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センチネルリンパ節微小転移と抗がん剤

[管理番号:5983]
性別:女性
年齢:40歳
妻が昨年12月に乳ガンと診断されてから、このHPで色々な知識を吸収させていただいております。
ありがとうございます。
妻は、昨年10月に検診で要精密検査となり、11月に針生検で早期の乳ガン(浸潤径6ミリ)と診断されました。
12月末に手術(乳房温存術)を受け、術中のセンチネルリンパ生検でも陰性という事で、ひと安心しておりましたが、1月の病理検査の結果報告書で、センチネルリンパ節(1/5)に1ミリの微小転移が発見されました。
以下は病理検査報告書の内容です。
硬癌 ER(強陽性、ほぼ全ての細胞) PgR(強陽性90%) HER2(陰性)
pT1b(浸潤径6ミリ) グレード3 ly or v:+,g
Ki67-28% ルミナ-ルB 断端(垂直方向で乳管内進展部分が近接しているようですが、術中に十分意識して対応しており、取りきれているとの説明がありました) センチネルリンパ節(1/5に1ミリの微小転移あり)
主治医からは術後治療として、放射線治療(微小転移があり腋下まで照射)、その後抗がん剤(TC療法)+ホルモン療法、を行っていくと説明されております。
 
そこで、先生に質問させていただきたいのですが、
①センチネルリンパ節微小転移という事実は予後にどの程度影響するのでしょうか。
妻は主治医から乳ガンはタンポポの種と同じなどという説明をされ、微小転移=遠隔転移の可能性大と考え、必要以上に怯えております。
②抗がん剤は必ずしもこの状況で必要とされるのでしょうか。
グレードや微小転移の事実をもって、6ミリという腫瘍径関係なしに顔つきが悪い=抗がん剤と判断されているようですが、やや違和感があります。
主治医からはオンコタイプDXの説明は全くありませんが、こちらから提案してでもオンコタイプDXを受ける価値はあるのでしょうか。
以上、お忙しい中ではありますが、ご回答よろしくお願いいたします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
このメール内容に関して指摘したいことは以下の4点
1.微小転移は「予後に影響ない」
2.微小転移では「追加郭清」も「腋窩照射」も不要(それらが、「生命予後」だけでなく、「局所制御」にも無意味であることが乳癌ガイドラインの推奨度C2でも確認できます)
3.質問者の場合には(郭清省略されているとはいえ)実質「センチネルリンパ節として(何故か)5個もリンパ節を取っている」ので、実質(中途半端な)腋窩郭清されているので、そこに「腋窩照射」をすることは「腋窩浮腫のリスク要因」となります。
4.Ki67=28%はグレーゾーンであり『今週のコラム 101回目 (Ki67が20代はluminal Aの可能性が圧倒的に高く)本当に「Aなのか、Bなのか迷うのは30代以降」と言えるのです。』をご覧になれば、むしろ「ルミナールAの可能性の方が高い」
「放射線治療(微小転移があり腋下まで照射)」
⇒腋窩照射は勧められません。
 上記3を参照
「①センチネルリンパ節微小転移という事実は予後にどの程度影響するのでしょうか。」
⇒全く影響ありません。
 上記1を参照
「微小転移=遠隔転移の可能性大」
⇒全く「無意味な心配」です。
 そもそも、「リンパ節転移」と(質問者が心配している)「遠隔転移」を混同する事自体に誤りがあります。
 両者には直接の関係はないのです。
 それらのことを、今回の「今週のコラム」にも取り上げましたが、「転移再発」として数回にわたし取り上げますので、是非ご参考に。
「②抗がん剤は必ずしもこの状況で必要とされるのでしょうか。」
⇒4の通りです。
 可能性としては(ルミナールBよりは)Aの可能性の方が高いのです。
「オンコタイプDXの説明は全くありません」
⇒困ったことです。
「こちらから提案してでもオンコタイプDXを受ける価値はあるのでしょうか。」
⇒勿論です。
 そうすることで「上乗せ」も解りますし、「実際の再発率」を確認する事もできます(それを見ると、「こんなに再発率低いんだ!」と感じることでしょう)