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トリプルネガティブの治療と、妊孕性温存

[管理番号:10318]
性別:女性
年齢:25
病名:乳がん
症状:胸のしこり
投稿日:2022年5月30日

25歳の娘に乳癌の診断がありました。

自分でしこりに気づき、すぐに乳腺クリニックを受診。
マンモ、エコー、針生検を行い、10日後に結果を聞きました。

クリニックの結果は、2.3センチ位、乳管癌(硬癌)、核グレード2、ホルモンは陰性、HER2は1+でトリプルネガティブとのことです。

脇の下にもエコーで気になる所見があり、クリニックの医師の見解では少なくともステージ2a以上では?とのことで、紹介状を持って病院を受診しました。

病院では初診時に採血、胸部xp、心電図、エコー、触診を行い次回造影MRIとPET CTを行います。
それで正解にステージを判断するそうです。

遺伝性かどうかの検査もしました。
三親等の身内に乳がん、卵巣、子宮がんはおりません。

遺伝性か否かにより、治療効果や予後に影響はありますか?

病院の先生からは1.8センチ位かもしれない、脇の転移はないかもしれない、ステージも1かも?と言われました。
クリニックの先生より良いお話しでした。
病院の先生のお言葉を信じてよろしいでしょうか。

クリニックの医師が言っていた脇の影も、悪いものではないこともありますか?

トリプルネガティブは通常は抗癌剤を先に、そのあと手術のパターンが多いそうですが、妊孕性保存の希望があるため、まず婦人科で毎日注射をし、卵巣の状態をみて採卵→手術をする。
できればもうワンクール採卵をし、→抗癌剤開始したらどうだろうか?
と主治医の先生はおっしゃいました。

ただし、検査結果次第では妊孕性を諦めすぐに治療に入る話もされてはいます。

術前の抗癌剤、術後の抗癌剤、どちらでも今後の治療成績には差はないが、抗癌剤の効きを見たいから先に抗癌剤をやることが多いのだと伺いました。

わたしは素人ですがいろいろな文書を読み漁り、抗がん剤の効きかわかったほうがその後の治療に良いのかと思い、採卵は1回にとどめて採卵後すぐに抗がん剤をはじめ、その後に手術をしたらいいのでは?と思ってしまいました。

先に抗がん剤をすると、術後のゼローダ内服も適用になり、治療効果が上がるのかなとも思います。

治療後に、子どもを授かる可能性は充分ありますでしょうか。

トリプルネガティブは抗癌剤の効きが良ければ、むしろ予後良好との文書も見ました。

また、抗癌剤をやるにあたり、コレステロールが低いことが効果的で、アトルバスタチンやロスバスタチンなどの、コレステロールを下げる薬を内服すると良いとの情報も見つけました。

先日の血液検査では、コレステロールや腫瘍マーカーも含めて結果は正常値でした。

トリプルネガティブを調べると、予後不良や再発など、嫌な言葉しかなく心配でたまりません。

5年10年どころか、完治し50年でも通常な生活を送ることがわたしのいちばんの望みです。
現在の状況で充分治癒の可能性はありますでしょうか。

田澤先生のQ &Aも読ませていただきましたが、そもそも20代の方が少なく、お忙しいところ大変恐縮ですが質問させていただきました。

よろしくお願い申し上げます。

田澤先生からの回答

こんにちは田澤です。

先に抗がん剤をすると、術後のゼローダ内服も適用になり
⇒これは「適応外診療」です。

適応外診療を考えている方への回答は差し控えさせてもらいます。
今週のコラム 285回目286回目を是非熟読してください。 
(適応外診療は決して行ってはいけない行為です)

***
再質問をする場合、下記日付以降にしてください。
2022/6/11
***

質問者様から 【質問2】

20代 トリプルネガティブ乳がん
性別:女性
年齢:25
病名:トリプルネガティブ乳がん
症状:胸のしこり
投稿日:2022年6月11日

田澤先生先日はご返信ありがとうございました。

いろいろ調べたつもりでしたが、術後のゼローダが保険適応ではないとは、勉強不足でした。

保険診療に基づいた標準治療を行っていこうと思います。

詳しい結果が出ました。

採血→腫瘍マーカー含め異常なし
MRI→造影ができずよく分からず
PET CT→16ミリ大の結節影の異常集積(SUV max19.02)
腋窩リンパ節が7ミリ大にvisible。
淡いFDG集積(SUV
max1.59)も伴っているように見え、転移を否定できないとの結果でした。
検体検査の結果、クリニックでは核グレード2だったのに3になっていました。

グレードが変わることはありますか?
最大浸潤径は11ミリ。

ki67の数値は出ていません。
(検査していないか、説明がないだけなのかも不明)
HER2+1ですが、HER2が陰性の場合と比べ治療成績や再発率に違いはありますか?
遺伝子検査は陰性てした。

暫定的にステージ1と言われましたが、脇の転移が確認されたらステージ2aになってしまうのでしょうか。

ステージ1と2aでは、再発率に大きな違いはありますか。

主治医は術前、術後どちらの抗がん剤でもよい、とおっしゃいましました。
妊孕性温存のため、採卵→手術→もう一度採卵→抗がん剤とのスケジュールに決定しました。

娘もわたしも、完全奏功かどうかを確認したかったので、できれば術前抗がん剤を希望していましたが、妊孕性の問題も捨てられずこのようになりました。
来週採卵し、今月末に手術をします。

田澤先生のお考えでも、この方法は問題ないでしょうか。

ちょうど手術の前後あたりに生理がくる予定で、そのあともう一度採卵すると抗がん剤の開始が術後1ヶ月以上あいてしまうかもしれませんが問題ないでしょうか。

主治医からは放射線の話はされておらず、骨転移がなければ術後数ヶ月の抗がん剤ののち、無治療になるのでしょうか。

若い年齢と、トリプルネガティブということにたいへん怯えております。

出産し平均寿命のあたりまでは元気にいてほしく、どのような治療をしていけばその望みが叶うのかと思っております。

質問が多く申し訳ございませんが、よろしくお願いいたします。

田澤先生から 【回答2】

こんにちは田澤です。

心配なのは理解できますが…
余りにも些細なことを気にしすぎ!

普通に手術先行で(抗がん剤前に)卵子凍結し、その後(手術病理結果を確認の上)
抗がん剤治療を行えばいいのです。

手術もまだでステージも未確定なのに「再発率に違いがあるのか?」とか余計なことは考えずにシンプルにやるべきことをやればいいのです。

***
再質問をする場合、下記日付以降にしてください。
2022/6/20
***

質問者様から 【質問3】

術後の経過と今後の治療について
性別:女性
年齢:25
病名:トリプルネガティブ乳がん
症状:胸のしこり
投稿日:2022年7月4日

25歳の娘に浸潤性乳管がん、サブタイプはトリプルネガティブの診断があり、質問させていただいた者です

妊孕性温存の希望があり、一度採卵し手術先行→再度採卵→抗がん剤の治療方針に決まり、先月末に一度目の採卵、温存手術が終わりました。

センチネルリンパは4個取り術中の迅速検査で全て陰性、リンパ郭清はしませんでした。
術前のPETでは1.6センチの腫瘍と言われていました。

あと2週間ほどで病理の結果が出ますが、リンパ転移なしのステージ1と考えてよろしいでしょうか。

いくつか不安点があり、質問させてください。

1.術中迅速検査でセンチネルリンパに転移がなくても、術後の病理でセンチネルやその先のリンパ節に転移があったという可能性はありますか。

2.もともと胸が大きいですが、術後の見た目がほとんど変わってません。
えぐれたりもしていません。

あまり大きく切除してないと思いますが、がん細胞の取り残しの可能性は無いでしょうか。

3.受精卵凍結をしましたが、歳の差婚のためなるべく早期の妊娠を希望しています。

婦人科のドクターは2年くらいはしてから妊娠した方がいいのでは?と言っていましたが、抗がん剤終了後1年くらいで妊娠は良くないでしょうか。

4.今後の再発率はどのくらいでしょうか。
また、再発を防ぐために自分でできることはなんでしょうか。

ステージ1でも再発率がゼロではないということは、再発してしまう方は手術で取り残しがあるということなんでしょうか。

5.トリプルネガティブですが、HER2は1の弱陽性です。

HER2が陰性の場合と比べ、治療法や予後に違いはありますか?
遺伝子検査は陰性でした。

ki67は知らされておりません。
病理の結果でわかるものでしょうか。

何度も質問ばかりで大変申し訳ございません。
先生は心配しすぎとおっしゃいましたが、やはり心配をぬぐえずにおります。
娘本人の方がわたしより辛いはずなのに明るく前向きにしております。
どうぞよろしくお願いします。

田澤先生から 【回答3】

こんにちは田澤です。

1.術中迅速検査でセンチネルリンパに転移がなくても、術後の病理でセンチネルやその先のリンパ節に転移があったという可能性はありますか。
⇒あくまでも「術中迅速」なので、「摘出したセンチネルリンパ節の永久標本としての再検査」で実はセンチネルリンパ節転移陽性だったという可能性は(常に)あります。
 ★追加郭清していない筈なので、「その先のリンパ節に転移」という病理所見はあり得ません。

2.もともと胸が大きいですが、術後の見た目がほとんど変わってません。
えぐれたりもしていません。
あまり大きく切除してないと思いますが、がん細胞の取り残しの可能性は無いでしょうか。

⇒それは、手術病理でマージンを確認しましょう。

3.受精卵凍結をしましたが、歳の差婚のためなるべく早期の妊娠を希望しています。
婦人科のドクターは2年くらいはしてから妊娠した方がいいのでは?と言っていましたが、抗がん剤終了後1年くらいで妊娠は良くないでしょうか。

⇒無論、全く問題ありません。(抗がん剤終了後半年でいいでしょう)

4.今後の再発率はどのくらいでしょうか。
⇒正式な(術後)病理が出たら主治医に確認しましょう。
 現時点で、それを予測(占い?)すること自体全くナンセンス

また、再発を防ぐために自分でできることはなんでしょうか。
⇒ありません。

ステージ1でも再発率がゼロではないということは、再発してしまう方は手術で取り残しがあるということなんでしょうか。
⇒完全な理解不足です。

ここでいう再発率とは「遠隔転移」再発率です。
それは、手術した時点で「すでに遠隔臓器に到達しているが、画像上見えなかった癌細胞が、増大して遠隔転移と認識される」訳です。
★手術して摘出するのは、あくまでも「乳腺とリンパ節だけ」ですよ!

5.トリプルネガティブですが、HER2は1の弱陽性です。
⇒間違い!
 HER2 1+は弱陽性ではなく「明確に」陰性です!

HER2が陰性の場合と比べ、治療法や予後に違いはありますか?
⇒全くありません。
考えすぎ!

ki67は知らされておりません。
病理の結果でわかるものでしょうか。

⇒通常は手術病理で判定します。

***
再質問をする場合、下記日付以降にしてください。
2022/7/12
***

質問者様から 【質問4】

トリプルネガティブ乳がんの術後抗がん剤
性別:女性
年齢:25歳
病名:トリプルネガティブ乳がん
症状:しこり
投稿日:2022年7月13日

田澤先生、ご丁寧なご回答ありがとうございます。

25歳、トリプルネガティブ乳がんの術後病理の結果を聞いてきました。
以下の通りです。

●肉眼所見
検体の大きさ:8.5×6.5×4.0cm

●主病変
右 C area、術式:Bp+SNB→Fr(-)→ Ax略

腫瘍径18×15mm(×20mm)
浸潤径(#22):16×15mm
組織型(Japan 18th):IB3a3、Invasive ductal carcinoma、
scirrhous type
組織型(WHO 5th):Invasive breast carcinoma of no special type UICC 8th:pT1c、pNO(sn)
Grade:TF:3、NA:3、MC:3=HG:ⅠⅠⅠ、NG:3
組織学的波及度:f(+)、脈管侵襲:Ly1(HE)、VO(HE)
in situ(+):comedo、solid、cribriform
Comedo necrosis(+)、 Calcification(+、分泌型)、TIL:
3%程度(#22)
背景乳腺症(+)
切除断端(-)

●バイオマーカー:(#22、invasionで評価)
ER Allred score 0=PS(0)+IS(0)、internal control(+)
PgR Allred score 0=PS(0)+IS(0)、internal control(+)
HER2:1+、ki67 LI:80%程度(Hot spot)
AR(-)、CK5/6(+、15%程度)、EGFR(+、weak、20%程
度)
P53:<1%(Hot spot)

●リンパ節:計0/4個
1.術中迅速診断(0/4):SLN1(-)、SLN2(-)、SLN3
(-)、SLN4(-)
2.通常診断(0/0)

●コメント
限局した硬性型>充実型の浸潤性乳管癌が認められる。
リンパ管侵襲像あり。

なにを書いてあるのかわからない部分もありますが、やはりグレード3と、なによりki67の80%という数値にショックを受けています。
主治医はトリプルネガティブはグレードもki67も高いのが
普通だよ、その分抗がん剤の効きはいいはず、とおっしゃいました。

また、リンパへの転移はなく一度は安心したものの、血行性の転移の場合もあると聞き、やはり心配は尽きません。

主治医からは、局所再発ならなんとかなるが遠隔に再発や転移したら治らないので、そうならないようにしっかりと抗がん剤と放射線をやっていく、とのことで、とにかく再発転移が恐ろしくてなりません。
術後ちょうど1ヶ月になる今月末からまず AC療法で2週ごとに4回、その後タキサン系を2週ごとに4回(または毎週で12回)やるそうです。
そのあと放射線を週5日×5週とのことです。

田澤先生のお見立てでも、この治療法で問題ないでしょうか。

いちばん気になる再発率は10%程度でしょうか。

よろしくお願いします。

田澤先生から 【回答4】

こんにちは田澤です。

田澤先生のお見立てでも、この治療法で問題ないでしょうか。
⇒私ならdose dense ではなく「通常の」anthracycline + taxaneを行いますが…
 25歳という年齢を考えて「dose dense]を主治医は選択しているのでしょうから、ご本人に忍容性があればそれでいいでしょう。

いちばん気になる再発率は10%程度でしょうか。
⇒その程度だと思います。

***
再質問をする場合、下記日付以降にしてください。
2022/7/22
***

質問者様から 【質問5】

タキサン系の抗がん剤 毎週か、2週毎か
性別:女性
年齢:25歳
病名:トリプルネガティブ乳がん
症状:しこり
投稿日:2022年8月21日

田澤先生いつもありがとうございます。

わかりやすい回答をいただき、娘も前向きに治療に取り組んでいます。

2回目のddACが終わり、10日ほど過ぎました。

脱毛は始まりましたが、そのほかの副作用は薬でコントロールできていて、まあまあ元気に過ごしています。
本人は翌日に打つジーラスタの腰の痛みがいちばん辛いかも、とのことです。

あと2回の後、タキサン系の抗がん剤に移行するのですが、毎週×12回または2週毎×4回のどちらかにそろそろ決めたい、と言われ悩んでいます。

主治医は、治療成績はそんなに変わりない、ジーラスタが痛みがあるならウィークリーパクリタキセルにしたら?とおっしゃいました。

わたしも娘も『そんなに変わりない』の部分が気になっており、例え0.1パーセントでも治療成績に差があれば良い方を選択したいと考えています。

病院は近く、現在仕事をしていない為、通院の頻度や時間は気にしていません。

また、疑問なのですが毎週だと12回なのに2週毎だと4回というのは、単純に考えて一度に使う薬剤量は3倍ということなんでしょうか。

やはり、2週毎の方が副作用は強いでしょうか。

ただ、いちばんの気になりどころは副作用より治療成績です。
田澤先生のご経験として、どちらを選択した方が再発率が低いと思われることがありましたら教えていただきたいと思います。

よろしくお願いいたします。

田澤先生から 【回答5】

こんにちは田澤です。

そもそもpaclitaxelは(日本では)毎週投与しか適応はありません。
つまり「当然」weekly paclitaxelを私なら選択します。

そろそろ質問はこれくらいにして、治療に専念しましょう。(再質問するにしても1か月以上は是非開けてください)

***
再質問をする場合、下記日付以降にしてください。
2022/9/24
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