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Ki67 高値の際の治療等について

[管理番号:8138]
性別:女性
年齢:49歳
病名:
症状:

田澤先生
大変お忙しくされているところ、申し訳ございません。
妻の乳がんのことで、ご相談させて下さい。
まだ全ての検査結果は出ていないのですが、不安な日々を過ごしており、ご相談させていただきました。

3週間前に、妻が右胸しこりに気づき、2週間前にクリニックを受診したところ、乳がんが発覚しました。

現在分かっていることは、以下の通りです。

・エコーでの腫瘍サイズは22mm
・Ki67 80%と高い
・サプタイプは結果待ち
Ki67が高いため、クリニックの先生は、術前化学療法になるのではとの見解を示されています。

教えて頂きたいことは、以下の点です。

①ki67は増殖度が高いので、再発、転移リスクを心配しています。
過去のQ&Aを拝見したところ、あくまでも腫瘍サイズとリンパ節転移の有無が重要との事ですが、仮にリンパ節転移していても、抗がん剤治療をすれば、Ki67の高低による再発、転移リスクに差はないとの理解でよろしいでしょうか。

②明日(12月(中旬)日)に、クリニックの紹介状を持って、地元の大学病院に行きます。
クリニックの先生が仰っている通り、術前化学療法を勧められた場合の判断を迷っています。
増殖度が高いのであれば、手術を先行し、術後すぐに化学療法開始がよろしいでしょうか。
但し、年末年始の関係で手術まで日数を要し、腫瘍が大きくなり、リンパ節転移も進む可能性があるのではと心配しております。

③妻は、再発リスクを少しでも下げるため、腫瘍がある右胸を全摘、腫瘍がない左胸も全摘で考えおります。
これは、再発リスクを下げる有効な手段になりますでしょうか。

④結果待ちの段階で心配しても仕方ないことなのですが、トリプルネガティブであっても、抗がん剤や新薬で対処法はあると考えてよろしいでしょうか。

⑤腫瘍サイズは初期を超えてはいるものの、22ミリなのて初期の境界線と前向きに考えようと思っているのですが、精神的に不安定なため、妻も私も悪く考えてしまう時があり、無いとは信じているものの、他臓器に転移してるのではと心配する時もあります。
この腫瘍サイズで、他臓器転移の心配はないでしょうか。

また、ここ一週間、しこりから肩にかけて、筋が痛い、張ってることを気にしています。
これはリンパ節転移と関係しているでしょうか。

まだ結果待ちの中、長文でのご相談となり申し訳ございません。

少しでも頭を整理したうえで、地元の主治医と治療を方法を話し合っていきたいので、ご相談させていただきました。

何卒、宜しくお願いいたします。

 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。

「Ki67が高いため、クリニックの先生は、術前化学療法になるのではとの見解」
→本来「術前抗がん剤は、小さくして温存手術を狙う(必ず効くとは限りませんが)」ためのものです。

 そもそも小さい(最初から温存可能)の場合には無意味です。(抗がん剤が必要なら術後でいいのです)

「あくまでも腫瘍サイズとリンパ節転移の有無が重要との事」
→それがステージなのですから当然です。(ステージとは「そのためにある」のです)

「ですが、仮にリンパ節転移していても、抗がん剤治療をすれば」
→まず「ここに、誤解」があります。

 「リンパ節転移」と「抗がん剤が効くかどうか?」は全く無関係(今週のコラム188回目及び189回目参照のこと)

今週のコラム 188回目 このデータを見ても、まだ「リンパ節転移があると(ルミナールAでも)化学療法が必要だと思いますか??」
今週のコラム 189回目 「リンパ節転移があれば抗がん剤をすべき」という古い考えが完全否定される日も近いのです。

 〇質問者の場合にはサブタイプがまだ不明のようですが…
  どのサブタイプであれ、それに応じた治療をすれば、「ステージ通りの予後になる(ステージとは「そのため」にあるのです」ということです。

「増殖度が高いのであれば、手術を先行し、術後すぐに化学療法開始がよろしいでしょうか。」
→術前抗がん剤が「必ず効く」と盲信するのは誤りです。
 少数ながら「術前抗がん剤中に、進行してしまう」ケースは見られます。

 重要なのは「何を望むのか?(優先順位をどこにおくのか?)」です。
 「小さくして温存」以外では「手術を先行」させるべきなのです。(そもそも「全摘希望」であれば、術前抗がん剤は無意味)

「③妻は、再発リスクを少しでも下げるため、腫瘍がある右胸を全摘」
→それであれば、術前抗がん剤は全く無意味!

「腫瘍がない左胸も全摘で考えおります。」
→これは、保険適応となりません。

 これをする場合には「BRACAnalysis」で遺伝子変異を証明し(確率は9%以下)、そのうえで「倫理委員会で予防切除を許可されている」病院でしか受けられません。

「これは、再発リスクを下げる有効な手段になりますでしょうか。」
→まず、「再発」を「局所再発」と「全身の遠隔転移再発」に明確に分ける習慣が必要です。(そうでないと「とんでもない混乱」に陥ります。

 患側全摘は「局所再発を0にする(温存に比べて有効)」であるが、「全身の遠隔転移再発には無関係(温存と同等)」となります。

 ★健側全摘は(BRACAnalysis陽性の場合には)将来的な健側からの乳がん発生を完全に防止します。

「④結果待ちの段階で心配しても仕方ないことなのですが、トリプルネガティブであっても、抗がん剤や新薬で対処法はあると考えてよろしいでしょうか。」
→「対処法」とは「再発してしまった場合」のことですか?

 まずは早期なのだから「再発しないようにするベスト」を尽くすことです。(トリプルネガティブであれば、抗がん剤「anthracycline+taxane」)
 ★再発のことを最初から考えるのは誤りです。

「この腫瘍サイズで、他臓器転移の心配はないでしょうか。」
→その通り。(当院であれば、術前にCTも骨シンチもしません)

「また、ここ一週間、しこりから肩にかけて、筋が痛い、張ってることを気にしています。」 
→もともと更年期(卵巣が不安定となっている)上に(癌の告知による)ストレスが重なっているので「女性ホルモンの刺激症状」です。
 是非『今週のコラム 111回目 大事なことは、これら①~④の病気など世の中には無いのです。それは(我々医師には)自明なことなのです。』をご覧ください。
(ピタリと当てはまりますね?)

「これはリンパ節転移と関係しているでしょうか。」
→リンパ節転移に症状は1000%ありません。