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脈管侵襲について

[管理番号:2345]
性別:女性
年齢:44歳
田澤先生、ご無沙汰しております。
昨年6月、抗がん剤を受けたほうがいいかどうかで、セカンドピニオンに伺った者です。
田澤先生の経験に裏打ちされたご意見を伺ううちに、抗がん剤に対する不安が不思議と消え、前向きに治療に取り組もうという気持ちになりました。
今後に希望を見いだせなかった時期にこのサイトにたどり着き、さらに先生に実際お会いしたことで、精神的にとても救われました。
先生には感謝してもしきれません。
その節は本当にありがとうございました。
抗がん剤はほとんど副作用が出ないまま昨年末で無事終わったため、先生に質問する機会がなかなかありませんでしたが、ここに来て気になることが出てきたので、よろしくお願いいたします。
最近では管理番号2184番「補助治療について」の質問者様の回答にもあるように、先生はこちらのサイトでたびたび「脈管侵襲はそれほど気にする必要がない」と書かれているかと思います。
ただ、私がセカンドオピニオンを受けた時に抗がん剤を受けたほうがいいか、受けるとすれば主治医から提示されたレジメン(AC→weeklyPTX)は適切かどうかを伺ったところ、「脈管侵襲が高度(リンパ管侵襲:3、静脈侵襲:2)だから」ということで、先生は主治医の意見に賛同されていました。
私の場合、手術前は画像上では乳頭付近と脇にしこりが2つあるものの、その大きさは最大でも1センチと言われていました(主治医の触診でもしこりは認識できませんでした)。
それが病理の結果、2つのしこりの間も浸潤していたことが判明し、ステージが3となってしまいました。
Ki67は23.3%、リンパ節への転移は2個なので、リンパ節の転移4個以下のルミナルAです。
そういった意味では管理番号2002番「抗がん剤をやった方がいいのか迷っています」の質問者様と非常によく似た状況だと思いますが、2002番の質問者様はTCのみで、私にはAC→weekly PTXを勧められたのは、やはり脈管侵襲が理由でしょうか?
他の方の病理結果を見ても脈管侵襲がないほうが大多数なため、今さらながら遠隔転移や再発に対する不安が高まっています。
お忙しいところ申し訳ありませんが、ご回答願います。
尚、10年生存率などの具体的な数字はあまり知りたくありませんので、ご配慮いただけると幸いです。
何卒よろしくお願いいたします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
『「ただ、私がセカンドオピニオンを受けた時に抗がん剤を受けたほうがいいか、受けるとすれば主治医から提示されたレジメン(AC→weekly PTX)は適切かどうかを伺ったところ、「脈管侵襲が高度(リンパ管侵襲:3、静脈侵襲:2)だから」ということで、先生は主治医の意見に賛同されていました。』
⇒この辺のところは微妙なところはどうしてもあります。
 Luminal typeで抗がん剤を使用する際には、基本「TC」としています。
 ただし「有る程度のリスク」の場合にはアンスラタキサン(AC→weekly PTX)のようなレジメンを勧めるのです。
 この線引きは、勿論決まったものが有るわけでは無く、「私自身の中にもグレーゾーン」があります。
 その場合、「予め主治医が勧めている内容があれば、それに引っ張られる」のも実情なのです。
 
「Ki67は23.3%、リンパ節への転移は2個なので、リンパ節の転移4個以下のルミナルAです。」「管理番号2002番の質問者様と非常によく似た状況だと思いますが、2002番の質問者様はTCのみで、私にはAC→weekly PTXを勧められたのは、やはり脈管侵襲が理由でしょうか?」
⇒ここに関しては「Grade1」と「Ki67 5%以下」が大きいです。
 やはり「大人しそうな印象」となり、「積極的に抗がん剤が効きそう」というイメージからは遠いのです。
  
「他の方の病理結果を見ても脈管侵襲がないほうが大多数なため、今さらながら遠隔転移や再発に対する不安が高まっています。」
⇒脈管侵襲は「予後因子として確率されていない」ものなので「参考程度に留める」べきです。
 
 ○質問者の場合には「アンスラタキサン」を行い、ホルモン療法の長期投与を行う事で「やるべき事はやりきっている」わけです。
 「やるべき事をやっていない不安」とは全く異なるのです。前向きに行きましょう。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

田澤先生、先日は質問に回答していただき、ありがとうございました。
元プロ野球選手の松井秀喜さんは、物事を自分でコントロールできることと、できないことに分けて考え、できないことに関心を持たないようにしているそうです。
また、宇宙飛行士の古川聡さんも、自分がコントロールできないことを心配しても仕方がない、自分がコントロールできることをやればいい、と著書で述べていました。
先生がおっしゃる通り、私は自分ができることをすべてやり切ったので、後は「人事を尽くして天命を待つ」しかないのでしょうね。
再発や転移への不安で頭をいっぱいにしながら毎日を過ごすのは、せっかく助かった命を無駄にしている気もしますし、このサイトを見る以外はなるべく病気のことを考えないようにします。
ということで、今私ができることといえば、定期検診を真面目に受けることだと思いますが…先日、主治医に今後のスケジュールを尋ねたところ、1年に1回、CTとマンモ、エコーを行うと言われました。
CTとマンモはともかく、エコーだけは3か月に1回やってほしいとお願いしましたが、「そんなにやっても意味がない」とのことです。
局所再発や対側の胸に発症した場合、今度こそ早期発見するためにも、
エコーをせめて半年に1回はやってもらいたいのですが、先生はどう思われますか?
ちなみに、主治医は先生とかなり考えが似ている点が多く(温存以外の術前化学療法には絶対反対、診察~エコー~手術をすべて行う、術前検査で骨シンチやMRIをやらない、不必要に抗がん剤を勧めないなど)、
当初はあまり詳しい説明をしないことに不満がありましたが、今ではすっかり信頼しています。
ご多忙中何度も申し訳ありませんが、ご回答願います。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
「元プロ野球選手の松井秀喜さんは、物事を自分でコントロールできることと、できないことに分けて考え、できないことに関心を持たないようにしている」
「また、宇宙飛行士の古川聡さんも、自分がコントロールできないことを心配しても仕方がない、自分がコントロールできることをやればいい」
⇒とても納得のいく話ですね。
 大変共感できます。
 是非、「乳癌の再発リスクで悩んでいる多くの方達」への処方箋とさせてもらいます。 
 
「先生がおっしゃる通り、私は自分ができることをすべてやり切ったので、後は「人事を尽くして天命を待つ」しかないのでしょうね。」
⇒その通りです。
 
「1年に1回、CTとマンモ、エコーを行うと言われました。」
⇒CTは不要です。
 また、質問者は「3カ月に1回、タモキシフェンを処方されている」わけですから、
その都度「エコー」すればいいと思います。
 担当医は「手間を惜しんでいる」ようです。
 
「局所再発や対側の胸に発症した場合、今度こそ早期発見するためにも、エコーをせめて半年に1回はやってもらいたいのですが、先生はどう思われますか?」
⇒勿論です。
 「3カ月に1回(処方で)通院している」のに「早期発見ができなかった」としたら、大問題です。
 
「ちなみに、主治医は先生とかなり考えが似ている点が多く(温存以外の術前化学療法には絶対反対、診察~エコー~手術をすべて行う、術前検査で骨シンチやMRIをやらない、不必要に抗がん剤を勧めないなど)、」
⇒確かにそうですね。
 考え方の根本には「治療の基本は手術」にあり、「手術行う者は、全ての診療を自ら行う」という昔ながらの「外科医の教え」(私が研修医時代に指導医から叩きこまれたものです)です。
 昨今は「抗がん剤に偏って、手術技術がおろそか」になっているように思います。