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70歳の母の検査について

[管理番号:3942]
性別:女性
年齢:70歳
年齢 70歳
性別 女性
70歳の母のことで、初めて質問させていただきます。
よろしくお願い致します。
<経緯>
先月、右の乳首まわりが少し凹んでいるのに気付き、触るとしこりもあるようなので、本人に尋ねると、8月から気付いていたというので、診てもらった方がいいと勧めたところ、かかりつけ医→乳腺も診ている家庭医を経て、地域の市民病院紹介され、先週行ってきました。
マンモグラフィを撮ってから診察室に呼ばれ、いつ気付いたかとかいくつか聞かれたあとすぐエコー検査をしました。
マンモの写真を見ながら
の説明で、2.8cm×4cm位のものがあり、リンパのほうも疑わしいとかで、針を刺す検査をすぐしました。
(麻酔はしていません)
看護師さんに尋ねると「組織診」という検査だと言われましたが、十分な説明がなく、どういうことが判るのか、十分な検査なのか不安です。
また、針を刺した後すごく痛がっていたのと、今日見たら刺したところより内側の方に3cm位の内出血ができていて、大丈夫なのかと不安です。
忙しすぎるせいか、ほとんど触診もしていた様子もなく、結果がでる2日後は別の医師が説明されるとのことです。
診療明細書を見ると、
「検査」の項目には、乳腺穿刺又は針生検(片側)(その他)
          乳腺穿刺又は針生検(片側)(生検針によるもの)
           ステリクロンW液0.05 0.05%
           生食液NS 20ml
           キシロカイン注ポリアンプ1% 10ml
          {乳腺}超音波検査(断層撮影法)(その他)
病理診断料の項目には、{乳腺}細胞診(穿刺吸引細胞診、体腔洗浄等によるもの)
(1部位につき)
           病理組織標本作成(1臓器につき)
           組織診断料
           細胞診断料
と書いてあります。
また、次のような内容の紙ももらいました。
 今回の検査にて生検した検体は、①腫瘍細胞を調べ、治療方針を決定する検査
                ②腫瘍細胞に対する使用やくざいを決定する検査を実施する場合がございます。
<質問>
穿刺吸引細胞診という検査をしたということなのでしょうか?針生検という文字もありよくわかりません。
二つの検査をしたのでしょうか?この検査で、確実な十分な情報がえられるのか、どんなことが判るのか、教えて頂きたいのです。
この検査は一般的なのでしょうか?病院のホームページに、「エリートマンモトーム導入しました」と出ていました。
医師は癌前提で検査をされていたようでしたが、2.8cm×4cm位のしこりで、癌ではない可能性はありますか?
針を刺した検査での痛みや内出血での悪影響はないでしょうか?
母は元気に生活していますし、検査やこれから病院にかかることで、
却って具合が悪くなることがあってはと心配です。
とはいえ悪性のもの
であれば広がることが心配ですし、この病院で大丈夫なのかも心配で、
よく眠ることもできません。
こちらののホームページで検査についての解説など少し見せていただいてから病院に行ったのですが、こんなに不安になるなら初めからそちらに伺えばよかったかと思ったりしますが、今回の検査結果が出てからそちらに予約した場合、処置が遅くなりすぎてしまうでしょうか?
MRIなどその後の検査を指示された場合、それらもしていまってからの方がよいのか、その前の方がよいのか(そちらで診て頂くとしたら)も教えてください。
長くなり申し訳ありません。
ご回答いただければ大変ありがたく感謝します。
よろしくお願いいたします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
メール内容からは「腫瘍に対してバネ式針生検」と「リンパ節に対して細胞診」をしているようです。
「穿刺吸引細胞診という検査をしたということなのでしょうか?」
⇒おそらく
 リンパ節に対しては細胞診をしていると思います。
「針生検という文字もありよくわかりません。二つの検査をしたのでしょうか?」
⇒その通りです。
 針生検はこの場合、「バネ式針生検」をしているようです。
 何故なら、「マンモトームエリート(超音波ガイド下マンモトーム生検)」の場合には「画像ガイド下吸引術」という点数となります。
 因みに「乳腺穿刺又は針生検(片側)(生検針によるもの)」がバネ式針生検のことdせう。
「確実な十分な情報がえられるのか」
⇒それは「腕」姿第です。
 しかし、(小さな腫瘍ならまだしも)4cmの腫瘍を外すことはないでしょう。
 ♯リンパ節の細胞診は結構技術が要るので、「検体不適性となる可能性」もありそうですが…
「どんなことが判るのか、教えて頂きたい
⇒腫瘍に対する針生検は
 ①乳癌であるかどうか(確定診断)
 ②サブタイプ(腫瘍の性質) ER, PgR, HER2
 腋窩リンパ節に対する細胞診は
 ①リンパ節に癌細胞が転移しているのか?(転移の有無)
「この検査は一般的なのでしょうか?」
⇒一般的です。
 ただし、「腋窩リンパ節に対する細胞診」は不要です。(術中センチネルリンパ節生検すればいいのです)
「医師は癌前提で検査をされていたようでしたが、2.8cm×4cm位のしこりで、癌ではない可能性はありますか?」
⇒年齢を考えれば…
 
 癌以外は殆どないと思います。
 強いて、(この年齢で)癌で間違われ易い(良性)疾患は「糖尿病性乳腺症」です。(リンパ節は腫れませんが…)
「針を刺した検査での痛みや内出血での悪影響はないでしょうか?」
⇒それは心配ありません。
「こんなに不安になるなら初めからそちらに伺えばよかったかと思ったりしますが、今回の検査結果が出てからそちらに予約した場合、処置が遅くなりすぎてしまうでしょうか?」
⇒大丈夫です。
 秘書に連絡いただければ、「緊急度に応じた対応」をしています。
「MRIなどその後の検査を指示された場合、それらもしていまってからの方がよいのか、その前の方がよいのか(そちらで診て頂くとしたら)も教えてください。」
⇒余計な検査(CTやPET、骨シンチ)を提示される前の方がいいでしょう。
 MRIは「乳房温存を考える場合にのみ」必要な検査です。
 「70歳で、腫瘍径4cm」なら「安全性を考えて全摘(MRIは不要)」を推奨します。
 ○部分切除と全摘の違いは「あくまでも見た目」だけであり、手術そのものの負担(大した事はありません)は殆ど変わりません。(放射線を照射しない分、全摘の方が治療としては楽であることも間違いありません)

秘書室へメールは、
各ページの右上にある 「秘書室へメール」からご相談ください。
もしくは、こちらのリンクをクリックしてください。

 
 
 
 

 

質問者様から 【質問2】

先日質問させて頂き、秘書室でもやりとりさせて頂き、色々教えて下さりありがとうございました。
また教えて頂きたいので、どうぞよろしくお願い致します。
先日母の場合、全摘推奨とのことでしたが、リンパ節転移が3つあると言われていることからすると、全摘+リンパ節郭清ということになりますか?
ER陽性なのでホルモン療法をすることになるのかなと思いますが、アロマターゼ阻害剤は骨がもろくなるそうで心配なのですが、抗エストロゲン剤と効果に違いはあるのですか?どちらを使うかはどうやって決まるのですか?抗エストロゲン薬は、血液を固まりやすくするそうですが、
血糖とコレステロールの薬を飲んでいる母のような場合、危ないですか?
手術後、放射線や抗がん剤は必要になりますか?田澤先生であれば、どんな治療を推奨されるか教えて頂けませんか?母の場合、オンコタイプDXをした方がよいでしょうか?
今かかっている病院では、再発予防のために放射線治療を1か月半、薬物療法を5年間続けることが多いようなのですが、妥当なのでしょうか?その場合トモセラピーというのは使えるのですか?
色々と質問すみません!組織診の結果は以下です。
70歳で糖尿とコレステロールの薬を飲んでいます。
今元気なので、治療の効果と、副作用と、どうなのかと心配です。
皆さんそうだと思いますが、できるだけダメージなく、病気は治ってほしいです。
どうかご助言お願いいたします。
浸潤性乳管癌、Invasive ductal carsinoma:scirrhaus predominant
右乳腺CNB、2個 右乳房の0時方向のNTD=0mmの樹長28mm×幅
46mm×深さ18mmの不整
LELからの2検体はfine cordalscirrhus carcinomaです。
1)腺管形成:3点 2)核異形:2点 3)核分裂:1点で合計6点
はGradeⅡの中分化型に属します。
ER-score 3+ PgR-score 0 Her2-score 0
Mib-1 >40% very high grade cytokinetic cycle PD:Invasive ductal carsimoma of E type with highcytokinetics:scirrhous predominant without Herceptin activity
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
まず、物事はシンプルに考えましょう。
以下に質問者(の母)が当て嵌まる状況をお示ししましょう。
1.腋窩郭清
 画像所見で「明らかに転移」と判断すれば、当然郭清します。(転移があることが解っているのに郭清しなければ局所再発必発となります)
 ♯画像所見で「明らかに転移とはいいきれない」場合には、まずは「術中センチネルリンパ節生検」を行います。(その結果、転移が証明されれば、そのまま郭清を行います)
2.ホルモン療法
 閉経後のホルモン療法はアロマターゼインヒビターが標準です。(それは、再発予防効果が抗エストロゲンに比べて優れている事が証明されているからです)
 骨粗鬆症の場合には「骨粗鬆症の治療と併用」して行います。
3.抗ガン剤の適応
 Luminal typeだから、A(ホルモン療法単独)なのか、B(ホルモン療法+化学療法)なのかを判断します。
 通常はKi67で判断しますが、これは手術標本で病変全体での評価であるべきです(針生検でKi67=40%となっていますが、あまり意味がありません)
 ○手術標本でKi67が「明らかに低い」場合はルミナールAと考えるし、「明らかに高い」場合はルミナールBと考えます。(その中間域の場合にはOncotype DXを行ってAかBかを判断すべきです)
  ♯『今週のコラム53回目 Ki67が「30未満」ならホルモン療法単独、Ki67が「30以上なら、Oncotype DXを推奨」しています。』をご参照ください。
 ○その上で、70歳以上は「術後補助療法としての抗ガン剤の有効性が必ずしも証明されていない」ことを加味する必要はあります。
4.放射線照射の適応
 全摘の場合には「リンパ節転移4個以上」では推奨されますが、それ以下なら不要です。
「先日母の場合、全摘推奨とのことでしたが、リンパ節転移が3つあると言われていることからすると、全摘+リンパ節郭清ということになりますか?」
⇒上記通りです。
 画像上、「本当に」リンパ節転移所見がある場合には(センチネルリンパ節生検は省略して)最初から「腋窩郭清」となります。
「アロマターゼ阻害剤は骨がもろくなるそうで心配」
⇒骨密度を測定して、低ければ「骨粗鬆症の治療と併用」となります。
「抗エストロゲン剤と効果に違いはあるのですか?どちらを使うかはどうやって決まるのですか?」
⇒明確にアロマターゼ阻害剤の方が再発予防効果が高いことが証明されています。
(なので選択の余地はありません)
「抗エストロゲン薬は、血液を固まりやすくするそうですが、血糖とコレステロールの薬を飲んでいる母のような場合、危ないですか?」
⇒危なくはないですが、「アロマターゼ阻害剤が第1選択」であることに疑問の余地はありません。
「手術後、放射線や抗がん剤は必要になりますか?」
⇒上記コメントを読んでお解りになりましたか?
「田澤先生であれば、どんな治療を推奨されるか教えて頂けませんか?」
⇒まずは局所療法と全身療法に「きちんと分けて」区別をして考えましょう。
 ○全身療法
  ホルモン療法は必須(当然アロマターゼ阻害剤)
  抗ガン剤については上記コメント通り「手術標本でのKi67を測定」してから判断することとなります。
 ○局所療法
  乳房全摘であれば、基本的には「術後照射は不要」となります。
  ただし実際に手術してみて「リンパ節転移が4個以上」有った場合には、行います。
「今かかっている病院では、再発予防のために放射線治療を1か月半、薬物療法を5年間続けることが多いようなのですが、妥当なのでしょうか?」
⇒上記コメントでお解りいただけましたか?
 「局所療法」も「全身療法」も、その患者さんの病状に応じた選択があるのです。
 全ての患者さんに「一律に行う」ことなど、絶対にないのです。
「その場合トモセラピーというのは使えるのですか?」
⇒当院では(乳癌術後の照射も)トモセラピーを用いています。
「今元気なので、治療の効果と、副作用と、どうなのかと心配です。皆さんそうだと思いますが、できるだけダメージなく、病気は治ってほしい」
⇒標準療法を行うことです。
 手術そのもののダメージは(全摘でも郭清しても)殆どないし、ホルモン療法も同様です。
 抗ガン剤にはダメージはありますが、「70歳という年齢を考慮した治療方針」も可能です。
 
 

 

質問者様から 【質問3】

田澤先生、前回も丁寧にご回答くださり、ありがとうございました。
先日担当の先生の説明を聞いてきました。
治療をどうするか決めなくて
はならないのですが、よくわからないことや心配があり、また質問させていただきました。
度々の質問で恐縮ですが、どうぞよろしくお願い致します。
担当の先生のお話では、遠隔転移はなく、4.6cm×3,5~4cmの癌、リンパ節転移が、脇に少なくとも3つ、胸の方にも1つありそうとのことで、抗がん剤をやらないと、かなり再発率が高いというお話でした。
抗がん剤をしてから手術をするか、手術が先でその後抗がん剤でもよいとのことで、その後たぶん放射線、ホルモン療法との ことです。
手術が先の場合でも手術できるのが大分先になるので、それまでホルモン療法をすることもできるというお話でした。
田澤先生は、全摘の場合術前抗がん剤はしないと前にお聞きしましたが、術前にホルモン療法をすることはありますか?その場合小さくなってその後の治療が変わるということはありますか?
それと抗がん剤については、2週ごとにddAC×4→ddp×4計8週というのが一番効果があるから、長く生きたい気持ちであればという担当先生のお話だったのですが、70歳、糖尿、高コレステロール、股関節症などある母でも大丈夫でしょうか?
本で見たAC療法というのは、3週ごとで、白血球が回復できる間隔とでていたのですが、上記の2週ごとのという のは、別のものなのですか?
同じであれば、2週ごとでも大丈夫なのでしょうか?また、ddpというのは、なんというお薬ですか?
ddAC×4のみという選択もあるようなのですが、効果はどれくらい違うのでしょうか?
副作用や後遺症が心配です。
TC×4という方が副作用など少ないですか?
効果はどれくらい差があるのでしょうか?田澤先生であれば、母の場合どんな薬を勧められますか?
前回のご回答で、術後の検査のKI67で抗がん剤の適応を判断するというお話でしたが、いくつ以上が「明らかに高」く、いくつ以下が「明らかに低」いですか?いまかかっている病院ではオンコタイプDXはしていないようなのですが、母の場合でもそもそも抗がん剤をしなくてもよいというこ ともありえますか?(オンコタイプDXの適応は閉経後だとリンパ節転移3こ以内と本にはありましたが・・)オンコタイプDXをしていない病院だと、してもらいたい場合転院しないと無理なのでしょうか?
する前提で手術をしないと標本がないということになったりということはありますか?
たくさん質問すみません。
こちらで教えて頂けることで、心が大変助けられています。
いつもありがとうございます。
 

田澤先生から 【回答3】

こんにちは。田澤です。
物事はシンプルに考えましょう。 シンプルに考えて頭が整理されていますか?
「術前にホルモン療法をすることはありますか?その場合小さくなってその後の治療が変わるということはありますか?」
⇒ホルモン療法に、そこまでのパワーはありません。
 術前のホルモン療法は「意味があるとしたら」手術待ちの間の「精神的な安定剤」ということです。
「2週ごとにddAC×4→ddp×4計8週というのが一番効果がある」
⇒「dd」とは「dose dense」の略です。
 高齢で合併症があるのに「dose dense」を提案すること自体、常識外といえます。
「TC×4という方が副作用など少ないですか?効果はどれくらい差があるのでしょうか?」
⇒TCの方が副作用は少ない(当然dose denseなど勧められません)、効果の直接比較などありまえん。
「田澤先生であれば、母の場合どんな薬を勧められますか?」
⇒そもそも「小さくして温存」という明確な目的がなければ「手術先行」とすべきです。
「いくつ以上が「明らかに高」く、いくつ以下が「明らかに低」いですか?」
⇒今週のコラムを』参考にしてください。
「母の場合でもそもそも抗がん剤をしなくてもよいということもありえますか?(オンコタイプDXの適応は閉経後だとリンパ節転移3こ以内と本にはありましたが・・)」
⇒誤りです。
 Oncotype DXはluminal typeであれば(リンパ節転移の個数に関係なく)適応があります。
「オンコタイプDXをしていない病院だと、してもらいたい場合転院しないと無理なのでしょうか?」
⇒いろいろなやり方があると思います。
「やる前提で手術をしないと標本がないということになったりということはありますか?」
⇒無関係です。