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温存後補助療法について

[管理番号:6682]
性別:女性
年齢:55歳

2018年5月 胸部造影CTで左乳腺に1cm濃染結節指摘 6月 エコー マンモ 針生検4本
<針生検組織所見>
アポクリン分化を伴ったDCIS ER : 5% PgR : 10% Ki67 : 5
Ki67 : 5-10% HER2 : 2+相当

乳腺MRI・リンパ管3DCT後、7月末に内視鏡下温存手術・センチネルリンパ生検実施

<組織所見>
組織学的には、腫瘍細胞は管状、乳頭状、櫛状構造を形成して増殖。
アポクリン化生を伴った腫瘍細胞も見られる。
明らかな乳管内病変とともに小型腺管が密に増殖する領域があり、浸潤癌か非浸潤癌かの鑑別が問題になる組織像である。

p63の免疫染色にて筋上皮細胞が確認される領域が多いが、
部分的には筋上皮細胞が不明瞭であり、microinvasive
carcinoma(papillotubular carcinoma)と判断する。

核異形スコア2 核分裂像スコア1 核グレード1 f(-)リンパ管侵襲(-)
断端への明らかな侵襲は確認されないが、乳管内病変が断端に近接しているので、慎重なフォローを希望します。
非腫瘍
部乳腺組織にcystを認める。
(mastopathy, mild)

免疫染色 ER:40% PgR:5% HER2:3+(microinvasive のため参考値) Ki67 : 5%
血管侵襲の有無に関して、特殊染色を施行追加報告予定

針生検で非浸潤癌でも実際は浸潤癌である場合があることはわかっていましたが、再発・転移する浸潤癌であり、組織所見HER2が3+でルミナールBとなり、予後不良因子とのこと、
断端と病変が近いとの指摘で非常に不安です。
断端近接は局所再発、もし血管侵襲があれば遠隔転移の可能性が高いということですね?

術後の補助治療として、温存後放射線は局所再発リスク低減のためガイドラインで必須は承知していますが、どうしても放射線・ホルモン療法について強い拒否感があります。
理由として、
・7年前に初期の腎がんで手術、(今回の造影CTも術後フォローで実施)今後治療で放射線が必要となる可能性もあり、
予防的照射被爆は避けたいことと照射による二次がん発生リスクも心配。

・10代より卵巣機能不全で長期間ホルモン補充療法をうけており、乳房が極端に小さく、一般の方より左照射による心臓・肺、肋骨等へのリスクが高いのではとの懸念あり。

・エストロゲン不足による重度の骨粗鬆症があり(半年毎プラリア皮下注射治療中)、すでに女性ホルモンが極端に足りない状態に、さらに低下させるホルモン療法をすることへの疑問。

・ER50%以下の低値(針生検では5%)であり、副作用対効果で服用メリットがあるのか不明。

主治医からは、浸潤癌である以上、術後補助療法なしはとても危険で再発したら大変、放射線拒否ならホルモン療法か化学療法(抗HER2療法))を強く勧められています。
(局所治療として放射線をした場合でも、対側・全身予防としてホルモン療法か化学療法のどちらか行うことを相談、とのスタンス)

5mm以下の微小浸潤には化学療法不要のガイドラインもあり、(田澤先生の過去回答)化学療法は選択肢外ですが、上記組織所見、既往症、本人の強い拒否感を総合しても、放射線もホルモン療法もやらないという選択肢はありえないでしょうか?
長文になりましたが、よろしくお願いいたします。

 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。

微小浸潤ですよね?
当院なら、そもそも「術後補助療法(ホルモン療法など)」はしません。
ただ、温存手術である以上「術後照射は大前提」です。

「・ER50%以下の低値(針生検では5%)であり、副作用対効果でで服用メリットがあるのか不明。」
→微小浸潤だから、しなくていいでしょう。

「放射線もホルモン療法もやらないという選択肢はありえないでしょうか?」
→ホルモン療法は不要ですが…

 そもそも「術後照射を前提」として温存手術を選択したはずですよね?
 それなのに、術後に「やっぱり、やりたくない」では主治医も困ることでしょう。

 ★「温存希望だけど、(自己検診として)照射はしない」と術前から言われていれば、(それに応じた)マージンをつけた手術を心がけるわけです。