[管理番号:6486]
性別:女性
年齢:44歳
いつも拝見しております。
今回 病理結果に不安になり初めて質問させていただきます。
今年2月初めに 早期乳がんと診断され、浸潤型 ステージ1で腫瘍は1cm弱のホルモンの薬が効く大人しいガンですと言われました。
4月末に 温存手術を受け リンパにも転移なしで その後 放射線とホルモン療法をするつもりでいました。
しかし、先日の病理の結果で不安になりました。
グレード1
腫瘍 11ミリ
ER 40%
PRG 0% ←これが低すぎると言われました。
HER2 2+
ki67 10%
(主治医のパソコンを見て記憶しました)
ルミナールAだと思っていたのに ホルモンの値?が低いので ホルモン療法が効かない可能性があるとの事で念のため抗がん剤をした方がいいかもと言われ 頭が真っ白になりました。
HER2 は今 検査に出してて おそらくマイナスだと思うけど もしプラスなら 絶対抗がん剤、マイナスなら副作用の少ない軽めの抗がん剤(点滴)だそうです。
HER2 の結果は今月末にでます。
主治医も全体的にみて 再発リスクが少ない大人しいガンに対して抗がん剤をやるかは悩ましいところで 絶対ではないそうです。
そこで質問です。
もしHER2 がマイナスだとしたら、
○私のサブタイプは何になるのでしょうか?
○抗がん剤は追加すべきでしょうか?
○軽めの抗がん剤とはどのようなものですか?また脱毛はどうでしょうか?
○放射線+ホルモン療法 だけと 抗がん剤を追加した場合の再発率の差はどれくらいでしょうか?
長々とすいません。
ホルモン療法が効かないかもと言われ 再発予防の特効薬がないのかと 不安になっています。
よろしくお願いします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
「ホルモン療法が効かない可能性があるとの事で念のため抗がん剤をした方がいい」
⇒賛成できません。
ホルモン療法が効かないことと、抗癌剤が効くことは全くの別次元の話です。(実際にホルモン療法が効かないという根拠がそもそもありませんが)
『今週のコラム 131回目 「進行しているから」と言う理由で「効かない筈の治療に我慢する」それでいいのですか? (付記)「ホルモン療法と抗癌剤」は全く別の作用であり、「強い、弱い」ではないのです。』をご参照のこと。
「○私のサブタイプは何になるのでしょうか?」
⇒ルミナールAです。
「○抗がん剤は追加すべきでしょうか?」
⇒不要
「抗癌剤が効くかもしれない」と言う根拠が全くありません。(抗癌剤は「念のため」で勧めるべきことではありません)
「○軽めの抗がん剤とはどのようなものですか?また脱毛はどうでしょうか?」
⇒??
主治医に聞いてみましょう。
「○放射線+ホルモン療法 だけと 抗がん剤を追加した場合の再発率の差はどれくらいでしょうか?」
⇒ルミナールAだとすれば(そう思いますが)
2%以下と推測します。(そもそもの再発率が低いと想像されるため)
質問者様から 【質問2 術後の抗がん剤について】
性別:女性
年齢:44歳
以前 術後の抗がん剤について質問させていただきました。
その後、FISH検査 陰性と出て 詳しい病理の結果をもらえました。
1.1×1.0×0.6cm大の灰白色充実性の腫瘤
浸潤性乳管癌、硬癌
浸潤巣周囲にわずかに乳管内進展を伴います
静脈侵襲、リンパ管侵襲は明らかではありません
リンパ節転移(-)Sentinel:0/3
Nuclear grade 1
Histological grade 1
ER(+)40% PgR(-)0% ki67 10% FISH陰性
主治医は PgRがマイナスだからルミナールBになると言って、少しでも再発のリスクを少しでも減らしたいなら 抗がん剤も検討すべきとの事でした。
乳がんと診断されたのは 別の病院で そこで組織診をした時は
ER(+)50%以上 PgR(+)10~50% と出ていたようです。
組織診で PgRが+でも 術後の病理で -となったら やはり-の方が正しいのでしょうか?
病理で0%になる事があるのかと少し不思議です。
私のような場合 ホルモン感受性が高い方と比べて ホルモンのお薬の効く可能性が低く 再発率は高くなるのでしょうか?
田澤先生でしたら 私に抗がん剤を提案することはないでしょうか?
私が 放射線+ホルモン療法のみでの 再発率はどれくらいですか?
とても不安です。
お忙しいところ申し訳ありませんが、よろしくお願いします。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
○質問内容が前回と変わらないようです。
「主治医が○○と言ったから…」みたいなことは、(私には)無関係なのでそれで回答が変わることはありません。
「私のような場合 ホルモン感受性が高い方と比べて ホルモンのお薬の効く可能性が低く 再発率は高くなるのでしょうか?」
→無関係。(前回、回答したとおり)
「田澤先生でしたら 私に抗がん剤を提案することはないでしょうか?」
→勿論。(前回、回答したとおり)
「私が 放射線+ホルモン療法のみでの 再発率はどれくらいですか?」
→不明。
ルミナールタイプの場合には「Aなのか、Bなのか」で全く変わるので、(それが知りたいなら)「OncotypeDX」してみましょう。
質問者様から 【質問3 遺伝性の乳がんについて】
性別:女性
年齢:44歳
いつも 質問に答えていただきありがとうございます。
先生の 抗がん剤は必要なしとのお返事で 今後、放射線治療とホルモン療法の予定にしておりました。
ところが、先日 母(73歳)が乳がんの疑いと診断され、親子共に大変ショックを受けています。
母は、今まで一度も乳がん検診を受けたことがなく、しこりなどの自覚症状もないそうです。
今年の初めにリウマチにかかり、薬と皮下注射の治療中でその治療の一環として撮った造影剤なしのCTで胸に白いものがうつったそうです。
来週に 乳腺外科に予約を入れたのですが、母まで乳がんになってしまったらと考えると不安でしかたありません。
先生にお聞きしたいのは、
○CTでうつった白いものは やはり癌の可能性が高いのでしょうか?
○もし母が乳がんだった場合、私は遺伝性の乳がんの可能性もあり 検査をした方がいいのでしょうか?(近親者で他に癌の者はおりません)
○遺伝性かどうかは どのようにしてわかるのでしょうか?
お忙しいところ申し訳ありませんがよろしくお願いします。
田澤先生から 【回答3】
こんにちは。田澤です。
今回のメール内容で重要な点は(実は)3つあります。
1.単純CT(造影剤無し)で「胸に白いもの」が乳がんを疑うべきか?
→答えは「No]です。
これは、常識的に考えて「乳癌ではない」所見なのです。
単純CT(造影剤無し)で「白く映るもの」とは??
これは「石灰化」しかも(CTで解るくらい大きいのであれば)「粗大石灰化=古い線維腺腫におこるもの」の可能性が高そうです。(今まで乳がん検診を受けていたら「粗大石灰化」を指摘されていたことでしょう。要精査にもなりません)
☆「造影CTで白く映るものなら、乳癌を疑う」のですが、単純CTで白く映るものは「粗大石灰化=陳旧性線維腺腫にともなう」を疑うのです。
2.70歳代の母親が乳癌だと(仮定して)「遺伝性乳癌」を疑うべきか?
→答えは、これも「No]です。
これも必要ありません。
乳癌自体の数が多い現在、70歳代で乳癌になった母親がいるからといって「遺伝性を疑う」根拠にはなりません。
3.遺伝性乳癌を疑うと(仮定して)遺伝子検査をしたほうが良いか?(有益か?)
→これも答えは「No]です。
「遺伝性乳癌=BRCA陽性乳癌」だと判明したとしても、現在は「再発乳癌にしかオラパリブの適応がない」のです。『今週のコラム139回目及び140回目』をご参照ください。
つまり、(質問者が遺伝性乳癌だと考える理由はありませんが)「もしも遺伝性乳癌だとしても オラパリブは使えない=治療には無意味」なのです。
☆ただし、治験にエントリーすることはできます。(ただし地検の場合には「例えBRCA変異陽性」だったとしても、半分の確率でプラセボ群に振り分けられます)
今週のコラム 139回目 202x年には、術前診断時のサブタイプの検査が「ER, PgR, HER2, BRCA」となるのです!!(おそらく)
今週のコラム 140回目 特にトリプルネガティブの場合には「ホルモン療法やパルボシクリブの選択肢が無い」以上、必須となるのです。
「○CTでうつった白いものは やはり癌の可能性が高いのでしょうか?」
→普通に考えれば・
ただの「線維腺腫(に伴う、粗大石灰化)」では、ないでしょうか?
「○もし母が乳がんだった場合、私は遺伝性の乳がんの可能性もあり」
→まず(母親が乳癌だとしても)「遺伝性乳癌の可能性は高くはない」と思います。
「検査をした方がいいのでしょうか?(近親者で他に癌の者はおりません)」
→BRCA遺伝子変異を調べても、(現在では再発した場合にしか適応が無いので)全く無意味です。
「○遺伝性かどうかは どのようにしてわかるのでしょうか?」
→遺伝子検査を行えば解ります。
ただし、
1.検査自体は(再発しない限り)保険適応外です。
2.(保険外の検査をしたとしても)再発しない限りオラパリブの適応はありません。
☆(OlympiA)に参加すれば、(条件として、アンスラサイクリン+タキサンが終了している必要あり)、半分の確率で(地検では半数がプラセボとなるのです)オラパリブ投与となります。