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ルミナールAの術後治療について

[管理番号:6220]
性別:女性
年齢:44歳
I D○○の○○です。
来週、先生の執刀で手術を受ける者です。
乳がんについて学ぶと、「これをすれば100パーセントこうなる」というものがない中、自分が統計上のどの数字の中に入るのか、不安を抱える方が大勢いると思います。
私もその一人です。
このコーナーの先生の膨大な経験と、根拠に基づく回答が、どれだけ不安の解消につながっているか、日々感謝しております。
針生検の結果: ER90%+、PGR90%+、 HER2+1(陰性)、
Ki67 16.5%
手術前で、病理結果がわからないので、はっきりしたサブタイプはまだ不明ですが、ルミナールAの可能性は高い、と思っております。
ルミナールAだと、抗がん剤の再発率低減の上乗せ効果はほとんどない、ということをガイドラインや、ここのQ&Aで学びつつあります。
ただ、遠隔転移再発した場合は、ルミナールAであっても、抗がん剤を治療に用いることが多いと思います。
また、実際に、抗がん剤で腫瘍の勢いが弱まったりもする、と思います。
なぜ、目に見えない段階では、
上乗せ効果はほとんどないにもかかわらず、目に見える腫瘍になってきた場合は、勢いが弱まったりするのか、その仕組みをどう考えたらよいか、わからずにおります。
また、最近、オンコタイプDXの会社が行った追跡調査で、リスク11から25の場合、ホルモン療法に抗がん剤を併用すると、有意に再発率が下がる、という調査結果を目にしました。
11から25の中には、ルミナールAタイプの方も含まれると思いますが、これは、同じルミナールAの中でも、抗がん剤の上乗せ効果がある人とない人がいる、ということなのでしょうか。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
「なぜ、目に見えない段階では、上乗せ効果はほとんどないにもかかわらず、目に見える腫瘍になってきた場合は、勢いが弱まったりするのか、その仕組みをどう考えたらよいか、わからずにおります。」
⇒術後の患者さんを3群にわけて考えると解ります。
1群:抗癌剤をしなくても再発しない群
2群:抗癌剤をしなければ再発するが、抗癌剤をすることで再発を逃れる群
3群:抗癌剤をしても(結局)再発する群
 ルミナールAを「上乗せ3%」、ルミナールBを「上乗せ15%」とすると、どうなるか?(ルミナールBで抗癌剤をすることでルミナールAとほぼ同じ再発率に改善するという前提)
 ルミナールA
 1群:87%
 2群:3%
 3群:10%
 ルミナールB
 1群:71%
 2群:15%
 3群:14%
 お解りでしょうか?
 つまりルミナールAでは、「そもそも2群が少ない集団」と考えればいいのです。
 それでは「再発した場合に何故抗癌剤が効くのか?」
 これは3群を良く考えれば解ります。
 3群は(抗癌剤が全く効かないわけではなく)「ある程度効くけれど、根治にはならない(少量は残存してしまう)」群なのです。
「また、最近、オンコタイプDXの会社が行った追跡調査で、リスク11から25の場合、ホルモン療法に抗がん剤を併用すると、有意に再発率が下がる、という調査結果を目にしました。」
⇒これは誤りです。
 以下のような訂正が出ています。(私が指摘しました)
【3月25日に重要な訂正しました】
Oncotype DX乳がん検査、約10,000人が参加した臨床試験結果が近日公表予定
 
 

 

質問者様から 【質問2 オンコタイプdx検査でわかることについて】

性別:女性
年齢:44歳
わかりやすく、非常に明確な答えに感謝いたします。
霧が晴れたような気持ちです。
教えてくださった、三群を見ていったときに、自分が87人に入るのか、
3人に入るのか、10人に入るのか、は、現代の医学ではわからない領域だと思います。
ただ、、、そこで再度質問したい、と思ったのが、オンコタイプdx の検査でわかること、についてです。
検査会社のサイトは一通りチェックし、先生のコラム、98回、99回、100回のところもチェックしたのですが、どうも、「オンコタイプdxで示されうること」、と、ルミナールa と bの化学療法の上乗せ効果について、が、、、、まだよく理解できずにいます。
今週のコラム 98回目 ♯このグレーゾーンを「AとBに分ける」ためにOncotypeDXがあるのです。
今週のコラム 99回目 ★グレードは「参考程度」ということでいいですね?
今週のコラム 100回目! 「若いから」抗ガン剤をしましょう。は過ちなのです。
先生のQ&Aコーナーを読むと、サブタイプが、ルミナールaかbか迷う、、つまり化学療法すべきか?の判断をする場合にオンコタイプdx検査をし、その化学療法上乗せ効果の数値を参考にすることが多いとわかります。
私の質問は、、「オンコタイプdx で示される再発リスク、化学療法上乗せ効果の数字」と、先生が示してくださった「ルミナールaの三群のどこにその人が入るのか?」が、ある程度は、検査でわかるリスク数値と相関しうるのでしょうか。。?ということです。
つまり、ルミナールa であっても、上の三群のうちの、3人に入る可能性が、オンコタイプdx をした場合に、ある程度は化学療法の上乗せ効果として、示されうるのでしょうか?ということです。
その3人にとって化学療法は、「やるべき選択肢になりうる」、と思うのですが、、オンコタイプdx では、ルミナールa に対しては、まだそこまでのリスク予測の精度は期待できないのでしょうか。
通常の術後の病理結果だけだと、ルミナールaと判断されたまま、(実は「化学療法の効果がある」とは知らないまま)上の3人の群に入ってる可能性があるけど、、もしも、この群に入ってる3人がオンコタイプdx してみたら、「あなたは実は、化学療法の恩恵を受けるタイプの人です、実はルミナールbのように治療した方がいいタイプだったから化学療法しましょう」と解釈されうる場合はありますか?
もともと、病理結果だけだとルミナールaにしかならないが、オンコタイプdxみたいな、より詳しい遺伝子検査では、やっぱりルミナールbに選別される、という人が、病理結果のルミナールa には3人くらい混じっている、ということなのでしょうか。
それとも、病理結果ではなく、遺伝子検査的にも、ルミナールaが確実である100人の人がオンコタイプdx したとしても、自分が上の3人の中に入ってるかどうかは一律にわからないまま、「化学療法したら、もしかしたら、3パーセントの上乗せあります」として全員に示されるだけで、あくまで「100人中の一人一人がその3パーセントをどうとらえるか?」ということだけなのでしょうか?
リスク値でいうと、0~11、11~25、までが、化学療法の上乗せが少ないタイプと判定されるようですが、、上の3人は、化学療法の意味がある群ではあるものの、オンコタイプdxしても、やはり、25以下に含まれる人たち、という解釈になるでしょうか。
オンコタイプdx をよく理解していないので、、混乱した、非常に的外れな質問かもしれませんが、、、、どうぞよろしくお願いいたします。
現在、私は、術後の病理結果も出て、ki67 も変わらず16パーセントということで、サブタイプはルミナールa と考えていますが、自分の癌細胞の再発率と、化学療法の上乗せ数値を知りたい、と思い、オンコタイプdx検査をオーダーすることにしました。
今回、検査について理解を深めたく、質問させていただきました。
(追伸)
先日は、手術していただき、本当にありがとうございました。。!
全摘でしたが、すぐ回復して、翌日退院できたことに私も家族も、周囲のみんなも驚いています。
田澤先生でなかったら、ありえなかったことです。
感謝しかありません。
ありがとうございました。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
メール内容を読みました。
「考えれば考えるほど」一見、矛盾しているように感じるのかもしれませんね。
○そもそもの解釈に誤解の根源があるようです。
抗癌剤が効く群をB、効かない群をAに分けた。 そんな単純な話ではないのです。
そもそものintrinsic subtypeは496個のintrinsic gene setの発現をクラスター解析して分類しただけなのです。 トップページの「乳がんの分類」の「Ⅲ intrinsic subtype」を参照のこと
人間の遺伝子の総数が二万五千あるとすれば、そのうちの極僅かの遺伝子の発現パターンだけで、全てを解釈することは無論できないのです。
これは21遺伝子(がん関連遺伝子16と対照遺伝子5)の発現を用いてRSを決めるOncotypeDXではもっと顕著といえるでしょう。
ものごとは全てそうですが、「再発する群」と「再発しない群」に分けることは不可能だし、「抗癌剤が効く群」と「抗癌剤が効かない群」に100%分ける事は不可能なのです。(多くの因子のうちの、ごくわずかでの評価だから)
☆実際には「抗癌剤が効くルミナールA」も「抗癌剤が効かないルミナールB]も存在します。
 ただ、それは統計学的にみれば(6220での例で言えば)5倍の差があること。
(全ての遺伝子を調べているわけではないので、それ以上のことは言えないのです)
我々専門家として言うべきは
 「抗癌剤もひょっとしたら効くかもしれない」という「何でもあり」ではなく、
  (今まで行った検査からは)「あなたは抗癌剤は効きにくい群に入ります」という(現時点で解っている中での客観的な評価を言ってあげることなのです)