[管理番号:980]
性別:女性
年齢:65歳
質問者様の別の質問質問が新たな内容のため、別の管理番号としました。 |
はじめまして。
私の65歳の母親が乳がん宣告をされてから、田澤先生のQ&Aを読みはじめました。
文章から先生の素晴らしいお人柄を感じて、ぜひ相談にのっていただきたいと思いました。
母親は7年近く乳がん検診を受けていなかったのですが、ある日左胸にあるしこりに気づき病院へ行ったところ乳がんと診断されました。
全ての検査が終わり、しこり3㎝、リンパなどの転移はないとの診断で、手術をして術後に抗ガン剤という治療方針が決まりました。
セカンドオピニオンをすすめましたが、一刻も早く手術して悪いところを取ってしまいたいと母親に拒まれてしまいました。
私と母親は離れて暮らしているため、なかなか病院への同行ができませんでした。
術後の診察の時、初めて病院へ同行することができました。
その時に医師に告げられた病理結果が以下のことでした。
左乳がん ステージ2b
浸潤性乳管ガン(充実性管がん)
大きさ、33×15㎜
リンパ節転移、2/11
核異型度、NG3
脈管侵襲、1y1,v0
エストロゲンレヘプター、陰性
プロゲステロンレセプター、陰性
HER2、陰性
Ki67、5~10%
トリプルネガティブです。
①トリプルネガティブを調べると、術前の抗ガン剤が有効のように感じたのですが、なぜ先生は術後の抗ガン剤にしたのでしょうか?
父、母は先生の説明を聞いていてもちんぷんかんぷんな感じだったので、術前の説明もイマイチ分かっていなかったように思います。
②抗ガン剤は、5-FU、ファルモルビシン、エンドキサン/タキソテールを合わせて8回やります。妥当でしょうか?
③リンパ節転移あり、グレード3、トリプルネガティブだと、抗ガン剤の効き目が悪ければ余命は大分短くなってしまうのでしょうか?心配で母の病気が頭から離れません。
どうか、田澤先生の意見を教えてください。
よろしくお願い申し上げます。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
私はトリプルネガティブだろうと「小さくしてから温存という目的」出ない限り「術前化学療法は決して勧めません」
それには以下の2点の理由があります。
・抗がん剤は「術前に行っても、術後に行っても予後は同等」であること
・「抗がん剤が必ず効くもの」と言う前提に誤りがあること⇒抗がん剤が効かない場合には「癌を(ある程度の期間)体に放置すること」になり、手術不能となっていまいます。
回答
「トリプルネガティブを調べると、術前の抗ガン剤が有効のように感じたのですが、なぜ先生は術後の抗ガン剤にしたのでしょうか?」
⇒「術前の抗がん剤が有効」という考えは誤りです。
理由は冒頭に示した通りです。
「小さくして温存」という理由で無い限り、私は「術前抗がん剤を勧めません」
「抗ガン剤は、5-FU、ファルモルビシン、エンドキサン/タキソテールを合わせて8回やります。妥当でしょうか?」
⇒所謂「アンスラタキサン」です。
トリプルネガティブの「補助化学療法としては」妥当だと思います。
但し、私であれば、「5-FU、ファルモルビシン、エンドキサン:併せてFECといいます」ではなくEC(ファルモルビシン、エンドキサン)を選択しますが…
何故なら
①FEC(100mg/m2)6回=AC(60mg/m2)4回
②CAF(50-60mg/m2)=CEF(90mg/m2)
以上①及び②よりFEC(100mg/m2)6回=EC(90mg/m2)4回
♯ mg/m2の表記は体表面積あたりのアントラサイクリン系薬剤(Aの場合はアドリアマイシン、Eの場合はエピルビシンのこと)の投与量です。
「リンパ節転移あり、グレード3、トリプルネガティブだと、抗ガン剤の効き目が悪ければ余命は大分短くなってしまうのでしょうか?」
⇒トリプルネガティブでは(現時点では)ターゲット療法がないので、「抗がん剤」しか頼るものはありません。
しかしpT2(33mm), pN1(2個), pStageⅡBという状況は、それ程深刻な状況ではありません。
トリプルネガティブとかグレードとか「ネットではあまりにも記号を持て囃し過ぎ」です。
予後と関係するのは、あくまでも「ステージ」なのです。
サブタイプは、あくまでも「治療法の手引き」に留めておくべきです。