[管理番号:11229]
性別:女性
年齢:61
病名:トリプルネガティブの肺転移
症状:
投稿日:2023年7月13日
このような場を設けていただき、ありがとうございます。
肺転移がわかり、今後の治療について先生の意見をお伺いしたいと思います。
2022年8月
左乳房部分切除
浸潤性乳管癌 大きさ18×18mm
核異型度3 組織学的異型度Ⅲ
Ki67約80%
センチネルリンパ節転移なし0/3
腋窩リンパ節0/7
pT1c pN0 pStageⅠA
ER0% PgR0% HER2 0
2022年10月~ AC療法4回
2023年1月~ ドセタキセル4回
放射線治療16回
すべての治療を終えてホッとしたのも束の間、造影CTで左右の肺に最大約12mmの影が6~7個、右鎖骨下に小さな影が見つかりました。
肝臓に影はなく、骨シンチは異常無しでした。
主治医から、PD-L1抗体の測定結果を
待って(現在検査中)、
①キイトルーダ
②エリブリン
の順に化学療法を提示されています。
パクリタキセル+アバスチンは「強いのでその後に取っておきたい」とのこと。
「肺の影は画像上CRを狙うのは難しく、現状維持を目的に抗がん剤で抑えて行くことを考えましょう。
鎖骨下の影は抗がん剤が効けば消えると思います」
と言われました。
術後10ヶ月で肺に多くの腫瘍を作るような足の早いガン(化成癌)であり、ACもドセもあまり(ほとんど?)効かなかったことを思うと、他に打つ手がないのか、抗がん剤が効かなかったらどうなるのか、この先がとても不安です。
先生でしたら、どのような治療を選択されますか?
また、トモセラピーなら複数の肺のガンを直接照射することは可能ですか?
現在、江戸川病院にセカンドオピニオンの予約を入れて、場合によっては転院も考えています。
足の早いガンと時間の勝負のような気がするので、予約日の前にQ&Aでも質問させていただきました。
どうぞよろしくお願いいたします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
主治医から、PD-L1抗体の測定結果を
待って(現在検査中)、
①キイトルーダ
②エリブリン
の順に化学療法を提示されています。
⇒PDL1抗体には2種類あり(そこまでは説明されていないのかもしれませんが)
その結果により
Pembrolizumab(キイトルーダ)とatezolizumab(テセントリク)の「両方が適応」となる可能性、「どちらか片方が適応」もしくは「どちらも適応とならない」こととなります。
主治医がatezolizumabの話をせずにpembrolizumabだけの話をしているのか?はおそらく併用する薬剤に対する期待度によるものでしょう。
Docetaxel終了後の再発までの期間が短いことでtaxane(docetaxelはtaxane系薬剤です)にあまり期待はしていないのでしょう。
Pembrolizumabは併用薬剤としてcarboplatin及びgemcitabineを用いますが、
atezolizumabの併用薬剤はnab-paclitaxelだからです。(意味解りますよね?)
確かに主治医がtaxane系薬剤である(atezolizumabの併用薬である)nab-paclitaxelよりも、taxane系薬剤ではないcarboplatin及びgemcitabineに期待するのは理解できます。
ただ同じtaxane系とはいえdocetaxelとnab-paclitaxelでは効き方が異なることはしばしば経験することなので、そこに拘らずに(PDL-1抗体がもしも両方陽性ならば)
pembrolizumabだけでなくatezolizumabも検討すべきでしょう。
上記免疫チェックポイント阻害剤(pembrolizumab / atezolizumab)の次の治療としては
1.Bevacizumab + paclitaxel
2.Eribulin
の順番がいいでしょう。
私は「その後に取っておきたい」という考え方には全く反対です。(本日公開予定の今週のコラム402回目をご参照のこと)
また、トモセラピーなら複数の肺のガンを直接照射することは可能ですか?
⇒可能ですが…
考え方としては、「全身療法でまずは全体に抑え込む」⇒(その上で)抗がん剤の休薬期間などに「残存病変のみに絞って」ターゲットとするという使い方を推奨します。
現在、江戸川病院にセカンドオピニオンの予約
⇒上記が「セカンドオピニオンの内容そのもの」なので、セカンドオピニオンをしても全く無意味です。
セカンドオピニオンはキャンセルして、上記内容をもとに再度主治医と相談しましょう。
***
再質問をする場合、下記日付以降にしてください。
2023/7/26
***
質問者様から 【質問2】
肺転移
性別:女性
年齢:61
病名:
症状:
投稿日:2023年07月26日
先日はお忙しいなかご回答いただき、ありがとうございました。
先生のご意見をふまえて、PD-L1抗体の測定結果が判明する主治医との次回予約に臨みたいと思います。
続けての質問で恐縮ですが、心配・不安なことがあります。
私の原発の乳ガンは、進行も早く悪性度・核異型度とも高い希少な化生癌で、ネット検索で出てきた京大病院病理診断科のレポートを見ると、
「全身化学療法への反応性は一般に不良」
「タキサン系薬剤がある程度有効」
とありました。
この点からも免疫チェックポイント阻害薬の次の薬剤としてタキサン系を先に選ぶ意味があると思いますが、ドセタキセルの副作用の抹消神経障害症状が多岐にわたってかなり酷かったため、同じタキサン系のパクリタキセルへも不安があります。
主治医から「効果がある限り一生ずっと抗がん剤は続く」と言われ、私が副作用をいつまで、どこまで我慢できるかの闘いであると分かってはいるのですが、「肺の腫瘍を無くすことは考えず、余命を延ばすことを考える」という主治医の目標設定値に希望が見い出せないのが正直な気持ちです。
自覚症状の副作用にも目を向けてくださり、全身治療で腫瘍の憎悪を抑えて、タイミングを見てトモセラピーなどの局所治療でCRを狙う田澤先生の方針を伺って、益々江戸川病院で再発治療をお願いしたい気持ちが増しています。
前回の回答でアドバイスいただいて一旦セカンドオピニオンの予約はキャンセルしましたが、PD-L1抗体の測定結果が判明する主治医との診察日以降に再度セカンドオピニオンの予約を入れました(手術依頼でも生検でもなく秘書メールの対象でもないため)。
他に適切な方法があればご教示ください。
ぜひとも直接先生からお話をお聞きして、進行の早いガンに早急に対処していきたいと思っています。
どうぞよろしくお願いいたします。
質問になっていないようです。感想として扱います。
質問者様から 【質問3】
肺転移
性別:女性
年齢:61
病名:
症状:
投稿日:2023年07月29日
前回は質問の体をなしていない文を送信して失礼しました。送信した直後から追伸を送りたいと思っていたので、感想として扱っていただきありがとうございました。
聞きたい事は化学療法後にトモセラピーに移るタイミングについてです。
先生の考え方としては
「全身療法でまずは全体に抑え込む」⇒(その上で)抗がん剤の休薬期間などに「残存病変のみに絞って」ターゲットとするという使い方を推奨します。
とのことですが、
①全身療法の効果がある限り抗がん剤は続いて、休薬期間は発生しないのではないですか?
②全身療法の効果がない場合はトモセラピーはできない(しない)ですか?
③休薬期間とは副作用などのために薬を休む期間も当たりますか?
現主治医は「肺の腫瘍は無くなる事を目指さず、抗がん剤はずっと続く」と言っていたので、積極的に局所療法へ移行する時期を探ってくれる印象を持てません。
どの薬剤になっても3ヶ月やってみてCTで効果を見るとのことです。
なお肺転移の際、腫瘍マーカーに変化はありませんでした。
全身療法と局所療法を病院をまたいで行うのが難しいなら、再発治療を始める段階で江戸川に転院することを選択肢に入れたいと考えております。
ドセの副作用が酷くてもう抗がん剤は懲り懲りだというのが本音で、余命を延ばすために一生抗がん剤を続けるのはあまりに希望が見えず、トモセラピーができる状態を作るという目標がないとモチベーションが保てないため質問させていただきました。
何度もお時間を取らせてしまって申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。
田澤先生から 【回答3】
こんにちは。田澤です。
まず考え方として
抗癌剤をエンドレスに続けるなど不可能です。 仮に(そんなことができる)強靭な人がいるとして、それでは「何のために生きるのか?(抗がん剤で)苦しむために生きるのか?」という根源的な問題に直面することでしょう。
皆さんが「必ず抗がん剤が効くとは限らない」ことが前提とはなりますが、私が常に意識している「工程表」は
質問者のPD-L1抗体の結果が不明なので、どんな薬剤が最初に来るのか解りませんが(2種のPD-L1抗体及び、それぞれの免疫チェックポイント阻害剤
atezolizumab / pembrolizumabについて今週のコラム405回目で整理して記載するのでご参照のこと)
どんな薬剤であれ・
1.まずは3か月⇒評価して「かなりの効果」+「患者さんのモチベーションが高い及び有害事象が許容範囲」であれば⇒6か月まで継続
2.まずは3か月⇒評価して「それなりの効果ではあるが、凄い効果とまでは言えない」+「患者さんのモチベーションが高い」⇒薬剤を変えて3か月
まずは半年間を考えます。
1にしろ2にしろ、最終的に(6か月で)ある程度の効果があり、(その時点で)肺転移のターゲットが絞られれば、ここでtomotherapyを検討します。
ご参考に
***
再質問をする場合、下記日付以降にしてください。
2023/8/7
***
質問者様から 【結果4(質問3 結果1)】
肺転移
性別:女性
年齢:61歳
病名:肺転移
田澤先生の診察:[診察なし]
田澤先生の手術:[手術なし]
投稿日:2023年12月22日
今年の夏頃、肺転移についてQ&Aとセカンドオピニオンでご意見をいただいた者です。お礼も経過報告もせずにいたことをまずはお詫びいたします。
その節は大変お世話になりありがとうございました。
現在、元々通っていた病院で抗がん剤治療を受けております。
転院しなかった理由として、
①夏頃コロナ感染者が増加しており、かつ市中の感染対策がかなり緩んでいたため、複数の混雑区間を通る江戸川病院への通院は、感染症対策の上でリスクを感じた。
②先生のアドバイスに基づき、私も希望する薬剤を先行して治療してくれる(江戸川病院より)近い病院を探すことも考えたが、治療の開始がさらに遅くなることも心配だった。
以上2点を以って判断しました。
結局ハラヴェンで治療を始めましたが、転移した腫瘍のサイズが大きくなるスピードが早く、早々にパクリ+アバスチンに変更になり現在にいたっております。
まだその効果は確認していませんが奏功してくれることを願っています。
転移の告知を受けて初発の時と比べようもないほどのショックを受けていたあの時、Q&Aでいただいたアドバイス、セカンドオピニオンでいただいた言葉は大変貴重でした。
本当にありがとうございました。
簡単ながら経過の報告とお礼とさせていただきます。
<Q&A結果>
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【結果】の送信は、【質問】として扱わないので
再質問をする場合、下記日付以降にしてください。
2023/8/7
(再質問は本日から可能です。)
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