明日(日曜日)には、ここに(食べ物?の)写真が入る予定です。
〇 本文
スピードの追求シリーズ?
前回「診断」スピードの追求に引き続いて、第2弾は「手術」スピードとなります。

手術スピードとなると、2種類あるよね。
第1は手術「そのものに、かかる時間」
そして第2は「手術日までの日数」

なるほど!
「手術にかかる時間」と「手術日までの日数」か。
全く「別の話」だもんな。

そうとばかりは言えない。
手術時間が短いから、「1日あたりの手術件数を回せる」=「手術待ち(手術日までの日数)を短くできる」
手術件数が多い=経験豊富となり「益々」スピードが「増す」という好循環が生まれることも実感している。

ただ「スピード」が強調されると、「やっつけ仕事」的なイメージが気になるのだけど…
あんた、そこ大丈夫?

いい「振り」だね。サンキュー謎雄君!
今回のテーマは「スピード」でありながら、実際に強調したいのはスピードこそ(一見それとは裏腹に見える)「丁寧さ」を生み出す要素だという話なんだ。
それでは早速(割と最近の)実例を提示しよう。
症例
前医MRIレポート(日本語訳)で下記記載がある(残念ながら画像自体の提供はなし)
腫瘍は後壁(背側)へと進展しており、大胸筋に約2㎝の範囲にわたる局所的な浸潤を認める。
エコーで見ると…
裏側の筋層(大胸筋)とは接してはいるけど、浸潤しているのか?は不明

但し、
「接しているだけ?」にしろ、実際に「浸潤している?」にしろ
剥がしてしまっては、大胸筋側に「癌細胞を残存=胸壁再発」のリスクを抱えることとなる。
だから…

だから?
だからどうしたんだい? じれったいな。もぉ!
このようにする(した)のです。
このように、腫瘍から遠い部位は大胸筋から剥がしていって、腫瘍から近づいた地点から大胸筋も一緒に切除していくのです。
模式図にすると、こんな感じです。
大胸筋は全切除する必要は無論なく、腫瘍の真裏(腫瘍床といいます)及びその周辺部分のみ合併切除するのです。
摘出した後にひっくり返すと、腫瘍床には大胸筋が一緒に切除されている様子が解りますね。

一見、何気ない操作のように見えるけど…
この操作を「綺麗」に、そしてより「確実」に行うために必要なことは術中に出血させない事。
これが最も重要。
出血は
1.視野を著しく妨げ
2.術者の集中力を散漫にし
そして
3.(その出血を止める操作に)余計な時間を費やす

なるほど!
だんだん話が見えてきたよ!
出血させない手術はダイレクトに(余計な時間がかからない)「スピード」手術となり、
それは、「視野が綺麗」で(おまけに)術者の「集中力を切らさない」
集中力を切らさない手術でこそ、確実な操作を行う「余裕」が出てくる。そうだね!

そう!
その「余裕」こそが全ての手術のkeyとなる。
今回の手術も、乳腺全摘の際に(腫瘍の裏に)大胸筋を合併切除するまでの一連の操作 ♯1)に時間がかからないからこそ、「集中力と時間」をそのmainの操作に費やすことが可能となるのです。
♯1) 実際の操作は以下のようになります。
①乳輪皮下に色素注入
センチネルリンパ節を色素で染めるための操作
②腋窩皮膚小切開
センチネルリンパ節は腋窩にあるので、ここの部分の皮膚を(小)切開します。
皮膚切開 これは表皮(皮膚の表面)はメスで行い、真皮(皮膚の本体)は電気メスで行います。
★表皮は火傷をしないように(熱を加えない)メスで行い、真皮は火傷にならないので(出血をさせないために、熱凝固である)電気メスという風に「使い分け」が必要だからです。
③センチネルリンパ節同定
皮膚を切開しても、(色素で染色された)リンパ管はすぐには見えません。
(皮下)脂肪の層が視野を遮っています。
この皮下脂肪を慎重に外していくと、やがて(色素で染色された)リンパ管が見えてきます。
このリンパ管を辿って(それが行きつく先の)センチネルリンパ節にたどり着きます。
そして、それを摘出して「病理医へ」届ける。
この一連の操作に「習熟度による如実な時間の差」が生まれます。
★リンパ管を早く見つけようと「焦る」と(いつの間にかに)リンパ管そのものを切断して「手掛かりが消失」してしまうケースもあります。 ♯リンパ管は血管と比較してもかなり細いのです。
★★また脂肪を分け入る操作が雑だと脂肪内の極細血管から「ジワジワ」出血して「視野の妨げ→センチネルリンパ節が見つからない!」などという事態に陥りがちなのです。
④乳腺部分の皮膚切開
このケースでは全摘だったので(上記②よりも)切開線が長くなります。
⑤皮弁作成
皮膚から乳腺を外す操作ですが、範囲が広く(かつ)乳腺から皮膚へ無数に小血管が伸びているので、この操作も時間差が出やすい操作と言えます。
ここを雑に行うと、延々と続く「無限出血地獄」に陥りやすく「研修医の鬼門」とも言えます。
ここまでの操作を極めてスムーズにこなすためのkey wordは「出血させないこと」その意味が解ってくれると思います。
出血させずにスムーズにここまでの操作を終え、いよいよ「main」である(大胸筋に浸潤しているかもしれない)腫瘍を、「絶対に残さない」という命題のもと摘出の操作に入るのです。
⑥いよいよ!(腫瘍を含んだ)乳腺を大胸筋から外す
今回は、この操作の際に「腫瘍が(顕微鏡レベルでも)露出しないように」大胸筋を綺麗に合併切除したわけです。
(ここで)写真撮らなきゃ!と思い立ち
一旦手袋を外し、カメラで撮影し(という普段は行わない操作を行いつつ)最後の閉創までのトータルの時間が
1h13min. (電子カルテに残された正式の記録となってます)
センチネルリンパ節生検して皮弁を作成し終わって腫瘍を取りにかかる(ここまででおそらく30分かかっていない)
そのスピードと正確性あってこそ、「腫瘍の裏にきちんと大胸筋が覆うように切除する」というメインの操作に「十分な集中力と時間をさける」わけです。
手術のスピードとは、単に「数字を競う」ためにあるのではなく、それが担保する特性(出血がない。重要な操作を集中して行える)にこそ宿るのです。




