[管理番号:12245]
性別:女性
年齢:33
病名:線維腺腫か葉状腫瘍(針生検1回済の結果)
症状:・左胸に9mmのしこり
・針生検の影響か不明だが(針生検前がどうだったか記憶にありません)、左腕を上げると左胸の該当箇所に3cmくらいのコブのような硬いでっぱりが見え、腕を動かすとその箇所が痛い
投稿日:2024年11月15日
(できるだけ正確に状況をお伝えしたいため、細かく個人名・機関名や検査結果等書いております。適宜そちらのご判断で伏字等お願いいたします。)
田澤先生はじめまして。よろしくお願いいたします。
<これまでの経緯> ※すべて2024年
2/(中旬) 気になる症状(痛み)があり、以前から定期的に検診で通院している〇〇クリニック受診。
触診と超音波検査の結果、よくある乳腺症で異常なし。
10/(下旬) 1年に1度の定期健診で同クリニック受診。触診とマンモグラフィーでは異常なし。
しかし超音波検査にて、2月には無かった9mmのしこりを左胸に発見。
血流も少し存在したため、針生検(バチン!と音のする針を打ち込み、組織を取ってくる検査と説明受けました。
器具・正式名称不明)を行い、3か所から採取。
11/(上旬) 病理組織検査の結果、院長より「線維腺腫か良性葉状腫瘍。
今後見極めが必要なので、2025年3~5月のどこかで再度エコー検査を行いたい」と言われた。
以下、病理組織検査報告書の内容です。(「本報告記事の公表に関しては、検査責任者にご相談下さい」と記載あります)
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【病理組織検査結果】
Adequate, benign: Fibroepithelial tumor, the left breast.
See comment.
【病理組織所見】
〔左乳腺組織:3本 ; 7/8/9 mm〕
組織学的には、fibroepithelial tumor(FT)を認めます。(3/3) 当該腫瘍では乳管成分に比べ、間質成分の占める割合が優位です。間質細胞の細胞密度はやや高い領域が主体ですが、間質細胞の核異型、核分裂像は目立ちません。乳管成分は類円形-楕円形で小径成分が主体であり、2細胞構造を有し、異型は見られません。
葉状構造は見られませんが、既述所見からは葉状腫瘍との鑑別を要するFTと考えられることより、診断は上記とします。今回の標本にはborderline以上を支持する所見は乏しく、良性腫瘍と考えます。悪性所見を認めません。
慎重な経過観察を行い、腫瘍の増大がみられる場合は再検が望まれます。
ER, PgR, Ki67, HER2-FISHはキャンセルいたします。
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(非表示にしました。)
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これを受けての院長からの口頭でのコメント「癌ではない。癌なら即手術・抗がん剤などになるのでまず良かった。これは線維腺腫か、良性葉状腫瘍のどちらか。この病理専門医はかなり慎重な判断をされる人なので、少しでもボーダーの可能性があるならならボーダーと書くから、葉状腫瘍の境界悪性・悪性は選択肢から消していい。これだと半年後にはもう一度、変化がないかどうかエコーで様子必ず見たい。来年2月だとまだ早すぎるので3~5月に見たい。なんにせよまだ9mmは初期段階、とりあえず良性なので良かった。」
この診断を聞いた時には知識もなく、葉状腫瘍がどんな性質のものか説明もなかったので、信頼できる結果が得られて良かった、「良性」という言葉だけで良かった、と思っていたのですが、
帰宅後に葉状腫瘍について調べたところ、田澤先生のこちらのWebページに出会いました。
そもそも針生検の精度にバラツキがあること(衝撃でした)や、生検にはやり方が他にもあること、良性であっても葉状腫瘍の場合は、担当医の手術の考え方や取りきるというクオリティがとても重要であることを知り(共有していただき本当にありがとうございます)、
葉状腫瘍の可能性を残した状態では、私としては安心できる「良かったね」ではないと感じてしまいました。
田澤先生のこれまでの葉状腫瘍に関する質問回答・記事は、まとめられているものを中心に読んだつもりですが、
今回は恐らく「このクリニックでできる針生検で100%判断付かなかったからエコーで様子見よう」「まだ腫瘍サイズ小さいから待てるし、変化があるなら分かりやすい半年後に再度エコーで」というような方針なのだと思ったのですが、
2025年3~5月まで別の方法で生検したりせず、何もせずエコーを待つ意味は現時点であるように思われますでしょうか?
仮に来年3~5月に全く変化がなかったら、鑑別はどうなるのか…?エコーで追いかけるだけで「葉状腫瘍ではない」と100%証明するのは難しく感じますし、「時間が経過するのを実際に待ってみて変化がなければOK、実際腫瘍が増大した瞬間に葉状腫瘍(それまでも葉状腫瘍だったことに変わりはないのに)」、という消極的な判断方法に感じてしまうのですが、これは素人考えでしょうか?
様子見をして長く変化がなかったのに実際に急に腫瘍が増大したという質問も拝見しましたし、針生検したにも関わらず線維腺腫から悪性葉状腫瘍へ診断が変わった質問なども読みました。
可能性としては無いとは言えないわけで、腫瘍の種類の判明が早いに越したことはないと思うのですが、来年3~5月まで放置してなにか悪いことはあっても良いことってあるのだろうか?と素人目には思います。
そもそも針生検の採取の精度が良いと証明できない限り(私は今回の院長の針生検の腕前を知りません)、いくら今回の標本に関しての病理組織検査報告書がとても慎重で正確だとしても、意味がないのではと感じてしまいました。
今すぐにでも、田澤先生の所で見ていただいて100%確定診断を、現時点で行うことに何のデメリットもないのであれば、それを早くした方が有益なのではないかと思ったのですが、
これらの状況を客観的に見て、田澤先生はどうお考えになるでしょうか?
田澤先生のこれまでの記事から、葉状腫瘍の可能性がある場合には手術でのマージンを設けた徹底除去、将来のことを考えると判断のタイミング含め私としても一切の妥協をしたくないという思いがあります。
私の意思としては、生検や手術が面倒だから先延ばしにしたいとかは一切なく、やりたいことも使命もまだまだ沢山あるので、むしろそれよりも先の人生を長く元気に過ごすために、とにかく早い段階で徹底的に安全な状態にするのが将来への投資だと思います。
不安を抱えながら経過観察をすることで、本来必要ない心配に心を持って行かれるのも時間がもったいなく、嫌です。
現時点では、待たずに今100%確定診断、がメリットしかないように感じますが、
あくまで記事だけを読んでみての感覚・素人考えなので、状況にもよると思いますし
田澤先生から見た専門的な見解を頂きたく、送らせていただきました。
長文失礼いたしました。
お忙しいところ恐縮ですが、何卒よろしくお願いいたします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
メール内容は理解しました。
少々驚くくらい理論的で(私が見ても)全く隙が無いようです。
正しく理解されたうえで「自分がどうしたいのか?(優先順位)がきっちりしている」ので迷うことはないように思います。
1.組織診断の精度について
まず質問者が理解されているように、(針生検に)「精度の違いが存在する」ことは、(大変、残念ながら)「厳然たる事実」であり、正直そこの「bias」を無くすためには(究極的には)私自身が針生検(対象によってCELEROやMMTE等使い分けますが)するしかない部分だと思っています。
なので今回の病理診断でfibroepithelial tumorであり「癌の可能性はゼロ」と言い切りたいところですが私には「私自身が行った」針生検の結果以外を(手放しで)信用することはできない♯1す。
♯1 (乳がんプラザを介して)非常に多くの「他院の組織診で良性の結果だけれども(患者さん自身が不安となり)私が再度行った組織診」で癌の診断となった経験があまりにも多いので、自然とそうなってしまいました。(決して生来、疑い深い性格などではないのですが…)
2.経過について
やはり注目すべきは「2月になかったのに10月に9mm」という経過に注目が行きます。
これが閉経後であれば、積極的に乳癌を疑う要素となりますが、質問者の年齢(33歳)では線維腺腫が新たにできてもおかしくはないとは言えます。
ただし、それにしても(8か月前に不明が)9mmという経過は重要に思います。
3.画像診断では何を疑ったのか?
このメール内容からは、それを積極的に示唆する記載がありません。
手懸りとしては①「血流も少しあった」と(「ER, PgR, Ki67, HER2-FISHはキャンセルいたします」という病理レポートから推測される)病理伝票を提出する際に担当医がその伝票に②『癌だった場合にはER, PgR, Ki67, HER2-FISHもお願いします。』記載しているらしいこと。
但し②について言えば、そのような記載をした理由が「癌を疑っている」ではなく、
(単に全ての生検時に)「ルーティーンとして記載しているだけ」のこともよくあるので、担当医が「癌を疑っている」とは限りません。
上記1~3のこともあるので、実際に画像を見ていない私がアドバイスするとしたら、(癌ではなく)「fibroepithelial tumor」と過程した場合により「葉状腫瘍の可能性を考えるのは、腫瘍の張り」となります。(経験上)
やはり「扁平な場合には線維腺腫をより想定」するし、「張りがある(扁平な楕円ではなく、円形に近くなる)と葉状腫瘍の可能性を考えます(特に増大傾向があれば)」
上記を参考にしてもらいつつ以下に回答します。
今すぐにでも、田澤先生の所で見ていただいて100%確定診断を、現時点で行うことに何のデメリットもないのであれば、それを早くした方が有益なのではないかと思ったのですが、
これらの状況を客観的に見て、田澤先生はどうお考えになるでしょうか?
⇒私自身が「画像診断」したうえで「100%確実な組織診」を行うことに無論デメリットはありません。
とにかく早い段階で徹底的に安全な状態にするのが将来への投資だと思います。
⇒上記であれば、(おっしゃるように)「待たずに今100%確定診断」でも無論問題ないわけですが、究極的には「手術」が最善となるでしょう。
♯ 9mmの腫瘍であれば(腫瘍の)深さにもよりますが、局所麻酔でも十分安全な
マージンをつけて切除も可能です。(あまりにも深い部位にあると大変ですが)
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再質問をする場合、下記日付以降にしてください。
(回答が公開されてから2週間後)
2024/12/3
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