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ホルモン治療の内容、治療期間について

[管理番号:1040]
性別:女性
年齢:28歳
 
 

質問者様の別の質問

質問が新たな内容のため、別の管理番号としました。
質問者様の別の質問は下記をクリックしてください。
管理番号:1128「術後治療について

 
 
宜しくお願いします。28歳、閉経前です。現在、手術(右全摘及びレベル2まで腋窩廓清)を経て、抗がん剤治療CMF6クールが終了したところです。今後、放射線治療を受け、その後にホルモン治療を行う予定です。
【病理診断】
腫瘍径 1.3×1.2×2cm(硬癌)
腫瘍周辺の非浸潤部の広がり 3×1×6cm
断端陰性
エストロゲン・プロゲステロン:いずれも陽性(いずれも8スコア中の6評価)
HER2:0 陰性
Ki67:10%
グレード2
リンパ節転移数:計2個
センチネル:1/1個
レベル1:1/28個
レベル2:0/3個
リンパ管侵襲・静脈侵襲ともに-
サブタイプ:ルミナールA
ステージは2B寄りの2A(T1N1M0)
ルミナールAということもあり、当初、主治医はホルモン治療のみを提案していましたが、私としては、リンパ節転移が2個あったことからも「やれることは全てやっておきたい」という気持ちがあり、抗がん剤・放射線・ホルモン治療の全てを受けることにしました。
なお、CMF6クール中も生理は定期的にきており、終了後現在も生理がある状態です。
質問は、今後受けるホルモン治療についてです。28歳という年齢、今後の出産を強く希望することからも、主治医から提案されているホルモン治療5年を、4年に短縮したいと考えております。
質問①
最近では10年間の服用が推奨されると聞くタモキシフェンですが、服用期間が4年間と5年間では、再発率にどの程度の差が出てくるか。
また、参考までに、3年と5年ではどうか。
質問②
タモキシフェンに加え、リュープリン、更にUFTも並行して服用したいと考えております。
リュープリンについて、2年間と3年間では、3年の方が再発予防効果があるか。一方、4年では、長すぎて弊害があるかどうか。
質問③
ホルモン治療4年間、その後の妊娠・出産、そしてホルモン治療の再開(必要ならば10年でも)、とするように、初めのホルモン治療から2~5年のブランクを経て治療再開する場合に意味はあるか。
以上、宜しくお願い致します。
タモキシフェン4年
しかし、27歳という年齢もあり、今後の妊娠・出産を望んでいます。
質問1)「ホルモン治療のみ」に上乗せして「抗がん剤+放射線治療」をやった場合の再発率の変化はどのくらいでしょうか?
質問2)ルミナールAタイプにはリンパ節転移(1~3個)があっても抗がん剤をしない場合が多いと聞きますが、これは「副作用に見合うだけの効果が無い」ためでしょうか?リンパ節転移があるのに抗がん剤をしないというのは、非常に不安です。
質問3)比較的大人しいタイプと言われているルミナールAですが、抗がん剤をすることで癌の質が悪性に変化したり、耐性がついたりして逆に予後が悪くなる可能性はありますか?
質問4)20代後半という年齢であれば、抗がん剤治療後に生理が戻る(妊娠機能が復活する)可能性は、どのくらいでしょうか?
以上、長文となり大変恐縮ではございますが、何卒宜しくお願い申し上げます。
【相談者名:A】
 

田澤先生からの回答

 こんにちは。田澤です。
 28歳での乳癌治療。お気持ちお察しします。
 pT1c(20mm), pN1, pStageⅡA, luminal A

回答

「抗がん剤治療CMF6クールが終了」
⇒非アンスラ、非タキサンとしたのは「脱毛を避ける」目的でしょうか。
 
「服用期間が4年間と5年間では、再発率にどの程度の差が出てくるか。また、参考までに、3年と5年ではどうか。」
⇒2年間と5年間では6%との報告があります  Swedish Breast Cancer C.G:Journal of the National Cancer Institute, 88(21)1543-1549(1996)
 4年間と5年間、及び3年間と5年間の比較試験はありません。
 
「リュープリンについて、2年間と3年間では、3年の方が再発予防効果があるか。」「一方、4年では、長すぎて弊害があるかどうか」
⇒(2年間投与vs 3年間以上投与の比較試験があります)
 2年間投与と3年間(以上)投与で再発率も生存率にも差が見られていません。
 再発率 (2年投与群:91.8% vs 3年以上投与群:94.1% 有意差なし)
 生存率 (両群とも100%で有意差なし)
 
「一方、4年では、長すぎて弊害があるかどうか」
⇒至適投与期間は定まっていませんが、「長すぎる」ということはありません。
 St.Gallen 2015では専門家のvotingの結果では至適投与期間として「2~3年」が16.7%に対して「5年間」は56.7%という結果なのです。。
 
「初めのホルモン治療から2~5年のブランクを経て治療再開する場合に意味はあるか」
⇒意味はあります。
 別に連続でなくてもいいのです。
 是非「妊娠・出産」後に再開してください。
 
『「ホルモン治療のみ」に上乗せして「抗がん剤+放射線治療」をやった場合の再発率の変化はどのくらいでしょうか?』
⇒「CMFによる上乗せ」は12%です。
 「放射線療法」はあくまでも「局所コントロールからの遠隔転移予防」ですので「データに限り」があります。
 一般的には5%前後と言われています。
 
『「副作用に見合うだけの効果が無い」ためでしょうか?』
⇒その要素もありますが、やはり「ターゲット療法の考え方」が大きいのです。
 「ホルモン感受性有」⇒「ホルモン療法」
 「HER2陽性」⇒「抗HER2療法」
 ♯ターゲット療法ではありませんが、「細胞分裂が盛んである」⇒「(DNA合成や細胞分裂をターゲットとしている)抗がん剤が効き易い(傾向)」
 やはり、この考え方が重要です。
 質問者のような「Ki67=10%」だと、「細胞分裂が少ない」=「抗がん剤のターゲットになり難い」と思います。
 
「リンパ節転移があるのに抗がん剤をしないというのは、非常に不安です。」
⇒気持ちは解りますが…
 リンパ節は「あくまでも局所」であり、(局所療法である)「腋窩郭清や放射線治療」で治療すべきものです。
 「再発予防」はあくまでも「全身因子」であり、別個に考えなくてはなりません。(リンパ節転移は、リスク因子の一つにすぎません)
 
「抗がん剤をすることで癌の質が悪性に変化したり、耐性がついたりして逆に予後が悪くなる可能性はありますか?」
⇒そのような事はありません。
 
「20代後半という年齢であれば、抗がん剤治療後に生理が戻る(妊娠機能が復活する)可能性は、どのくらいでしょうか?」
⇒60%以上(80%位?)は戻る(化学療法閉経にならない)と思います。
 アルキル化剤(シクロフォスファミド)が最も大きな影響があります。
 40歳以上では80%程度で化学療法閉経となりますが、40歳以下では40%となります。
 ★20歳代でのデータはありませんが、「戻る確率の方が高い」のは間違いありません。