[管理番号:5027]
性別:女性
年齢:48歳
田澤先生、こんにちは。
心配事があり、初めて質問させていただきます。
2014年11月、職場健診のマンモグラフィーで「左内側局所的非対称性
陰影」との所見がついたので、左胸の再マンモと両胸のエコー検査を受けに健診を受診したクリニックの乳腺外来に行きました。
懸念された左胸は差支えありませんでしたが、右胸は半年間の経過観察となりました(豹柄模様にまだらに影が写っている部分があり、ほとんどは乳腺が折り重なって陰に見える症状だが、ごくわずかにがん細胞の可能性があるので、半年後に写してみて同様だったら、細胞を摂取して病理検査する、との口頭説明)。
その後、年1回の健康診断(マンモ)
と半年ごとのエコー観察。
2015年12月エコーの結果、「しこりが大きくなり(1.5cm程度)、硬度も上がっていて、境界線がギザギザしている。
がん化の疑いがあるの
で組織診断を行う」ことになりました。
ばね式の針生検です。
組織は大学病院の病理診断センターにまわされ、結果は以下の通り良性(乳腺線維腺腫)となりました。
<臨床診断>
MMG所見np
US所見 多角形腫瘤 カテゴリー4 ca. or MP
<病理診断>
Fibroadenoma, CNB
<病理所見>
提出された検体は3本のCNB検体です。
組織学的には3本中2本に浮腫状
の間質が結節状に増殖する像が認められます。
間質細胞に異型はなく、
分裂像も認めません。
Fibroadenomaです。
今回はプレパラート上に明
らかなmalignancyは認められません。
その後、エコーによる経過観察を続けていましたが、2017年6月のエコーの結果、「しこりが大きくなり(2cm程度)、境界線があいまいになっている。
触診で悪い感じはせず、組織診断で良性が出ているので大丈夫だとは思うが、100%絶対とは言えないので、再度の組織診断をしたほうがよい。
今度は、保険適用外で10万円かかるが、太い針の針生検で検査の精度を上げたい。
組織の採取方法に前回と大きな違いはないので心配ない」とのことでした。
私は前回の針生検が確定診断だと思っていたため、難色を示したところ、「2014年当時と比べてしこりは明らかに大きくなってきている。
特に前回から比べて今回ぐんと大きくなったので心配である。
急ぎ1か月以内に再生検を受けてほしい」と説得するように説明されました。
来週に針生検の予約を取り、受診待ちの状態です(ただし保険適用外の針生検にしなければならない理由に納得がいかないため、前回と同様の生検でお願いしています)。
検査専門のクリニックなので検査には信頼を置いていたのですが、針生検の手技に自信がないと言われているようで不安です。
保険適用外の「太い針の針生検」とは何のことでしょうか?また、今回はこの方法にした方が良いでしょうか?
そもそも乳腺線維腺腫は、肥大化したり、境界線があいまいになったりしないのでしょうか。
診断に不安を感じるようでしたら、病院に紹介状を書いてもらおうかなと考え始めています。
なお、しこりは自分で触ってみても明確に自覚せず、「言われてみればこれかな」という程度の、どちらかというと柔らかい感じです。
良性の特徴である「くるくる動く」感じというより、あまり動かないしこりです。
確かに大きくなっているようには思います。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
「今度は、保険適用外で10万円かかるが、太い針の針生検で検査の精度を上げたい。」
⇒どう考えても「マンモトーム生検しかない」と思うのですが…
ただし、マンモトームは勿論「保険適応内」です。
○それを「保険適応外」と言っているのは「その医師の勘違い」なのか、わざと「保険適応外のもの(そんなものが存在することが想像できませんが)」を使って利益を挙げようとしているのか?
「保険適用外の「太い針の針生検」とは何のことでしょうか?」
⇒そんなものは無いと思いますし、(そもそも)「保険適応内であるマンモトーム」で十分です。
「また、今回はこの方法にした方が良いでしょうか?」
⇒是非「保険適応内」であるマンモトームにしましょう。
「そもそも乳腺線維腺腫は、肥大化したり、境界線があいまいになったりしないのでしょうか。」
⇒可能性があるとすれば「葉状腫瘍」です。(さすがに、今更「癌」ということはないでしょう)
線維腺腫と葉状腫瘍は、どちらもfibroepithelial tumorであり、(針生検などの)「サンプリング程度の材料」では鑑別が時に難しいのです。(摘出した腫瘍全体で初めて診断が確定します)
質問者様から 【質問2】
葉状腫瘍の手術について
性別:女性
年齢:48歳
田澤先生、先日は管理番号5027の質問に回答いただき、誠にありがとうございました。
その後、医師との行き違いも解消し、無事に右胸しこりに対し保険適用のマンモトーム生検を受けることができました。
また、今回医師とよく話し合い、信頼を置いた上での生検受診となりました。
重ねて御礼申し上げます。
(行き違い:保険適用外の生検→保険適用の生検、現在のしこりの大きさ 2cm程度→2.9cm)
ところで昨日マンモトーム生検の結果が出まして、田澤先生のおっしゃるとおり、
「良性の葉状腫瘍を疑う。早期の摘出手術を勧める」とのことでした。
<臨床診断>
MMG所見 今回は実施せず US所見 徐々に増大、前方境界線の断裂疑い カテゴリー4
<病理診断>
Phyllodes tumor, benign, suspected, VAB.
<病理所見>
提出された検体は3本のVBA検体です。
組織学的には、3本ともに浮腫状の間質の結節性増殖が見られます。
間質細胞には細胞異型はなく、分裂像も認めませんが、一部細胞密度がやや高く、また
ややのう胞状になっている部位が認められます。
乳管上皮には異型は認めません。
FAも完全には否定できませんが、今回はPhyllodes tumor, benignを疑います。
腫瘤摘出は可能でしょうか?
以上の所見は確定診断と受け止めてよろしいでしょうか。
葉状腫瘍であるならば、たとえそれが良性であったとしても、しこりが2016年11月に1.5cm程度だったものが2017年7月に2.9cmに肥大化しているとなると腫瘍切除手術しかないと覚悟しています。
また、初回の適切な手術がその後の腫瘍再発・転移・悪性化を防止することも理解しています。
そこで、ぜひ葉状腫瘍症例の経験が豊富な田澤先生に執刀していただきたいのですが、
お願いできますでしょうか。
現在のクリニックは検査までで手術は行わず、本人が希望する病院に対し、紹介状や画像などの情報はすべて提供するとのことです。
なお、私の症例はがんや悪性葉状腫瘍よりは緊急性はないとは思いますが、できれば8月中には手術を行いたいと考えています。
更なる肥大化を考えるとなるべく急いだ方が良いと考えており、手術までに時間がかかるようであれば、一般的にどのくらい待てる(腫瘤を放置できる)のか、目安をお教えいただけると安心です。
また、最後の質問ですが、扁平で最長部が2.9cmのハリのないしこりのばあい、一般的に乳房温存手術となるでしょうか。
(すみません、不安感と弱気から受診前にお聞きしてしまいました。早めに知っておきたかったので・・・)
以上、何度も申し訳ありませんが、アドバイスをよろしくお願いいたします。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
マンモトームできて良かったですね。
「以上の所見は確定診断と受け止めてよろしいでしょうか。」
⇒ほぼ間違いないでしょう。
癌は完全に否定できます(それだけでも、大変安心なことです)
葉状腫瘍の場合には「境界悪性まで」の可能性はありますが、(病理レポートからは)「良性の可能性が高い」ようです。
「ぜひ葉状腫瘍症例の経験が豊富な田澤先生に執刀していただきたいのですが、お願いできますでしょうか。」
⇒大丈夫です。
ご希望の場合は「秘書メール」してください。
ご本人が理解されているように、「1回で完結」させることが大切です。
「手術までに時間がかかるようであれば、一般的にどのくらい待てる(腫瘤を放置できる)のか、目安をお教えいただけると安心」
⇒2.9cmの葉状腫瘍ならば3カ月以内がいいでしょう。
「扁平で最長部が2.9cmのハリのないしこりのばあい、一般的に乳房温存手術となるでしょうか。」
⇒乳腺部分切除となります。(癌でいう、乳房温存手術とは保険点数上異なります)
悪性葉状腫瘍もしくは10cm以上の境界悪性葉状腫瘍出ない限り乳腺全摘は通常行われません。
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