[管理番号:4873]
性別:女性
年齢:51歳
こんにちは、昨年温存手術を受けて以来毎日このサイトで勉強させてもらっています。
そこで気になったことですが、リンパ節転移はあくまでも局所再発として治療すれば問題ないとおっしゃっていますが、それならばどうして遠隔転移にリンパ転移があるのですか。
リンパ節に転移してしまったらいつかは遠隔転移がおこるのではないのですか。
私は幸い非浸潤癌だったので今のところ無縁ですが、将来リンパ節転移したらと不安だったので質問しました。
またリンパ節転移のレベルもそれほど気にする必要はないのですか、あくまでも局所再発なのでどのレベルでも手術してしまえば結果は同じなのですか。
よろしくお願いします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
リンパ節転移はリンパ行性(リンパ管を通って)の転移であり、「乳腺」⇒「レベル1」⇒「レベルⅡ」⇒「レベルⅢ」⇒「鎖骨上や胸骨傍」などと必ず連続して起こります。
それは、リンパ管には「リンパ節」という「外敵処理装置」が付いているからです。つまり「細菌や癌細胞もここで捕まる」のです。
それに対して遠隔転移は血行性(血管を通って)の転移なので、血管にいったん入ってしまえば、(リンパ節のように何処かで捕まることもなく)あらゆる臓器に入り込むチャンスがでてくるわけです。
上記2つを一緒にしても無意味だと解りましたか?
「リンパ節に転移してしまったらいつかは遠隔転移がおこるのではないのですか。」
⇒それでは、質問者にお聞きしますが…
リンパ節転移のあった患者さんが「全て遠隔転移再発」しているとお思いですか??
常識的に考えれば解ることです。
「リンパ節転移」はあくまでも「予後因子(言い換えれば、遠隔転移のリスク因子)」なのです。
♯リスク因子というのは、直接「リンパ節転移から遠隔転移を引き起こす」わけではなく、統計学的に「リンパ節転移を起こした患者さんの方が、転移の無い患者さんよりもステージが高いのだから、結局血行性転移の割合も高くなる」そういうことです。
♯♯当然ながら「リンパ節転移があっても遠隔転移しない患者さんも大勢いる」
し、逆に「リンパ節転移がなくても遠隔転移する患者さんもいる」わけです。あくまでも統計学的に調べれば、有意差があるので「リスク因子と呼ばれる」わけです。
「それならばどうして遠隔転移にリンパ転移があるのですか。」
⇒これも「リスク因子」の考えの延長です。
☆鎖骨上リンパ節は一時期、遠隔転移と規約上されましたが、現在は「遠隔転移から外されています」(胸骨傍リンパ節も同様)
それよりも「遠いリンパ節」は遠隔転移に便宜上分類されますが、それは「予後因子として、そこまで遠くまで転移すると遠隔転移と同様にみなしては?」という考え方です。
しかし、実際は「縦隔リンパ節」も的確な放射線照射により十分コントロール可能であり、「本物の遠隔転移とは、予後が異なる」ことは実感しています。