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ルミナルタイプAでリンパ節転移ありの場合の、オンコタイプDXを踏まえた抗がん剤治療について

[管理番号:12281]
性別:女性
年齢:44歳
病名:ひだり乳がん(浸潤性乳管癌)
症状:
投稿日:2024年12月04日

いつもこちらのサイトで勉強させて頂いております。現在の動向を踏まえた乳がん治療のについて、理解を深められる場を設けて下さり、どうもありがとうございます。

今後の治療について迷っております。これまでのQ&Aやコラムで、ルミナルタイプAでリンパ節転移ありの場合の、オンコタイプDXを踏まえた抗がん剤治療について、学ばせて頂いたのですが、例外や他にも考慮することがあるのか、自分では判断ができず、田澤先生のご意見を伺いたいです。どうぞよろしくお願いいたします。

【これまでの経過】
9月 ひだり乳がんとの診断
PET検査やエコーではリンパ節への転移はなし
11月中旬 ひだり乳がんの乳房全摘、センチネルリンパ節生検、自家組織による乳房再建術

【病理組織診断】
組織型:浸潤性乳管癌、硬性型
浸潤径:16mm 浸潤径+乳管内進展巣 56mm
pT1c
リンパ節転移:センチネル(1/1)pN1
臨床的M因子;M0
切除断端:皮膚側(+)
リンパ管侵襲:Ly1、静脈侵襲:V0
組織学的波及度:f
乳管内進展:(+)
核Grade Grade1
組織学的分類:GradeⅡ
病期:pStage ⅡA
備考:浸潤性乳管癌が複数個所に認められ、その内部及び周囲に非浸潤性乳管癌、乳管内進展、小葉への浸潤が広範囲に広がっている。皮膚側断端に、挫滅を受けた浸潤癌あり。
ER:陽性(90%)
PgR:陽性(95%)
HER2:陰性(スコア0)
Ki67:5%
P53:10%未満

病理検査の結果、センチネルリンパ節転移が1個陽性だったので、「放射線照射はなし、ルミナルAだから抗がん剤治療の必要性を知るためにオンコタイプDXをお願いする→ホルモン療法」という流れになるのかと思っていたら、主治医は「抗がん剤を始める。その副作用は…」と始まったので、オンコタイプDXをお願いしたい旨を伝えると、「オンコタイプは閉経前44歳だからできない。」と言われてしまいました。
★ルミナルAかつKi67:5%であれば、少なくとも抗がん剤を選択する前にオンコタイプDXで検査をしてから、が妥当だと思うのですが

すみません、前置きが長くなりましたが、田澤先生にお伺いしたいことは4つあります。
①★であっても、病理検査結果の備考欄のような癌の広がりがある場合、抗がん剤が必要なのか。

②リンパ節転移の大きさが今回は示されていないのですが(尋ねたのですが
「今はわからない」とのこと。それも驚きでした。)、リンパ節転移の大きさによっては、抗がん剤が必要になるのか。

③センチネルリンパ節1個分の1個しかとっていないのですが、それで十分だったのか。
十分でない場合、追加郭清等が必要でしょうか。
田澤先生のように、局所治療と全身治療を明確に分けて治療することを前提としている場合と、はじめから術後の抗がん剤を前提としている(田澤先生の言葉をお借りすると「局所のつけを全身治療ではらう」)今回のような場合では、リンパ節転移への対応が異なり、リンパ節転移への処置が甘いまま終わってしまったのではないか、という不安があります。

④現主治医のもとで抗がん剤を受けるのはやめた場合、転院した先で、オンコタイプDXを受けることから治療を始めることは可能ですか。手術をした病院でなくても、術後の治療を受けられますか。江戸川病院ではいかがでしょうか。

オンコタイプDXや抗がん剤についての主治医との考えの乖離や、意思疎通の難しさから、転院も視野に入れながら、今後の治療について考えています。これまでの治療で、自分の主体性が足りず、納得できない部分について流されてしまったことを反省しており、今後はきちんと納得した上で治療を選択したいと思っています。
田澤先生のお力を貸して頂けましたら幸いです。よろしくお願いいたします。

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。

メール内容を読みました。
私からみると論点は2つあります。(どちらも質問に出てはいますね)
1.センチネルリンパ節生検で陽性だったが追加郭清をしていない
2.抗癌剤をすべきかどうか?

まず私が気になるのは1です。
(質問者もQAや今週のコラムを十分に遡れば理解されると思いますが)
そもそも「センチネルリンパ節生検の取り扱い」は施設によってさまざまです。
例)
①Micrometastasis(2mm以下 微小転移)でも追加郭清する。
②micrometastasisでは追加郭清しないが、macrometastasis(2mm< 肉眼的転移)が1
個でもあれば追加郭清
③macrometastasisが3個以内ならば追加郭清せずに、4個以上で追加郭清する。

当院を含め上記②が多数派だと私は認識していますが、③としている病院も少なくはないようです。
ただ、(施設基準がどうあれ)それは術前に(同意書や口頭なりで)患者様の了解が得られているべきものです。

今回、センチネルリンパ節生検が陽性(記載はないが、通常陽性というと
macrometastasisを示す)でありながら「郭清省略されている」ことからは少なくとも(上記①②ではなく)上記③を施設基準としているのでしょう。
♯但し、それであれば「本当に3個以内なのか? 4個以上迅速診断に提出しなくては本来断定できないので、そもそも不十分」な気がします。
可能であれば、その担当医に上記を確認するといいでしょう。

◎その施設基準や担当医の考え方がどうであれ、macrometastasis陽性であれば「リンパ節転移が残存しているのでは?」というリスクが存在するので、「私であれば」追加郭清をお勧めします。

2について
これは今までのQAに非常に多く登場する「閉経前はリンパ節転移があるとOncotypeDXの適応はない」と言い張る医師ですね?
これについては単純に「かつては、そう言われていた」が、現在そんなことを言うこと自体「時代遅れ」であり、無論「閉経前であろうと閉経後であろうと」リンパ節転移3個以内ならばOncotypeDXをすべきです。

①★であっても、病理検査結果の備考欄のような癌の広がりがある場合、抗がん剤が必要なのか。
⇒無関係 是非OncotypeDXをしましょう(上記)

②リンパ節転移の大きさが今回は示されていないのですが(尋ねたのですが「今はわからない」とのこと。それも驚きでした。)、リンパ節転移の大きさによっては、抗がん剤が必要になるのか。
⇒無関係です。
ただし(macrometastasisだと想像していますが)micrometastasisなのかどうか?
は重要なことなので、それは絶対に確認する権利が質問者にはあります。

リンパ節転移の大きさ(micrometastasis or macrometastasis)は「抗癌剤とは無関係」であり、「追加郭清すべきか?」を検討する材料と認識すべきです。

③センチネルリンパ節1個分の1個しかとっていないのですが、それで十分だったのか。
十分でない場合、追加郭清等が必要でしょうか。

⇒冒頭のコメント通り、私であれば「macrometastasisがあれば追加郭清すべき」と思います。 (担当医は局所治療の借りを全身治療「抗癌剤」で返す的な考え方かもしれませんが、それは私が最も嫌うやり方です)

田澤先生のように、局所治療と全身治療を明確に分けて治療することを前提としている場合と、はじめから術後の抗がん剤を前提としている(田澤先生の言葉をお借りすると「局所のつけを全身治療ではらう」)今回のような場合では、リンパ節転移への対応が異なり、リンパ節転移への処置が甘いまま終わってしまったのではないか、という不安があります。
⇒まさに、その通り。
よく考えましょう。(まずはmicrometastasisなのかmacrometastasisなのかの確認が先ですが)

④現主治医のもとで抗がん剤を受けるのはやめた場合、転院した先で、オンコタイプDXを受けることから治療を始めることは可能ですか。
⇒実は、まさにそれ(他院で手術をして当院で標本を取り寄せOncotypeDXをした)ケースは数件以上あります。

手術をした病院でなくても、術後の治療を受けられますか。江戸川病院ではいかがでしょうか。
⇒それも同様に、数件あります。

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再質問をする場合、下記日付以降にしてください。
(回答が公開されてから2週間後)
2024/12/19
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