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術後の治療と妊娠、出産について

[管理番号:5903]
性別:女性
年齢:33歳
初めまして。
田澤先生にご質問がありますので、よろしくお願いします。
去年の11月末に乳がんの右胸温存手術を受けた者です。
約1ヶ月後の12月末、病理の結果と今後の治療方針を聞くための診察予定だったのですが、直前に妊娠が発覚しました。
(ちなみに胎嚢が確認できたのみでまだ心拍は確認できていません)1人子どもがいるので2人目となります。
治療を優先するか、今回は子どもを諦めるかで非常に悩んでおります。
せっかく授かった命なので産みたい気持ちはありますが、治療を延期することでのリスクや今回諦めたとして年齢のことも考えると今後また授かれるのか、いろいろなことを総合的に判断した上で最終的には結論を出したいと思っています。
ちなみに、病理の結果です。
腫瘍1.2センチ 浸潤径
リンパ節転移なし
悪性度 中(低より)
ER+ 90%以上
PR+80~90%
HER2 -
治療としては放射線30回、ホルモン療法の2つで抗がん剤はやってもほとんど効果がないとのことでした。
サブタイプの名前やKi値などは知らされていませんが、ルミナルAかルミナルBのどちらかなのかなと思います。
主治医の先生には妊娠出産で乳がんが悪化することはないが、治療を延期したことによるリスクなどの数字的なデータはないとのことで、治療を優先したほうがいいとも出産しても大丈夫ともなんとも言えない、よく考えて後悔しない選択をして下さいと言われました。
ただ、何の目安がないのも困るだろうからということで、アメリカのブレストセンター~というサイトで目安の数値を出していただいたところ、きちんと治療をした場合と10年間全く治療をしなかった人の10年後の生存率は3%の違いということでした。
これはあくまでも目安だから参考程度に考えてと言われました。
そこで、先生にお聞きしたいのが、
①先生の患者さんの中で、術後、治療前に妊娠、出産されたかたはいらっしゃいますか?
②もし先生が私の主治医だとしたら、治療を優先したほうがいいと思いますか?数字的なデータではなくても、治療を延期した場合のリスクをどうお考えになりますか?アメリカのサイトのデータはどの程度信じていいものなのでしょうか?
③妊娠中はマンモグラフィーやCTなどの検査ができなくなりますが、もし再発、転移などがあった場合、出産後かなり進んでしまっていることも考えられますでしょうか?
④今回諦めたとしても、2人目は欲しいと考えています。
年齢を考えると5年間は待てないので、2年間ホルモン療法をした後に一旦治療を休んで妊娠にチャレンジということになると思うのですが、ホルモン療法による子宮への影響はどの程度あるのてしょうか?ホルモン剤1錠と言われましたが、注射の必要はないのでしょうか?もともと生理不順もあるのですが、注射を行なった場合もきちんと生理は再開するのでしょうか?
長々とまとまりのない文章で申し訳ありませんが、回答お待ちしております。
よれしくお願いします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
過去の私の回答を見れば予測はできるとは思いますが…
いざ「自分の身になってみる」と、やはりそうも言っていられない(過去の回答だけで満足せずに、直接「自分の場合は?」的に聞いてみたいという)気持ちも理解できます。
「①先生の患者さんの中で、術後、治療前に妊娠、出産されたかたはいらっしゃいますか?」
⇒たくさん、いらっしゃいます。
「②もし先生が私の主治医だとしたら、治療を優先したほうがいいと思いますか?」
⇒妊娠優先です。
 その根拠は「妊娠出産はリスクを上げない」というエビデンスです。
「数字的なデータではなくても、治療を延期した場合のリスクをどうお考えになりますか?アメリカのサイトのデータはどの程度信じていいものなのでしょうか?」
⇒これは正確な理解ではありません。
 質問者のいう「アメリカのサイトのデータ」とは主治医が言った「きちんと治療をした場合と10年間全く治療をしなかった人の10年後の生存率は3%の違い」のことですね?
 ⇒「妊娠出産すること」と「全く治療をしなかった人」とは「似て非なるもの」です。
   一般に「妊娠出産は乳癌リスクを下げる」ことが解っています。
   「妊娠出産=無治療」ではないのです。
    ♯そのことを含めて「妊娠出産は再発リスクを上げない」となっているのだと(私は)理解しています。
「③妊娠中はマンモグラフィーやCTなどの検査ができなくなりますが、もし再発、転移などがあった場合、出産後かなり進んでしまっていることも考えられますでしょうか?」
⇒考え過ぎです。
 「再発を前提」とした「negative thinking」は止めましょう。(胎児にもよくありません)
 
 そもそも(特に妊娠出産可能な若い女性に)「CTを定期検査で用いよう」と考えるような医師は(私は)失格だと思います。(診察+腫瘍マーカーだけで見るべきです)
「注射の必要はないのでしょうか?」
⇒年齢的には、ホルモン療法をやるとしてら「タモキシフェン+LH-RHagonist(注射)」が適応となります。
「注射を行なった場合もきちんと生理は再開するのでしょうか?」
⇒かなりの確率で「再開」します。(その点は抗癌剤とは異なります)