[管理番号:443]
性別:女性
年齢:46歳
おはようございます。
お忙しい中、よろしくお願いします。
3月に乳がん検診を受け、4月から県内の医大で検査をいろいろ受けてきました。
5月20日に全部の検査結果が出て、治療方針が決まったのですが、少しアドバイスをいただきたく、質問させていただきます。
ホルモン ER 陽性
PgR 陽性
分子標的 HERZ 陰性
抗癌 Ki67 35.4% 陽性 で、ルミナールBとの結果でした。
これらを踏まえ、担当医は、抗がん剤、手術(放射線)、ホルモン治療が一番いいのではないかとのお話でした。
抗がん剤を術前にすることによって、腫瘍が小さくなり、効果がわかることと、腫瘍が小さくなったら、全摘ではなく、温存術ができることがメリットとおっしゃていました。
この場合、田澤先生の意見をお聞きしたく連絡させていただきました。
どうぞ、よろしくお願いします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
「luminal Bで術前化学療法を勧められている」との事ですね。
術前化学療法のポイントは「腫瘍が大きいので、小さくして温存を希望しているのか?どうか?」です。
質問者には当てはまるのでしょうか?
回答の前に、「術前化学療法の適応」及び、『術前化学療法を安易に勧めない理由』について記載します。
術前化学療法の適応
◎術前抗癌剤の絶対的適応は
①「術前抗癌剤で腫瘍を小さくして温存手術を行う」です。
これにあてはまるには『今の時点で腫瘍が(温存するには)大きい』『温存手術を希望している』この2点を満たしている必要があります。
⇒そもそも「腫瘍が、最初から小さい」とか「温存は希望していない」場合には、この理由は全く当てはまらなくなります。
○次に挙げる2つは、実は「根拠薄弱」であり「術前抗癌剤を勧める根拠とはなりません」
②「術後にどうせやるのだから、術前にやった方が良い」
⇒化学療法は「術前にやっても、術後によっても予後は同等」なのです。
「術前にやった方がいい理由にはなりません」●術後でいいのです。
③「抗癌剤は術前にやると(効くか、どうかの)効果判定ができる」
⇒このような理由を言う医師も散見されますが、私は全く反対です。
術前抗癌剤での効果はあくまでも「腫瘍が縮小するか?」で見ています。
これが、「化学療法本来の目的である、再発予防に効果があるか?とは相手の大きさが異なります」
「術後の再発予防目的」では(目に見えない)「小さな相手に対する抑制効果」なので、「大きな腫瘍に対して縮小効果が乏しいとしても、再発予防効果に乏しい」とは限らないのです。
術前化学療法を安易に勧めない理由
◎化学療法は「皆さんに必ず効果がある」とは限りません。
効果の無い化学療法を行っている間に、「転移」したり「腫瘍が増大」する可能性があります。
「術前抗癌剤」中に「腫瘍が増大」して、『慌てて手術へ変更』する事も私は何度も経験しています。
回答
私であれば「術前化学療法は勧めません」
それは、「術前化学療法を安易に勧めない理由」にも書いてありますが、「効果が無い可能性がある」からです。
質問者のように「luminal type (Bではあるが、Ki67も35%とそれ程高値でない)」の場合には「化学療法が著効する可能性が低い」といえます。
♯「腫瘍が増大したり転移したりするリスク」を冒してまで『luminal typeに術前化学療法を勧めるべきではない』と思います。
★質問者の場合、「腫瘍が大きいのだが、どうしても温存したい」という状況なのでしょうか?
もし、そうなら「術前化学療法」しか方法は無いので、「術前化学療法の適応」はあります。
そうで無ければ「術前化学療法は不要」でしょう
質問者様から 【質問2】
田澤先生、お返事ありがとうございました。なんだか胸のつかえがとれました。
5月27日から、抗がん剤治療開始が決まっており、ネットでいろいろ見るうちに心配が増え混乱していましたが、田澤先生のアドバイス通り、26日に担当医の診察予約をとり、手術(全摘希望)を先にしていただくように話してこようと思っています。
私は、リンパに転移していることを前回書き忘れていたのですが、転移していても手術が先で大丈夫ですか?
それと、術後は、放射線、抗がん剤、ホルモン療法の順番で良いですか?
それとも、手術でリンパが確実に取れない場合などもあったりするのでしょうか?
すみません、無知な質問ばかりで・・・
お忙しいところ本当にすみません。よろしくお願いします。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
前回の回答が参考になったようで何よりです。
質問者のように、「十分な根拠の説明のないまま」術前化学療法を勧められるケースが多い事に、「このQ and Aを通して」痛感しています。
その意味では「閲覧した他の方」のためにも、是非読んでもらいたい内容です。
回答
「リンパに転移していることを前回書き忘れていたのですが、転移していても手術が先で大丈夫ですか?」
⇒手術の際に摘出します。(例え、術前化学療法をしても、その部分を郭清する事に替わりはありません)
「術後は、放射線、抗がん剤、ホルモン療法の順番で良いですか?」
⇒放射線よりも化学療法が先になります。
抗がん剤⇒放射線+ホルモン療法⇒ホルモン療法単剤 となります。
○放射線照射の適応について
乳房全摘後の照射については、リンパ節転移が「4個以上」ならば推奨度A、「1~3個までならば推奨度Bとなります。
「手術でリンパが確実に取れない場合などもあったりするのでしょうか?」
⇒ありません。
「リンパ節が確実に取れない」ようなケースは「手術不能乳癌」と診断され「手術適応が無く、化学療法の適応」となります。
質問者の場合にはあてはまりません。
◎私は「手術先行」という質問者の選択を支持します。
質問者様から 【質問3】
田澤先生、こんにちは。
先日は、ご丁寧な回答をありがとうございました。
何度も質問してしまい、すみませんがよろしくお願いします。
ルミナールBの判定で5月27日からの術前化学療法にするかどうか迷っていましたが、5月26日に全摘の手術を先にお願いしてこようと思っているのですが、私は、○○県在住で、○○医大に通院中です。
医大ということもあり、もし手術がだいぶ先にしか予定をいれてもらえないようでしたら、ぜひ先生の病院でとも思っています。
何分遠方ですし、術後の通院を考えると、医大で 手術を待った方が良いのか、手術だけでも江戸川病院で行っていただき、術後は○○医大で・・・と、いったことが可能なことでしょうか?
医大でするとしたら、どれくらいの期間を待ってもいいものなのかの判断がつきません。
3月に検診をし、かれこれ三か月は経っているので、私の中では一刻も早くと思い焦っています。
どうか、先生のご意見をお願いできますでしょうか?
ややこしいことで、何度もすみません。お願いします。
田澤先生から 【回答3】
こんにちは。田澤です。
「術前化学療法では無く、手術の選択」をされたのですね。
luminal Bであれば、賢明な選択です。
世の中には「安易に術前化学療法を勧める」医師がいますが、「効果が無かった際のリスクに対する説明が不十分」だと思います。
私は質問者の選択を支持します。
回答
「もし手術がだいぶ先にしか予定をいれてもらえないようでしたら、ぜひ先生の病院でとも思っています。」
⇒信頼していただいて、ありがとうございます。
私の手術であれば「2泊3日」で退院なので、月曜日手術ならば「日曜日入院、火曜日には退院」できます。
「何分遠方ですし、術後の通院を考えると、医大で手術を待った方が良いのか、手術だけでも江戸川病院で行っていただき、術後は○○医大で・・・と、いったことが可能なことでしょうか?」
⇒術後に「医大」で治療も大丈夫です。
術後の治療としては「全摘では、基本的に放射線照射は無いので」
ホルモン療法(ノルバデックス内服±ゾラデックス皮下注射):3か月に1回の通院
(luminal Bなので)化学療法(3週間に1回の点滴を4から8回:メニューによります)
どちらも、「術後紹介で大丈夫」です。
「3月に検診をし、かれこれ三か月は経っているので、私の中では一刻も早くと思い焦っています」
⇒『初診から2か月以内の手術』が私のモットーです。
私の感覚では「6月中に手術」をした方がいいと思います。
是非ご相談ください。
◎「手術の精度」を考えれば「江戸川病院」を選択してください。
大学病院の医師とは執刀経験が違います。