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非浸潤性乳管癌の治療について

[管理番号:5558]
性別:女性
年齢:34歳
はじめまして。
精密検査を受けてから、こちらを拝読し勉強させていただいております。
いつもありがとうございます。
6月25日頃、左胸の左下部分の張りと痛みを感じ、乳頭から血のような分泌物が出た為
6月(下旬)日に自宅近くのレディースクリニックを受診。
エコーで確認したところ、血管が拡張していることが分かり、針を刺して細胞診を行いました。
7月(中旬)日の検査結果では、「判別困難」で先生もこれでは原因が分からない(出血は止まっていました)為、8月(下旬)日にマンモグラフィ検査。
その際、左胸から出血があり、その後の検査結果から「乳腺が発達していて白く映ってしまっている。これでは分からない。」と針生検の設備がある自宅近くの総合病院(○○病院)への紹介状を書いて下さいました。
9月初旬から、エコー、MRI、針生検(エコーにて)を行った結果、非浸潤性乳管癌と診断されました。
説明と結果が以下の通りでした。
MRIでは、左胸左下領域および右上領域にカテゴリー4の所見。
乳管内エコーでは、左下に広範囲でモヤモヤした画像(血管が拡張している)、右上に石灰化と低エコーが見られる。
その為、広範囲の左下領域を針生検で10か所、12本の組織を取った。
「11本の検体に、量の差はあるが異型型乳管癌細胞が充実管状、または?状構造で乳管内増殖を示し、核クロマチンの増加、構造の乱れ、および部分的にcomedoがみられます。
念のため、免疫染色で二層構造の有無を検索して追加報告をお届けします。」
核グレード:1 核異型スコア2+核分裂スコア1
In situ:あり
石灰化:なし、comedo+
尚、ER,PgR,Ki-67は、次回受診の際に分かるそうです。
診断が出るまでは不安もありましたが、こちらのQ&Aを読みながら少しずつ勉強し、前向きに治療に向かいたいと思っているところです。
主治医からは、左胸1/4の広範囲であること、右上にもカテゴリー4の所見があることを踏まえ、全摘(病理検査の結果が出てから希望するなら再建)を勧められました。
田澤先生のお答えを読む中で、乳頭・乳輪を残すリスクなども考えると全摘が一番安心できるように思っています。
そこで、いくつか質問をさせていただいてもよろしいでしょうか。
① 左胸の右上領域の針生検は行っておりませんが、それを行ってから部分切除かを決めた方が良いのでしょうか。
② 主治医より、私は「皮下脂肪がほとんどなく、乳腺と皮膚との境界が少ない為、乳腺全部をとる手術は皮膚ギリギリまでになり難しいものになる。
上の先生に執刀してもらうかもしれない。」と言われました。
先生の技術によって、取り残しがあるリスクを考えた方が良いのでしょうか。
③ 最初に気になる症状が出てから4ヶ月ほど経ちますが、セカンドオピニオンを行ったり、場合によっては転院をして(②のリスクを考えて)手術まで時間がかかっても大丈夫なものでしょうか。
今の病院であれば、10月末か11月初旬には手術可能なようです。
④ エキスパンダーによる乳房同時再建を行う場合、センチネルリンパ節生検を同時に行うことはできないのでしょうか(事前に1泊2日で行うと説明がありました)。
⑤ 左胸に加えて、エコーで右胸にも石灰化と低エコーが見られることが分かりました。
マンモを勧められておりますが、それを飛ばして針生検をお願いした方が良いのでしょうか。
(マントーム生検の設備はないため)
週末(中旬)日に、再度主治医との診察があり、希望を話すことになっておりまして、急ぎご質問させていただいた次第です。
お忙しい中、長文をお送りして大変申し訳ございません。
率直なご意見を伺えればと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
「尚、ER,PgR,Ki-67は、次回受診の際に分かる」
⇒非浸潤癌では不要です。
 何故なら、それらの情報は「全身療法」の為にあるのですが、非浸潤癌には「全身療法は不要だから」です。
「① 左胸の右上領域の針生検は行っておりませんが、それを行ってから部分切除かを決めた方が良いのでしょうか。」
⇒その方がいいでしょう。
 何故なら…
 (もしも「その部分が癌だったら…」という仮定を排除できるため)その方が「物事をよりシンプルに考えることができる」からです。
「乳腺全部をとる手術は皮膚ギリギリまでになり難しい」
⇒全く、「ありないレベル」です。
「手術まで時間がかかっても大丈夫なものでしょうか。」
⇒非浸潤癌なのだから全く問題ありません。
「エキスパンダーによる乳房同時再建を行う場合、センチネルリンパ節生検を同時に行うことはできないのでしょうか」
⇒普通は同時に行います。
「右胸にも石灰化と低エコーが見られる」
⇒そもそも「エコーで石灰化」という所見自体が「全く無意味」です。
 「石灰化が本当にあるのか?カテゴリーはいくつなのか?」まずはマンモを撮影し、(必要なら)ST-MMTすべきです。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

非浸潤性乳管癌の治療について
性別:女性
年齢:34歳
先日は、お忙しい中、的確なご回答をいただきましてありがとうございました。
先生のお言葉で、落ち着いて考えることができましたことを改めて御礼申し上げます。
昨日、主治医との診察へ行ってまいりました。
以下が示された治療方針になります。
①術式は全摘。
(MRI:D領域にモヤモヤと広範囲に広がっており、皮膚側から乳頭に向かって長く伸びているものも見られる為)
②皮膚側の断端などを確認してから二期的に再建も可能。
③もし、皮膚側に癌がかなり近接している時は、放射線治療を追加することで局所再発のリスクを低下させられる。
非浸潤癌を全摘で全て切除し根治を目指したいと考えておりましたが、皮膚に近いことで局所再発の可能性を考えなければいけないことに動揺してしまいました。
また、皮膚については縫合できる範囲でしか切除できない為、D領域の癌に近い部分は仮に癌が画像診断より大きかった場合、取りきれない部分が出る(断端陽性になる)かもしれず、その場合は放射線治療になるという話も初めて聞き、混乱しております。
取りきれなかった場合、追加切除を希望できるか伺うと、皮膚が足りない為、植皮することになるとも言われました。
乳腺を全切除しても、それ以上に(他の組織ということでしょうか)癌が広がっている可能性もあるということでしょうか。
難しい手術になるということと、早期である以上手術が重要であることを示唆され、他の病院を探すようにということかと理解し、不安な気持ちになった為、再度質問をさせていただいた次第です。
加えて、(転院する場合は)転院先でマンモグラフィー検査を行う方が良いとのことで、いったん右胸について保留になっていることも不安に思っております。
画像などもなく、不躾な質問かと存じますが、田澤先生のご経験から率直なご意見を伺えれば幸いです。
どうぞよろしくお願い致します。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
申し訳ありませんが…
とても「まともなレベルの乳腺外科医」とは思えません。
非浸潤癌は、そもそも「乳腺内に癌が留まっている」ので『皮膚浸潤など、(当たり前ながら)ありえません』
☆普通に、乳腺を全切除すればいいだけです。「皮膚側断端など、そもそも気にする方がナンセンス」
○皮膚側断端を気にする場合とは…
 進行した乳癌で、明らかな皮膚浸潤を認める場合のみです。
 普通の浸潤癌でさえ、皮膚側断端など気にしないのに、『ましてや、非浸潤癌で皮膚側断端を気にする』ことなど、1000%ありえません。(そんなことを気にしなければ、手術ができないのは「研修医」くらいです)
「難しい手術になるということと」
⇒?????
 非浸潤癌の全摘手術が難しいとは…
 とても「ありえない」レベルです。(実際は、普通に1時間もかからない簡単な手術です)
「田澤先生のご経験から率直なご意見を」
⇒ご理解いただけましたか??
 全く「奇想天外」以外の何物でもありません。
 まともな乳腺外科医が「非浸潤癌の全摘が難しい手術」など言ったら、「呆れられる」だけでしょう。
 ☆私に言えることは…
  全く心配無い状況なので、「まともな」乳腺外科医に「極めて普通に」手術してもらうべきです。
 
 

 

質問者様から 【質問3】

非浸潤性乳管癌の治療について
性別:女性
年齢:34歳
先日は、お忙しい中ご回答いただきましてありがとうございました。
先生からのお言葉を読んでハッとし、転院を考えることに決めました。
背中を押していただき感謝申し上げます。
改めて先生のコラム85回目 ○この層構造の理解が、「皮膚側断端」「深部側断端」の理解に役立つのです。
を読んで、私の場合は…と切除のイメージを想像しておりました。
(モヤモヤが見えるD領域上の皮膚を切除するのでしょうか。)
そこで、もう一つ質問させていただきたいのですが…
全摘をし、全部が非浸潤癌だった場合は放射線治療は不要と解釈しておりますが、仮に浸潤部分が見つかっても、大きくなければ(非浸潤部分が大半であれば)放射線治療はやはり不要でしょうか。
転院先として仕事のことも考え、1時間圏内の病院のセカンドオピニオンを予約しましたが、こちらを拝見していると(放射線治療が不要であれば)やはり先生に手術をお願いできれば安心だという思いが頭を離れません。
今から年内(11月下旬から12月頃)に手術をしていただくことは難しいでしょうか。
貴重な質問の枠を使わせていただき大変恐縮ですが、どうぞよろしくお願いいたします。
 

田澤先生から 【回答3】

こんにちは。田澤です。
質問者にご理解いただけたように…
手術は層構造の理解が第1歩です。
非浸潤癌は乳腺の表面側にある「皮下脂肪」にも裏側にある「大胸筋」にも浸潤しようがないのだから、「皮膚側断端が心配」という概念自体全くナンセンスなのです。
実際はどうしているかというと…
浸潤癌の場合
 1.全摘の場合には『今週のコラム 86回目 このようにすれば、全摘で深部側断端が陽性となることはないのです』にあるように「腫瘍直上の皮膚も切除」します。(全摘の場合、原則、術後照射が無いので)
 2.部分切除の場合には「術後照射がある」ので(画像上、明らかな皮膚浸潤を疑わない」かぎり(腫瘍直上の)皮膚切除はしません。
非浸潤癌の場合
 (温存でも全摘でも)皮膚切除する必要はありません(乳腺内に腫瘍が留まっているため)
 ただし、全摘の場合には(やはり照射はしないので)「皮膚に近いな!」と感じたら、「可能な範囲で近い部位の皮膚も切除」することはあります。(通常はしませんが)
「モヤモヤが見えるD領域上の皮膚を切除するのでしょうか。」
⇒上記通りです。
 原則として切除しません。
「仮に浸潤部分が見つかっても、大きくなければ(非浸潤部分が大半であれば)放射線治療はやはり不要でしょうか。」
⇒不要です。
「今から年内(11月下旬から12月頃)に手術をしていただくことは難しいでしょうか。」
⇒現在は1カ月~11カ月の待ちなので大丈夫です。
 非浸潤癌の全摘の場合は(葉状腫瘍と同様に)「手術が全て」なので、後悔のないようにしてください。
 ご希望の場合には秘書メールを。

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