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必要な検査と手術について

[管理番号:1212]
性別:女性
年齢:54歳
 
 

質問者様の別の質問

質問が新たな内容のため、別の管理番号としました。
質問者様の別の質問は下記をクリックしてください。
管理番号:1414「術前術後病理結果と治療法について

 
 
はじめまして。
色々と質問したいことがあり、お時間がある時にご回答いただければと思います。
8月末に右胸下部内側寄りにひきつれとしこりを見つけ、9月初旬に近くのクリニック
で生検をしてもらい、乳がんと診断されました。
生検結果レポートには以下のように書かれています。
・臨床診断・臨床経過・手術所見
Rt breast tumor
・病理組織診断
Invasive ductal carcinoma,right breast,needle biopsy
・病理組織所見
検体は右乳房針組織生検(3本)です。
組織学的には、核形不整ならびにN/C比の増大を示す異型細胞が、
小管腔状ないし索状配列をなし浸潤増殖する腫瘍病変を認めます。
浸潤性入管癌の所見です。
腫瘍は3本の検体全てに確認されます。
今の段階では浸潤性乳管癌ということしかわかりませんか?
浸潤性の乳管癌の中でもタイプが3つあると思いますが、このレポートからは分かり
ませんか?
本日、検査結果と紹介状を持って、手術ができる病院に行きました。
そこで、エコーと触診を受け、腫瘍の大きさは14mm × 10mm × 7mm、リンパへの転
移は無さそうで、今のところステージⅠですと言われました。
どんなサブタイプやグレードであっても、大きさが小さいので、まだ根治を目指せま
すか?
術前の検査は、全摘ならMRIの検査はしないと言われたのですが、
まだ考え中なので、MRIは受けることにしました。
PET-CTは希望があれば行いますがどうしますか?と言われたので、
あまり被ばくしたくないという思いもあり、検査しないことにしました。
しかし、一般的には術前にCT検査や骨シンチを受けている人が多そうなので、
MRIだけで良いのか、あの時色々な検査を受けておけば良かったということにならな
いか、心配になってきました。
主治医の先生も必要だったら受けてくださいと言うはずなので、私の場合は転移の可
能性が少ないから受けなくても良いという見解なのでしょうか?
家に帰ってきてから気になり、田澤先生の意見をお聞きしたいです。
田澤先生はどんな検査を受けるべきだと思いますか?
また、手術ですが、温存でも全摘でも良いと言われました。
全摘なら皮膚を残さない?全摘と、乳頭を残す皮下乳腺全摘?があると言われまし
た。
乳頭を残すのは日本ではあるが、アメリカではあまり多くないと言われました。
私の場合、腫瘍から乳頭に向かって少しヒゲのようなものがあるらしく(がんが乳頭
に向かっている?)、乳頭を残す全摘よりも、普通の全摘のほうが良いかと思ってい
ます。
また、温存で、病理検査の結果でがんの取り残しがあり再手術となるのも嫌なので全
摘が良いかと思っています。
田澤先生は、乳頭を残さない全摘が良いと思いますか?
また、乳頭を残さない全摘なら放射線治療は通常いらないのですか?
これもまた、主治医に聞きそびれてしまいました。すみません。
私は見た目より、根治を目指したいです。
手術時期は10月か11月なら進行したりはしませんか?
病院が少し混んでいそうで心配です。
主治医にエコーで見てもらった時に、左には5mmくらいの水泡(おそらく嚢胞)がある
と言われましたが、これは心配のいらないものだからと言われました。
嚢胞はそのまま放置してよいものですか?嚢胞が癌化したりはしないのですか?
生検をしたりしなくても大丈夫ですか?
まとまりのない質問で申し訳ございませんが、どうぞよろしくお願いします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。

回答

「今の段階では浸潤性乳管癌ということしかわかりませんか?浸潤性の乳管癌の中で
もタイプが3つあると思いますが、このレポートからは分かりませんか?」
⇒その通りです
 浸潤性乳管癌というだけで、「組織型の記載」はありません。
 ♯ただ、組織型「硬癌、乳頭腺管癌、充実腺管癌」は、治療には無意味な情報と言
えます。
 
「どんなサブタイプやグレードであっても、大きさが小さいので、まだ根治を目指せ
ますか?」
⇒その通りです。
 「早期発見こそ、最大の治療」なのです。
 巷では「サブタイプ」とか「グレード」とか言っていますが「それらは、治療方針
には重要ではあるが、予後とは無関係」と認識してください。
 予後と関係するのはあくまでも「ステージ」なのです。
 
「私の場合は転移の可能性が少ないから受けなくても良いという見解なのでしょう
か?」「田澤先生はどんな検査を受けるべきだと思いますか?」
⇒「PETも骨シンチも不要」です。
 異常が無いのが当たり前なのです。
 そんな「無駄な検査」をして被爆するのはナンセンスだと思います。
 私の場合には「CTだけは術前の全身スクリーニングとして」やってもいいと思います。
 
「乳頭を残さない全摘が良いと思いますか?」
⇒「腫瘍から乳頭に向かって少しヒゲのようなものがある=腫瘍と乳頭との距離が近
い」のであれば、「通常の全摘の方が安全」です。
 
「乳頭を残さない全摘なら放射線治療は通常いらないのですか?」
⇒不要です。
 ただし、全摘後の放射線照射の適応としては
 「リンパ節転移1~3個」推奨度B
 「リンパ節転移4個以上」推奨度A
 となっています。 リンパ節転移4個以上であれば「全摘であっても術後照射した
方がいい」でしょう。
 ♯但し、質問者の場合には心配無いようです。
 
「手術時期は10月か11月なら進行したりはしませんか?」
⇒その位なら大丈夫だと思います。
 
「嚢胞はそのまま放置してよいものですか?嚢胞が癌化したりはしないのですか?生
検をしたりしなくても大丈夫ですか?」
⇒嚢胞とは正常な乳管の拡張によってできるものです。
 乳癌とは無関係です。
 「良性細胞は、いつまで経っても良性」だし「癌細胞は、いつまで経っても癌」な
のです。途中で変わることは全くありません。
 嚢胞であると画像診断で「確定診断」できるのであれば生検は不要です。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

田澤先生、ご回答ありがとうございました。
検査には必須ではないものもあるのですね。
田澤先生は『CTだけは術前の全身スクリーニングとして行う』とのことですが、私は
今のところ手術前にCTを撮る予定がありません。
この前MRI(造影剤の注射もしました)を胸の部分だけ20分程行いました。
次の予約は、主治医からの今後の治療についての話と手術日の決定です。
あとで術前にCTをやっておけば良かったということにはならないでしょうか?
また術後にでもCTをしたほうがよいでしょうか?
主人は無駄な被曝をするくらいなら、遠隔転移のリスクがほぼないならCTはやらなく
ても良いのでは?といいますが、私は『もしも』のことが心配です。
また、乳頭を残した皮下乳腺摘出は、乳腺がなくなっても乳頭が残っているので、局
所再発の恐れはあるのですよね?
手術はセンチネル生検を術中にするのですが、そこでセンチネルリンパに転移があっ
た場合、リンパの下のほう(センチネルリンパ)を数個切除し、リンパ節全てを切除し
ないと言われました。
センチネルリンパに転移があった場合、リンパ節全て(腋窩リンパ)を取らなくても、
センチネルリンパ節を数個を取るだけで癌は取りきれるのでしょうか?
センチネルリンパ節の転移個数や状態によって、腋窩リンパ節まで全て切除すると決
められているのですか?医師によって判断が違うのですか?
センチネルリンパ節に1個でも転移があった場合、腋窩リンパ節まで切除して欲しい
と言うべきですか?
それから、同時再建か異時再建かについても迷っています。
拒絶反応や感染症のリスク等、体への負担は大きいのでしょうか?
また、人工物と自家組織だとどちらが良いのでしょうか?
双方メリットデメリット色々ありますが、再建している方はどれを選んでいる方が多
いのでしょうか?
まず、がんの手術だけで頭がいっぱいで、再建の事まで考えていなかったので、先生
に同時再建にするか聞かれて迷っています。
乳房の形や見た目よりも、再発リスクを限りなく減らしたいと思っています。
同時再建にすることで、術後の治療や検査に支障はありますか?
手術は何度も受けたくないので、同時再建も気になっているのですが、
もともと再建のことなどまだ考えていなかったので、決めかねています。
ご回答よろしくお願いします。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
まず、勘違いされ易い事として
「センチネルリンパ節」と「腋窩リンパ節」があります。
重要な点は「センチネルリンパ節は腋窩リンパ節の中のひとつ」ということです。
リンパ管からの流れを「上流から考えて」一番上流を「センチネルリンパ節」と表現
します。
そこから下流への流れで「小胸筋の筋膜の外側まで」をレベル1と名付けています。
更に下流へ行き「小胸筋筋膜を破って小胸筋の内側までの範囲」をレベル2と名付け
ています。
更に下流へ行き「小胸筋より内側」をレベル3といい、そこから「鎖骨上リンパ節」
へと連続しています。
センチネルリンパ節は1個です。(一番上流のリンパ節なのですから)
「センチネルリンパ節を数個」という表現は誤りです。
正確にいうと「1番上流であるセンチネルリンパ節のすぐ下流にあるレベル1リンパ
節」のことです。
♯センチネルリンパ節を数個という表現はおそらく、色素法で「染色されている範
囲」をそのように表現していると思われます。
更にいうと「術前画像上、リンパ節転移が疑われない」場合には「追加郭清」はレベ
ル1までで十分です。
本来、「レベル1とレベル2」は「小胸筋膜でセパレート」されています。
他院での手術をたまに「拝見します」が、「レベル2まで郭清」と言っておきなが
ら、「実際はレベル1までしか郭清していない」事が殆どです。
○本当にレベル2まで郭清するのであれば、「小胸筋膜を確実に切離し、小胸筋を持
ちあげる」操作をしなくてはいけないのですが、「小胸筋膜の存在」に気付かずに手
術している乳腺外科医が多いのです。
 つい先日も「某大学病院の医師」が「レベル2って、どこからなのか解らないよ
なー」と同僚と話している場面をみかけました。
 本来「正しいレベル2郭清」を知っていれば決して「このような会話があってはな
らない」のです。

回答

「あとで術前にCTをやっておけば良かったということにはならないでしょうか? ま
た術後にでもCTをしたほうがよいでしょうか?」
⇒CTは(撮影するにしても)術後でも十分です。
 ただし、通常手術までに「術前検査」をいろいろするので、「その流れでCTも術前
に撮影してしまう」事が多いのです。
  
「主人は無駄な被曝をするくらいなら、遠隔転移のリスクがほぼないならCTはやらな
くても良いのでは?といいます」
⇒ご主人がおっしゃるように「遠隔転移はまず無い」ので無駄な検査とも言えます。
 ただ、別の疾患「例えば胆石、子宮筋腫など」がたまたま見つかることもある(非
常に稀ですが、膵癌が見つかったケースもあります)ので全く無意味と言う訳でもな
いのです。
 
「乳頭を残した皮下乳腺摘出は、乳腺がなくなっても乳頭が残っているので、局所再
発の恐れはあるのですよね?」
⇒その通りです。
 「乳管は乳頭部分に集まっている」ので「乳頭を残す事は乳腺を全切除した事には
ならない」のです。
 
「センチネルリンパに転移があった場合、リンパの下のほう(センチネルリンパ)を数
個切除し、リンパ節全てを切除しないと言われました」
⇒冒頭にコメントしたように、実際は「レベル1の内の色素で染色されている数個
(レベル1のうちで比較的上流)を郭清する」ということです。
 
「センチネルリンパに転移があった場合、リンパ節全て(腋窩リンパ)を取らなくて
も、センチネルリンパ節を数個を取るだけで癌は取りきれるのでしょうか?」
⇒画像診断で「腫大したリンパ節が無い」場合には、(実際上)それでも十分とも言
えます。
 私であれば、「2mm以上の転移」があれば、「レベル1」まで(レベル2に画像上
全く所見が無い事を前提)郭清しています。
 冒頭でもコメントしたように「レベル1とレベル2は小胸筋膜でセパレートしてい
る」ので「本物のレベル2郭清は過剰郭清」と思います。
 
「センチネルリンパ節の転移個数や状態によって、腋窩リンパ節まで全て切除すると
決められているのですか?」
⇒通常は「画像所見」で判断されるものです。
 「画像診断で全くリンパ節腫大がない」のに、「センチネルリンパ節転移がある
(陽性)」からといってレベル3まで郭清するのは「どう考えても過剰郭清」です。
 「画像診断で腫大リンパ節が無い場合」の「センチネルリンパ節陽性」ではレベル
1で十分です。
 「画像診断で腫大リンパ節があれば」(本物の)レベル2郭清を行うべきです。
 ♯レベル3は「画像上、レベル3に腫大リンパ節が有る場合にのみ」行われます。
 ○リンパ節は「取れば取る程いい」という訳ではありません。
  術後の「患肢浮腫」のリスクとバランスさせるべきです。
 
「医師によって判断が違うのですか?」
⇒若干異なります。
 きちんと理解している医師であれば、「過剰郭清」はしないでしょう。
 
○腋窩リンパ節際再発など(少なくとも自分が術者としては)見た事がありません。
 きちんとした判断ができる医師であれば「質問者が心配しなくてもいい」とは思います。
 
「センチネルリンパ節に1個でも転移があった場合、腋窩リンパ節まで切除して欲し
いと言うべきですか?」
⇒担当医に任せてもいいと思います。
 画像診断を参考にしての「方針」だと思います。
 おそらく「画像上、リンパ節腫大所見がない」から「レベル1で十分」という認識
なのだろうと思います。
 「腋窩リンパ節を全部というとレベル3まで入ってしまう」のですが、それは「過
剰郭清」なのだと思います(私が実際に質問者の画像診断をしている訳では無いので
推測ですが)
 
「拒絶反応や感染症のリスク等、体への負担は大きいのでしょうか?」
⇒これらは「インプラント」の話ですね。
 「拒絶反応も感染症」も確率は低いです。
 それよりも、「皮膚のメンテナンス」や「形成外科への複数回の通院」などの負担
が大きいかもしれません。
 
「また、人工物と自家組織だとどちらが良いのでしょうか?」
⇒これは「その人の考え方」によります。
 インプラントは手軽ですが、「永久ではない」
 自家組織は「比較的自然な仕上がり」となるが、「自分の筋肉の一部を犠牲にす
る、手術時間も長いし体の負担が大きい」
 
「双方メリットデメリット色々ありますが、再建している方はどれを選んでいる方が
多いのでしょうか?」
⇒インプラントが多いです。
 手軽であり、かつ「最近保険適応になった」ことで増加しています。
 
「同時再建にすることで、術後の治療や検査に支障はありますか?」
⇒あります。
治療:
放射線が原則かけられなくなります。
(乳房切除術後の)放射線照射の適応は「リンパ節転移が4個以上(推奨度A)」(1~3個は推奨度Bです)
♯リンパ節転移が無ければ、関係無いことです。
 
検査:
「局所再発」に対する検査が困難となります。
♯ただし、「乳房切除後の局所再発はめったにない」ですが…