつ、左の状況も考えると手術先行の方が良い可能性があるのでは?という疑念から、同様のQAも見つけることができずご質問させていただきます。
⇒内容は了解しました。
まず、「ステージⅢC(場所は未確認)」の部分ですが
皮膚浸潤によりtumor factor としてはcT4bとなりますが、node factorとしてはcN3でないとcStageⅢCとはなりません。
可能性としては以下の3通りのみとなります。
cT4b, cN3a, cStageⅢC この場合のcN3aは鎖骨下リンパ節(所謂レベルⅢ)
cT4b, cN3b, cStageⅢC この場合のcN3bは胸骨傍リンパ節(所謂PS: parasternal lymph node) cT4b, cN3c, cStageⅢC この場合のcN3cは鎖骨上リンパ節(所謂SC:
supulaclavicular lymph node)
ここで担当医の『リンパ節郭清の範囲についてはレベルⅡまでで、Ⅲは他でもあまりやっているところはありません、という回答』からは、上記の内のcN3a(鎖骨下リンパ節)転移と推測します。
「Ⅲは他でもあまりやっているところはありません」というのは本当に残念な限りであり、故に「術後の鎖骨下リンパ節再発」が私のところに集まって来る要因となっています。
鎖骨下郭清は、(慣れていない術者にとっては、出血のリスクがあり怖いという認識だろうとは思いますが)慣れてしまえば、そんなことはなくやはりキチンと郭清すべきだと思います。
♯特に、「鎖骨下に画像上転移は疑われないけど、レベルⅡまで明らかに転移があるから念のために鎖骨下リンパ節も取る」というのではなく、現に転移を疑うリンパ節が画像上明らかであれば尚更それを省略するのは(将来的な、鎖骨下リンパ節再発の)リスクを背負うことになります。
本来(術前化学療法をしたとしても)手術や放射線の範囲は、(あくまでも)「術前化学療法前の範囲」となります、それはたとえ抗癌剤で見えなくなったとしても癌細胞が細胞レベルで遺残している可能性は残るからです。
それを「術前抗がん剤で画像上見えにくくなった」ことをいいこととして、「鎖骨下は手術で取らずに、術後に放射線を照射しましょう」というのは理論的に誤りだと思います。
・今回のトリプルネガティブを含む両側同時乳癌のケースにおいて、キイトルーダによる術前術後補助療法は選択肢となり得るのでしょうか。
⇒本来はサブタイプの異なる両側乳癌に対しての治療法ではないので「厳密に言えば」正しくは無いと思いますが、保険適応上は「トリプルネガティブ乳癌」と病名がつくので問題にはならないでしょう。
ただし、一方はルミナールタイプなのだから「両側共に同様の効果を期待」はできない(ルミナールタイプにpembrolizumabがどういう効果となるかは無論不明)ことには特別な注意が本来必要となります。
・右単独であれば術前キイトルーダの選択も、やや高齢ではあるが元気+孫が生まれるタイミングで前向きなど検討すると、手術先行と同等に合理的と考えていますが相違ないでしょうか。
⇒無論、その場合は「完全な適応」となります。
ただpembrolizumabは不可逆的な免疫関連有害事象を起こしうるので、(それらの)リスクを伴う治療という認識は必要となります。
通常の「anthracycline+taxane ]抗癌剤を安全に術後に行うこととの選択となります。
・左単独であれば手術先行+Onkotypeによってホルモン療法or化学療法が合理的と考えていますが相違ないでしょうか。
⇒その通りです。
・このまま進めると左は6か月の術前化学療法後の摘出となることで、左についていくつかのリスク(※)が増大する懸念があると考えていますが相違ないでしょうか※手術時の腫瘍縮小による見落とし・腫瘍拡大・リンパ節の拡大・副作用によって手術不可となるケースの発生など
⇒よく理解されています。
やはり一番の問題は「抗癌剤が100%必ず効果がある」というわけではない、つまり「進行させる⇒手術不能となるリスク」の認識です。
抗癌剤で受診の際に、毎回主治医がきちんと診察把握が大前提となります。
またpembrolizumabが免疫関連有害事象のリスクを負うので、より「副作用によって手術不可となるケースの発生」に注意が必要となります。
・最初の質問がNoの方向であれば親族相談の上転院含め検討したいと考えていますが、事前に主治医に確認しておくべきことはありますでしょうか。
⇒特に無いようです。
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再質問をする場合、下記日付以降にしてください。
(回答が公開されてから2週間後)
2025/4/19
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