[管理番号:478]
性別:女性
年齢:45歳
マンモグラフィー、エコー、マンモトーム生検を受けて乳癌と診断されました。
今分かっているのは、ステージ2の浸潤癌です。
しこりの大きさは胸の外から計って「4センチね。でも実際はもう少し小さいと思うけど」と言われました。エコーで技師の方が計られた時は2.3センチ位だったと思います。
5月28日に癌と診断され、CTやレントゲン、血液検査、尿検査、心電図をして6月4日にMRIと骨シンチの検査をします。
その後、手術の説明となるらしいのですが、PET検査はしなくてもいいのでしょうか?
それと、浸潤癌のため転移が心配でたまりません。首のリンパ腺や脇の下や鎖骨、背中が痛くなっているのと、手や腕が少ししびれると言うかだるさが強くなっているんですが、転移と関係ないのでしょうか?
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
乳がんと診断されて心配な気持ち、お察しします。
乳癌の進行の程度は、私の膨大な経験からおよそ見当がつきます。
回答
「ステージ2の浸潤癌」「「4センチね。でも実際はもう少し小さいと思うけど」と言われました。エコーで技師の方が計られた時は2.3センチ位だった」
⇒これは、「触診で4cm位(触診サイズは殆ど無意味です)」「実際の腫瘍径は2.3cm」となります。
ステージ2と言う事は cT2(2cm<腫瘍径≦5cm), cN0(画像上リンパ節腫大無), cStage2AもしくはcT2, cN1(画像上リンパ節転移軽度有), cStage2Bのどちらかです。
『画像上のリンパ節転移』については担当医から説明ありましたか?
◎腫瘍径2.3cmであれば、リンパ節転移の可能性はかなり低いです(私の経験から)
ちなみに私であれば、「初診時に、癌の疑いがあれば」超音波で測定し、『腫瘍径』と『リンパ節腫大の有無』の両方についてお話しします。
「PET検査はしなくてもいいのでしょうか?」
⇒不要です。
そもそも私の感覚では、腫瘍径2.3cmであれば、CTはいいとして『骨シンチさえ、不要』と思います。(勿論、ご本人の強い希望があれば行いますが…)
「浸潤癌のため転移が心配でたまりません。」
⇒リンパ節については(腫瘍径2.3cm程度では)転移の可能性はかなり低いです。
更に遠隔転移は無いでしょう。
乳癌は「余程、放置しなければ…」遠隔転移はしません。
「首のリンパ腺や脇の下や鎖骨、背中が痛くなっているのと、手や腕が少ししびれると言うかだるさが強くなっているんですが、転移と関係ないのでしょうか?」
⇒いろいろ心配なお気持ちは解りますが、乳癌の転移ではありません。
乳癌は早期で転移する事は殆ど無いのです。(私の経験を信じてください)
質問者様から 【質問2】
ご回答ありがとうございました。
担当の先生は「とにかく全部の検査が終わってからじゃないと詳しく説明できない。」マンモトーム生検の結果も「乳癌とでてます。詳しい内容はあとから追加で報告がきますから」と言われ、結果のコピーももらえませんでした。
しこりやその周辺、わきの下の痛みがあり、詳しく説明してもらえないのは、炎症性乳癌や悪性度の高い癌のため、全部の検査が終わらないと説明しないのかと不安でたまりません。
田澤先生の回答を見て少し安心しましたが、痛みが続くのが気になり、悪い方に考えます。
6月4日にMRI検査し6月8日に詳しく説明があり、早ければ6月11日に手術になりますが、セカンドオピニオンを受けた方がいいでしょうか?
ただ、セカンドオピニオンを他の病院に問い合わせしていますが、治療内容の説明だけな感じです。
転院も考えましたが、どの先生がいいかも分からず、悩んでいます。九州のため田澤先生のとろこに行くことができません。福岡、佐賀、長崎で信頼できる先生はいらっしゃらないでしょうか?
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
「とにかく全部の検査が終わってからじゃないと詳しく説明できない。」という担当医の態度は私にも理解できません。
説明が不十分な事で、患者さんが「炎症性乳癌や悪性度の高い癌のため、全部の検査が終わらないと説明しないのかと不安」とまで考えているとは想像もしていないのでしょう。
回答
「しこりやその周辺、わきの下の痛みがあり、詳しく説明してもらえないのは、炎症性乳癌や悪性度の高い癌のため、全部の検査が終わらないと説明しないのかと不安」
⇒そんなことはありません。
医師の心理として「もしも、本当に進行して厳しい」状態であれば、むしろ早めに「腫瘍もこんなに大きく、リンパ節も大きいのがあるから…」と患者さんに「それとなく早期ではない。と覚悟を促す」ものです。
そもそも「早ければ6月11日に手術になります」という『手術を前提とした状況』のようなので、炎症性乳癌ではありません
「福岡、佐賀、長崎で信頼できる先生はいらっしゃらないでしょうか?」
⇒申し訳ありません。
私が「信頼できる」医師は東北地方に2人しかいません。
もちろん「九州」で、そのような医師がいるのかは不明です。
◎「乳癌学会」とか「メディア」にでている医師が「本当の名医でない」事は、はっきりしていますが、「本物の名医を探すのは、結構大変」だと思います。
質問者様から 【質問3】
いつも丁寧に回答頂きありがとうございます。
ここに質問出来る事が支えになってます。
まだ検査中ですが、どうしても気になる事があります。
1.しこりや胸にズーンと痛みがあること
2.微熱(37度)の熱が続いていること
3.首のリンパ腺や喉に少し痛みがあること
4.腕にしびれが少しあること
5.1ヶ月程前に両手足にむくみとこわばりが出たこと
この症状から炎症性乳癌じゃないかと心配してます。
その場合は転移の可能性もありますよね?
背中や腰の痛みや頭痛があり転移してるのではと考えてしまい、眠れない日が続きます。
検査の結果が出て担当の先生から説明があるのを待つしかないんですが不安でたまらないので、ご回答お願いします。
田澤先生から 【回答3】
こんにちは。田澤です。
おそらく「炎症性乳癌」を勘違いされているようです。
炎症性乳癌
これは、「しこりがはっきりしない時の方が多いのですが」『癌細胞が皮膚のリンパ管に入り込み、これを閉塞することで皮膚が真っ赤になり、あたかも炎症に見える』というものであり
①実際に炎症はない だから微熱も無い
②皮膚全体が「真っ赤になり硬くなる」ので「一目で、それとわかる」
回答
「この症状から炎症性乳癌じゃないかと心配してます。」
⇒完全な勘違いです。
「炎症性乳癌」には「微熱も無いし、その他の症状もありません」
実際には炎症は無いのです。
「皮膚のリンパ管閉塞による赤み」が「見た目で、そのように見える」だけなのです。(一目でわかります)
◎質問者は2.3cmの「普通にしこりがある乳癌」です。
決して「炎症性乳癌ではなりません」
炎症性乳癌であれば、「担当医も(勿論一目でそれとわかるので)悠長に、手術の話しなどする筈がありません」
その場合には、すぐに(深刻な事態であることをにおわせながら)「化学療法の話しだけをします」
♯炎症性乳癌に「手術」はあり得ないのです。
質問者様から 【質問4】
炎症性乳癌のこと詳しく説明頂きありがとうございます。安心しました。
まだ検査中のため、どうしても悪い方に考えてしまいます。
もう1つ気になる事があります。
リンパ節転移した場合に症状はあるのでしょうか?
腕のしびれが続いていて、1ヶ月前の手足のむくみと、こわばりがリンパ節転移と関係あるのでは気になってます。
検査の結果を待つしかないとは分かっているのですが、担当の先生と話す機会がないので聞けない状況です。
来週には検査の結果と今後の治療の説明があるのですが、どんな事に気を付けて聞けばいいか、質問はどんな事をポイントにすればいいかを教えて頂きたいと思います。
田澤先生から 【回答4】
こんにちは。田澤です。
「リンパ節転移の症状」ですね。
いろいろな症状があると、「これって転移?」のように不安になる気持ちはとても解ります。
回答
「リンパ節転移した場合に症状はあるのでしょうか?」
⇒症状はありません。
明らかな癌であることを承知で何年も放置しているような状況では、リンパ節転移がゴロゴロとある事があります。(この状況をN2~N3)
このような極端な状況でも「症状を出すことはめったにない」のです。
「腕のしびれが続いていて、1ヶ月前の手足のむくみと、こわばりがリンパ節転移と関係あるのでは気になってます」
⇒これは「リンパ節転移とは全く関係」ありません。
もしも「腕の浮腫」や「痺れ」の原因となるような「リンパ節転移があるとすれば」、「脇の下に(誰がみても明らかな)大きなリンパ節がある筈」です。
◎質問者には、そのような(誰が診ても一目で解るような)リンパ節が腋の下に無いと思いますので、全く問題はありません。
「来週には検査の結果と今後の治療の説明があるのですが、どんな事に気を付けて聞けばいいか、質問はどんな事をポイントにすればいいか」
⇒説明されるべきポイントを以下に挙げます。
- 針生検(マンモトーム生検)の結果(組織型と核異型度)とサブタイプ
腫瘍の組織型(乳頭腺管癌、充実腺管癌、硬癌なのか特殊型なのか?)
癌細胞の核異型度
サブタイプ
ER, PR, HER2の値です。
更にKi67などが判明(Ki67は術後に計測する事も多い)すると「サブタイプ」が解り、術後薬物療法の方針が決まります。
- 術前(画像上の)病期(ステージ)
腫瘍のサイズ(cT1なのかcT2なのか?)とリンパ節転移が疑われるかどうか(cN0なのか、cN1なのか?)で決まります。
リンパ節に関しては「超音波での所見とCTでの所見が大事」です。それぞれがどうなのか?聞いてみてください。
遠隔転移は絶対にありません。
- MRIによる拡がり診断
安全に「温存」できるかどうか?
- 術後薬物療法の予定
「1」のサブタイプが決まれば、おおよその方針が解ります。
最終的には「術後病理で確認」しないと全ては確定しませんが、「かなりのところまで予測できる」筈です。
以上です。
本来は「担当医が当然話すべき」内容です。
それと重要なことは「病理レポート」を貰う事です。
それができないようなら「話にもなりません」転院すべきです。
質問者様から 【質問5】
いつも丁寧に回答頂きありがとうございます。
いろんな検査が終わり、先生から説明を聞きましたが、
説明日8日の予定を5日に早めてもらったためか、腫瘍のサブタイプはまだ出てないとの言われて、6月11日手術は先に決まり10日に入院するときには分かってると思いますよと言われました。
今日の説明で分かったことは
T2N1M0 stage2
硬がん、グレード2
腫瘍の大きさ2.5センチ
リンパ節転移はCTを造影剤を使わなかったため
はっきりは分からない。少しリンパ節の腫れがあるようだ。
遠隔転移無し。
乳房全摘しセンチネルリンパ節生検をして転移があれば、リンパ節切除になる。
全摘の理由
MRIで1つの腫瘍は2.5センチだが、他にも腫瘍が多数あり、良性か悪性か分からないため全摘を勧める。
サブタイプも分からない状態で手術を決めていいのか、5月20日にマンモトーム生検してまだ結果が出ない事、自宅から遠いため、手術後の治療通院も考えると、もう少し近い病院に転院も考えてます。ただ近くの病院もどんな感じかは分からないし、検査のやり直しが体力的にも負担になってます。
話が整理出来ずすみません。
先生は転院した方がいいと思われますか?
田澤先生から 【回答5】
こんにちは。田澤です。
T2N1M0 stage2
硬がん、グレード2
腫瘍の大きさ2.5センチ
リンパ節転移はCTを造影剤を使わなかったため
はっきりは分からない。少しリンパ節の腫れがあるようだ。
遠隔転移無し。
↓
「N1とすべきは迷うところですが(超音波での所見は言われませんでしたか?)」
ただ、センチネルリンパ節生検をするので、「そこはこだわらなくてもいいところ」ではあります。
ただ、問題なのは「MRIで1つの腫瘍は2.5センチだが、他にも腫瘍が多数あり、良性か悪性か分からないため全摘を勧める」という点です。
回答
「MRIで1つの腫瘍は2.5センチだが、他にも腫瘍が多数あり、良性か悪性か分からないため全摘を勧める」
⇒本来すべきは「MRIで所見のあった部位を超音波で探し」そこを針生検する(同時に2,3か所はできます)
そこも「癌」であって初めて「全摘出を勧める」となります。
ただ、「患者さんによっては」(癌かどうかは別にしても、腫瘍が多発しているならば)「安全に全摘出の方がいい」という反応の方もいらっしゃるので、その場合は(針生検なしの)「全摘出」でもいいですが…
「サブタイプも分からない状態で手術を決めていいのか」
⇒「術前化学療法を行い腫瘍のダウンサイズを狙っている」のでなければ、(サブタイプは不明でも)いずれ「手術先行」でいいと思います。
「先生は転院した方がいいと思われますか?」
⇒きちんと「自宅から近い病院」の事を調べてからの方がいいです。
ただ「近いだけ」の理由での「転院」は勧められません。
治療を優先してください。
質問者様から 【質問6 痛みについて】
6月11日に手術が決まりました。
1つ気になることがあり質問します。
1ヶ月位前から両方の乳房の痛みがあり、今は乳癌がある左側だけがズキンズキンと痛みがあります。
生理の周期とは関係なくずっと痛みが続いています。
サブタイプがまだ不明なため、悪性度が高いのではと気になります。
それとMRで一応大きさ2.5センチになっているが、広がっている可能性があると、他にも腫瘍があり、それも癌の可能性があると言われました。広がっていることで痛みがあることはありますか?
もう1つ
腫瘍の大きさとリンパ節転移は関係ありますか?
センチネル生検をしなければ結果は分からないとは分かってますが、エコーをほとんど見られないので…
田澤先生から 【回答6】
こんにちは。田澤です。
手術前までは、皆さんかなり神経質になるものです。
いろいろな症状が「あれも、これも乳癌の進行によるの?」みたいな不安に苛まれます。
ただ、術後は「そのような不安が半減」します。
やはり、一歩一歩全身が大事なのです。
回答
「1ヶ月位前から両方の乳房の痛みがあり、今は乳癌がある左側だけがズキンズキンと痛みがあります。生理の周期とは関係なくずっと痛みが続いています。サブタイプがまだ不明なため、悪性度が高いのではと気になります。」
⇒正確には解りませんが…
基本的には「女性ホルモンの刺激」症状だと思いますが、「左だけ」となると「針生検による内出血や浮腫み」の影響もあるでしょう。
病状などとの関係はありません。
「MRで一応大きさ2.5センチになっているが、広がっている可能性があると、他にも腫瘍があり、それも癌の可能性があると言われました。広がっていることで痛みがあることはありますか?」
⇒腫瘍と痛みとの関係はありません。
「腫瘍の大きさとリンパ節転移は関係ありますか?センチネル生検をしなければ結果は分からないとは分かってますが、エコーをほとんど見られないので…」
⇒関係はあります。
しかし、(腫瘍径だけで判断すれば)2.5センチであれば、「転移無」の方が圧倒的に多いです。
質問者様から 【質問7 手術をしました】
6月11日に全摘の手術をしました。
病理結果は1ヶ月位かかるとこ事ですが、
マンモトーム生検の結果がようやく少し分かったので質問させてください。
腫瘍の大きさMRIでは2.5センチ
ただし、もっと広がっている可能性あり
センチネルリンパ節転移あり、リンパ節切除
ER,PgR陽性
HER2陰性
グレード2
Ki67はまだ不明
担当の先生はホルモン療法と癌の広がりで、抗がん剤を使うかも、放射線はリンパ節転移4こ以上だとすると言われてます。
確定は病理検査の後にと言われてますが、
リンパ節転移があり予後が非常に気になります。
リンパ節転移がある場合、もう全身に癌細胞が回っているという事ですか?
完治は難しいのでしょうか?
リンパ浮腫にならないようにするためにはどうしたらいいですか?
田澤先生から 【回答7】
こんにちは。田澤です。
無事に手術が終わりましたね。
まずは一安心です。
回答
「病理結果は1ヶ月位かかる」
⇒随分「長い」ですね。
通常は2週間位でしょう。
「放射線はリンパ節転移4こ以上だとすると言われてます」
⇒「乳房切除後照射」はリンパ節転移4個以上では推奨度Aとなります。(これを基準としているのでしょう)
ただ、リンパ節転移1~3個でも、推奨度B(科学的根拠があり、実践するよう推奨する)である事に注意が必要です。
ここは「担当医に確認」すべきです。
「リンパ節転移がある場合、もう全身に癌細胞が回っているという事ですか?
⇒そうではありません。
転移といっても
「リンパ行性転移=リンパ節転移」と「血行性転移=遠隔(臓器)転移」は全く別物です。
リンパ節転移は、「リンパ管の流れにのった癌細胞がリンパ節に到達し増殖」した事を意味します。
遠隔転移は「血管の流れにのった癌細胞が(遠隔)臓器に到達し増殖」する事です。
つまり癌細胞は「全く異なったルート」で転移を起こす(可能性がある)わけであり、決して「リンパ節転移が起きて、それが遠隔転移に繋がる」訳ではないのです。全く別ルートです。
「完治は難しいのでしょうか?」
⇒そんな事はありません。
ステージ2Bであれば、「完治する可能性」の方が圧倒的に高いです。
♯ステージ2は10年生存率80%あります。
◎再発した人のブログを見るのはお勧めしません。そういったブログが目立つのは(再発していない人がブログを掲載していないだけの理由です)
「リンパ浮腫にならないようにするためにはどうしたらいいですか?」
⇒精度の高い「腋窩郭清」ならば、通常リンパ浮腫にはなりません。
心がけるのは
①患肢のけがに気を付ける
②患肢で点滴をしない
③患肢で重い物を長時間持たない
質問者様から 【質問8 転移について】
たびたびの質問すみません。
リンパ行性転移と血行性転移の違いについて
もう少し詳しく聞きたいんですが、
リンパ行性転移と血行性転移は全く別との事ですが、リンパ行性転移するとはどんな影響があるのでしょうか?
血行性転移はどうやっておこるのか?
浸潤癌は血行性転移の可能性があるということですか?
田澤先生から 【回答8】
こんにちは。田澤です。
「血行性転移(臓器転移):全身」と「リンパ行性転移(リンパ節):局所」についてですね。
回答
「リンパ行性転移するとはどんな影響があるのでしょうか?」
⇒「癌細胞」が周囲の間質に存在する「微小リンパ管」に侵入し、「リンパ管の流れにのり」、「リンパ節に到達し、そこで増殖:これをリンパ節転移」といいます。
つまり、「リンパ管の流れの方向に沿って」 level1⇒level2⇒level3⇒鎖骨上⇒頸部へとリンパ節転移を生じます。
「血行性転移はどうやっておこるのか?」
⇒「癌細胞」が周囲の間質に存在する「微小血管」に侵入し、「血管の流れに乗り」、「体中のいろいろな臓器に到達し、そこで増殖:これを遠隔転移」といいます。
♯いろいろな臓器と記載しましたが、実際には「癌細胞の親和性があり」骨、肺、肝、(それらの後に脳)が殆どです。
「浸潤癌は血行性転移の可能性があるということですか?」
⇒浸潤癌は「乳管から、間質へ浸潤」しているので「血管の中へも(血行性転移)」同様に「リンパ管の中へも(リンパ行性転移)」両方の可能性があります。
逆に言うと「非浸潤癌」は「乳管の中」に留まっているので(乳管の外に存在する)『間質の中にある血管やリンパ管の中には入れない(血行性転移もリンパ行性転移も起こせない)』のです。
質問者様から 【質問9 病理の結果がでました】
手術から1ケ月やっと病理の結果がでました。
腫瘍径 1.9cm 断端 -
組織型 浸潤癌
グレード 2
ホルモンレセプター ER8+ 強陽性 PgR8+ 強陽性
HER2 1+ 陰性
腫瘍周囲の脈管浸潤 リンパ管、血管 なし
センチネルリンパ節転移 あり 2個中1個
腋窩リンパ節転移 あり 9個中1個
今後の治療
タモキシフェン5年
放射線治療なし
リンパ節転移が2個あるため抗がん剤をするかどうか、Ki67を病理の追加検査を依頼しているので、Ki67が15%以上だと抗がん剤をすると言われました。
質問したいのですが
①そもそも手術後の病理検査でKi67は最初から依頼しないのでしょうか?
針生研からホルモン陽性、HER2陰性が分かっていたのに病理結果まで1ケ月まって更にKi67の結果まで3週間待つように言われました。Ki67次第でルミナルAかBとなり抗がん剤の適用かがきまるんですよね?なぜ最初から調べてないのかが分かりません。
②主治医はKi67が15%以上で抗がん剤の適用といわれましたが、田澤先生は20%以上がルミナルBとなり抗がん剤適用となると言われていたと認識していますがどうでしょうか?
③放射線はしないといわれましたが、放射線をしたいと希望できますか?と主治医に聞いたところ、転移4個以上した出来ないと言われました。リンパ節転移1~3個は推奨Bなんですよね。推奨Bとは具体的どういうことかと、私の場合、放射線をした場合のメリット、デメリットを教えていただきたのですが。
子供のためにも、再発防止の治療をしっかりしたいと思っています。そのために自分の状況を把握して納得して治療を決めたいと思っていますが、主治医になかなか伝わらず、田澤先生を頼ってしまいます。
お忙しいところ申し訳ありませんが、回答いただけたらとおもいます。
田澤先生から 【回答9】
こんにちは。田澤です。
病理結果が出たのですね。
本来「リンパ節転移にかかわらず」Ki67は必要なのだから「最初からオーダー」するべきですが…
(逆に言うと)「リンパ節転移が無ければKi67は測定しない主義?」なのでしょうか…
回答
「そもそも手術後の病理検査でKi67は最初から依頼しないのでしょうか?」
⇒通常は、最初からオーダーします。
そもそも術前のマンモトーム生検で「ルミナールタイプ」であることは解っていたのだから(リンパ節転移の個数など全く関係無く)Ki67は必要なのです。
「主治医はKi67が15%以上で抗がん剤の適用といわれましたが、田澤先生は20%以上がルミナルBとなり抗がん剤適用となると言われていたと認識していますがどうでしょうか?」
⇒いまだに「15%」を基準としている乳腺外科医がいる事に驚いています。
St.Gallen 2015では「AとBの境界は20-30%である」とした意見が最多でした。
(明確なカットオフ値は定まっていませんが)私の感覚でも25%位が妥当でしょう。
「推奨Bとは具体的どういうことか」
⇒「科学的根拠があり、実践するよう推奨する」と言う事です。
「腋窩リンパ節転移が1-3個でも、乳房切除術後の「局所再発及び生命予後を改善させる」と解っています。
「4個以上の推奨Aと比較して」Bとなっているのは、その「貢献度合いの大きさ」によるのです。
「私の場合、放射線をした場合のメリット、デメリットを教えていただきたのですが」
⇒メリットは「局所再発リスクや予後の改善」であり、デメリットは有害事象(短期的には、皮膚炎、中期的には、放射線肺臓炎、長期的には心臓や肋骨骨折、患肢浮腫の誘因など)です。
質問者様から 【質問10 抗がん剤の必要性】
来週、Ki-67の数値が出て今後の抗がん剤をするかが決まりますが、先生のご意見を聞かせて頂きたくて質問させて下さい。
病理の結果
腫瘍径 1.9cm
ER8+ PgR8+
HER2 1+
グレード2
リンパ節転移2個
脈管浸潤 なし
Ki-67の数値でルミナルAかBになりますが、数値が高値(例えば50%以上)だとBとなり抗がん剤の適用となると思いますが、20%~30%だと先生は抗がん剤は必要だと思われますか?
担当の先生は15%以上で抗がん剤と言われましたが、先生は何%から適用だと思われますか?
(私はホルモンレセプターが高値のため抗がん剤が効きにくいような気がしてます)
現在タモキシフェンを服用していますが、閉経前ですが、LH-RHアゴニストはしなくてもいいのでしょうか?
全摘をしていますが、リンパ節転移2個の場合、放射線はした方がいいと思われますか?
Ki-67が、低値か微妙な場合、マンマプリントも検討しようかと思っていますが先生はどう思われますか?
アジュバンドオンラインでの再発率はわかりますか?(Ki-67がまだ不明ですが…)
再発が抑えられるなら積極的に治療をしたいと考えてます。たくさん質問してすみませんがよろしくお願いします。
田澤先生から 【回答10】
こんにちは。田澤です。
pT1c(19mm), pN1, luminalですね。
Luminal typeでAとB(Ki67の値をどこで切るか?)の診断及び、luminal Aでの「化学療法の適応」 今回のSt.Gallen 2015でも「議論となった」ことです。
回答
「20%~30%だと先生は抗がん剤は必要だと思われますか?」
⇒私は、ここにAとBの境目があると思っています。
私の患者さんには25%とお話しています。
♯Ki67の概念が最初に出た時には14%で区切るというものでした。
今でも14を用いている医師もいるようですが…
ただ、その当初から「14%は低すぎる、この値で切ると、あまりにも化学療法をする人が多すぎる」と感じていました。
正直、「抗がん剤の売り上げを上げるために抗がん剤メーカーの息がかかっているのでは?」と疑っていた位でした。
ただ「抗がん剤が売れる」ことは「新規薬剤の開発費が潤沢」となり、「より優れた薬剤の開発が可能となる」⇒「乳癌の制圧」といういい面があるとは思いますが…
その後「20%」がいいのではないか?など閫値は上昇する傾向にあります。
St.Gallen 2015では「20~30%」とvotingした専門家も最も多いながら、論文として発表されたものでは「値を決めることはできない。各施設の判断で」となりました。
とはいえ、「20~30%が最多であった」と言う事が大事だと私は思っており、私の感覚である25%は妥当だと思っています。
「担当の先生は15%以上で抗がん剤と言われましたが、先生は何%から適用だと思われますか?」
⇒25%です。
15%は低すぎると思います。
「現在タモキシフェンを服用していますが、閉経前ですが、LH-RHアゴニストはしなくてもいいのでしょうか?」
⇒LH-RHagonistはした方がいいと思います。
SOFT試験ではTAMに追加するLH-RHagonistの上乗せ効果は以下の2グループのみでした。
①35歳以下の群
②化学療法を併用して、化学療法後にも月経が継続した群
これを拡大解釈して「化学療法は結局しない方針となったが、(中間リスクとして)化学療法の適応がある」と考えた場合には行ってもいいでしょう。
♯たとえluminal Aだとしても「リンパ節転移4個以上」は化学療法した方がよい St.Gallen 2015 なので「2個」は中間リスクと言えます。
「全摘をしていますが、リンパ節転移2個の場合、放射線はした方がいいと思われますか?」
⇒4個以上なら推奨グレードA
1~3個なら推奨グレードBとなります。
2個の場合は悩むところです。
「放射線照射」は局所療法です。
本来「局所療法と全身療法は別物」なのですが…
この場合は、全身療法とのバランスで決めるべきです。
つまり、十分な「全身療法」を行えば「全身療法のなかで、局所も十分にカバー」できます。
今回の場合は(結果的に)「化学療法を選択しなかったら」放射線治療を選択してもいいと思いますし、
「化学療法を選択した場合」には必ずしも放射線治療はしなくてもいいでしょう。
「Ki-67が、低値か微妙な場合、マンマプリントも検討しようかと思っていますが先生はどう思われますか?」
⇒費用が高いので誰にでも勧められませんが…
可能なのであれば「お勧め」します。
「アジュバンドオンラインでの再発率はわかりますか?」
⇒Adjuvant!OnlineにはKi67は用いないので大丈夫です。(そのかわりにグレードを用います)
○何もしない場合:36.6%
○内分泌療法のみ:24%
○更に抗がん剤を用いた場合:16.1%
つまり「化学療法による上乗せ効果」は7.9%なのです。
質問者様から 【質問11 抗がん剤について】
いつも詳しく回答していただきありがとうございます。
やっとKi67の結果がでました。結果50%以上でした。
ということは、私はルミナルbになり抗がん剤の適用となると思います。
Ki67が高値の場合、抗がん剤になると思ってはいましたが、やはりショックで、田澤先生に確認してから最終決心をしたいと思います。
担当の先生は、抗がん剤TCを3週間に1度を4回といわれましたが適正と思われますか?
アジュバンドオンラインで、抗がん剤を用いた場合16.1%とは、抗がん剤とホルモン療法をした場合、再発の可能性は16.1%になるとの理解でいいのでしょうか?
参考伺いたいのですが、抗がん剤による脱毛が気になります。経口抗がん剤のUFTやTS-1は、私の場合効果はないのでしょうか?
田澤先生から 【回答11】
こんにちは。田澤です。
「Ki67≧50%」という結果ですね。
やはり化学療法の適応となります。
回答
「抗がん剤TCを3週間に1度を4回といわれましたが適正と思われますか?」
⇒私も同意見です。
ルミナールタイプでの抗がん剤は「TCが基本」だと思います。
「アジュバンドオンラインで、抗がん剤を用いた場合16.1%とは、抗がん剤とホルモン療法をした場合、再発の可能性は16.1%になるとの理解でいいのでしょうか?
⇒その通りです。
「経口抗がん剤のUFTやTS-1は、私の場合効果はないのでしょうか?」
⇒TS-1は「術後抗がん剤としては」適応がありません。
UFTは適応がありますが、効果が問題です。
古典的化学療法である「CMF]に対する「非劣勢を証明できませんでした」
やはり勧められません。