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治療後の方針について

[管理番号:3556]
性別:女性
年齢:44歳
田澤先生、こんにちは。
7月上旬に初診、マンモとエコーの結果から乳がんと言われ、ショックを受けてWebで情報を探しているうちに先生のサイトにたどり着きました。
他のWebの情報はショッキングな内容も多く見ると落ち込むことも多かったのですが(なので途中からあまりみないようになりました・・)先生がコメントされている内容にはいつも励まされています。
ありがとうございます。
以来、ちょくちょく拝見し参考にさせていただいております。
手術までの1ヶ月間の間に、針生検、造影剤+CT、造影剤+MRI、血液検査を受けました。
生検の結果では、当初DCISの診断でしたが、しこりの大きさが4mm程度と大きく部分的に浸潤部がある可能性あること、
また、まわりに石灰化や細かいがんになりそうなもの?が広範囲に広がっている為、全摘出を進められ、
8月上旬に左胸全摘手術を受けました。
(ちなみに、念のためセカンドオピニオンも受けましたが、ほぼ同様の見解でした。)
しこりのサイズが大きかったことと、CTかMRIの結果で、肝臓と肺になにかあるという結果で、肝臓は違うと思うが肺の方は転移の可能性もあるかもしれない、ただ現時点でははんだんできないので経過を見ると言われ、年をとってくるとあちこちにきずのようなものができたりするから単にそういうものの可能性もあるからとのことでしたが、転移しているかもと思うとやはり不安で怖いです。
9月に入って、病理結果がでてきました。
以下の結果です。
浸潤径:21x18x15mm
invasive ductal carcinoma, scirrhous carcinoma nuclear grade 3 (atypic:
score 3, mitosis: score ???写真取り損ねて不明)
ER: score 0
PgR: score 0
HER2: score 3+
MIB1: 80%
ly1, v0, f
EIC (+)
intraductal spread: 3+
lymph nodes;
SN: 1/1 (4mm大のmacrometa) I: 0/6
断端(-)
ホルモンは陰性でHER2陽性等の結果から、抗がん剤治療として以下を提案されています。
質問しそびれてどんな薬か詳しく確認しなかったのですが、
4EC(or TC? 主治医のメモ書きがどっちとも読めるのでわからないです、3週毎4回)+12P(1週毎12回)
(すみません、あれこれ質問していて全部覚えきれなかったので、このあとハーセプチン治療を3週に1回で1年と言ったのかわからなくなってしまいました。
次回また聞いてみます。)
以下、質問です。
1.核グレード:3、MIB1:80%からすると、肺に見えているという気になる部分は遠隔転移の可能性も高くなるでしょうか?
2.HER2、核グレード、MIB1いずれも高いスコアですが、このケースでも完治出来る可能性はありますか?(生存率が高いのはホルモンタイプの乳がんかも知れないと思いました。
進行がゆっくりなので。)
3.予後はどのようなものになるでしょうか?(再発率や5年、10年生存率)
4.抗がん剤治療の内容は先生でしたらどうされますか?
5.少しでも早く抗がん剤治療を始めた方がよいでしょうか?(進行がはやいタイプのようなので心配です。
主治医からは9月中旬からで提案されています)
6.ly1, v0, f, EIC(+) の意味を教えていただけますか?(主治医も教えてくれたのですが、覚えきれませんでした。。)
7.サブタイプについては言われなかったのですが、私の場合は、ルミナルAやBには該当しないであっていますか?(ルミナルはホルモン系の場合の分類でしょうか?)
長々と書いてしまいすみません。
主治医のことは信頼して良いとは思っているものの、細々したことでも心配になったり、今後のことを考えると不安になっています。
抗がん剤治療を始める前に、先生のご意見を伺ってすっきりした気持ちで治療に望みたいと思っています。
どうぞよろしくお願いいたします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
「肺の方は転移の可能性もあるかもしれない」
⇒全く馬鹿馬鹿しい。
 たくさんの症例を見ていると、いかに肺には「炎症性肉芽の所見」がでるのか解ってきます。
 こんな「余計なこと」を言って患者さんを悩ませるようでは、医師としてどうなのか?
「ただ現時点でははんだんできないので経過を見ると言われ、年をとってくるとあちこちにきずのようなものができたりするから単にそういうものの可能性もある」
⇒というか、
 それが「炎症性肉芽」であり、肺のCTなど撮影すると「かなりの割合」で写ります。
「転移しているかもと思うとやはり不安で怖い」
⇒無駄な心配です。今すぐ忘れましょう。
「4EC(or TC? 主治医のメモ書きがどっちとも読めるのでわからないです、3週毎4回)+12P(1週毎12回)、このあとハーセプチン治療を3週に1回で1年と言ったのかわからなくなってしまいました。」
⇒EC(3週間に1回)x4回⇒PTX(パクリタキセル 毎週投与)x12回⇒ハーセプチン
単剤(3週間に1回)を18回
 の事を言っている様です。(所謂アンスラタキサン+ハーセプチンであり、gold
standardです)
 ♯ 通常はECとHERは併用禁忌ですが、PTXとHERは併用します。
   そうすると…  ECx4(3週に1回を4回)⇒PTX+HER(毎週投与を12回)⇒HER単剤(3週に1回を14回) ◎こちらの方が一般的です。
 ○ただし私であれば、low riskとして非アンスラサイクリンレジメンを提案しますが…
  (参考までに)
  非アンスラサイクリンレジメン
   ①TC+HER
   ②weekly PTX+HER
   ③TCH
「1.核グレード:3、MIB1:80%からすると、肺に見えているという気になる部分は
遠隔転移の可能性も高くなるでしょうか?」

⇒1000%ありません(今すぐ、肺のことなど忘れましょう)
「2.HER2、核グレード、MIB1いずれも高いスコアですが、このケースでも完治出来る可能性はありますか?(生存率が高いのはホルモンタイプの乳がんかも知れないと思いました。進行がゆっくりなので。)」
⇒冷静になってください。
 「完治できる可能性がない=100%再発する」と本気で思っているのですか???
 冷静になってください。
 もしも「完治できる可能性が無い」のであれば、無駄な治療を1年以上も誰が好んでしますか??
「3.予後はどのようなものになるでしょうか?(再発率や5年、10年生存率)」
⇒抗HER2療法では3年のデータしかありません(抗HER2療法が術後補助療法として保険収載されてから、まだ日が浅いのです。)
3年再発率 13%
3年生存率 93%
「4.抗がん剤治療の内容は先生でしたらどうされますか?」
⇒私なら…
 非アンスラサイクリンレジメンとします。
 上記の①か②(毎週来院できるかどうかで決まります)
「5.少しでも早く抗がん剤治療を始めた方がよいでしょうか?」
⇒急ぐ必要は全くまりません。
 考え過ぎです。
「ly1, v0, f, EIC(+) の意味を教えていただけますか?」
⇒ly(リンパ管侵襲)が1(3まであります) 顕微鏡でみると腫瘍の中のリンパ管に「軽度」癌細胞が入り込んでいる像が認められた。 ♯全身のリンパ管を見ている訳ではありません(当たり前ですが…)
 v(血管侵襲)は0 腫瘍の中の血管に癌細胞が入り込んでいる像が認められなかった。
 f これは深達度であり、腫瘍の浸潤がf:脂肪層までであり(その表面にある)皮膚や(逆にその奥にある)筋肉への浸潤がないということです。
 EIC(+) 乳管内進展(乳管内病変として乳管内を拡がっている所見)があったということです。 全摘しているので全く無意味です。
「.サブタイプについては言われなかったのですが、私の場合は、ルミナルAやBには該当しないであっていますか?(ルミナルはホルモン系の場合の分類でしょうか?)」
⇒HER2タイプといいます。
 (参考に)
 サブタイプ
 ①luminalA : ER+, PgR+, HER2-, Ki67低値
 ②luminalB(HER2陰性):ER+, PgR+, HER2-, Ki67高値
 ③luminalB(HER2陽性):ER+, PgR+, HER2+
 ④HER2タイプ:ER-, PgR-, HER2+
 ⑤トリプルネガティブ:ER-, PgR-, HER2-