[管理番号:12134]
性別:女性
年齢:50
病名:浸潤性乳管がん(充実型)トリプルネガティブ リンパ節転移あり
症状:現在化学療法中
投稿日:2024年10月15日
初めまして
妻が今年7/(下旬)に乳癌と診断されまして、
調べていくと
貴院のQ&Aコーナーを見つけ拝見させて頂き、
不安と絶望感で押し潰されそうになっていた気持ちを少しづつ前向きな気持ちにさせていただきました。ありがとうございます。
自分なりにQ&Aを隅々まで見ているつもりですが、どうしても今回の治療の進捗に腑に落ちないところがあり質問させていただきたいとおもいました。
以下経緯になります。
今年7月末に運動時に左乳房に痛みを感じ、乳腺クリニック受診。乳癌の疑いの診断。
エコー検査、マンモグラフィ、
病理組織診断報告書にて
? ER: TS= 0
? PR: TS= 0
? HER2: score 2(後日ISH施工により陰性と判明)
? Ki-67 LI: 60% approx. (hot spot)
左乳房に浸潤性乳管がん(充実型)
腫瘍の大きさ:36?34?27mm
(乳腺クリニックでのエコー検査8/20時点)
リンパ節転移の疑い
グレード3
Ki-67:60%
と診断されました。
乳腺クリニックから地元の総合病院を紹介され
8/(下旬)に尿検査、採血、腹部CT検査、造影MRI検査
9/(上旬)にPET検査を受け、(遠隔転移は無しとの事)
腋窩リンパ節、2箇所(針生検でclassⅢa)
全身検査で鎖骨下リンパ節への転移の疑い
(これも含めリンパ節転移は3箇所になると解釈しています。)
トリプルネガティブ
その時点でのステージはⅢaかⅢbとの事。
担当医の治療方針として
①術前化学療法 EC4クール→DT4クール
②手術+腋窩リンパ節切除(妻は全摘希望)
③術後に治療効果を見て化学療法等検討
④鎖骨下リンパ節に転移あれば放射線治療
との事でした。
こちらのQ&Aを拝見させてもらっていたので
同席した際、手術先行にできないか交渉しましたが、妻も心労がたたり考える事に疲れていたのか、先生が言うのならと術前化学療法を希望し、
私的には不本意ながら妻の選択を優先しました。
その際に、
担当医は2クールごとでも大丈夫との説明でしたが、
1クールごとに超音波検査を必ずしてほしい、
すこしでも腫瘍が大きく、もしくは抗がん剤の効果がないようならすぐ手術を先行して欲しい旨伝え、
担当医に了承してもらい、
9/(中旬)より術前化学療法をスタートし、
10/(上旬)に2クール目のEC療法を点滴を終えました。
その際にエコー検査をしてもらったのですが、
乳腺超音波検査報告書の記載が、
1時 主腫瘤 29.8*37.6*41.5mm
(病変部盛り上がっておりプローブが浮き、全体像把握が難しく、計測値誤差ありそうとの事)
腋高腫大リンパ節多数
内胸リンパ節所見なし
鎖骨下 11.1*12.1*6.0mm 8.1*9.5*6.8mm 8.6*6.2*5.8mm
との結果で、
さらに、
最初には出てきていない
左乳頭近傍12時 10.3*12.4*6.5mm 腫瘤?
1時の主腫瘤と12時腫瘤の距離 34.6mm
(原文そのままで記載してます)
という新たに腫瘍らしきものが確認できたと説明を受けました。
担当医が言うには最初の乳腺クリニックで
見落としたのではないかと説明。
また、
最初の乳腺クリニックのエコーと今回の総合病院のエコーでは撮影者や撮る角度が違っているので正確ではないと思う、誤差の範囲ではないかとの担当医の説明でした。
ここから質問になりますが、
①鎖骨下リンパ節は手術できない、放射線治療で対応と説明を受けましたが、
こちらのQ&Aで手術できる旨の文を見たので(レベル3郭清?)
質問したところ
太い血管が近くなので危ないのでできないとの事。
(最初に手術できないとの説明しか受けず、こちらが聞いてからそのような説明をする事に思うところもありましたが)
鎖骨下リンパ節郭清はそんなに難しいリスクの高い手術なのでしょうか?
妻は以前に気管支拡張症で片方の肺を切除しています。
なので、それが原因で肺にでも転移してしまったら悔やんでも悔やみきれません。
術後、鎖骨リンパ節が無くならないようでしたら、腕の確かな医院で廓清手術を受けたほうがいいのでしょうか?
また、そんな事(術後に他院で手術)は可能なのでしょうか?
②腫瘍の大きさについてですが、
撮影者の違い等誤差があるにしても、
自分の個人的主観ですが最初の大きさから大きくなっているように思えます。
担当医は効果が目に見えてわかるのは4クール目からとの説明を受けたのですが、
現時点では誤差(癌が進行していなく化学療法を続ける事を期待できるレベル)と言う解釈で良いのでしょうか?
貴院の他Q&Aにも
「抗がん剤はほとんどの場合、1回めから効いて小さくなるから、私の場合は効いていないと思うと言われました。」
との記述があり、疑問に思っています。
③担当医の言う化学療法の種類(EC4クール→DT4クール)は妥当でしょうか?
④後から出てきた
(左乳頭近傍12時 10.3*12.4*6.5mm 腫瘤?)
と言うのはこれからの治療、ステージ、予後に影響は出ますでしょうか?
⑤以上の情報での5年、10年生存率はどのくらいになるでしょうか?
以上です。
宜しくお願い致します。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
まず、根本にある「何故、鎖骨下郭清は難しい(できる医師が殆どいない)のか?」
これについて詳説を試みます。
(以下)
何故、鎖骨下郭清が出来ない医師ばかりなのか?
これには明確な理由があります。
手術手技とは「そもそも」まず、①(指導医の)助手として「指導医の手術を見る」⇒(その次のステップとして)②「指導医の監視のもと(つまり、誤った操作をして危険だと感じたら「ストップ」と言われ、しばしば指導医に手をだされながら」実際にその手技を行って習得していく
この2つのステップが必須なのです。
通常の手技(普通に胃を切除する。乳腺を切除するなど)は上記ステップ①②を繰り返して、皆できるようになります。
ところが、この鎖骨下郭清は以下の2つの理由で②のステップが困難なので、結果として手技の習得(伝承と言えるかもしれません)がなされないのです。
理由① 視野が非常に「狭く」「奥」にある。
理由② 腋窩静脈(今回の担当医のいうところである「太い血管」のことです)が極めて近接しているため、(指導医が「あっ!」と思っても間に合わず)結果として「大出血」が起こりうるので「指導医自体が、心臓がいくつあっても足りない」
かくいう私も上記①のステップは(幸いなことに)指導医の上手な手術を見ることはできましたが、その当時私は鎖骨下郭清をさせてもらえませんでした。(つまり②はしていません)
その後経験を積み、11年前、江戸川病院に赴任してから(かつての指導医の手技を思い出しながら)鎖骨下郭清を始めたのです。(最初は緊張が極度だったのは言うまでもありません。)
ただし、私にとって幸いなことに(この乳がんプラザを介して)全国から「鎖骨下郭清はできない」と言われた患者さん達を(「手術相談メール」やセカンドオピニオンを通して)鎖骨下郭清することとなったので、(間違いなく、鎖骨下郭清件数は日本一と思います)私にとって現在は「極めて簡単な手術」となっています。
♯そういう私でさえ、その手技を現在、助手に来ている「大学病院からの派遣医師」にさせているかというと、(これだけ手技に自信のある私でさえ)全くさせていません。
自分自身が行うのは慣れているから何ともありませんが、(そんな私でさえ)それを若い医師にやらせることは「怖い」のです。
①鎖骨下リンパ節郭清はそんなに難しいリスクの高い手術なのでしょうか?
⇒上記冒頭で詳説したとおりです。
慣れてしまえば(私にとっては)なんてことない「普通の手術」ですが、その「慣れる」どころか「上手な手術を見たことさえない」医師にとっては「難しい」というより「未知の世界」として最初から除外しているのが現状です。
術後、鎖骨リンパ節が無くならないようでしたら、腕の確かな医院で廓清手術を受けたほうがいいのでしょうか?
⇒掲示板にも書きますが…
不完全な手術を受ける⇒鎖骨下リンパ節再発する⇒(主治医から)「そこは手術できないから、遠隔転移と同じだ。余命は3年だ」♯QA管理番号12103 「リンパ節再発」参照のこと
などという選択をとても勧めることはできません。
正直、私が最初から手術すればすべてが解決することなのです。
②腫瘍の大きさについてですが、
撮影者の違い等誤差があるにしても、
自分の個人的主観ですが最初の大きさから大きくなっているように思えます。
担当医は効果が目に見えてわかるのは4クール目からとの説明を受けたのですが、
現時点では誤差(癌が進行していなく化学療法を続ける事を期待できるレベル)と言う解釈で良いのでしょうか?
貴院の他Q&Aにも
「抗がん剤はほとんどの場合、1回めから効いて小さくなるから、私の場合は効いていないと思うと言われました。」
との記述があり、疑問に思っています。
⇒少なくとも「凄く効いている」ということはないわけで(無論、2回目から効き出すこともありますが「手術不能に追い込まれるリスク」は常に術前抗がん剤の場合には径かいするべきです。)
③担当医の言う化学療法の種類(EC4クール→DT4クール)は妥当でしょうか?
⇒triple negative regimenとしては通常のものです。
④後から出てきた
(左乳頭近傍12時 10.3*12.4*6.5mm 腫瘤?)
と言うのはこれからの治療、ステージ、予後に影響は出ますでしょうか?
⇒それは無関係
⑤以上の情報での5年、10年生存率はどのくらいになるでしょうか?
⇒それは手術病理が出ないうちに考えても仕方がないことです。
正直(効果が明らかでない)術前抗がん剤を行って、中途半端な手術をしてリンパ節再発のリスクを負うという現在の選択について再考をお勧めします。
・田澤先生のYouTubeチャンネル「乳がんプラザ」はこちら。
***
再質問をする場合、下記日付以降にしてください。
2024/10/30
***
質問者様から 【質問2】
トリプルネガティブ 術後病理結果 ステージ3C 今後の治療方針について。
性別:女性
年齢:51
病名:
症状:浸潤性乳がん
投稿日:2025年04月26日
お久しぶりです
管理番号12134で妻の治療方針で質問させて頂いた者です。
その節は大変お世話になりました。本当にこのサイトに心救われている方は多いと思います。有難う御座います。
手術が終わり、今後の治療方針、なにができるのか再度相談させて頂きたいと思います。
まず質問後からの経過ですが、
私的には不本意でしたが、妻の希望で手術先行にはせず、
EC4クール、DT4クールを今年3月に終えました。
1クールごとにエコー検査をお願いし了承してもらったのですが、技師の方は毎回同じにはなりませんでした。
また、右肩甲骨付近に小さい腫瘍が見えたという事でしたが、その時はあまり気にしなくていいような事を言っていました。
EC治療時は増大はしないものの横ばいで、
DT治療時に主腫瘍が29.8×37.6×41.5mmから24.3×21.2×21.2と軽度ですが縮小し、CTで確認しても縮小しているようでした。
が、
手術1週間前ほどに検診で確認したとき、患部(乳房に)の表面に赤みを広範囲に発見し、
皮膚浸潤の疑いが出たのですが、抗がん剤が効いていること、見た感じ皮膚浸潤の症状に見えない事等で皮膚科で検査してもらったところ、
皮膚科的にはダリエ環状紅斑という事で4月頭に左乳腺全摘出、リンパ節廓清手術致しました。
確認したところ以前質問した鎖骨下リンパ節もできるところまで廓清できたという事でした。
以下が病理組織診断報告書となります。
--------------------------------------
検体は全摘された左乳房。全割16スライスから、39標本が作製されている。
1. 組織型:浸潤性乳管癌(充実型)
2. 腫瘍サイズ:浸潤部= 105x40x70mm(2スライス)、in situを含む全体=同左
3. 浸潤の範囲:g,f,s(g:乳腺内に収まっているf:乳腺組織外の脂肪に浸潤し
ているs:皮膚に浸潤している)
4. 脈管侵襲:1y3,v3(4段階評価;0-3)
5. リンパ節(level不明): LN1= 4/4, LN2= 6/6, LN3= 5/8, LN= 1/3 – (totalnecrosis 1), LN5= 3/3 6. グレード及びスコア
Histological Grade=3
[NSAS-BC] Nuclear Grade= 3
(score: tubule= 3,atypia= 3,mitosis= 3) 7. 随伴するDCIS:Minimal(~25%),
(参考)Grade/組織形態:high(3段階)/solid(necrosis+)
8.切除縁:断端露出±(indeterminate; #24)
-水平方向で20mm、
-垂直方向(0mm,DCIS、深部側、標本#24)
9. Results of IC
(作製中)
10. コメント、その他
・組織学的治療効果判定:Grade 1a(全体に軽度の変化、または1/3未満に高度の変化)
・腫瘍壊死が目立ちますが、治療の効果か否かの判断は難しい。LVIや皮膚浸潤が非常に目立ちます。
不規則に浸潤しており、皮膚浸潤部も多くあるので、正確な腫瘍径評価が難しい。
追加報告?
- HER2: score 2
・腫瘍細胞のHER2発現は部位によってかなり異なり、かなり強く発現している部もありますが、そのような強陽性領域
は全体の10%に至らず、HER2 score 2と判断します。 ASCO guidelineに従い、標本を変えてHER2再検します。
・リンパ節のLevelが判明したので、下記を最終とします。
5.リンパ節: Level I= 15/18, Level II= 1/3 (total necrosis 1), Level
III=3/3
・標本#21にて再検しました。細胞膜全周性にHER2発現している領域が10%以上ありscore 2相当です。
HER2 ISH施行します。
--------------------------------------
non-PCR,ステージはⅢCとの事です。
「ここまではないだろう」と想像していた悪い材料がほぼ出てしまい、
妻も横で聞いていたので心中を考えるといたたまれません。
皮膚は皮膚浸潤の面積より大きく切除したと言っていました。
鎖骨下腫瘍は取り切ったと思うと言っていましたが、病理結果の説明を聞くとなにか
腑に落ちないところがあります。
術後の方針ですが、担当医がおっしゃられるには
HER2の検査次第で変わると言っておりましたが、
まずは癌が残っているというていで放射線治療をするようです。
長文になり申し訳ございません
質問になりますが、
?田澤先生でしたら、この病理結果をどうとらえ、今後の治療方針をどのようにして
いくでしょうか?
②この病理検査結果での5年、10年生存率は何%ほどになるでしょうか?
③術後の抗がん剤治療で先生の考える薬剤はありますか?
④発症から自分なりに真剣に考え、ベストな道を探ろうとしてきましたが、妻の心労への気遣いや、
自分が当事者(患者)ではない事で言えないことも多く、ベストを尽くしたとは思えなくなりました。
もう後悔しない為にも、術後からと大変遅いのではと思いますが
良ければ貴院への転院も検討しております。
妻も大変だとは思いますが誠心誠意説得するつもりです。妻は入院中の為同伴できないのですが、お伺いしてお話を
聞くことはできるでしょうか?また、転院じたいは可能なのでしょうか?
発症後からの不安を先生の力強い言葉で乗り切れてきました。
いつもありがとうございます
宜しくお願い致します。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
やはり問題なのは「皮膚浸潤」 大変申し訳ありませんが「術前抗がん剤をゴリ押しされることのリスク」を表していると言えます。
ただ厳しいようですが、それを選択したのは患者さん自身です。
私ができるのは、「同じ轍を踏む」ことのないように、このQAを参考にしてもらうことだけです。
②この病理検査結果での5年、10年生存率は何%ほどになるでしょうか?
⇒術前抗がん剤しているから、それは不明です。
③術後の抗がん剤治療で先生の考える薬剤はありますか?
⇒無論、抗癌剤の適応自体ないですよ!!
抗癌剤は「術前、術後」で決まっています。
♯術前抗がん剤が効かなかったから「術後に追加で」などというものは存在しません。
④発症から自分なりに真剣に考え、ベストな道を探ろうとしてきましたが、妻の心労への気遣いや、
自分が当事者(患者)ではない事で言えないことも多く、ベストを尽くしたとは思えなくなりました。
もう後悔しない為にも、術後からと大変遅いのではと思いますが
良ければ貴院への転院も検討しております。
妻も大変だとは思いますが誠心誠意説得するつもりです。妻は入院中の為同伴できないのですが、お伺いしてお話を聞くことはできるでしょうか?また、転院じたいは可能なのでしょうか?
⇒特に転院の理由もないのに、それはできません。
その病院を選択し、その「術前抗がん剤」を自分で受け入れた以上、その後の治療もそのままその病院を信じて続けていくべきです。
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再質問をする場合、下記日付以降にしてください。
(回答が公開されてから2週間後)
2025/5/14
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