[管理番号:12029]
性別:女性
年齢:50
病名:乳ガン
症状:乳ガン病理組織検査
投稿日:2024年09月20日
病理組織検査報告書の説明を簡単に言われ後は紹介状を書くので そちらでお願いしますと言わました。
とても悪かったのかと思い怖くて眠れない日々を過ごしています。
自分でも調べて見ましたが、わからない事も多く教えて頂けたらと思い質問しました。
右C 18×9×13㎜ER:J-score 3b 陽性細胞占有率50%以上PgR:J-score3b,陽性
細胞占有率50%以上HER2-IHC:1+,ki-67:15% Breast,CNB:
B5b,Invasive carcinoma of
no special type,mSBR GradeⅡ(n2,t3,m2)LVⅠ(-)
所見の所に CNB間質3本
中等度の核異型を示す細胞が反応性間質を伴い広範に浸潤と書いてありました。
かなり広い範囲にあるんじゃないかと思ったり 手遅れじゃないかと思ったり 泣けてきます。先生に少しでも教えて頂けたら安心出来ると思い質問してしまいました。
よろしくお願いします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
針生検の病理結果ですね。
右C
⇒右乳腺のC領域 つまり上外側に腫瘍が存在している。
18×9×13㎜
⇒これは無論、腫瘤の(エコー上の縦x横x高さ)大きさです。
ER:J-score 3b 陽性細胞占有率50%以上PgR:J-score3b,陽性細胞占有率50%以上
⇒J-scoreとは日本乳がん学会が2005年に提唱した日本独自の判定基準であり、染色占有率(染色される細胞の割合)のみで判定する方法です。
つまり質問者の癌細胞はER(estrogen receptor)もPgR(progesterone receptor)も強陽性=つまりホルモン療法が効くという意味です。
(以下、J-score 診断基準)
J-score
Score 0:染色される細胞が無い
Score 1 〃 1%未満
Score 2 〃 1~10%
Score 3 〃 10%以上(50%未満を3a, 50%以上は3b)
Score 0を陰性
Score 1,2を境界域
Score 3を陽性
HER2-IHC:1+
⇒HER2は増殖蛋白であり、これが陽性であると薬物療法として抗HER2療法(分子標的薬+抗癌剤)が適応となりますが、1+は陰性となります。=質問者には抗HER2療法の適応はない。という意味
(以下、HER2 IHC:immunohistochemistry 判定基準)
HER2免疫染色の判定
陰性
Score 0:全く染色されないor 10%以下の「かすかな」膜染色
Score 1:10%<の「かすかな」膜染色
判定保留→必ずFISHで確認★
Score2:10%<の「不完全な」膜染色 or 10%以下の「強い」膜染色
陽性
Score3:10%<の「強い」膜染色
ki-67:15%
⇒癌細胞の「細胞分裂期にある細胞の割合」であり低いほど大人しい(=細胞分裂が少ない=増殖が少ない)
15%は十分に「低い」値です。=つまり「大人しい」
Breast,CNB:B5b,Invasive carcinoma of no special type
⇒非特殊型=つまり「大部分を占める(一般的な)」タイプの乳癌
GradeⅡ(n2,t3,m2)LVⅠ(-)
⇒これは「組織学的」グレードがⅡという判定
以下のように(その内訳は)
核異型(n)=2点(異型は中間)+腺管形成(t)=3点(明らかな腺管形成は腫瘍の10%未満である)+核分裂(m)=2点(10視野で核分裂は5~10個認める)=7点なので組織学的グレード(histological grade=HG)=2となります。
★ちなみに核グレードは(上記の内)核異型と核分裂のみで評価され、質問者の場合には2+2=4点 なので核グレード(nuclear grade=NG)=2となります。 つまり核グレードも組織学的グレードも両方2(中間)です。
(以下、判定基準)
①核異型(nuclear atypia:n)の点数+②核分裂(mitotic counts:m)の点数+③腺管形成(tubular formation:t)の点数の「3項目の和」としたものが「組織学的グレード」です。
①核異型(n) 弱い:1点
中間:2点
強い:3点
②核分裂(m) 5個未満(10視野で):1点
5~10個 〃 :2点
11個以上 〃 :3点
③腺管形成(t) 腫瘍の75%超で明らかな腺管形成:1点
〃 10~75% 〃 :2点
〃 10%未満 〃 :3点
○『組織学的グレード(HG)核異型の点数+核分裂の点数+腺管形成の点数』
3点~5点:組織学的グレード(HG)1
6点、7点: 〃 2
8点、9点: 〃 3
中等度の核異型
⇒核異型(n)=2(中間)なので各異形は中等度となります。
反応性間質を伴い広範に浸潤
⇒針生検標本での評価なので
無論、「浸潤が何センチある」などとは解りようがなく、「広範に浸潤」とはあくまでも「非浸潤癌ではなく、(その腫瘍の殆どが)浸潤癌である」という意味に過ぎません。
かなり広い範囲にあるんじゃないか
⇒誤解に気付きましたね?
病理医は、その画像を見ているわけではなく、あくまでも「取れた癌は(非浸潤癌の部分はあまりなく)殆どが浸潤癌」という意味です。
手遅れじゃないかと思ったり
⇒とんでもない勘違い!!
あくまでも(エコー上の)腫瘍径が18mmなのだから(リンパ節の記載はありませんが)1期(=早期)となります。
無駄な心配はしないようにしましょう。
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再質問をする場合、下記日付以降にしてください。
2024/10/1
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