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嚢胞内腫瘍(乳がんと診断)について

[管理番号:10637]
性別:女性
年齢:61歳
病名:乳がん
症状:しこり、血性乳頭分泌
投稿日:2022年10月4日

乳がんの診断を受けて以来、こちらのホームページを拝見して、勉強しております。

そこで現在までの治療および今後の治療について、いくつか疑問が出てきたのですが、担当医が質問しやすいタイプではないので、先生に助けていただけたらとQ&Aに書き込むことにしました。

以下にて時系列に沿って説明しつつ質問させていただければと存じます。
よろしくお願いいたします。

1年前にしこりを触知。
クリニックでのマンモとエコーにて嚢胞を指摘される。
嚢胞内の貯留物を抜き取り検査をしたが、悪性の所見なし。

今年の9月に乳頭より血性分泌あり。
クリニックでのマンモとエコーにて嚢胞および内部の腫瘍(1cm)を指摘される。

大学病院を紹介される。
診断上は乳管内乳頭腫疑いだが、血性分泌がわずらわしいこともあり、摘出して病理検査へ。

※質問1 嚢胞内部の腫瘍なので嚢胞内乳頭腫が正しい病名(疑い)かと思うのですが、乳管内乳頭腫でも間違っていないのでしょうか?
また、担当医からは腫瘍ができて乳管が詰まり、その奥が膨らんで嚢胞になった旨の説明がありました。
これは嚢胞および嚢胞内腫瘍の成り立ちとして普通なのでしょうか?

局所麻酔にて嚢胞および辺縁を切除。
後日、病理の結果、腫瘍部分が浸潤性乳がんと診断される。

・病理診断名:Invasive papillary carcinoma ・両女性ホルモン受容体:高レベル陽性 ・HER2スコア:0 ・ki-67:3.5%

※質問2 英語なのもあって分からないのですが、これは嚢胞内乳がんの一分類でよろしいのでしょうか?
また、嚢胞内部の腫瘍ということで仮に乳がんでも非浸潤性だろうと期待していたのですが、浸潤性だったということで特殊で広がりの速い、予後の悪いものなのではと不安です。
非常に似た名前のInvasive micropapillary
carcinomaは予後が悪いそうですが、いかがでしょうか?
そして、乳がんだったのなら1年前に嚢胞内の貯留物を調べた際に、あるいは今回の乳頭からの血性分泌の原因である血流に乗って、がんが拡散してしまった可能性はありますか?

10月上旬に全身麻酔にて乳房部分切除術(嚢胞のあった部分からマージンを2cm設ける)を予定。
センチネルリンパ節生検は行わない方針。

※質問3 上記の手術の内容(特にマージン2cm)に何かしら不適切な部分はありませんでしょうか?
また、臨床上の所見や検査結果からリンパ節への転移は考えられない。
センチネルリンパ節生検を行って無駄な侵襲を受けることはない、と担当医は言っているのですが、この意見に同意できますか?
そして、このままセンチネルリンパ節生検を受けない場合、何か追加でオーダーすべきでしょうか?(腋窩エコーやMRI?)

術後療法を予定。

※質問4 術後療法は放射線とホルモン療法を考えています。

具体的には乳房部分切除後の病理検査を踏まえて、追加でご相談したいのですが、現状で放射線を省略できる可能性はどのくらいあるでしょうか?ホルモン療法はまだしも、放射線は副作用が心配です。

また、放射線とホルモン療法について、副作用の危険性(放射線ではリニアックとトモセラピーの違いも含め)をご教示ください。

大学病院は乳がん学会認定施設。
担当医は乳腺科歴30年、乳がん学会専門医のベテランなので、これまでは言われるままに治療を受けてきましたが、ここにきて疑念が出てしまい、先生のご助力を求めています。

担当医は患者ケアがおざなりというかルーチンワークの感があり、質問もしにくいということで、このQ&Aと出会えたのは本当に幸いでした。

最後に、オンコタイプDXについても質問させてください。

質問5 抗がん剤治療の可能性も考えられないのでオンコタイプDXも無駄、というのが担当医の意見なのですが、この意見に同意できますか?
また、オンコタイプDXは保険適用の遅滞に伴って、代わりに無償版が流通したと記憶しているのですが、これはまだ実施可能なのでしょうか?無償版の実施には条件(施設や手術の時期や放射線およびホルモン療法の有無)
があったはずですが、まだ実施できる可能性があるのなら仔細を教えていただきたいです。
もし、放射線およびホルモン療法の前に転院しなければならないなら、手術後に検討したいと考えております。

以上になります。
お力添えをいただきたく存じます。
よろしくお願いいたします。

田澤先生からの回答

こんにちは田澤です。

まずは『今週のコラム 51回目 嚢胞内腫瘍 これは嚢胞ではありません』を熟読して、嚢胞(腫瘍以外の原因で乳管がつまっただけ)と嚢胞内腫瘍(腫瘍が原因で乳管が詰まったもの)が本質的に全く異なることをご理解ください。

※質問1 嚢胞内部の腫瘍なので嚢胞内乳頭腫が正しい病名(疑い)かと思うのですが、乳管内乳頭腫でも間違っていないのでしょうか?
⇒よく考えてください。
 嚢胞とは「乳管が詰まって乳管が膨らんだもの」であることは(今週のコラム51回目を熟読して)ご理解いただけましたよね?
 つまり「嚢胞=乳管が拡がったもの」なのです。 ということは「嚢胞の中の乳頭腫=乳管の中の乳頭腫 ということで、嚢胞内乳頭腫=乳管内乳頭腫」となりますよね??

また、担当医からは腫瘍ができて乳管が詰まり、その奥が膨らんで嚢胞になった旨の説明がありました。
これは嚢胞および嚢胞内腫瘍の成り立ちとして普通なのでしょうか?
⇒(コラム51で示したように)まさに「嚢胞内腫瘍」の成り立ちそのものです。

 ★嚢胞は「腫瘍以外の原因で乳管が詰まっている」わけだから上記には当て嵌まりません。(区別できてますね?)
 ちなみに「腫瘍以外の原因」とは 内部の液体自体が固まって乳管が詰まるケースが殆どです。

局所麻酔にて嚢胞および辺縁を切除。
後日、病理の結果、腫瘍部分が浸潤性乳がんと診断される。

・病理診断名:Invasive papillary carcinoma ・両女性ホルモン受容体:高レベル陽性 ・HER2スコア:0 ・ki-67:3.5%

※質問2 英語なのもあって分からないのですが、これは嚢胞内乳がんの一分類でよろしいのでしょうか?
⇒浸潤性乳頭癌と言いますが(日本語では)、最も一般的な嚢胞内癌です。

また、嚢胞内部の腫瘍ということで仮に乳がんでも非浸潤性だろうと期待していたのですが、浸潤性だったということで特殊で広がりの速い、予後の悪いものなのではと不安です。
⇒大きな間違い
 その証拠にKi67=3.5%というのは癌としては「かなーり」大人しいですよ!!
 ★Ki67とは癌細胞の細胞分裂期にある細胞の割合であり、一桁は「かなーり」少ない=「かなーり」大人しい。想像つきますか???

※質問3 上記の手術の内容(特にマージン2cm)に何かしら不適切な部分はありませんでしょうか?
また、臨床上の所見や検査結果からリンパ節への転移は考えられない。
センチネルリンパ節生検を行って無駄な侵襲を受けることはない、と担当医は言っているのですが、この意見に同意できますか?

⇒嚢胞内癌であれば、それでいいでしょう。

そして、このままセンチネルリンパ節生検を受けない場合、何か追加でオーダーすべきでしょうか?(腋窩エコーやMRI?)
⇒質問者が気付かないだけで、腋窩はエコーして(腫大がないことはすでに)確認済の筈です。
 それが乳腺外科医としての常識です。(一度、訊いてみてください)

※質問4 術後療法は放射線とホルモン療法を考えています。
具体的には乳房部分切除後の病理検査を踏まえて、追加でご相談したいのですが、現状で放射線を省略できる可能性はどのくらいあるでしょうか?ホルモン療法はまだしも、放射線は副作用が心配です。

⇒これはかなりの勘違いです。
 放射線の副作用は殆どなし、私であれば「寧ろ」ホルモン療法の省略を視野に入れます。

質問5 抗がん剤治療の可能性も考えられないのでオンコタイプDXも無駄、というのが担当医の意見なのですが、この意見に同意できますか?
⇒病理結果が出てからでいいのでは?

 浸潤癌とはいっても病理学的に「完全に被包性」であれば、抗がん剤どころかホルモン療法も不要と思います。

また、オンコタイプDXは保険適用の遅滞に伴って、代わりに無償版が流通したと記憶しているのですが、これはまだ実施可能なのでしょうか?
⇒その通り。

条件
1.リンパ節転移3個以内
2.薬物療法未治療

***
再質問をする場合、下記日付以降にしてください。
2022/10/12
***

質問者様から 【質問2】

嚢胞内腫瘍(乳がんと診断)について
性別:女性
年齢:61歳
病名:乳がん
症状:しこり、血性乳頭分泌
投稿日:2022年10月13日

先日は当方の質問にご回答いただき、ありがとうございました。
お陰で自らの不勉強を改められ、担当医の判断も医学的に間違っていないだろうと分かりました。

ご回答により知識が深まり、また担当医を信頼できたので、その後の手術と病理検査
結果他の説明をさほど不安なく受けられました。

さて、上記の通りスムーズに治療が進み、前回の質問後に手術、今月12日(昨日)に
病理検査結果他の説明まで終わりました。

そこで今回は以降の治療についてご相談したく、再質問をさせていただきたく存じます。

・手術と病理検査結果他の説明の内容

手術は前回に書いた通り、全身麻酔にて嚢胞部分の周囲をマージン2cmで切除、センチネルリンパ節生検は実施せず。

病理検査結果他については、今回の検体の中から乳がん細胞は発見されなかった旨、
そのため診断は前回と同じ浸潤性乳頭がんステージⅠである旨の説明。

今後はホルモン療法を先行させつつ、年内に放射線療法を終わらせる計画。
ホルモン療法はアロマターゼ阻害薬、放射線療法は20セットの予定。
12日(昨日)から薬剤の処方あり。

・質問

以上の内容と前回の先生のご回答を踏まえて、いくつか質問させてください。

①担当医に尋ねたところ、先生におっしゃっていただいた「被包型がん」ではないとの返答だったのですが、ホルモン療法や放射線療法は受けるべきでしょうか。

また、治療を受ける場合、前回のご回答で放射線よりホルモン療法の方が副作用が気になる旨のご回答をいただき、担当医としてはどちらも副作用は心配ないとの意見でしたが、今一度見解をお聞かせください。
(ちなみに、お伝えし忘れておりましたが、病変の部位が奥に心臓のある左胸なので、放射線もまだ少し心配です)

②担当医は私が心配性だからなのか、病理診断上は浸潤がんだけど手術で摘出した時に開いただけで本当は非浸潤がんだったかもね、との話で安心させようとしてくれたのですが、これはままある話なのでしょうか。
本当に安心材料なのか、それに前の質問でも少し触れましたが、これまでの治療(手術や嚢胞内の貯留物の検査)でがんが拡散した可能性はないのか、かえって不安になってしまったので、医学的にご解説いただければ助かります。

③オンコタイプDXですが、ホルモン療法を始めてしまったら受けられなくなるので、
まだ処方された薬を飲まずにいます。
「被包型がん」ではなかったので、オンコタイプDXを受けるべきか、薬を飲み始めるべきか悩んでいるのですが、状況から見てどうでしょうか。

④組織学的グレード、脈管侵襲、浸潤経について病理で調べていないようなのですが、これは追加で調べてもらうべきでしょうか。

⑤結局、手術時にセンチネルリンパ節生検は受けませんでした。
担当医に尋ねたところ、腋窩エコーはまだ実施していないようなのですが、今後の診察にて追加でオーダーすべきでしょうか。
手術後でも間に合いますか。

田澤先生から 【回答2】

こんにちは田澤です。

病理検査結果他については、今回の検体の中から乳がん細胞は発見されなかった
⇒これは「針生検で病変が取りきれる程度」だったということですよね?

 それであれば、私ならば無治療(放射線もホルモン療法も)とします。
ご参考に。

***
再質問をする場合、下記日付以降にしてください。
2022/10/21
***

質問者様から 【質問3】

嚢胞内腫瘍(乳がんと診断)について
性別:女性
年齢:61歳
病名:乳がん
症状:しこり、血性乳頭分泌
投稿日:2022年10月21日

お世話になっております。

私がごちゃごちゃと書いたせいで先生に誤解をさせてしまったのは誠に恐縮ですが、
私の治療経緯は嚢胞発見→貯留物検査→乳頭血性分泌→嚢胞内腫瘍→「乳管内(嚢胞内)乳頭腫疑いで嚢胞および
辺縁を内部の腫瘍ごと摘出生検」→病理検査で乳がんと診断→「追加で嚢胞のあった部分の周辺をマージン2cmで切除する乳房部分温存術」→
「追加(乳房部分温存術)で切除した検体に明らかな残存がん無し」、です。

つまり、針生検は行っておりません。
恐らく、治療経緯にて「」で区切った部分につき誤解があるものと存じます。
ご検討いただければ幸いです。

田澤先生から 【回答3】

こんにちは田澤です。

後日、病理の結果、腫瘍部分が浸潤性乳がんと診断される。
・病理診断名:Invasive papillary carcinoma ・両女性ホルモン受容体:高レベル陽性 ・HER2スコア:0 ・ki-67:3.5%

⇒上記記載が不十分なようです。
「invasive」となっていますが、完全に嚢胞内であれば「非浸潤癌相当」として無治療でいいでしょうし、もしも「実際に浸潤部分があるのであれば、その浸潤径の記載」が無いと術後補助療法が必要なのかは判断できません。

***
再質問をする場合、下記日付以降にしてください。
2022/10/31
***