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今週のコラム 42回目 肉芽腫性乳腺炎(前医での診療~当院初診まで)

オリンピック終わりましたね。

吉田沙保里が銀メダル

あの霊長類最強と言われた吉田選手も負けることがあるなんて…。

吉田沙保里 あの悔し涙。感動した人も多かった筈。

 

傍国民放送、そこに試合後呼ばれインタビュー

悔しい思いを何とか整理して現れた吉田選手に対して

 

「どういう決勝戦でしたか?」

「力を出し切ることができましたか?」

「4年間の成果は出せましたか?」

 

吉田選手はみるみる泣き出しています。

 

おいおいおい。

そのインタビュー内容、何?

まるで「金メダルを獲った」時のために用意しておいた原稿を読んでいるの?

自分が何を言っているか解っているのか?

どう見ても、「力を出し切れなかった」から、負けて悔し涙を浮かべてることさえ解らない?

 

吉田選手をいじめている様にしか見えないインタビューに我慢できず、静かにテレビを消しました。

 

 

肉芽腫性乳腺炎

以前、お話した市川での肉芽腫性乳腺炎、最初の症例。

1年3カ月をかけましたが無事ご卒業。

ご本人の許可を得たので、実際の経過についてシリーズとしてご紹介します。

 

2015年1月

突然、左胸が腫れる。Aさん当時38歳

○実は、この年齢が非常に重要です。

38歳±3歳位に集中(当院の12症例の中で実に10例がこの範囲です)しています。

 

そこで、前医(千葉県の某有名病院)を受診されています。

その後の2カ月の診療期間中は、Aさんにとって「精神的にも肉体的にも」非常につらい経験でした。

 

画像診断を、片っ端から撮られます。CTやMRIなど(PETを撮られなかったのは、その病院にはPETが無いから? 無駄な被爆を避けることになり、それは幸いでした)

CT

肉芽 解説付き腋窩 解説付き

 

 

 

 

 

著名な皮膚肥厚と肉芽(対側と比べてください)  リンパ節腫大(赤矢印)

 

MRI

MRI 矢印付き

 

著明な造影増強効果を示すマスが(乳腺の上半分を占めるように)広範囲に拡がる。

 

 

担当医

「乳がんです。それも進行している。針生検します」

○針生検の結果は「炎症」

担当医

「炎症?おかしいな。炎症だったら、膿が出る筈だ。針生検の孔を広げて膿をだします。」

 

担当医は、そう言うと無理やり、針生検の孔をグリグリ広げようとします。

しかし、膿など出ません。

更に複数個所から針を入れてグリグリします。

「痛い。痛い…」

 

担当医

「膿出ないなー。本当に炎症か? やっぱり癌なのでは?」

「Aさん。組織診の結果は炎症となってるけど、癌の疑いも捨てきれません。本当に炎症ならば、抗生剤で良くなる筈だから、暫く抗生剤で様子を見ます。結局癌だったという可能性も、まだありますよ。」

 

しこりは一向に改善せず「熱も痛みもあり、(無理やり拡げられた)孔からは浸出液が出て」耐えられない日々でした。

 

○暫く抗生剤を使っても何の改善も無い(熱も下がらないし痛みも赤みも改善しない。)

担当医

「こんな炎症は無い。もしかして自己免疫疾患?」

「皮膚科を紹介します」

 

そこから「皮膚科での無意味でつらい検査」が続きます。

症状の改善もなく、「原因不明の奇病?」毎日毎日「痛く苦しい診療」が続きます。

2カ月もの、その苦しい日々に耐えかねてAさんが市川を受診されたのは3月でした。

 

2015年3月 当院初診

その日、Aさんは私に「切実に」訴えかけました。

「何とかして欲しい」

「もう前医に戻るつもりはない」

持参された大量の画像(CT, MRI,)や前医からの「紹介状」を見て、そして診察しました。

肉眼的 解説付き

(前医で執拗に開けられた)複数個所の孔には肉芽が顔を出して、そこから浸出液が滲みでています。

 

 

 

 

超音波を見ると、典型的な「肉芽腫性乳腺炎の像」です。

20150306矢印付き

大きな肉芽

矢印が皮膚に顔を出している部分

 

 

 

20150306②矢印付き

 

 

 

 

 

 

 

20150320ライン付き「不整形」でありながら「横長」の典型的な肉芽像

 

 

 

 

 

「これは、肉芽腫性乳腺炎です。 別に特別な疾患でも何でもありません。 少し長期にはなりますが、ステロイド投与で良くなりますよ。」

 

何の病気なのかも明らかにされず、前医での永遠とも思える(無駄な)検査の連続に疲れ切っていたAさんの瞳が光ったように見えたのは「照明の加減ではない」筈です。

 

次回は、その後の経過を超音波画像で紹介します。