[管理番号:1410]
性別:女性
年齢:60歳
7月に乳がんと診断され只今治療中です。
手術、放射線治療と終わり、これから抗がん剤治療(EC療法→ドセタキセル)、ホルモン陽性のため術後すぐからアロマターゼ阻害薬を服用中です。
腫瘍形 23mm、リンパ節転移 2個
ホルモン強陽性、HER2 -、グレード3、ki67 30%以上
ルミナールbのステージ2b です。
治療を受ける中でいくつか疑問が浮かんできました。
①乳がんの診断の際マンモトーム生検などを行い大人しく悪さをしない癌だと言われたのですが、病理結果は顔つきの悪いタイプでした。このような事はよくありますか?
術前からグレードやki67が正確にわかる場合もあるのでしょうか。
②リンパ節転移がエコーや触診では分からず、術前のMRIとCTで判明しました。
ネットでは顔つき悪くリンパ節転移がある場合は術前抗がん剤をしている方を多く見かけますが、手術を先行したのは良かったのでしょうか。
この場合に術前抗がん剤をするメリットはなんですか?
③最近ひどく疲れ易く背中や肩、腰、関節が痛みます。骨転移という事は考えられないでしょうか?主治医はあまり意に介していませんが。
今まで骨シンチの検査をしていないのでもしや見落としがあったのではと不安です。
骨シンチは必ずするものではないのですか?MRIやCTでわかるのでしょうか?
④顔つきが悪い、リンパ節転移ありという事で、先生のご経験から再発転移はハイリスクでしょうか。
沢山申し訳ありません。可能でしたら教えていただきたく、質問させていただきました。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
pT2(23mm), pN1, luminalB, NG3ですね。
回答
「診断の際マンモトーム生検などを行い大人しく悪さをしない癌だと言われたのですが、病理結果は顔つきの悪いタイプでした。このような事はよくありますか?」
⇒「良くある」とは、言いませんが「決して珍しい事」ではありません。
「術前からグレードやki67が正確にわかる場合もあるのでしょうか」
⇒「合致した場合」は偶然にすぎないと考えて結構です。
おおよそ「近い」ことが多いですが、「特に不均質なタイプの腫瘍」では「ある1点での検査(術前針生検)で、全体を知る事は無理」なのです。
「ネットでは顔つき悪くリンパ節転移がある場合は術前抗がん剤をしている方を多く見かけます」
⇒私は賛成しません。
「腋窩リンパ節転移の有無」は「術前抗がん剤の適応とは無関係」です。
術前抗がん剤の適応は、あくまでも「小さくして温存」です。
♯抗がん剤が必ず効く筈というのは、誤った考え方です。
「手術を先行したのは良かったのでしょうか」
⇒当然です。(私も、そうします)
質問者の場合には「最初から23mmと小さく、温存できる条件」だったわけですから、「術前抗がん剤を行う」意味がありません。
抗がん剤が必ず効く筈と言う考えは誤りなのです。
「この場合に術前抗がん剤をするメリットはなんですか?」
⇒ありません。
それでは「何故、ネットでは腋窩リンパ節転移があると術前抗がん剤を(安易に)勧められているのか??」
これは「術者として、手術をする際にできるだけ楽したい」という気持ちが働いているのだと思います。
しかし、「患者さん側」からすれば、「リンパ節郭清の範囲は同じ」なので、何の利点もありません。
♯「術前抗がん剤で効果があっても、無くても」手術時の「郭清範囲は化学療法前のリンパ節転移の範囲」となるのです。(術前抗がん剤が効いたから、郭清省略することは決して無いのです)
「最近ひどく疲れ易く背中や肩、腰、関節が痛みます。骨転移という事は考えられないでしょうか?」
⇒全く考えられません。
初期治療の段階での「遠隔転移」は乳癌では「殆ど無い」のです。
「今まで骨シンチの検査をしていないのでもしや見落としがあったのではと不安」
⇒骨シンチは不要です。(私も行いません)
「骨シンチは必ずするものではないのですか?」
⇒そんな事はありません。
不要な検査です。
「MRIやCTでわかるのでしょうか?」
⇒MRIは「乳房しか撮影範囲にない」筈だから無関係です。
CTでは「椎体や骨盤など」有る程度解ります。
「顔つきが悪い、リンパ節転移ありという事で、先生のご経験から再発転移はハイリスクでしょうか」
⇒全く、そんな事はありません。
「顔つきが悪い」など気にする必要はありません。
リンパ節転移「2個」でステージ2bですから「中リスク」程度でしょう。
○いろいろな「症状」が「あれも転移?これも転移?」と気になる気持ちは理解できますが…
実際には「初期治療の段階」で「遠隔転移など、ごくごく稀」なのです。
それを「経験的に」知っているので、私は「術前、術後検査として」骨シンチやPETは撮影しません。
全く不必要な検査と言えます。