Site Overlay

全摘出か温存か。リンパ節転移の画像上の消失について。

[管理番号:9746]
性別:女性
年齢:45
病名:浸潤性乳がん
症状:腫瘍径2.4cm、トリプルポジティブ、HER2 3+、ki67:50%
投稿日:2021年9月22日

はじめまして。

田澤先生のコラムを読み自分なりに勉強中です。

以下、よろしくお願いいたします。

3月乳がん確定診断。

腫瘍は一日も早く取ってしまいたい、乳房温存にはこだわらないと主治医に伝えるも、術前抗がん剤治療があなたにはベストです、と。

4月よりAC→ウィークリーパクリタキセル+抗HER2薬。

腫瘍は小さくなりましたがまだ触れます。

【質問1】
10月手術予定。
局所再発の不安を少しでも減らしたいという理由
で全摘希望を伝えたところ、あなたの場合は温存プラス放射線の方がいいと思う、とのこと。

たくさんの患者を診てきた主治医が私のQOLをも考慮して温存プラス放射線を勧めてくださっているのに、自分の局所再発への不安を優先して全摘を希望することはナンセンスでしょうか。

田澤先生ならどちらを勧めますか?

【質問2】
抗がん剤治療開始前の検査ではリンパ節転移なしの診断でしたが、抗がん剤治療開始まで3週間あきました。
その間に、リンパ節転移していたら?という不安がぬぐえません。

先日受けた術前乳腺エコー検査ではリンパ節転移は見られないとの診断でしたが、実はリンパ節転移していたけど抗がん剤が効いたため画像上は見当たらないだけかもしれない。

センチネルリンパ節生検で陰性であっても、センチネルリンパ節の転移が抗がん剤が効いて消失しているだけでその先のリンパ節の転移も消失しているとは限らないですよね?
だけど、センチネルリンパ節生検陰性であれば腋窩リンパ郭清は省略されるから、その先のリンパ節転移も消失している(または、そもそも転移していなかった)と信じて今後は経過観察していくしかないですか?

田澤先生のコラム中に『画像上は消失したように見えても顕微鏡レベルでは残存していて数年後再発するかもしれない』とあり、心配になります。

【質問3】
センチネルリンパ節生検の結果、微小転移もしくは転移2個以下の場合は腋窩リンパ節郭清はしないと主治医に言われました。

これは妥当な判断と思われますか?

稚拙な長文で大変恐縮ですが、よろしくお願いいたします。

 

田澤先生からの回答

こんにちは田澤です。

メールを読んで…
患者さんの希望(手術先行や全摘など)を、自分のいいように捻じ曲げる医師が居ることには(呆れを通り越して)強い嫌悪を抱きます。
無論、患者さんが「標準治療以外の要望(例えば、手術せずに民間療法をしたいなど)」であれば、医師として断固とした態度をとるべきですが(それでも最終的には「強制力はない」ので「自己責任」となります)
質問者の場合には、明らかに(標準治療の範囲内での)「本来、患者さんの選択権のある」ことに対して、自分のいいように捻じ曲げている。

「【質問1】
10月手術予定。
局所再発の不安を少しでも減らしたいという理由で全摘希望を伝えたところ、あなたの場合は温存プラス放射線の方がいいと思う、とのこと。

たくさんの患者を診てきた主治医が私のQOLをも考慮して温存プラス放射線を勧めてくださっているのに、自分の局所再発への不安を優先して全摘を希望することはナンセンスでしょうか。
田澤先生ならどちらを勧めますか?」

⇒この医師は何者?
 当然、術式に関しては患者さん自身に選択権があります。
 「部分切除+放射線」が「全摘」よりも局所再発(温存乳房内再発)率が高い(前者が10年で5%だとして、後者は0%となります)
 それを理由に患者さんが全摘を希望しているのに、(もしも局所再発したら)其の医師は責任をとれるのか?(単に、「全摘だと手術が大変だなあ、部分切除の方が楽でいい」みたいな理由で患者さんの将来を変えてしまうとしたら、それは罪深い)
★ 当然、「全摘を勧めます」

「【質問2】
抗がん剤治療開始前の検査ではリンパ節転移なしの診断でしたが、抗がん剤治療開始まで3週間あきました。
その間に、リンパ節転移していたら?という不安がぬぐえません。

先日受けた術前乳腺エコー検査ではリンパ節転移は見られないとの診断でしたが、実はリンパ節転移していたけど抗がん剤が効いたため画像上は見当たらないだけかもしれない。

センチネルリンパ節生検で陰性であっても、センチネルリンパ節の転移が抗がん剤が効いて消失しているだけでその先のリンパ節の転移も消失しているとは限らないですよね?
だけど、センチネルリンパ節生検陰性であれば腋窩リンパ郭清は省略されるから、その先のリンパ節転移も消失している(または、そもそも転移していなかった)と信じて今後は経過観察していくしかないですか?」

⇒これが「術前抗がん剤のもう一つの問題点」と言えます。
 「センチネルリンパ節生検の信頼度が間違いなく、一段階低下する」これは、術前抗ガン剤をした以上仕方がないことと言えます。
 実際に、(おそらく)「それが理由で、センチネルリンパ節生検陰性→郭清省略⇒(数年後)腋窩再発」という症例を少なからず経験しています。

「【質問3】
センチネルリンパ節生検の結果、微小転移もしくは転移2個以下の場合は腋窩リンパ節郭清はしないと主治医に言われました。
これは妥当な判断と思われますか?」

⇒色々な臨床試験があり、「3個以内なら郭清省略」している施設もありますが…
 私の経験上、それは極めて危ない(腋窩再発の高リスク)と思います。

 色々な施設基準がありますが、やはり「微小転移であれば省略、肉眼的転移が(1つでも)あれば郭清」という施設が多数と思います。

★公開が9月27日以降となるため、一足先に「掲示板」で公開しました。(9月24日

 
 

 

質問者様から 【質問2 】

術後治療 パージェタ使用について。
性別:女性
年齢:45
病名:
症状:
投稿日:2021年11月8日

先月、無事に全摘手術を受けることが出来ました。

心強い回答を頂戴してとても嬉しかったです、ありがとうござい
ました。

今月から術後治療が始まります。
それについてご意見を伺いたく
宜しくお願いいたします。
度々申し訳ありません。

病理検査の結果、術前抗がん剤により完全奏功(センチネルリンパ節転移なし)。

「完全奏功した場合、血液中の癌細胞もなくなったと考えるので、再発は低リスク。
術後治療はハーセプチン(9ケ月)とホルモン療法」と主治医に言われました。

パージェタは?と聞くと、完全奏功した人にはパージェタは適用にならないし、必要ない、とのこと。

(質問)
これは妥当な判断と思われますか?
田澤先生でしたら、パージェタは勧めませんか?

術前抗がん剤で完全奏功したと言っても全身に散らばった癌細胞にも効いているかどうかはわからないと思う(再発リスクはゼロになることはない)し、まして、私はHER2 3+でもともとの腫瘍2.4センチなので、(念には念を入れ)パージェタもお願いしたいのですが、過剰なのでしょうか?

お忙しいところ恐縮ですがよろしくお願いいたします。

 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは田澤です。

「パージェタもお願いしたいのですが、過剰なのでしょうか?」
⇒そんなことはありませんよ。(普通はやります)