[管理番号:1124]
性別:女性
年齢:38歳
質問者様の別の質問質問が新たな内容のため、別の管理番号としました。 |
田澤先生、
いつもお忙しい中ありがとうございます。
私は38歳二児の母ですが、数ヶ月前に右側乳房を非浸潤乳管がんと診断され、全摘
手術、センチネルリンパ節生検、同時再建を受けました。術後の病理結果は5ミリに
スライスされた検体からも非浸潤乳管がん、グレード1、ホルモン陽性、hear2?2と
なり、主治医の判断とわたしの選択で無治療となり今に至ります。
最近、以下のようなサイトを見つけ、また、論文を見つけました。
「本試験により、乳腺腫瘤切除術は、同じ側の乳房での再発リスクを軽減しますが、
乳がんによる死亡リスクに変化はないことが明らかになりました」とKramer医師は述
べた。「これは、DCISに対する局所療法が死亡リスクに影響を与える可能性がないこ
とを示唆しており、最も重要な転帰です。この観察結果は、DCISの生物学的側面に重
要な識見を与えるものです」とも述べた。
また別の所見では、DCISと診断された517人の女性が乳がんで死亡しているが、DCIS
が発見された乳房とそうでないほうの乳房のどちらにも浸潤がんは発現していなかっ
た。DCISには身体の他の部位に転移する“固有の特性”を有するものがあると、著者
らは書いている。」
私の主治医からは術後は無治療を勧められ、早期で本当に良かったと声をかけていた
だき、これからはまた頑張ろうと思っていましたが、こちらの論文を拝見してから
は、とても不安になってしまい、また、無治療で本当に大丈夫なのか、心配です。主
治医からは非浸潤の場合はhear2などの数値は参考にしないと説明されましたが、本
当に大丈夫なのか不安です。
お忙しい中大変申し訳ありませんが、田澤先生は上記の論文についてどう思われます
か?
私は今後どのように気をつけるべきか、覚悟するべきかご教教いただけると大変助か
ります。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
私は全く、このKramer医師とは立場を異にしています。
回答
「DCISに対する局所療法が死亡リスクに影響を与える可能性がないことを示唆」
⇒DCISを「ガンモドキ」という人もいるようですが、私には賛成できません。
実際に「過去に非浸潤癌だったであろう」人が、数年後に「立派な浸潤癌となり命
の危険に曝されている」ことを目の当たりにしている経験は「1度や2度では」ありま
せん。
「DCISには身体の他の部位に転移する“固有の特性”を有するものがあると、著者ら
は書いている」
⇒結論が飛躍し過ぎています。
もはや「空想の域」といっていいでしょう。
「私の主治医からは術後は無治療を勧められ」
⇒私も主治医と同意見です。
DCISでの乳房切除は「根治」なのです。
対側乳癌発生予防のために「タモキシフェン内服」することは私は勧めてはいませ
ん(子宮体癌リスクが有る以上)
「主治医からは非浸潤の場合はhear2などの数値は参考にしないと説明されました」
⇒その通りです。
そもそも「非浸潤癌でHER2を測定する意味がありません」適応外でもあります。
「田澤先生は上記の論文についてどう思われますか?」
⇒このような「先に結論ありき」の論文には興味がありません。
DCISが予後がいいのは、そもそも当たり前です。
「切除するしない」で「生存率の差を出す」には相当な人数での比較が必要となる
でしょう。
ただ、DCISがいずれ浸潤癌になることが事実である限り、「元を断つのが最善」と
思います。
「私は今後どのように気をつけるべきか、覚悟するべきか」
⇒体側乳癌の検診です。
月に1回の自己検診と年に1回のマンモグラフィーでOKです。
●変な論文など読んで「結論に飛びつく」のはお勧めしません。
診療ガイドラインがどのようにして作られているか御存じですか?
膨大な数の臨床試験、論文、「人類の叡智」なのです。
たった1篇の論文や、少数の異端者の主張することで「それらに疑問を持つ」こと
は、ナンセンスではないですか?
質問者様から 【感想2】
田澤先生、
お忙しい中、私の質問に答えていただきまして本当にありがとうございます。
田澤先生からのご意見およびアドバイスをいただきまして、やっと暗いトンネルから
抜けたようです。
これからはネットから拾ういい加減な情報に左右されずに、冷静に判断します。
先生、本当にありがとうございます。段々と肌寒くなってきましたので、くれぐれも
お身体ご自愛ください。
質問者様から 【質問3】
田澤先生、
いつもありがとうございます。
わたしの質問への回答だけでなく、他の方々の質問への回答を拝見するたびに、大変
勉強になります。
お忙しい中、大変申し訳ありませんが、再度質問させていただきたいのですが、私は
非浸潤ガンで乳輪乳頭切除を含めた全摘手術を受けましたが、①この手術は皮下乳腺
全摘手術と呼ぶべき手術なのでしょうか?
質問の管理番号:1192「再発、ルミナールA、筋肉浸潤においての抗がん剤治療について」の方の質問を拝見し、正直不安になってしまいました。②この
ような再発のケースは全摘をしても免れないことなのでしょうか? ③術後療法は特
に主治医からは勧められませんでしたが、ホルモン療法を受けるべきでしょうか?
今の無治療の状況が大変心配です。
また、④手術を受けた病院から田澤先生の元に転院を希望していますが、可能なので
しょうか?
私が手術を受けた病院は都内で乳がん手術症例数が多いからか、退院後に不安になっ
た時など主治医と直接コミュニケーションをなかなか取れないのです。予約でいっぱ
いで定期検診以外に急に受診を希望しても、なかなか予約が取れません。致し方ない
ことなのかも知れませんが、田澤先生のように患者一人一人の気持ちに寄り添ってい
ただける医師に経過観察をしていただけたら、不安に負けず、もっと術後を前向きに
歩んでいけるのではと思いました。
お時間があるときにまたご回答いただけると幸いです。どうかよろしくお願いいたします。
田澤先生から 【回答3】
こんにちは。田澤です。
「乳輪乳頭切除を含めた全摘手術」「この手術は皮下乳腺全摘手術と呼ぶべき手術な
のでしょうか?」
⇒「乳頭乳輪をくりぬく形」の乳房切除でなければ、「皮下乳腺全摘」ではなく、通
常の「乳房切除」となります。
「このような再発のケースは全摘をしても免れないことなのでしょうか?」
⇒通常はありません。
「乳房切除後の局所再発」は極めて稀な事です。
ただし、経験のある術者が「きちんと意識して手術を行う」ことが前提です。
「ホルモン療法を受けるべきでしょうか?」
⇒前回も回答したと思いますが…
「非浸潤癌での乳房切除は根治」です。
術後療法は一切不要です。
○局所再発は「あくまでも手術の問題」であり、全身補助療法とは無関係です。
「手術を受けた病院から田澤先生の元に転院を希望していますが、可能なのでしょうか?」
⇒可能です。
ただし、「質問者のケース」では「年に1回の(対側)マンモと超音波」だけです
が… 完全な「根治」なのです。