[管理番号:2537]
性別:女性
年齢:38歳
はじめまして。
先週乳がんと診断されたばかりの新米患者です。
3月の末に手術が決まっておりますが、温存、全摘などの術式を決めるのにある程度の希望を考えておくように言われましたが悩んでおります。
術式を決める決め手になる情報はどういったものでしょうか?
何を聞いて判断すればいいのかがイマイチ分からずにいます。
去年の11月左側の上部にチクッとした痛みを感じ、触れてみてシコリを見つけました。
すぐに行った検診でマンモ、エコー、パッと見は癌らしくないが念のための細胞診を行い、結果異常なし、要経過観察となりました。
気になったので二ヶ月後に別の病院を受診、マンモ、エコーで怪しいと診断、細胞診も良くない結果でマンモトーム生検、プラス造影剤MRIを行い、乳がん確定となりました。
その後CT、胸部レントゲンを撮りました。
来週腹部エコーの予定です。
最初の病院では1センチほどのシコリと言われましたが、今の病院では5ミリほどと聞いています。
サイズに違いがあるのはなぜでしょうか?
今の病院の方がより細かい検査をしているから正確な大きさが出ているということでしょうか?
それからサイズのことは全摘、温存の決め手になりますか?
今、分かっている情報はサイズが5ミリ程度、初期と考えて良いということと、トリプルネガティブだと言われたことくらいです。
動揺してきちんと説明をきちんと聞いておらず、知るべき情報が分からない(聞きこぼしている)状態です。
浸潤、非浸潤などとよく聞きますが、私のした検査でそれは判断出来るのでしょうか?
手術をしてみないと分からないものなのでしょうか?
転移しているかどうかなどはは手術をしてみないと分からないものなのでしょうか?
母が乳がんで50代で亡くなったこともあり遺伝子的な意味も含め全摘も視野に入れてみては?とのことでした。
遺伝子検査は今回の手術には間に合わないので諦めましたが、判断のひとつになるのかがイマイチ分からないなと思っています。
温存、全摘は本人の気持ち次第なのでしょうか?
全摘すれば再発はなくなるのでしょうか?
たいへんそそっかしい性格でして
お恥ずかしいのですが、次に病院に行くまでに質問することを整理しておきたいと思っています。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
「術式を決める決め手になる情報はどういったものでしょうか?」
⇒シンプルなことです。
「温存(部分切除)」か、「全摘」か。
それは「乳腺内の病変(腫瘍)の拡がり」で考えます。
その拡がり診断は(超音波、マンモグラフィーもありますが)MRI検査が最も鋭敏となります。
①拡がりが狭い(限局)場合
温存術も可能です。
(勿論)全摘を選択しても構いません
②拡がりが広い(もしくは多発している)場合 全摘しか選択肢がありません。
○上記②では(選択肢が無いので)自動的に「全摘」となりますが、①の場合はどうするか?
⇒以下の内容で選択します。
・温存の場合には、術後放射線照射が必須 ⇔全摘の場合には原則不要
・温存の場合には、(将来的な)乳房内再発が起こる可能性(放射線照射しても5%程度はある)⇔全摘では「ほぼ0%」
・温存でも全摘でも「遠隔転移の確率、生存率」などは同じ
☆質問者の場合には「MRIも撮影している」ので、①なのだと思います。
それであれば、上記内容から「自分の価値観にあった選択」をするのです。
「去年の11月左側の上部にチクッとした痛みを感じ、触れてみてシコリを見つけました。念のための細胞診を行い、結果異常なし」
⇒これが癌だったわけだから、いかに「細胞診が信用できないか」明白だと思います。(技術の問題が大きいとは思いますが)
「最初の病院では1センチほどのシコリと言われましたが、今の病院では5ミリほどと聞いています。サイズに違いがあるのはなぜでしょうか?今の病院の方がより細かい検査をしているから正確な大きさが出ているということでしょうか?」
⇒超音波での測定やMRIでの測定など、「数ミリの誤差」は出ます。
「それからサイズのことは全摘、温存の決め手になりますか?」
⇒勿論、それが一番大事です。
質問者の場合には、更に「MRI施行」した上での評価なので、「拡がりも狭い」と考えていいでしょう。
つまり「温存可能 上記で言えば①に相当」します。
「今、分かっている情報はサイズが5ミリ程度、初期と考えて良いということと、トリプルネガティブだと言われたことくらいです。」
⇒十分な早期乳癌です。
まずは「手術できちんと病変を切除」することです。(浸潤癌である以上、センチネルリンパ節生検も行います)
「浸潤、非浸潤などとよく聞きますが、私のした検査でそれは判断出来るのでしょうか?」
⇒サブタイプが解っている(トリプルネガティブだということ)訳だから、当然「浸潤癌」と診断がついています(非浸潤癌であれば、その旨をお話される筈です)
「転移しているかどうかなどはは手術をしてみないと分からないものなのでしょうか?」
⇒腫瘍径が小さいので転移は無いとおもいますが、(超音波でも確認している筈です)最終的には(術中の)「センチネルリンパ節生検」により確認します。
「母が乳がんで50代で亡くなったこともあり遺伝子的な意味も含め全摘も視野に入れてみては?」
⇒質問者自身が「30代でトリプルネガティブ」であることと、「お母さんも比較的若年で乳癌になっている(と推測される)」ことから、確かに可能性はあります。
ただ、(仮に遺伝性乳癌だとしても)全的が必須ではありません。
「遺伝子検査は今回の手術には間に合わないので諦めましたが、判断のひとつになるのかがイマイチ分からないなと思っています。」
⇒遺伝性乳癌の場合には(通常の乳癌よりも)「乳房内再発(もしくは新規乳癌の発生)の確率が若干あがる」と言われていますが、少なくとも日本でのデータは殆どありません。
したがって、術式を決める決定的要因ではありません。
「温存、全摘は本人の気持ち次第なのでしょうか?」
⇒その通りです。
「純粋に治療の観点」からは、全摘の方が優位とはなります。
ただ、質問者のような好条件(腫瘍径が小さい)の場合には「美容的な面」から温存術を行う事が多い事も事実です。(比較的、安全に温存できるという安心感もあります)
「全摘すれば再発はなくなるのでしょうか?」
⇒乳房内再発は無くなります。
ただし、「遠隔転移再発」のリスクは(温存術の時と)同様に存在します。(これは乳腺をどうするのかとは別問題なのです)
○乳癌は「局所」と「全身」に明確に分けて考えてください。
「局所をどうするか(手術±放射線)」と「全身(遠隔転移再発など)」は全く別物なのです。