[管理番号:369]
性別:女性
年齢:54歳
質問者様の別の質問質問が新たな内容のため、別の管理番号としました。 |
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4月14日に乳がんと診断されました。
病理検査の結果タイプは、HER2と言われ腫瘍の大きさは2センチです。
仕事の関係で5月18日から治療に入ります。
手術からでも抗がん剤からでもどちらでもいいと言われ悩んでしまいました。
それと9月12日に娘の結婚式があり、このあたりで体が回復している元気な状態を望んでいます。
主治医はそれなら抗がん剤からではどうかと言われました。
しかし、腫瘍をそのままほつておくのも不安です。
かと言って抗がん剤も2種類目になるそうで、副作用が心配です。
(2015年5月の質問)
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
「HER2タイプの乳癌」では術前にしろ術後にしろ必ず(原則的には)「抗HER2療法+(通常の)化学療法」を行います。
化学療法は「術前と術後では予後同等」であり、どちらでもいいのです。
「5月18日からの治療開始」と「9月12日の結婚式」が決まっているのですね。
それでは回答します。
回答
「9月12日」に「確実に体が楽な状況」を考えれば、間違いなく「手術先行」がいいと思います。
スケジュールを考えると…
- 化学療法メニュー「TCx4⇒ハーセプチンx18」の場合
5月18日手術
⇒5月25日辺りから「化学療法」開始(TCx4であれば 7月中に終了)
⇒(副作用回復から十分な1か月半後である)9月12日の結婚式
⇒放射線治療(5~6週間)
⇒ハーセプチン(18回、1年間)となります。
- 化学療法メニュー「FECx4⇒DTX+ハーセプチンx4⇒ハーセプチンx14」の場合
この場合のスケジュールとしては、
5月18日手術
⇒5月25日よりFECx4
⇒(副作用回復から十分な1か月半後である)9月12日の結婚式
⇒DTX+ハーセプチンx4
⇒(3週間あけて)放射線治療(5~6週間)
⇒ハーセプチン(14回)となります。
これに対して「化学療法先行とすると」
もしも、「化学療法効果が無くて、慌てて手術を検討する場合」には、『9月12日の結婚式に合わせた治療スケジュールができない』可能性があります。
◎そもそも「腫瘍径2cmであれば、『術前化学療法をしなくても』乳房温存術が可能」であり、「不確定な要素(化学療法が無効で、緊急に手術をしなくてはならないかもしれない)を許容してまで術前化学療法をする」必要が全くありません。
「副作用が心配です。」
⇒メニュー「1」の場合のTCや「2」の場合のFECやDTXでは副作用がありますが、最後のハーセプチン単剤では副作用は殆どありません。
(通常の化学療法) | |
TC(ドセタキセル+エンドキサン) | ⇒手指の痺れ、倦怠感、脱毛 |
FEC(5Fu, ファルモルビシン、エンドキサン) | ⇒吐き気、嘔吐、脱毛 |
DTX(ドセタキセル) | ⇒手指の痺れ、倦怠感、脱毛 |
(分子標的薬) | |
ハーセプチン | ⇒自覚される副作用は殆ど無し(楽!!) 半年毎に心機能チェックは必要 |
◎今回の質問者のケースでは…
「手術先行」としておけば、後の化学療法には自由度が増します。(スケジュールは厳密にする必要はなし)
しかし、「術前化学療法」としてしまうと… 化学療法は必ず効果があるとは限りません。
もしも、途中で「化学療法が無効となり、腫瘍が増大してしまう」と、『慌てて手術のスケジュールを組む』必要が生じ、この場合には『緊急事態となり、自由度は殆ど無くなります』
質問者様から 【感想2】
こんにちは
田澤先生、ずっと悩み続けた質問に丁寧にお答えいただいてありがとうございます。
7日に手術をとお願いして帰ったのですが、先生の回答をお読みできないままで、やっぱり手術でよかったのか、悶々としていました。
しかし、先生のご回答を見つけ、田澤先生のご回答がとてもよくわかり、手術を先行していてよかったと本当に安堵いたしました。
主治医も聞けば説明してくださる方なのですが、先生のように具体的でなく、大きくなるのが気になれば手術が先のほうがいいです。と言われただけでしたので。
十分な情報がなくても想像力を働かせて回答してくださる先生を大変尊敬いたします。
本当にありがとうございました。
質問者様から 【質問3】
先日は、手術か術前の抗がん剤かの問いに的確にご返答いただきありがとうございました。
おかげで、無事手術も終わりいよいよ抗がん剤の治療に入ります。
手術も不安だらけで終わってしまえばというところもあるのですが、抗がん剤の副作用がこれから心配です。
乳がんの型が、HER2ということで、化学療法がより有効であり、腫瘍も4センチと大きかったこともあり主治医は、しっかり抗がん剤を使って治療をすすめようとされています。
田澤先生は、抗がん剤の副作用について、どのようなケアをされるので すか。また、私の場合、近くに希望する病院がなくて1時間20分かかるところに通っています。
だから、副作用に対して、私のできる限りの準備と主治医と相談して、できるかどうかわかりませんが、副作用に対する投薬などをお願いしようと思っています。
それと、いろいろ調べると、漢方薬がいいとか、免疫療法がとか、サプリメント(フコイダン等)とか副作用で免疫が低下することに対してたくさんの治療(ケア等)があることも知りました。
私は医師ではありませんし、近くにこれらを試した体験者もいないのでどうしたものかと思っています。先生は、どう思われるか、お考えをお聞きしたいです。
田澤先生から 【回答3】
こんにちは。田澤です。
「抗がん剤の副作用」ですね。
どうしても「弱気になっている」ところに付け込む(言葉は悪いですが)民間療法的なものがあるので注意が必要です。
現在は「支持療法が発達」しているので、昔のように「体が弱ってしまう」までには至りません。
私は通常の「アブレピタント」「グラニセトロン」などの制吐剤、「デカドロン」、胃腸薬など、また、「白血球低下」による発熱、感染はとても心配なものです。
遠方からの通院患者さんも多いので、(白血球低下がなく)安心して治療ができるように発売したばかりの「ペグフィルグラスチム」を投与しています(白血球低下の予防投与として唯一適応)
その上で「念の為の発熱時の解熱剤と抗生剤」も処方しています。
僅か10数年前とは、これら指示療法は「見違えるほどの進歩」がありますので、「かつてのような酷い事」は殆どおきません。
それと、副作用のピークは3日目位にきますので「化学療法の帰りに具合が悪い」と言う事は無いと思います。
大丈夫です。
○あまり民間療法(とまではいかなくとも、極端なサプリメント)に振り回されずに、「やるべき事」を担当医にしてもらえば大丈夫です。
担当医を信頼してください。
質問者様から 【感想4】
こんにちは。田澤先生からのご回答を見つけて、飛び上がらんばかりでした。
明日からいよいよ抗がん剤が始まります。その不安を先生が、前回同様見事払拭してくださいました。
先生のご回答はいつも丁寧であまり知識のない私にも本当にわかりやすく、しかも医学用語も使って説明してくださるので、主治医の言っていたあのことだとかよく理解できます。
主治医はとても話やすく言い方です。
それに加えて、田澤先生は、私には本当に頼りになるもう一人の主治医のようです。
先生の的確なご回答は、たくさんの患者さんに寄り添って、治療されてきたご経験がおありだからでしょうね。本当に尊敬いたします。ありがとうございました。
質問者様から 【質問5 副作用の様子を見て、主治医に相談します】
田澤先生、こんにちは。抗がん剤治療について前向きになることができました。
主治医の話をしっかり聞けてなかったことや薬の保険適応などいろいろ決まりごとがあるのですね。私たちは、そんなことには全く思いもよらないのでいろいろ考えていまいます。でも、先生に相談させていただいて、いつも心が軽くなります。本当に感謝いたします。
4回目のFECの副作用が気になるようだったら(3週間後)ハ-セプチンのみからお願いしてみます。
最後に先生にぐちをお話してもいいですか。患者は誰でも副作用が少ない痛みのない治療で病気を治したいと思っています。でも巷ではどこにも免疫療法とか代替療法とかいろいろな療法の情報が溢れ、ともすると抗がん剤等は治療するというよりは体力を奪い死期を早める恐れまであるというような激しい書き方をしたものもあります。同じ医師という立場でありながらどういうことなのだろうと思ってしまいます。先生は、このような立場の治療の考えをどう思われていますか。
私たちは、主治医を信じて、治療に専念していけばいいのですよね。田澤先生のようにたくさんの経験を積まれ、適切に診断治療してくださる先生が増えてくださることを望みます。
田澤先生から 【回答5】
こんにちは。田澤です。
「巷ではどこにも免疫療法とか代替療法とかいろいろな療法」「抗がん剤等は治療するというよりは体力を奪い死期を早める恐れまである」
「このような立場の治療の考えをどう思われていますか」
⇒標準治療を行っている医師の立場からコメントします。
「免疫療法」は以下の①②③、 「代替療法」は以下の①②④ です。 区別をしてください。
①客観性に欠けている:
科学的なデータを無視している
②本当の診療の経験にかける:
実際に治療をしていると「抗がん剤が効く様子」を実感できます。
そのような経験無しで「副作用だけ」を見て語っている。
③自分の研究を盲信している:
これは「免疫療法」についてです。
確かに理論的に「癌細胞を自己の免疫機能を高める」ことで「癌を攻撃」する。
素晴らしい考え方です。もしかして「来世紀には実用化」するかもしれません。
「実用化には全く程遠い」状態にも関わらず、「免疫療法こそ、理想だ」という盲信から「他の治療を受け入れられない」のです。
④金銭的利益:
これは「代替療法」についてです。
どこまで「自分の考え出した治療」を本気で信じているのか(全く)怪しいものです。
「藁をもすがる」思いの方の心情に「つけ込む」「詐欺」としか思えないものもあります。
○「標準治療」である「ホルモン療法」や「抗がん剤」に世界の「研究者」と「製薬会社」のどれだけの「労力」と「費用」と「時間」が費やされているのか?想像してみてください。
「個人の思いつき」で「それらを否定すること」が如何に無意味か納得できる筈です。
人類の叡智なのです。