Site Overlay

部分摘出と全摘出の選択基準について

[管理番号:4422]
性別:女性
年齢:47歳
御世話になります。
私の妻(47歳)が先日の診断で浸潤性乳管癌と診断されました。
核グレード1、エストロゲンレセプター陽性、プロゲステロンレセプター陽性、HER2レセプター陰性、Ki-67は10%、ルミナールAとのことで、3月(中旬)日に手術を受けて部分切除を行い、放射線及びホルモン治療を開始していくことになっております。
治療方法及び手術についてご説明を受けた時に、全摘出ではなく、部分切除で良いのかとお伺いしたところ、現時点での検査結果(MRI・CT・針生検等)では1cm程度の対象が見つかっているが、他への転移は見られないことから部分切除を行なうのが標準治療とのことでした。
残念ながら将来的に再発が見られたときには、その規模にもよるが、改めて全摘出を行なえばよいので、現時点では全摘出する必要は無いとのことで、その時は家内と共に納得して帰ってきました。
ですが、家内は部分摘出を行う事で将来的に再発する可能性を常に頭に置きながら生活するよりも全摘出をしてしまった方が良いのではないかと、悩んでおります。
再建に関しては本人は特に現時点では必要ないと
割り切ってはおります。
ここで質問させて頂きたいのですが、お医者様が現在の状況では全摘出するまでの規模でもないので部分摘出でと仰っているところを、本人の意思で変更を依頼しても構わない物なのでしょうか。
日常生活へのその後の影響等々を考えると極力体へのダメージは少ない方がよいであろうとは思うのですが、妻の悩んでいる再発する可能性を今のうちに摘んでおきたいという考え方も理解できます。
前述の診断内容の場合は、田澤先生の場合でもやはり部分摘出を選択されるものなのか、それとも本人の意思を尊重する形で部分でも良いが望むのであれば全摘出での対応とするという形を取られる物なのか、前述のデータでは不十分とは思いますが、ご意見を頂けませんでしょうか。
宜しく御願い致します。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
cT1b(10mm?), cN0, luminalA相当(Ki67=10%), NG1
大変な「早期癌」で、お墨付きの「大人しい癌」となります。
選択肢が多いので、(却って)考えることも多いのかもしれません。
「家内は部分摘出を行う事で将来的に再発する可能性を常に頭に置きながら生活するよりも全摘出をしてしまった方が良いのではないか」
⇒「再発」は「局所再発」と「遠隔転移再発」に分けて考えましょう。
 「局所」は全摘すれば、その心配は要りませんが、「遠隔転移再発のリスクはどちらの術式を選択しても同じ」です。
「本人の意思で変更を依頼しても構わない物なのでしょうか。」
⇒勿論です。
 論点としては
 1.(部分切除の場合には)放射線が必須
 2.(放射線をかけても)部分切除の場合には「局所再発のリス」がある
 ○純粋な治療の観点からは「全摘が劣る」ことはないのです。
  部分切除は、あくまでも「形を残したい」というご本人の気持ちで成立するのです。
「前述の診断内容の場合は、田澤先生の場合でもやはり部分摘出を選択されるものなのか」
⇒画像所見からは「部分切除も可能」ですよ。とは説明します。
 
「それとも本人の意思を尊重する形で部分でも良いが望むのであれば全摘出での対応とするという形」
⇒当然です。
 部分切除はあくまでも(上記1,2よりも)「形を残したい」というご本人の希望の上で成り立つのです。
 ○ご本人が希望しない「温存」など、全くありえない話です。