[管理番号:732]
性別:女性
年齢:37歳
質問者様の以前の質問質問が新たな内容のため、別の管理番号としました。 |
術後の病理検査結果がまだ出ていない段階で、何度も質問申し訳ありません。
どういう治療になるのか不安でしかたありません。
補助療法の決定でKi67値、グレード、腫瘍径、年齢、患者の希望などたくさんあると思いますが、一番優先されるものはなんですか?年齢的に心配しています。
腫瘍径が小さいと、転移はないと教えていただきましたが、術後になぜ全身療法をするのですか?
あと、温存手術でリンパ節転移はなく(センチネルのみ)なのですが、手術側の肩にかばんをかけないように、リュックはしないように、重い物の持たないようになど言われていますが、これからどのぐらい重いものを持ったり、手を使う仕事をしてはいけませんか?
術後、みなさんどのくらいから仕事復帰されますか?
よろしくおねがいします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
「術後補助療法」ですね。
皆さんが「疑問に思う」内容に感じました。
ありがとうございます。
回答
「補助療法の決定でKi67値、グレード、腫瘍径、年齢、患者の希望などたくさんあると思いますが、一番優先されるものはなんですか?」
⇒サブタイプです。(サブタイプの中でluminal typeをAとBに分ける際にKi67を用います、逆に言うと、luminal type以外のサブタイプにとってKi67は意味がありません)
サブタイプで殆どが決まってしまうのです。
●luminal type:(ER陽性、PgR陽性、HER2陰性) ホルモン療法が有効(更に増殖指数Ki67の値が低いAと高いBに分けます)
♯luminalA(Ki67低値)ではホルモン療法単独を、luminalB(Ki67高値)には(ホルモン療法に加え)化学療法も行う事が多い
● HER2 type:(HER2陽性のもの) ハーセプチンという分子標的薬と通常の抗癌剤の組み合わせを行う
●トリプルネガティブ:(ER陰性、PgR陰性、HER2陰性)通常の抗癌剤を行う
●トリプルポジティブ:(ER陽性、PgR陽性、HER2陽性)ホルモン療法と分子標的薬と抗癌剤の全てを行う ※正式名称はluminal B(HER2タイプ)と言います。
次は腫瘍径(最大浸潤径)です。
HER2 typeであろうが、トリプルネガティブだろうが、5mm以下では抗がん剤の適応は無いのです。
「年齢」や「リンパ節転移の個数」なども、考慮して最終的に決定します。
しかし本当の最終決断は「患者の希望」です。
○補助療法は「治療ではなく」あくまで「予防の範疇」なので、患者さんの自由意志が最終的に尊重されます。
「腫瘍径が小さいと、転移はないと教えていただきましたが、術後になぜ全身療法をするのですか?」
⇒再発予防目的です。
「腫瘍径が小さいと、転移はない」というのは、「初期治療の段階」の話です。
私は経験的に「乳癌の初期治療の段階で遠隔転移が殆ど無い」事を知っています。
ただし、それは「初期治療の段階」での話であり、『術後10年までに転移が出現する可能性はゼロではありません』
そのために、「全身療法」を行うのです。
無論「その確率」は「腫瘍径が小さい程、低くなり5mm以下なら殆どゼロとなります」
それで、「浸潤径5mm以下」では「HER2タイプだろうが、トリプルネガティブだろうが化学療法の適応は無くなる」のです。
「これからどのぐらい重いものを持ったり、手を使う仕事をしてはいけませんか?」
⇒これは「手術の精度」によります。
きちんとした精度(余計なリンパ管を破壊しない)「正しいセンチネルリンパ節生検」であれば、「制限は不要」です。
「江戸川病院」では「センチネルリンパ節生検」の患者さんには「制限なし」とお話ししています。
○これは執刀医によって異なるので、「手術をした執刀医」に確かめてください。
「術後、みなさんどのくらいから仕事復帰されますか?」
⇒(一般的か、どうかは別ですが)
江戸川病院では「術後翌日退院」しますが、「若い方」だと退院翌日(術後2日目)から仕事復帰する方も多いです。
慎重な方は「術後1週間位仕事を休む」ようです。
○私は「仕事復帰は退院翌日からでも可能」と案内しています。
質問者様から 【質問2】
いつもありがとうございます。病理検査の結果がでまして、お聞きしたいことがでてきました。たくさんあってすみません。乳房温存で、背中の皮膚と脂肪と血管を回し入れる手術をしました。
腫瘍径 7㎜
リンパ節転移なし
グレード1
ER+ Pgr+ HER2-
Ki67…5~15
でした。
主治医に安心できる数字と言ってもらえて、少し安心しております。抗女性ホルモン剤を5年、お腹に注射が2年と言われました。
・Kiに幅があり、15なら抗がん剤だったと言われたのですが、こちらのQ&Aで勉強したかぎり、ルミナルBとの境は20~30と思いましたが、年齢など他に理由があるのでしょうか。結局ルミナルAとして治療するのですが、ぎりぎりなのでしょうか。
・病理結果をもらおうとすると、「みんなに言われるんだけど、病理から渡すなって言われてて…」と困っていました。「自分のことだから渡したらいいのに、こう書いてあって…」とパソコンの病理結果画面の下には「病理医の承諾がないかぎり渡せない」というようなことが書いていました。手続きをしたらもらえるしいのですが、それがかなり面倒くさいそうです。主治医は内緒で画面を写真にとってくれたらいいと言ってくれたのですが、上の結果が分かればよかったので、申し訳ないので遠慮しました。こんな病理医っているのですか?他に知っておいたほうがいい数値などありますか?
・薬局でジェネリックにするか聞かれ、始めなのでノルバデックスにしましたが、ジェネリックでも問題ないでしょうか。
・10㎎を朝晩なのですが、調べると20㎎を1回の方もおられるようで、その違いを教えてください。
・お腹の治療は必要ですか?かなり痛いらしいのでこわいです。
・薬を飲み始めて3日目ですが、何の副作用もありません。このままいけるでしょうか。体重増加する人もいるようですが、それも心配です。
・私は再発の可能性や10年生存率はどのくらいありますか?ステージ1で少しは安心してますが、なにせ癌なので不安です。
たくさんで申し訳ありません。よろしくお願いいたします。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
pT1b(7mm), pN0, luminal A, NG1
これは文句なしの「早期乳癌」です。
私の経験の中でも「再発した人は記憶に無い」位の再発低リスクです。
回答
「抗女性ホルモン剤を5年、お腹に注射が2年」
⇒「お腹に注射=LH-RHagonist」が本当に必要か?というところでしょう。
SOFT試験では「35歳以下」で有効となっています。
まあ、37歳だから「感覚的には、担当医のやることに理解」はできますが、pT1b(7mm)となると私なら「TAM単独」とします。
「ルミナルBとの境は20~30と思いましたが、年齢など他に理由があるのでしょうか」「結局ルミナルAとして治療するのですが、ぎりぎりなのでしょうか。」
⇒医師により施設により「意見がまとまらない」ことを理由に「Ki67に統一基準値は定めない、各施設の基準値で行うように」とSt.Gallen2015では最終的に妥協案が出されましたが…
専門家の最も多くが(その線引きが)「20-30%」と投票したことは事実です。
その意味で私は「20-30%」が妥当と考えています。
しかし、いまだに「14%以下を基準」としている医師もいるようです。
担当医が「14%以下をルミナールA」と未だに考えているだけであり、年齢の問題ではありません。
「こんな病理医っているのですか?」
⇒私は見た事がありません。
本来「患者さんのもの」である筈ですが…
「他に知っておいたほうがいい数値などありますか?」
⇒強いて言えば「組織型」や脈管侵襲(ly, v)ですが、絶対必要と言う訳ではありません。
「ジェネリックでも問題ないでしょうか。」
⇒タスオミンなど昔から使われていますが、全く問題ありません。
「10㎎を朝晩なのですが、調べると20㎎を1回の方もおられるようで、その違いを教えてください」
⇒朝20mg1回でいいと思いますが…
違いとすれば、「胃に負担をかけないように、朝晩に分ける」と言う位ですね。
「お腹の治療は必要ですか?かなり痛いらしいのでこわいです」
⇒前述したように、私であれば行いません。
「飲み始めて3日目ですが、何の副作用もありません。このままいけるでしょうか」
⇒大丈夫そうです。
しかし「のぼせ」のような副作用はもう少しすると「いくらかは」でるとは思います。
「体重増加する人もいるようですが、それも心配です」
⇒薬の副作用ではありません。
「食欲増進」に対して「コントロールすればいい」のです。
「再発の可能性や10年生存率はどのくらいありますか?」
⇒再発率は9% (私の感覚では5%以下ですが)
10年生存率は98%となります。