[管理番号:689]
性別:女性
年齢:36歳
はじめまして、こんにちは。
6月から海外転勤でシンガポールにいます。
アドバイスを頂きたく、よろしくお願いいたします。
去年の11月に痛みでしこりに気づき、大学病院を受診しました。
エコーの結果から針生検をしましたが、炎症という結果となり特に悪いものはみつからず、要経過観察となりました。
事情があり、今年2月に同じ大学病院の別の医師にかかり、再度針生検をすることになりましたが、やはり炎症で良性という結果でした。再び3ヶ月の経過観察となりましたが、不安でしたので、がんセンターにセカンドオピニオンで受診することになりました。
がんセンターでは、これまでの結果と新たにエコー検査で診てもらいました。
また、透明の分泌物が出るので分泌物の細胞の検査もしましたが特に悪いものは見つかりませんでした。
3月から5月まで3回受診し、以上の結果を踏まえて、肉芽腫性乳腺炎の可能性がいちばん高く、次に良性のしこり(エコー検査の結果には乳管内乳頭腫という記載がありました)、このふたつに比べると可能性は低いが、乳がんの可能性も、と言われました。
日本で5月に最後に受診したとき、3月のエコーより少ししこりが大きくなっているので、シンガポールに転勤後、1ヶ月ほどして落ち着いたら病院には通い続けたほうがいいとアドバイスされましたので、そろそろ病院を受診しようと考えていたところ、最近になって乳房が以前より腫れ、昨日ついに入浴後、血の混じったようなオレンジ色の膿が大量に出ました。
長くなりましたが、病院の予約が1週間後のため、色々と教えていただきたいです。
まず、日本での診断結果は病名の確定診断はなく、上記のとおり、~の疑いにとどまっておりましたが、昨日膿が出たことから、これは肉芽腫性乳腺炎なのでしょうか。まだ乳がんの疑いは晴れないでしょうか。。
また、シンガポールでは日本語のできる乳腺外科医はいないらしく、現地の病院に行かなければなりません。不安なので通訳を連れていこうとは思いますが、ネットで調べると、肉芽腫性乳腺炎だとすると、病院により?対応が違うような気がします。
抗生物質を服用したり、ステロイド治療したり、切除したり、はたまたそのまま自然に治癒していくのを待つ、など。。
症例が少ないということで不安です。
先生はどう思われますか?もしくは、現地の病院を受診するにあたり、気をつけるべきことがあれば教えてください。
長々と失礼いたしました。
お手数おかけしますが御回答いただければ幸いです。
宜しくお願い致します。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
肉芽腫性乳腺炎も、比較的珍しい疾患なので「きちんと診断できない乳腺外科医」が多いのが現状です。
私は何度も他院で「診断のつかないまま、おかしな治療」をされている患者さんに出会っています。
質問者の経過は「典型的な肉芽腫性乳腺炎」としていいでしょう。
回答
「昨日膿が出たことから、これは肉芽腫性乳腺炎なのでしょうか。まだ乳がんの疑いは晴れないでしょうか」
⇒肉芽腫性乳腺炎だと思います。(見ればすぐに解りますが…)
理由としては
①癌を疑うような「腫瘤」を形成している
②針生検で「炎症」しかでない
③(経過の中で)炎症による所見(発赤や膿など)を伴うことも多い
今回は①~③まで満たしているので間違いは無いでしょう。
「病院により?対応が違うような気がします。抗生物質を服用したり、ステロイド治療したり、切除したり、はたまたそのまま自然に治癒していくのを待つ」
⇒基本は「ステロイド」です。
抗生物質は「排膿時」など特別な急性炎症がある時のみの限定使用です。
抗生物質を使っても「全く良くなりません」
○私は、「肉芽腫性乳腺炎の症例」も数多く経験している(日本でも、症例数ではどこにも負けていない自負があります)ので、どのような経過を辿るのか。大体解ります。
基本は「ステロイド」です。
ステロイドを使用すると、「ある大きさ」までは急速に小さくなります。
ここで経過がわかれます。
①このまま「大人しくなり」手術をしなくても治癒(再燃の可能性はありますが…)してしまう症例
②ある程度の大きさの腫瘍が残り、(そのままでは)炎症を繰り返す症例
②の場合には、ある程度「ステロイドが長期」となった時点で「手術」を勧めます。
きちんと「肉芽」の部分を切除することが重要です。
「現地の病院を受診するにあたり、気をつけるべきことがあれば教えてください。」
⇒炎症を抑える基本は「ステロイド」なので、『抗生剤の長期投与』は避けるようにしてください。
また「外科的切除(手術)」は「急性期には行わずに、ステロイド」で十分にコントロールしてから行う意識をもってください。
○以上のことは、「医師まかせ」にすると、誤った診療をされますので「自分の身は自分で守る」意識が重要です。
質問者様から 【質問2】
田澤先生こんにちは。
お忙しい中、早速御回答いただき、大変嬉しく思います。
去年の11月から毎日不安な日々を過ごし、
ようやく肉芽腫性乳腺炎であろうと御回答いただき、ほっとした一方、
日本ではない国で治療していくにあたり不安は尽きないため、
もう少しだけ質問させてください。
これまでの症状を詳しく申しますと、去年の11月から2月くらいまでは、
しこりのみで、乳房の表面には特に何も症状はありませんでした。
今年の2月に二回目の針生検をしたあと、
乳房の下部がアザのように黒ずんできました。
この色は、生理周期で薄くなったり濃くなったりしたようでした。
痛みも、生理前や排卵日近くに痛みが強かったです。
6月になり生理が終わると、乳房下部のアザが少し小さくなったような気がしたのも束の間、7月のはじめに、突然乳房上部が小さくぷっくりふくれ、赤く腫れたと同時に、下部も赤く腫れてきました。このような症状は11月からこれまで初めてでした。
それから1週間くらいで上部膨らみから破裂したかのように膿が出てきました。
膿は一時間くらい出続け、その後は絆創膏をして眠りました。次の日絆創膏を取ると、また膿が少し出ましたが、すぐにおさまり、膿の出ていた穴はふさがり、赤い腫れも引きました。
下部のアザのような部分は少しまだ赤いですが、腫れは引きました。
以上、長くなりましたが、質問は以下です。
①乳房上部のように、膿が出ると腫れや赤みがひきましたが、治っているわけではないのでしょうか?というのも、膿が出たとしても、また炎症が起こり腫れる、というのは繰り返されるのでしょうか。もし、膿が出ることで、回復に向かうのでしたら、乳房下部も、切開などして膿を取り出すという行為は意味のあることになりますか?
②ステロイドの副作用について教えてください。しこりを小さくするためにステロイドが必須でしたら、ステロイド治療も受けなければいけないとは思いますが、やはり、副作用が気になります。ステロイドを服用して日常生活に支障が出てきた場合、すぐにやめてもいいのでしょうか。ステロイドはすぐにやめると逆によくないと聞きましたが本当でしょうか。ステロイドを服用するにあたり何か注意することがあれば教えてください。
最後のお言葉ですが、自分の身は自分で守る、というのは本当ですね。この言葉を忘れずにしっかりと向き合っていきたいと思います。
本当にありがとうございます。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
肉芽腫性乳腺炎は、診療経験の無い医師には、どうしても「腫瘍の形が癌」に見えてしまい「やたらと無駄な針生検をされる」事があります。
その余計な針生検のために炎症が「針生検のルート沿い」に拡がる事もあり注意が必要です。
回答
「治っているわけではないのでしょうか?というのも、膿が出たとしても、また炎症が起こり腫れる、というのは繰り返されるのでしょうか。」
⇒その通りです。
炎症を引き起こすもとである「慢性肉芽(しこりとして認識されているもの)」がある限りは、それに伴う「急性炎症が治まる」としても「炎症は再燃し易い状態」です。
「乳房下部も、切開などして膿を取り出すという行為は意味のあることになりますか?」
⇒切開・排膿は、あくまでも「急性炎症~化膿」の寛解目的です。
実際に「内部に急性炎症がおこり、膿の貯留」が無い限りは全く意味はありません。
逆に、「今回のように内部に膿が貯まっている」時には行うべきです(今回のように自壊しないと、敗血症となるおそれもあります)
★ただ、肉芽腫性乳腺炎の本体は「慢性炎症性肉芽」なのです。
急性炎症が起きた際には、それに対する対処(切開や抗生剤など)をしますが、それは根本治療ではないのです。
「ステロイドを服用して日常生活に支障が出てきた場合、すぐにやめてもいいのでしょうか」
⇒実際には(巷で言われている様な)事はないのですが(あくまでも短期投与なので)
辞める場合には『漸減』します。
「ステロイドはすぐにやめると逆によくないと聞きましたが本当でしょうか」
⇒本当です。
漸減せずに、急に辞めると「副腎不全症状」がでるのです。
「ステロイドを服用するにあたり何か注意することがあれば教えてください」
⇒注意する事は「胃薬」との併用です。
これさえ守れば、特に問題は無いと思います。
○実際の投与はプレドニン20mg/day位で2週間毎に(経過を見ながら)漸減していきます。(30mg/dayから開始することもあります)
2週間毎に5mgずつ下げて、ある量で「維持」しながら様子を見るのです。
外科的切除が必要かどうかは、「経過次第」となります。
質問者様から 【質問3 肉芽腫性乳腺炎】
田澤先生、こんにちは。
再度ご丁寧な御回答どうもありがとうございます。
大変よく分かりました。
江戸川病院で治療を受けたいぐらいですが。。
帰国の際はお願いするかもしれませんのでよろしくお願い致します。
できればステロイドは服用したくないと思ってましたが、治療に必要なこと、理解しました。
具体的な薬の量も教えていただきよかったです。海外は強い薬のイメージがありましたので…。
もうひとつだけ、短期服用ということですが、具体的にはどれほどの期間服用して様子を見るものでしょうか。
乳房下部がずっとアザのようになっていた理由は針生検の影響もありそうですね。昨日ついに下部からも膿が出ました。
この病気を経験豊富に治療したことのある医師に出会えるよう、しっかり病院を見極めたいと思いますが、やはり治療は急いだほうがよいのでしょうか?
痛みは我慢できる程度です。
膿は出ますが、ひたすら出して絆創膏を朝晩かえるようにしてますが、その処置で間違いないでしょうか。なにかアドバイスがあれば教えてください。
またまた度々の質問となり申し訳ございませんが、
よろしくお願い致します。
田澤先生から 【回答3】
こんにちは。田澤です。
「肉芽腫性乳腺炎」ですね。
今現在も急性期の炎症があるとのこと
回答
「帰国の際はお願いするかもしれませんのでよろしくお願い致します。」
⇒是非、受診してください。
「乳癌」に関しては「ガイドラインが整備」され(一見)「全国どこでも同じ(ような)治療」が受けられるのですが、
良性疾患(特に、肉芽腫性乳腺炎などの低頻度の疾患)となると、全く無法地帯のような状態です。
「短期服用ということですが、具体的にはどれほどの期間服用して様子を見るものでしょうか。」
⇒効果次第です。
「急性期」の内は「2週間毎」に経過を見ながら「同量継続」か「減量」かの判断となりますが、
「安定」した場合には「1カ月毎」で経過をみて「漸減」していきます。
○この期間は早ければ2-3カ月ですが、長くなると「半年」位になります。
逆に「あまり長期になる」ような際には「外科的切除を検討」した方がいいです。
「やはり治療は急いだほうがよいのでしょうか?」
⇒「緊急」ではありませんが、「早めに治療」した方がいいでしょう。
「肉芽腫性乳腺炎の場合」には、炎症が「なかなか改善に向かわない」状況になりがちです。
♯一般の「感染⇒膿瘍形成」ならば、自壊し排膿されると急速に改善しますが「肉芽腫性乳腺炎の場合」には「改善が悪い」のです。
逆にいうと「排膿により改善傾向がみられている」うちは、急がなくても結構ですが、「ある程度以上より改善しない、もしくは悪化する」ようであれば「ステロイドを開始すべき」です。
「膿は出ますが、ひたすら出して絆創膏を朝晩かえるようにしてますが、その処置で間違いないでしょうか。なにかアドバイスがあれば教えてください。」
⇒間違いはありませんが(上記のように)改善が見られないようなら「早めに受診」してください。
質問者様から 【感想4】
田澤先生、こんにちは。
何度もご丁寧に回答いただきありがとうございました。
本当に、どうなってしまうのだろうと不安でいっぱいでしたので、
このような場所でほぼリアルタイムに話を聞くことができて、
大変感謝しております。
本当にありがとうございました。