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抗がん剤について

[管理番号:2409]
性別:女性
年齢:62歳
母の乳癌について質問をお願い致します。
62歳閉経しております。
ホルモン受容体マイナス HER2陽性3 リンパ転移なし 他転移なし ステージ1b . ki67は35です。
非浸潤癌との診断を受け左側広範囲で、全摘致しました。
今日、退院後病理検査の結果を聞きに行きました所、浸潤9ミリがあるとのことでした。
ハーセプチンとTCの抗がん剤治療の説明がありましたが、9ミリの大きさ故に抗がん剤治療を受けるかをご自身で選択するようにとのことです。
ステージ1b から見れば、転移は可能性として低い話、説明は一通り受けて参りましたが、決められません。
○ステージ1bとはいえ、HER2陽性3を持っていることが1番心配です。
HER2はそんなにいけないものなのでしょうか。
転移率は20パーセント切ると説明がありました。
この数字をどう捉えたらよいのかわかりませんでした。
○可能性として抗がん剤を避けて他には治療法はないのでしょうか。
セカンドオピニオンさせていただいてもこの提案のみになるのでしょうか。
○浸潤9ミリというのは医学的立場から見てどう捉えたらよろしいでしょうか。
○偏頭痛があり、体型も165センチ47キロと痩せております。
抗がん剤は通院で行うのですが、抗がん剤による症状の説明はありましたが、過去に妊娠中悪阻が酷かったタイプで入院したりしていました。
この治療の際にも体力的食事もできなくなり入院したりすることもありますか?
また抗がん剤治療をして順調に終わったとしても免疫機能の低下によりほか重篤な病気にかかってしまう可能性はありますか?治療を受けるにあたり可能性があることは知っておきたいと考えております。
浸潤によって体内に巡っているであろう全ての癌細胞をする必要があるのは1センチからといわれましたが、この1ミリの差をどう捉えたら納得できるのかお力おかりできましたら幸いです。
誰にも癌細胞はあるもので、免疫機能により消滅するとテレビ番組などでお医者様から説明がありますが、母の場合そういう話ではなくきちんと治療すべきなのかという堂々巡りで腹が座らない状況です。
御意見を伺いたく長文となりましたが、
お忙しい中大変申し訳ございません。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
pT1b(9mm), pN0, pStage1, HER2 type
「ハーセプチンとTCの抗がん剤治療の説明がありましたが、9ミリの大きさ故に抗がん剤治療を受けるかをご自身で選択するようにとのこと」
⇒非常に正しい診療です。 完全に私も同意見です。
①抗HER2療法の適応は
腫瘍径≦5mm 適応なし
5mm<腫瘍径≦10mm 適応を考慮する★
10mm<腫瘍径 絶対的適応
以上、NCCNのガイドライン(乳癌学会でもおおむね以上の推奨です)
②抗HER2療法には
「golden standard」 アンスラサイクリン⇒タキサン+HER⇒HER単剤
「非アンスラサイクリンレジメン」 低リスクへの対応
・TC+HER⇒HER単剤★
・weekly PTX+HER⇒HER単剤
・TCH(この場合のCはカルボプラチン)
がありますが、質問者は「明らかな低リスク」といえ、「非アンスラサイクリンレジメン」の適応と思います。
その中でTC+HER⇒HER単剤★を勧められていますが、十分な妥当性があります。
「○ステージ1bとはいえ、HER2陽性3を持っていることが1番心配です。」
⇒心配する必要は全くありません。
ただ「抗HER2療法」は「乳癌治療、最大にして最良の治療」なのです。
「HER2はそんなにいけないものなのでしょうか。」
⇒「pT1b」で心配する必要は全くありません。
「転移率は20パーセント切ると説明がありました。この数字をどう捉えたらよいのかわかりません」
⇒何も治療をしなければ「26%程度の再発率」が抗HER2療法を行う事で(半減し)
「13%」程度にはなります。
これは「かなり強力な数字」と言えます。
「○可能性として抗がん剤を避けて他には治療法はないのでしょうか。」
⇒ありません。
「ハーセプチン単剤」は決して勧められません。
「セカンドオピニオンさせていただいてもこの提案のみになるのでしょうか。」
⇒他の「非アンスラサイクリンレジメン」か、場合によっては「golden standard」の提案をされるかもしれません
それ以外には「無治療」と「ハーセプチン単剤」がありますが、それらは「決して選択すべき」ではありません。
「○浸潤9ミリというのは医学的立場から見てどう捉えたらよろしいでしょうか。」
⇒十分な低リスクです。
「この治療の際にも体力的食事もできなくなり入院したりすることもありますか?」
⇒それはないでしょう。
ただし、「副作用が気になる」のであれば、「weekly PTX+HER⇒HER単剤」をお勧めします。
この方向ならば「副作用が無い事に拍子抜け」するでしょう。
「また抗がん剤治療をして順調に終わったとしても免疫機能の低下によりほか重篤な病気にかかってしまう可能性はありますか?」
⇒ありません。
考えすぎです。
「浸潤によって体内に巡っているであろう全ての癌細胞をする必要があるのは1センチからといわれましたが、この1ミリの差をどう捉えたら納得できるのかお力おかりできましたら幸いです。」
⇒その考え方は、「単純化しすぎ」です。
「誰にも癌細胞はあるもので、免疫機能により消滅するとテレビ番組などでお医者様から説明」
⇒そういう「一般論」はこの場合には当て嵌まりません。
そのような「無責任」な情報ではなく、きちんと「現実に直面」した「統計的に整備された」科学的根拠で治療方針は決めるべきです。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

先生、お世話になります。
先日はありがとうございました。
的確にアドバイスいただいたことで、背中を押された気持ちで治療することを決意
致しました。
今日は提示された治療法の選択について質問させてください。
先日のご回答で
以下回答原文コピー
「非アンスラサイクリンレジメン」 低リスクへの対応
・TC+HER⇒HER単剤★
・weekly PTX+HER⇒HER単剤
・TCH(この場合のCはカルボプラチン)
ただし、「副作用が気になる」のであれば、「weekly PTX+HER⇒HE
R単剤」をお勧めします。
この方向ならば「副作用が無い事に拍子抜け」するでしょう。
と、以上の通り回答がございました。
TCとweeklyでどちらにすべきか…もちろんプラスHERです。
これらの決定的な違いは、投薬回数、副作用以外にはございますか?
ほか、理解しておくべき事項はございませんか?
効果は同、投薬回数に違い、副作用の周期も同じだが、weeklyメリットは副作用の軽減で一回の投薬が少ない分回数は多いが体への負担が少ないことだと認識しております。
田澤先生のお言葉にあるように、比べると拍子抜けするくらい体へ負担が少ないならば病院が近いため通院回数が増えても、こちらを選択したいと考えております。
現在通院している病院では、TCが主流で希望えればweeklyへ変更可能とされなんとなくTC押しにとれるのですが、
決定的な違いがわからず、昔はweeklyが主流だったが、TCの方が新しい治療法でこちらが主流だと伺い、何を持ってTCが主流になったのか、疑問で決めかねております。
宜しくお願い致します。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
「これらの決定的な違いは、投薬回数、副作用以外にはございますか?」
⇒ありません。
 
「ほか、理解しておくべき事項はございませんか?」
⇒この2つの方法は「直接対決が無い」ので、どちらが優れているという直接証拠は
ありません。
 
「田澤先生のお言葉にあるように、比べると拍子抜けするくらい体へ負担が少ないならば病院が近いため通院回数が増えても、こちらを選択したいと考えております。」
⇒間違いなく、その方が「確実に治療を完遂」できます。
 
「現在通院している病院では、TCが主流で希望えればweeklyへ変更可能とされなんとなくTC押しにとれるのですが、決定的な違いがわからず、昔はweeklyが主流だったが、TCの方が新しい治療法でこちらが主流だと伺い、何を持ってTCが主流になったのか、疑問で決めかねております。」
⇒直接対決はありません。
 効果には「それ程の差は無い筈」です。