[管理番号:787]
性別:女性
年齢:49歳
質問者様の以前の質問質問が新たな内容のため、別の管理番号としました。 |
早々の回答、ありがとうございます。
ノルバデックスの服用を続けることは、多発ガンが見られたのですから対側乳がん予防にも有効なのではないでしょうか?いずれにせよ、先生のご意見でもノルバデックスの服用継続は有効性があるとのことですので10年間(あと3年)続けてみます。
先生の患者の気持ちを汲み取ってくださる姿勢に感銘しています。もう過ぎ去ったことと質問できませんでしたが、抗がん剤治療を受けなかったことをずっと気にしておりました。TC療法を3ケ月、できれば6ヵ月を勧められていましたが、副作用の説明を聞いてるうちにどうしても受ける気持ちになれず、化学療法のための入院もウイッグもキャンセルしてしまいました。あの時腫瘍内科の先生に言われた「再発したら後悔しないのですか?」という言葉が心を重くしていましたが、今回先生が「抗がん剤治療は必要なかったのでは」と言ってくださり気持ちが軽くなりました。
再発を早期に発見しても完治は望めないのだから、再発しないことを目指すためには抗がん剤治療は必要だったと後に言われました。今は何か症状が出てきてから検査しても予後は変わらないのだから積極的に再発を見つけることはないと言われています。
ガンの顔つきによって違うのでしょうが、センチネルリンパ節に1つの0.8mmの転移ありという結果は再発・転移に大きな影響があるのでしょうか?
本当に今更ながらの質問であまり意味はないですが、先生でしたらこの7年間の自問自答の結論をいただけそうで愚問と思いつつご意見をお願いします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
前回の内容では「センチネルリンパ節に転移」があり「腋窩郭清をした」と書いてありましたので、当然「macrometastasis(2mm以上)肉眼的転移」と勝手に思っていたのですが、0.8mmだったのですね。
6年前では仕方が無かったかもしれませんが、
少なくとも現在は、「センチネルリンパ節生検で2mm以下の転移:micrometastasis微小転移」であれば「腋窩郭清は省略」する施設が殆どでしょう。
質問者も結果的に「9個郭清追加して転移はゼロだった」訳ですから、少し残念な気がします。
回答
「センチネルリンパ節に1つの0.8mmの転移ありという結果は再発・転移に大きな影響があるのでしょうか?」
⇒『全く影響無し』と言えます。
そもそも現在でている予後データの殆どは「センチネルリンパ節生検前」のものです。
質問者のような「微小転移」は「センチネルリンパ節生検をしないと見つけられないもの」なのです。
♯通常のリンパ節転移の顕微鏡検査では2分割にして観察しますが、センチネルリンパ節の場合には「細かくスライスして微小転移をみつけようとしているので見つかったと考えられます。
そう言う意味で「リンパ節転移無し」として考えても間違いはありません。
○ルミナールAで「微小転移」だけで「化学療法を勧める」というのは現代の考え方では誤りと言えます。
St.Gallen 2015ではルミナールAで化学療法の追加は「リンパ節転移4個以上」という考えが支持されています。
○質問者の選択は(今更ながらですが)正しかったのです。
質問者様から 【質問2 10年後の再発リスク】
丁寧な回答ありがとうございます。
このサイトを拝見していますと、私のような病状では抗がん剤もリンパ節廓清も必要なかったようで、今までの心配やら苦痛は何だったのかと思えてきます。リンパ節廓清の直後は痛みと腕の怠さが凄くて、抗がん剤まで考えられませんでした。7年たった今でも脇に引っ張られるような違和感と少し患側の腕を使っただけで怠くて仕方ありません。幸いリンパ浮腫はありませんが、いつまでリンパ浮腫に気をつけなければいけないのでしょうか?
前々回の質問でノルバデックスの10年間の服用を勧めていただきましたが、ルミナールAで1つの0.8mmのセンチネルリンパ節転移のためにリンパ節廓清をしてリュープリン注射を5年終えていてもやはり10年過ぎてからの再発・転移のリスクを心配しなければいけないのでしょうか?
右乳房に2つのガンができたことは、左乳房にもできやすいということでしょうか?
ノルバデックスの長期服用は対側乳がんの予防になるのでしょうか?
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
リンパ浮腫は、出る場合は「術後5年以内が殆ど」でしょう。
7年経っていれば「確率的には、かなり低い」と考えて結構です。
普通に「怪我などに」気を付けてもらえば大丈夫でしょう。
回答
「ルミナールAで1つの0.8mmのセンチネルリンパ節転移のためにリンパ節廓清をしてリュープリン注射を5年終えていてもやはり10年過ぎてからの再発・転移のリスクを心配しなければいけないのでしょうか?」
⇒「リンパ節郭清」は「あくまでも局所治療」なので「予後の改善には寄与していない」と考えられます。
LH-RHagonistの5年投与の是非は別として、「luminal Aは大人しい分10年過ぎてからの晩期再発のケア」が重要です。
その意味では「10年間の投与」で「10年過ぎてからも再発予防効果を発揮する」タモキシフェンは「最適な治療」と言えます。
「右乳房に2つのガンができたことは、左乳房にもできやすいということでしょうか?」
⇒乳癌の既往が「対側乳癌発症のリスク」であることは間違いありません。
「ノルバデックスの長期服用は対側乳がんの予防になるのでしょうか?」
⇒その通りです。
40~50%の「対側乳癌抑制効果」があります。
質問者様から 【質問3 再発・転移の早期発見】
先生、お忙しいところを何度もすみません。
術後7年目ですが、術後直後からずっと主治医から言われていることがあります。
「再発・転移を画像で早期に発見し治療を始めたのと、歩けないとか痛みがあるとか症状が出てきてから治療を開始したのと予後に変わりはありません。乳がんは全身病なので再発がみられたら完治は望めません。ですから、積極的に術後検査はしませんが、再発の痛みが出てきてからでは辛いでしょうからご希望でしたら年に1回CTとエコーくらいはしますがどうしますか?」
もちろん、安心を得るために年1回CTとエコーと採血をお願いしています。
症状が出てきてからでも一緒だからと言われても、咳が出る、腰が痛い、頭が痛い・・・何でも再発と結び付けて考えてしまい不安が募るばかりです。
乳がんの術後は、再発・転移がないかの確認は積極的にしないものなのでしょうか?
術後、再発・転移の症状が出てくるまで全く検査をしないこともあるのでしょうか?
もし、術後CTなどの検査を再発・転移の有無の確認のためにするとしたら、乳がんの場合は術後何年間必要ですか?
私のような10年後の再発・転移のリスクがある場合はどのようなフォローをすればいいのでしょうか?
長年、主治医に聞けなかったことをお優しい田澤先生に質問させていただいてます。お忙しいところ申し訳ありませんがご意見をお聞かせください。
田澤先生から 【回答3】
こんにちは。田澤です。
乳癌の術後フォローの考え方ですね。
担当医の言う事も正論ですが、「局所再発や(局所以外の)リンパ節再発」などでは「早めの対処」で根治の可能性もあるので、一概には言えません。
回答
「再発・転移を画像で早期に発見し治療を始めたのと、歩けないとか痛みがあるとか症状が出てきてから治療を開始したのと予後に変わりはありません」
⇒正論です。
しかし、QOLに違いもでるし局所再発には当て嵌まりません。
「乳がんの術後は、再発・転移がないかの確認は積極的にしないものなのでしょうか?」
⇒定められた(所謂、標準と言うような)方法はありません。
施設によってバラバラです。
勿論積極的に行っている施設もあります。
私の在籍していた「東北公○病院」では術後5年を過ぎても「3カ月に1回、採血マーカー、診察超音波、年に1回のマンモグラフィー、胸部レントゲン」を行っていました。
その経験から見ると、「他の殆どの施設での術後検査はいい加減」に見えます。(考え方の違いです)
♯ 「予後に変わり無い」という担当医のコメントは勿論間違いではないのですが、(数多くの症例を経験していると)中には「早期発見」することで「根治してしまう」症例もあるのです。
「術後、再発・転移の症状が出てくるまで全く検査をしないこともあるのでしょうか?」
⇒あります。
私が、昨年東京に来てから「首都圏の状況」が解ってきたのですが、「首都圏の大学病院」では結構そのような例が多いように思います。
○研○明のように、術後すぐに「関連病院?」なるところへ放出していることも解ってきました。
「術後CTなどの検査を再発・転移の有無の確認のためにするとしたら、乳がんの場合は術後何年間必要ですか?」
⇒(CTが必要かは別として) ♯CTを毎年撮影するよりは「採血腫瘍マーカーを3か月もしくは6ヵ月で行う」方が断然効率的だと思います(私の膨大な経験の中で)
術後の定期検査は術後10年までは「きちんと」行った方がいいでしょう。
○10年以降はどうか?
「ルミナールタイプは大人しいので術後10年経ってからでも再発がありえる」と度々発言していますが、(確かにそうなのですが)
実際の再発率は10年過ぎると極端に低下します。 15年、20年となると「相当に珍しい」部類となります。
(10年過ぎても、注意が必要とはいえ)10年過ぎたら「1年に1回の採血、診察、マンモで十分」でしょう。
質問者様から 【質問4 医師と患者】
お忙しい中、色々なご意見やアドバイスをいただき、ありがとうございました。
術後のフォローについては、主治医は腫瘍マーカーは相当病状が進んでこないと上がってこないからとの理由であまり意味がないとのお考えのようです。ですので、自費にはなりますが職場の健康診断の時に自分でオーダーしようと思います。項目はCEAとCA15-5の2項目でいいのでしょうか?
今まで主治医に聞きたくても聞けなかった質問や不安について迅速丁寧に答えてくださり、田澤先生には大変感謝しております。
このサイトを見つけて他の方の相談内容を読ませていただき感じたことは、自分と同じような不安を持っている人が実に多いこと、みなさん自分の病気を大変熱心に勉強し肉体的にも精神的にも病を克服したいと必死であることを痛感しました。
なかなか、主治医との診察では専門的なことまで聞いたり質問したりするのは勇気がいります。また、性格的な問題もあるのでしょうが、たくさんの方が待合室にいらっしゃると自分が長い診察時間を取ってしまうのをためらってしまいます。
田澤先生のように、患者の気持ちを汲みつつ理論的に的確に意見をしてくれる存在は多くの方に勇気や希望を与えてくれます。
大変お忙しいとは思いますが、多くの乳がんで悩んでいる方々のために、このサイトは続けていっていただければ嬉しいです。
田澤先生から 【回答4】
こんにちは。田澤です。
「主治医は腫瘍マーカーは相当病状が進んでこないと上がってこないからとの理由であまり意味がないとのお考え」
⇒経験不足です。
十分な経験があれば、「1年に1回などの定期的な画像診断よりも3カ月に1回の腫瘍マーカーの動き」が「転移再発に鋭敏」なことが解る筈です。
「項目はCEAとCA15-5の2項目でいいのでしょうか?」
⇒その通りです。
他にも「ICTPとかNCC-ST439」など沢山ありますが、無意味です。CEAとCA15-3で十分です。
「多くの乳がんで悩んでいる方々のために、このサイトは続けていっていただければ嬉しいです。」
⇒ご評価いただき、ありがとうございます。
私はこのブログを始めるにあたり、当初の目的は「私の豊富な経験が少しでもお役にたてれば」というものでしたが、
このブログを続けていると、「とんでもない診療が横行」している事に危機感を感じるようになっています。
少しでも「そのような不幸な方を減らせるように」このブログを続けていきます。