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非浸潤がんについて

[管理番号:6294]
性別:女性
年齢:52歳
田澤先生
はじめまして。
お世話になります。
今年2月に左胸に乳管内非浸潤性がん(ステージ0)がみつかり、5月上旬、部分切除手術の予定です。
手術の際浸潤がんがみつからなけれ
ば、その後は25回の放射線治療のみの予定です。
浸潤がんがみつかればホルモン療法の可能性ありと説明されています。
温存療法でほぼ納得していますが、乳房内の再発が心配で、全摘との選択で若干の迷いがあります。
病理と経緯は以下の通りです。
病理
Nuclear grade 1(nuclear atypia 2, mitotic counts1)
ER(+;90% 中) PgR(+;90% 強)
HER2 1+ (非浸潤性のため参考)
comedo necrosisを伴ったものもあり石灰沈着も見られる。
腺腫の大きさ 13×7mm
石灰化の範囲 一番距離のあるところで30mmぐらい
しこり位置 胸の上部外側の端、脇のそば。
経緯
2008年に健康診断でしこりが見つかり地元病院の乳腺科受診。
マンモとエコーの結果、石灰化もみられましたが、良性の腺腫と思われるという診断で半年ごとの経緯観察になり、その後変化がないため1年ごとの経緯観察を続けて来ました。
今年になって更年期のためか胸のはりが強くしこりが若干大きくなったような感触があったため、定期検診を少し早めて受診し、念のため初めて針生検(エコーを見ながら採取)をしたところ発見されました。
大きな病院に紹介され、造影剤を入れてMRI検査をした結果、温存治療をすすめられています。
質問
治療方針の選択とは関係ないですが、今の私の状態で、手術で浸潤がんが見つかり、さらに遠隔転移もしている可能性はありますか?手術時にセンチネルリンパ節生検は行います。
病歴も長く場所が脇にも近いので心配です。
これは今更知ってもどうにもならないのですが、10年前からしこりがあり、長い経過を経ていますが、これは当初からがんだったと思われますか?
2月以降、生理前に限らず、たびたび左胸だけ胸のはりを感じます。
更年期で生理不順のせいだとは思うのですが、がんとなにか関係があるのでしょうか?
乳房内再発の場合、再発したがんの性質(病理の結果や進行の速度)
は、はじめに出来たものと全く異なるものが出現するのでしょうか?ある程度類似性があるのでしょうか?
なにとぞ、よろしくお願い致します。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
乳癌の診療をしていると自ずと解ることですが、「初期治療の際に遠隔転移していることは、極めて稀」であり、今回のように「術前診断で非浸潤癌なのに、遠隔転移を想像する必要は10000%ありません」
「今の私の状態で、手術で浸潤がんが見つかり、さらに遠隔転移もしている可能性はありますか?」
⇒浸潤癌が見つかる可能性はあります。
 ただ遠隔転移はありえません。
「これは当初からがんだったと思われますか?」
⇒当然「最初から癌」です。(癌は最初から最後まで癌だし、良性腫瘍は最初から最後まで良性腫瘍なのです)
 ★10年も経過を見ていて非浸潤癌ということは「かなり大人しい癌」であることは疑いようもありません。
「がんとなにか関係があるのでしょうか?」
⇒絶対にありません。(荒唐無稽)
「乳房内再発の場合、再発したがんの性質(病理の結果や進行の速度)は、はじめに出来たものと全く異なるものが出現するのでしょうか?」
⇒これは単純に…
 乳房内再発には2つあります。
 1.元の癌の取り残し
 2.全く新規に癌が発生
 1であれば、「同じ」だし、2であれば「違う」ということです。
 物事はシンプルに考えましょう。
 
 

 

質問者様から 【質問2 微小浸潤について】

性別:女性
年齢:53歳
管理番号 6294
田澤先生 こんにちは。
手術前の相談にご回答ありがとうございました。
5月上旬に温存手術+センチネルリンパ生検を終え、病理の結果が出たところですが、いろいろと心配な事が出てきてしまいました。
まず1mmの微小浸潤が見つかりました。
また切除した部分の病巣の広が
り方から多中心性、多発性と思われると言われました。
(マッピングをみると40mmぐらい離れています) また術中迅速診断で3~5時方向が断端陽性となり手術中に追加切除を行ったのですが、その追加切除片から、非浸潤がんが見つかりました。
病理診断予定より3週間も遅れたため(検討箇所が多かったという説明ですが)
来週から放射線治療の予定が組まれています。
所見
組織型 Microinvasive carcinoma
腫瘍サイズ(マクロはnot assessed)
最大結節病変 8×5mm
病変の広がり 24×7×45mm(散在型)
浸潤最大径  1×1mm
病理学的T因子 pT1mi
浸潤パターン intraductal+microinasion
脈管侵襲 Ly0 V0
リンパ節転移なし 0/1
核グレード グレード1
nuclear atypia-1 mitotic score-1
組織学的グレード グレード1
tubule format-1 nuclear atypia-2 mitotic counts-1 ER 100%
PgR 100%
切除断端 陽性

微小浸潤が見つかったため、主治医からはホルモン剤は必須ではないが
(5mm以上なら推奨)、したほうがいいかもしれない、放射線治療中に考えておくようにと言われています。
閉経が近そうですが、はっきり閉経するまではタモキシフェン5年といわれました。
総合的にみてホルモン治療はした方がいいでしょうか?

ほかの方へのご回答などを読むと、田澤先生は多発性なら全摘を勧めるとあります。
主治医からも放射線治療をしないで、再度全摘という選択もあり得るとの言葉がありました。
(勧めるとまでは言われませんでしたが)田澤先生はどうお考えになりますか?
麻薬の副作用が強く出る体質のようで、手術後しばらく体調が回復せず、本当は再手術を考えたくはありませんが、やはり乳房内再発はとても怖いですし、放射線治療をしてしまうとシリコンの再建が難しくなると聞いて迷いがあります。
また「この先もし再発しても、改めて全摘すれば、はじめから全摘したのと予後は同じ」という先生の見解に私は当てはまりますか?
3
このまま全摘せずに治療を進める前提の場合…
断端陽性については、左乳房の外側かなり端だったので3時方向は乳腺を端まで取り除き、4~5時についてもほとんど(完全にとはおっしゃ
いませんでした)乳腺は残っていないということで、この部分への放射線のブースト照射5回追加でいいのでは言われています。
4-5時の追
加切除は考えなくてもいいでしょうか?
*3時方向所見
クロマチンの濃染した核を有する異型細胞の増生を認める。
*4-5時方向所見
乳管状増殖を示す上皮部分ではCK5/6の発現低下とERのびまん性陽性像が見られます。
このことから3×1mm大の範囲で異型腺管があると考えます。
また、病理で深切りで確認したところ6-7時の皮膚側切離断端の近くにも乳管内病変が点在しており200μm程度まで見られますとのことでした。
主治医から皮膚側も皮下脂肪ギリギリまでとったので大丈夫と言われたのですが、通常の判断でしょうか?

浸潤があったということは、がんのサブタイプについてもわかるのではないかと思っていたのですが、ホルモンレセプターの記載しか見当たりません。
微小浸潤ではKi67、HER2は調べないのでしょうか?
長文で申し訳ありません。
 
よろしくお願い致します。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
物事はシンプルに考えましょう。
「総合的にみてホルモン治療はした方がいいでしょうか?」
→行いません。
「田澤先生は多発性なら全摘を勧める」
→それが安全なことは間違いありません。(主治医も同意見でしょう)
「この先もし再発しても、改めて全摘すれば、はじめから全摘したのと予後は同じ」
という先生の見解に私は当てはまりますか?」

→その通り。
「4-5時の追加切除は考えなくてもいいでしょうか?」
→それは当然考えるべきです。
 ただし、多方向に断端陽性であれば、(中途半端に追加部分切除よりは)「放射線で経過を見るか、全摘するか?」どちらかを選択すべきでしょう。
「皮膚側も皮下脂肪ギリギリまでとったので大丈夫と言われたのですが、通常の判断でしょうか?」
→非浸潤癌は乳腺をきちんと切除すれば(理論上)皮膚側や胸筋側に残ることはありえません。
「微小浸潤ではKi67、HER2は調べないのでしょうか?」
→不要です。
 抗がん剤の対象にはならないからです。(まったく無駄な検査)