[管理番号:6077]
性別:女性
年齢:37歳
田澤先生
はじめまして。
よろしくお願いいたします。
昨年末に乳癌がわかり、先月、左乳房全摘と術中のセンチネルリンパ節の簡易生検に2㎜以下の転移があったため、左腋窩リンパ節郭清を行いましたが、こちらには転移は見られませんでした。
先日、病理結果が出たのですが、今後の治療について悩んでおります。
まず、病理結果ですが
・浸潤性乳管癌(充実腺管癌>乳頭腺管癌>硬癌)
・浸潤径:3.2cm
・核グレード2(核異型、核分裂像 共に2)
・リンパ節転移有り(微小転移:センチネルリンパ節1.2㎜)
・リンパ管侵襲、静脈侵襲ともに認められる
・切除断片は癌陰性
・サブタイプ:ルミナルAとBの中間(と主治医から言われました)
→ホルモン受容体: ER、PgR共に陽性 中等度(10%以上との記載)
→HER2: 陰性(1+)
→ki67: 20~30%
この結果で
ki67の値をルミナルAと判断するなら、ホルモンのみ。
ルミナルBと判断するなら、化学療法を追加すべきで、主治医からはどうしたいか選択するよう言われました。
化学療法はAC療法かCMF療法とのことです。
オンコタイプDXも進められましたが、高額なので、あまり視野には入れてません。
質問①
田澤先生は、この病理結果に化学療法をするべきと思われますか?また、薬は何を選択されますでしょうか?
それから、私のしこりは手術前の検査では7cm~8cmと言われており、ステージは2b、または3aとのことでした。
切除した実際の浸潤径は3.2cmで、実寸では3.5×3.0×2.0cmでした。
主治医からは癌以外の腫瘍があったのと、検査液で縮んだのだろうと言われました。
質問②
主治医の見解で間違いないのでしょうか。
また、ステージも変わるのでしょうか。
主治医以外の専門医の考えをお伺いしたく、こちらで質問させていただきました。
なにとぞ、よろしくお願い申し上げます。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
「質問① 田澤先生は、この病理結果に化学療法をするべきと思われますか?また、薬は何を選択されますでしょうか?」
⇒グレーゾーンだからOncotypeDX勧めます。
それをしないのであれば、(Ki67=20~30%では、ルミナールAの確率の方が高いので)化学療法を強く勧めることはありません。
「質問② 主治医の見解で間違いないのでしょうか。」
⇒画像診断と病理診断での浸潤径が違うのは「寧ろ当たり前(同じになる方が、かなりの偶然と言えます)」です。
「また、ステージも変わるのでしょうか。」
⇒pT2, pN1mi, pStage2Bとなります。
質問者様から 【質問2 】
局所再発と胸骨傍リンパ節転移疑いの治療内容
性別:女性
年齢:38歳
病名:
症状:
以前ご回答いただいた際はありがとうございました。
初発時、後悔しないためにとAC療法4クールを行うことを選択し、その後、タモキシフェンとリュープリン(半年毎)を行っておりました。
しかし、手術からわずか11か月でしこりを見つけ、局所再発が発覚しました。
その際、転移などを確認するためPET検査を申し出て行った結果、胸骨傍リンパ節にわずかに光っているものがあったのですが、エコーでは確認出来ず「転移疑い」となりました。
再発後の治療は、まず腫瘍摘出術を行いました。
その際、胸壁の左下辺りから胸骨に向かって三角状に切除し、転移の通り道の確認をしたとのこと。
病理結果は
切除 6×4×2.5cm
浸潤径 1.8×0.8×1.2cm
脈管侵襲なし
断端陰性
核グレード 1(核異型スコア:2 核分裂像スコア:1)
Ki67 : 30~40%
エストロゲンレセプター:陽性
プロゲステロンレセプター:陰性
術後は左胸、鎖骨、胸骨に当たるように放射線を全30回終えて、現在はTC療法4回を行っております。
質問①
局所再発+胸骨傍リンパ節転移疑いの治療として、摘出術→放射線治療→化学療法(TC療法)→ホルモン療法 で充分なのでしょうか?
化学療法は1種類4クールのみで良いのでしょうか?
質問②
プロゲステロンレセプターが初発時は陽性でしたが、陰性になったことについて、何か理由はあるのでしょうか?
質問③
ホルモン療法の薬剤について、主治医からは「タモキシフェン+リュープリン」or「アリミデックス+リュープリン」と言われてます。
タモキシフェン服用中の再発ではありますが、38歳という年齢からすると閉経前向けの薬の方が良いのでしょうか?
また、他に効果を期待できる薬剤はありますでしょうか?
質問④
転移疑いの部位が心配なのですが、今後の検査は何をどの位の頻度で行うのが望ましいのでしょうか。
何卒よろしくお願いいたします。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
局所再発してしまったことは大変残念ですが、主治医がきちんと手術を行ったことはとても幸いでした。(このようなケースでも平気で「再発は手術しても仕方がないから、ゼローダ内服を」的な医師が如何に多いか!!)
「質問① 局所再発+胸骨傍リンパ節転移疑いの治療として、摘出術→放射線治療→化学療法(TC療法)→ホルモン療法 で充分なのでしょうか?化学療法は1種類4クールのみで良いのでしょうか?」
→ここはガイドラインの存在しない領域であり、(私にも)確信できるところはありません。
無論、局所再発なのだから「局所療法だけでよい(手術±放射線)」という考え方はあります。
ただ、患者さん側が(不安で)積極的に全身療法を追加したいならば、
最近の私の肌感覚でいうと
1.(術後にアンスラサイクリンをしているのだから)化学療法をするとしたら「タキサン」となります。
→私だったら(同じタキサンでも)bevacizumab + paclitaxel3か月としますが、TCも(無論タキサンだから)ありです。
2.抗がん剤治療後のホルモン療法ですが…
→私だったら「palbociclib + Fulvestrant」とします。
「質問② プロゲステロンレセプターが初発時は陽性でしたが、陰性になったことについて、何か理由はあるのでしょうか?」
→気にするポイントでは全くありません。(プロゲステロンは標本の染色性の問題でしょう)
「質問③ ホルモン療法の薬剤について、主治医からは「タモキシフェン+リュープリン」or「アリミデックス+リュープリン」と言われてます。」
→アリミデックス+リュープリンは適応外診療なので辞めましょう。『今週のコラム 136回目 決して適応外診療を勧めることはありません。今回のガイドラインの記載には正直、迷惑であり驚いています
』を熟読ください。
「他に効果を期待できる薬剤はありますでしょうか?」
→質問①の回答2を参照のこと
「質問④ 転移疑いの部位が心配なのですが、今後の検査は何をどの位の頻度で行うのが望ましいのでしょうか。」
→おそらく(記載はありませんが)腫瘍マーカーの上昇は無いと思います。(局所再発では通常上がりません)
そうすると画像診断ですが…
(腫瘍マーカーを3か月毎にとって、正常値であることを確認の上であれば)半年に1回でいいでしょう。(PET)