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乳癌の診断・治療と未来設計について

[管理番号:7074]
性別:女性
年齢:32歳
病名:乳癌
症状:

田澤先生、はじめまして。

お忙しいところ、このような質問の場、正しい知識の提供の場を頂きましてありがとうございます。

乳癌に罹患してからこちらのサイトで勉強しています。

ご経験に基づく豊富な情報と乳癌患者の方の不安に寄り添いつつ、正しい治療法と治癒への方向性を指南されている先生の姿勢に大変感激いたしております。

私は血性分泌で乳腺科を受診、先月右乳がんが確定しました。

今月全摘手術を行う予定です。

その上で数点疑問がありましたので田澤先生のご意見も伺えますと幸いです。

①しこりの大きさについて
エコーや生針では1.5cmだったものが、造影剤CTでは最大9㎜のものが複数広範囲にあるという結果が出ました。
(初診時にはマンモも撮っています)
このように検査によって大きさが大幅に変わることはよくありますか?
※他の方の質問や先生の回答より、『胸のしこりをさわると大きく感じるのはゴム手袋で触るようなもので誤差がある』ということや、検査の種類や、手術前の検査と手術後の病理検査とでは誤差があることは理解できました。

しかしながら、1つだけしこりがある状態と、広範囲にいくつもしこりが散らばっている状態とでは、大きな差があるような気がいたしまして質問しました。

(当初は温存予定でしたが、全摘になったことへのショックもあります)

②担当医より、ステージはⅠと聞いていますが、広範囲に複数しこりがあり、全摘でもステージはⅠになるのでしょうか?
※複数個、広範囲はたちの悪い癌なのではないかと心配です。

※リンパ節転移があった場合はステージが変わることは理解しています。

③エコーや画像上で転移は見られないと聞いていますが、造影剤CTの画像で腋の周辺に白い楕円形のものがいくつか写っていたのが気になっています(バンザイの格好で胸部を撮影しました)。
担当医の言葉を信じて良いものでしょうか?
手術の流れはセンチネルリンパ生検をし、転移があれば腋窩リンパ節郭清をします。

※担当医に不信は無いのですが、癌の宣告を受け、気持ちが弱っていることや、温存予定から全摘になったこと、同時再建ではなく落ち着いてからの再建と伺ったことなど、私にとって悪い方向へ変化することがいくつかあり、「本当は悪い結果が出ているが、恐がらせないよう隠しているのでは?」と勝手な邪推をしてしまいます。

(医師に隠すメリットもないですし、悪いものなら指摘下さると思うのですが、恥ずかしながら不安から正常な判断ができない自分がいます)
※また、不安な気持ちと矛盾しておりますが、田澤先生の、初期の癌で転移の心配はない、医師が画像上異常がないといっているのなら問題ない、といったお言葉をQ&Aやコラムで拝見し、そのお言葉に救われております。

④細胞診(分泌物)では悪性疑い(Ⅳ)、細胞診(針)では悪くなかった、生針検査では癌の確定診断が出ました。
細胞診(針)では悪性の箇所を捉えられず悪くなかったと出たとの理解でよろしいでしょうか。

※細胞診(針)は、悪くなかったと伺ったのみでクラスは聞いていませんが、エコーに映るもやもやの像が気になるということで生検することになり、癌がみつかりました。

⑤生針検査では乳頭直下辺りから3本(細胞診(針)もこの部分)、乳頭より上(鎖骨の方向)
から2本取りました(この2本から癌がみつかりました)。

このときから担当医は広範囲に癌があると確証を持っていたのでしょうか?それとも、2ヵ所癌があると想定していたのでしょうか?
※個人的には疑わしいところを採ったら上記範囲2ヵ所の5本になり、うち2本から癌細胞が出たのではないかと想像し、理解していますが、当初は温存の話があったので、広範囲との想定ではなかったのでは?とも想像します。

(全摘になったことから、医師の想定より悪かったのではないかと落ち込んでいます)
※ただ、ここで見落とさずに採取していただけたことに感謝しています。

⑥生検である程度癌の種類頭が分かるのかと思っておりましたら、手術後の病理検査を待ってから治療方針を決めると聞きました。
医師、患者双方にとって、癌の種類やサブタイプが分からないまま手術をすることでのデメリットはありますか?
※Q&Aで、生検の病理検査のオーダーについて、病院や地域で差があることを理解しました。

※私は、妊娠を希望していることもあり、自分にあった治療方針をイメージしておきたい気持ちがありましたので、心構えができない点や、分からないことへの不安要素がデメリットかと感じました。

⑦妊娠を希望する場合、再建手術(インプラントを希望)はいつ頃が望ましいでしょうか。

※再建手術時の麻酔や投薬、合併症のリスクを考えると、再建より妊娠を優先すべきなのかと考えていますが実際どのようなケースの方がいらっしゃるのでしょうか?
(年齢と治療計画を合わせて再建より妊娠優先かと考えていますが、いずれは再建を考えたいです)

⑧妊娠を希望している場合はQ&Aのとおり、
ホルモン治療が適応の場合:妊娠出産→ホルモン療法(5~10年)、抗がん剤が適応の場合:卵子凍結→抗がん剤→妊娠出産(→適応や必要があればホルモン療法)のように考えているのですが、そのような理解で間違いないでしょうか?
※できれば二人以上子どもを望みたいと考えており、他の妊娠希望の方へのご解答を参考に、
○手術→妊娠出産→ホルモン療法→妊娠出産
→ホルモン療法
○手術→卵子凍結→化学療法→妊娠出産(→適応があればホルモン療法)→化学療法→妊娠出産(→適応があればホルモン療法)
のようにイメージしております。

※田澤先生が、乳癌を克服し妊娠出産をされた方を多く見ておられる事実や、出産授乳は乳癌のリスクを下げるとのお言葉が大変励みになっております。

拙い文章で長文、乱文、大変申し訳ございません。
また、自分のケースはどうなのかという不安から、過去の質問と重複して質問してしまっている点もあるかと思いますが、何卒よろしくお願い申し上げます。

 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。

「このように検査によって大きさが大幅に変わることはよくありますか?」
→エコーとMRIの所見(拡がり)が完全に一致するのであれば、わざわざMRIを追加する理由がない

 上記が大前提ですが…
 そもそも、今回の質問者のケースでは「乳管内病変として広範囲に広がっているが、殆どの病変が小さいためにエコーでは捉えられない(MRIは血流による造影効果をみているため、これが捉えられる)」のだと思います。
 このようなケースではMRIで初めて「広範囲であることが判明する」こともあります。(乳管造影していれば、そもそも解ったでしょうが)
  『今週のコラム 157回目 病理結果によっていろいろなcaseがあるので、一概には言えません』の中の図をイメージすると解りやすいでしょう。

「担当医より、ステージはⅠと聞いていますが、広範囲に複数しこりがあり、全摘でもステージはⅠになるのでしょうか?」
→殆どが「乳管内病変」だとすれば、そうなります。(腫瘍のステージはあくまでも「浸潤径」なのです)

「担当医の言葉を信じて良いものでしょうか?」
→信じましょう。

「細胞診(針)では悪性の箇所を捉えられず悪くなかったと出たとの理解でよろしいでしょうか。」
→細胞診は(生検手技の中でも)最も技術が要るのです。

「このときから担当医は広範囲に癌があると確証を持っていたのでしょうか?」
→(癌なのかは不明だが)病変としては超音波でも複数捉えていたということです。

「医師、患者双方にとって、癌の種類やサブタイプが分からないまま手術をすることでのデメリットはありますか?」
→ありません。

「⑦妊娠を希望する場合、再建手術(インプラントを希望)はいつ頃が望ましいでしょうか。」
→妊娠出産してからにしましょう。(再建してから妊娠する理由がありません)

「そのような理解で間違いないでしょうか?」
→その通り。
 私の回答は未来永劫変わりません。

 
 


 

質問者様から 【結果2 手術(全摘)を終えました】

性別:女性
年齢:32歳
病名:乳癌
田澤先生の診察:[診察なし]
田澤先生の手術:[手術なし]

田澤先生、おはようございます。
以前は診断や妊娠出産を希望する際の治療方針についてご解答くださり、ありがとうございました。

田澤先生のお陰で将来に対する希望も持て、安心して手術を行うことができました。

全摘でしたので、まだ気持ちの上で受け入れがたい部分もありますが、担当医の先生が「早期で良かった」と仰ってくださったことや、田澤先生がQ&A等で早期発見や腫瘍が小さいことは武器になると書いておられることを心にとどめて、回復に落ち着いて努めたいと思います。

また病理結果や治療方針等で分からないこと、担当医と相談しても自分では決めかねること、など出てくるかと思いますが、その際にはまた質問させて頂けますと幸いに存じます。

***
田澤先生、こんにちは。
同日に何度も報告をお送りし、申し訳ございません。

以前の質問内で、「画像上、腋に丸いものが写っており、リンパ節転移が心配」とお伝えしましたが、
センチネルリンパ生検では陰性だったようで、腋下リンパ節郭清は行っておりません。

質問で、田澤先生より「(担当医の言葉を)信じましょう」といっていただいたとおりになりましたことや、
手術前は、開いてみて予想以上に悪かったら…という不安が大きくありましたので、田澤先生のお言葉に本当に救われました。

私の拙い文章からイメージ頂き、的確な言葉を与えてくださり本当に心強かったです。
ありがとうございました。

何度も失礼かと思いましたが、先にお送りしたご報告に抜けがございましたので、再度お送りいたしました。
それでは、失礼いたします。

<Q&A結果>

 
 

 

質問者様から 【質問3 病理結果をふまえた治療計画、未来設計について】

性別:女性
年齢:32歳
病名:乳がん
症状:術前/血性分泌、術後/腋の膨らみ、違和感

田澤先生。
いつもお世話になっております。

管理番号7074の者です。

以前は質問にご回答くださりありがとうございました。

主治医にも大変感謝しておりますが、田澤先生から正しい知識や回答を頂けたことで、
必要以上に不安になることなく手術に向かうことができ、精神的に支えていただけましたことに大変感謝しております。

ありがとうございました。

さて、今回も田澤先生のご意見を頂戴したい点がございましてメールいたしました。

この度、病理結果が出まして治療方針が決定いたしました。

他の質問者の方のような病理レポートではなく、病院の書式のシンプルなもので、

○大きさ/1.5cm(非浸潤部分が8cm)
○ホルモン/陽性
○ハーツー/陰性
○核異形度/1
○リンパ節転移/なし
○治療方針/ホルモン療法を5年

との内容が書かれていました。

(※妊娠希望のため、妊娠出産後にホルモン療法を開始する方針を提案いただいています。

※抗がん剤の上乗せ効果と副作用とのバランスから抗がん剤は不要との説明あり。

※手術は全摘+センチネルリンパ生検でした。)

上記病理結果と、現在の疑問点について、田澤先生にご質問させていただきたい点は以下になります。

①病理結果より、自身のサブタイプ、ステージをルミナルA、ステージⅠと認識しておりますが、あっておりますでしょうか。

(術前の説明ではステージⅠでした)

②主治医の説明は、シンプルで分かりやすい説明だったのですが、詳しい数値等は伺っていません。

田澤先生から見て、詳細を聞いておいた方がよいと思われる点や数値等はございますでしょうか。

③大きさについて、非浸潤部分(※主治医からは専門用語ではなく、『前癌段階の転移を起こさない部分』のような説明を受けました)
が、8cmと大きいのですが、主治医の説明とこちらのQ&Aより、ステージや予後に関係するものは浸潤していた1.5cmのみと理解しているのですが、あっておりますでしょうか。

(→8cmの部分を足し算したり、考慮したりはしない、でよろしかったでしょうか)

④乳腺科を受診したきっかけは、血性分泌で、マンモでは血だまりができるほどの出血があったことが気になっており、(検査が原因ではなく、癌の性質上)血液から全身に癌細胞が散らばっているリスクが高いのではないか?と心配しているのですが、田澤先生は血行性転移のリスクについていかが思われますでしょうか?
→ネットにて、非浸潤性乳がんの症状として、血性分泌があることも知り、自身も非浸潤部が8cmありましたので、そちらの症状である可能性もあり、血行性転移と血性分泌は切り離して考えた方が良いのかとも捉えているのですが…
(※また、11回目のコラムを読み、『 単孔性乳頭分泌を自覚し発見された場合等は、早期乳がんであり、乳癌が全身に転移することは稀である』と理解しておりますが、私のケース(出血量が多く、非浸潤部分も大きい)もその理解でよろしいでしょうか。

※非浸潤部は理論的に転移を起こさないこともこちらのサイトで理解いたしました)

⑤サブタイプがルミナルAと思われるため、遺伝性の乳がんではないと考えておりましたが、祖母の兄妹に子宮がん(2名)、男性で乳がんに罹患した方がいます。

遺伝性の乳がんについて考える必要はありますでしょうか。

→看護師さんには『(遠い親戚なので)家族歴に入れなくて良い』と言われ、家族歴に記入しませんでした。

(※遺伝性乳がんはトリプルネガティブが多いと理解しましたが、言い換えると、他のサブタイプにも少数存在しているということかな?と思いました)

⑥手術後より、脇のしこりが気になるようになりました。
センチネルリンパ生検を行っておりますので、その影響での腫れや、縫合で皮膚が固くなっているからではないかと思っておりますほか、
Q&Aにて、『術後は皮膚感覚の麻痺が起こるため、それが腫れているように自覚される』
という旨の先生の回答を見つけ(該当の回答を
見つけられず、記憶をもとに書いており、言葉が正確ではないかと思われます)、安心しているのですが、癌によるものではなく、手術の影響と考えてよろしいでしょうか。

→Q&Aの情報等より、現時点での再発を深刻に捉えている訳ではないのですが、ぽっこり膨れている自覚と感触が気になっています。

→また、再発でのリンパ節の腫れと、術後の腋の硬さの区別が自身で分かるものなのか気になりました。

⑦Q&Aで、『 不妊治療がリスクを高めるというエビデンスはない 』という先生の回答を見ました。
その他妊娠中に使用する可能性のある薬(流産を防ぐための薬など)のリスクについてはいかがでしょうか。

⑧次回の診察以降は妊娠優先のため、(予防薬を服用しないという意味で)無治療となりますが、その場合の乳腺科の診察時期の目安を教えて下さい。

(※ホルモン療法をする場合は3ヶ月に1度と見ましたが、無治療ではいかがでしょうか?)
→主治医より指示があると思っておりますが、田澤先生のご意見を参考にさせていただきたいと考えております。

⑨上記の通り、妊娠を強く希望しており、田澤先生のお返事や、主治医とのお話からも、妊娠出産→ホルモン療法の方向で前向きに進めていこうと思っておりましたところ、たまたまネットニュースにて、著名人の方の再発疑いのような記事を目にしてしまい、少し気持ちが揺らいでしまいました。

(ステージやサブタイプは違いますが、術式が同じで、ホルモン療法をされている方の再発疑いで気になってしまいました。)
癌も治療過程も十人十色だと思いますが、妊娠出産し、再発転移なく治療期間を終えた方と、逆に、妊娠期間や治療期間内での再発転移をされた方は田澤先生の感覚ではどのぐらいの頻度でいらっしゃいますか?
(※妊娠出産自体がリスク要因ではないことはこちらで学びましたが、自身にとって都合の良い情報を選びとってしまっており、リスクが見えていない気がして、現状(客観的なご意見)を知りたいと思いました。

※リスクがあってもなくても落ち着いて治療計画や人生に向き合いたいと思います。

※再発への不安についても、著名人のケースは1事例に過ぎないのに、そのインパクトに引っ張られて動揺してしまったことを反省しています)

多くの質問を、また、お忙しいところ大変申し訳ございませんが、
何卒よろしくお願い申し上げます。

また、田澤先生のご意見やこちらのサイトでの知識のお陰で、『分からないこと』への不安が減り、精神的に支えて頂いておりますことに、心より感謝申し上げます。

 

田澤先生から 【回答3】

こんにちは。田澤です。

「①病理結果より、自身のサブタイプ、ステージをルミナルA、ステージⅠと認識しておりますが、あっておりますでしょうか。」
→ルミナールAなのかどうかは「Ki67」の記載がないので不明です。

「詳細を聞いておいた方がよいと思われる点や数値等」
→Ki67の値

「ステージや予後に関係するものは浸潤していた1.5cmのみと理解しているのですが、あっておりますでしょうか。」
→その通り。

「血行性転移と血性分泌は切り離して考えた方が良いのかとも捉えている」
→冷静になりましょう。

 血性分泌と血行性転移は10000000%無関係な話です。(字が似ているだけです。 例えるなら、「牛と牛蛙」のようなものですね)
 ★乳管内病変から出血すると、それが乳管を伝って乳頭からでるだけのことです。

「遺伝性の乳がんについて考える必要はありますでしょうか。」
→ありません。
 そもそも子宮がんは無関係。(関係あるのは卵巣癌です)

「癌によるものではなく、手術の影響と考えてよろしいでしょうか。」
→その通り。

「妊娠中に使用する可能性のある薬(流産を防ぐための薬など)のリスクについてはいかがでしょうか。」
→同様です。

「無治療となりますが、その場合の乳腺科の診察時期の目安を教えて下さい。」
→半年

「妊娠出産し、再発転移なく治療期間を終えた方と、逆に、妊娠期間や治療期間内での再発転移をされた方は田澤先生の感覚ではどのぐらいの頻度でいらっしゃいますか?」
→全く無関係
 ご安心を。