[管理番号:6365]
性別:女性
年齢:55歳
こちらを拝見して、勉強させていただいています。
ありがとうございます。
海外在住です。
マンモトームの結果について質問させていただきたいです。
よろしくお願いします。
先日、3年ぶりのマンモで、左胸の石灰化が増えているので精密検査を受けるようにと言われ、乳腺外科医に行くと、その場でエコーをし、「エコーには何も写っていない、マンモトームをしましょう。
このような場合、27%ぐらいが悪性であるが、がんだとしても0期なので大丈夫」と言われて、先日マンモトームをしました。
こちら(東南アジアです)の医療システムにより、放射線科の専門医によるマンモトームで、針を入れて、10数回、パチパチとやって、その後針を動かしてまた十数回パチパチとされました。
先生は石灰化の一番怪しい部分が取れた、とおっしゃっていました。
看護婦さんとの会話や一番最後に出てきたフィルム(断面図のような円形の映像)
を見ての先生の満足そうな様子からうまくいったのかな、と推測しました。
病院で一泊する予定でしたが、その後の痛み、出血も全くなく、その日に帰宅しました。
その結果が出たのですが、すみません、まず全文をコピーさせていただきます。
Microscopic examination:
Multiple fragments of tan soft tissue, measuring 4 ×4×0.6cm in aggregate with tissue cores measure from 0.5 to 2.5 cm. Entirely submitted as A1 to A3.
Microscopic Description:
Sections show breast tissue with prominent features of fibrocystic disease, with microcalcifications. There are scattered ducts and lobules showing colonization by apocrine cells with moderate cytological atypia with prominent nucleoli. These cells still show a streaming pattern and there is no definite necrosis. The present features are best regarded as atypical apocrine proliferation. However possibility of an apocrine DCIS with cancerization of these ducts and lobules cannot be totally excluded. Advise correlations with the clinical findings and further investigations if clinically indicated.
There is no invasive malignancy.
Diagnosis:
Left breast microcalcifications at upper outer guardant, mammotome -Fibrocystic disease with focal atypical apocrine cell proliferation.
自分なりに訳して以下のように理解しています。
「乳腺症の典型的な症状、壊死は見られない、異形アポクリン細胞(moderate
cytological atypia with prominent nucleoli?)が増殖。
が、これらの乳腺や小葉のアポクリン非浸潤性癌の疑いは完全に消せない。
浸潤悪性は見られない。」
担当の乳腺外科医の説明では、このatypicalというのがあるので、外科生検をしましょう、とのことです。
がんである可能性については今回は言われませんでした。
石灰化を全部取るのですか?と聞くと、全部ではなく、疑わしいところ、細胞が変形しているところだけを取る、悪い結果が出れば再度手術する、と言われました。
外科生検の手術は一泊二日だそうです。
そこで、いくつかお伺いしたいです。
① 病理結果に関して、私の理解で正しいでしょうか?
② 先生のコラムによると、マンモトームで結果が出ないのは約5%で、その結果外科生検をするとその5-7割が悪性、となっていますが、私の場合はこれに当てはまるのでしょうか。
大事をとって外科生検をする、のかそれともこの病理結果によると、悪性である可能性が高いのか、先生のご意見を伺いたいです。
③ 祖父祖母両親兄弟含め、身内には癌になったものはいません。
唯一、6年前、母の姉(おば)が70台後半で乳がんと診断され、しこりを取りました。
おばによると、
かなり大きな野球ボールくらいのものだったそうで、胸が軽くなったと言っていますが、放射線、化学治療はしたかどうかわかりません。
当時の話によると、切って終わり、のようでした。
おばは今も元気です。
私自身が石灰化となり、このおばの症状は巨大な石灰化だったのでは、という都合のいい想像をしています。
そういう症例はあるのでしょうか。
自分の結果が出るまで家族に心配をかけたくないので、おばのことについては聞けません。
申し訳ありませんが、先生のご所見を伺ってみたいと思って少し横にそれた質問になります、すみません。
手術を10日後に受けることに決めて、今週、術前の血液検査、レントゲンを受ける予定ですので、手術を受けるかどうかは迷ってはいませんが、この状態がどのくらい悪いのか、また外科生検が過剰な検査ではないのかどうか、を知りたいです。
もし、本当に疑わしいものなら、先生がこのコラムでいつもおっしゃっているように、浸潤はないので、マージンを多めにとって2回目の手術はなし、ということにならないのでしょうか。
こちらの医療は、公立病院ならただ同然ですが、専門医の受診、治療は何年も待たないといけない状態でたよりにならないので、大変高額なのですが、私立病院での検査、治療が一般的です。
プライベートプラクティスとして、専門医がそれぞれ町中で
クリニックを開業しており、手術などの必要があれば、その医師が提携している私立病院にて手術を受ける、というシステムです。
そこで、公立病院では必要最低限の治療、
私立病院では過剰治療というイメージなので、今回の外科生検があくまでも念のため、
なのか本当に疑うべきものであるのかを知りたいと思ってしまいます。
その他の情報としては、20年前の授乳中はよく左側が詰まって、痛い思いをしましたが、それで乳腺症と診断されたことはありません。
5,6年前より2~6センチの子宮筋腫もいくつかあり、毎年経過観察です。
まだ完全に閉経しているとは言えません(最後は5か月前)。
長くなって申し訳ありませんが、どうぞよろしくお願いいたします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
状況は解りました。
概略すれば、
基本的には乳腺症の変化だが、一部「異型をともなうアポクリン細胞」があるので
「アポクリンタイプの非浸潤癌も否定できない」
⇒外科的生検を推奨されている
「① 病理結果に関して、私の理解で正しいでしょうか?」
⇒上記通りです。
「大事をとって外科生検をする、のかそれともこの病理結果によると、悪性である可能性が高いのか、先生のご意見を伺いたいです。」
⇒所謂ADHとは異なるようです。
「悪性の可能性が高いというよりは、否定できないので大事を取って外科的生検を推奨されている」と解釈します。
「このおばの症状は巨大な石灰化だったのでは、という都合のいい想像をしています。 そういう症例はあるのでしょうか。」
⇒巨大な石灰化など、ありません。
「この状態がどのくらい悪いのか」
⇒もしも癌であっても「非浸潤癌」であることが想定されます。
「また外科生検が過剰な検査ではないのかどうか、を知りたい」
⇒過剰ではありません。
「浸潤はないので、マージンを多めにとって2回目の手術はなし、ということにならないのでしょうか。」
⇒もしも全麻で手術するなら、その方が効率的と(私は)思います。
質問者様から 【質問2 アポクリンADH】
性別:女性
年齢:55歳
田澤先生
お忙しい中ご回答をいただきありがとうございました。
外科生検の結果が出ました。
貴重なQ&Aのスペースを使わせていただくのは申し訳ないのですが、先生へのご報告(と質問もあります、すみません)とこちらをご覧のみなさんに少しでも参考になればと、結果を報告させていただきます。
前回相談させていただいた内容は3年ぶりのマンモ画像診断で4bと言われ、マンモトームをした結果、atypical apocrine hyperplasia があるので、DCISかどうかを調べるために外科生検で取る、でした。
そして、その質問を投稿させていただいた後、外科生検に移るため、私の職場担当医への報告(乳腺外科医等専門医への受診は職場担当医の紹介を通してなので、専門医の診断結果等はすべて職場担当医へ報告がなされます)
や保険請求の書類などを担当乳腺外科医が準備してくれたのですが、そこにExcision
of breast tumorと書いてありました。
そこで初めてtumor腫瘍という言葉が出てきたので、驚きというか動揺しました。
マンモトーム前の診断で「マンモで石灰化が見えているが触診でもエコーでも異常なし」だったので、しこりや腫瘍はないと私なりに理解していたのですが、大きな腫瘍になっていたということでしょうか。
それとも、
エコーには映らない石灰化、またはアポクリン細胞の塊を腫瘍という言葉で便宜上(石灰化の塊などというよりも腫瘍と一言で言ったほうが話が早いので)表しただけなのでしょうか。
手術は全身麻酔で一泊で行いました。
前回書きましたように、担当医より、外科生検の結果悪性だったらもう一度手術をする、と言われていたのですが、手術前の巡回の際
に、大きめに取るからね、と言われたので、田澤先生のおっしゃるように一回で済むのかと思い安心しました。
そして手術後、かなり大きく取ったよ、との報告を受けました。
その病理結果ですが、すみません、まず全文をコピーさせていただきます。
この病理結果は腫瘍のカラー写真つきでした。
丸い、おうど色の梅干しのように見えるものでした。
Microscopic Examination
Received is a left breast tumor at 12 o’clock which weighs 27.2g. It
measures 3cm top to bottom, 2.5cm left to right and up to 4cm
anteroposteriorly. Sections show an indurated and fibrotic lesion in
the center, measuring 3cm in the biggest dimension, extending from
anterior to posterior. A1&A2, A3&A4, A5&A6, A7&A8 ?
represent serial
coronal blocks from anterior to posterior. A9-longitudinal block of the
anterior margin. A10-longtituginal block of the posterior margin.
(STY/ak)
Microscopic Description
Sections show breast tissue with features of fibrocystic disease, with
microcalcification. There is evidence of previous needle biopsy with
tissue defect, fibrosis and fibroblastic proliferation, and evidence of
old haemorrhage in the center. There are scattered ducts and lobules in
the vicinity showing colonization by apocrine cells with moderate
cytological atypia with prominent nucleoli, and associated with
microcalcifications. These cells still show a streaming pattern and
there is no definite luminal necrosis. The present features are similar
to those seen in previous biopsy specimen and are best regarded as
atypical ductal (apocrine) hyperplasia. There is no definite in situ
carcinoma or invasive malignancy. The specimen margins are clear of the
atypical ductal (apocrine) hyperplasia. Close follow up is advised.
Diagnois
Left breast tumor excision
-Fibrocystic disease with focal atypical ductal (apocrine) hyperplasia.
手術をしてくれた乳腺外科担当医の最終診断は、ADHということです。
医師からは、今回ADHだったので、将来乳がんになる確率が他の人よりも高い、毎月自分でしこりのチェックをし、定期的に検診、具体的にはエコーを半年に一回、マンモグラフィーを1年に一回受けるように言われました。
そこで、いくつか質問させていただきたいです。
① 毎月自分で触れて自己チェックするようにと言われたのですが、専門医の触診で触れなかった&エコーで見えなかった腫瘍が自己チェックでわかるのでしょうか。
② prominent nucleoliが見られる、とは何を意味しますか。
マンモトームの結果で
も、atypia with prominent nucleoliという言葉が出てきたのですが、これは何を意味するのか教えていただきたいです。
はっきりと細胞内の核が見えているほうがいいのでしょうか。
それともはっきり核が見えているほうが悪い、ということでしょうか。
これを特記する意味は何でしょうか。
③ 病理医の診断にFibrocystic disease with focal atypical ductal (apocrine)
hyperplasiaとありますが、このfocalとは局部という意味ですか? また、これを文
字通り訳すとADHのある乳腺症となりますが、良性で心配のない乳腺症ではなく、すでに悪性、または悪性になる可能性の高い乳腺症と理解していいのでしょうか。
いろいろ他の方の質問も見せていただきましたが、よくわからなかったので、お聞きしたいです。
③ cells showing streaming patternというのは、流れるような模様ということだと思うのですが、これは線維腺腫ということでしょうか。
乳腺が正常な状態なら
Streaming patternにはならないのでしょうか?
④ ADH(apocrine)と先生がウエブサイトでご説明されているADHとは何か違うのでしょうか。
他の方のアポクリンがんについての質問も見せていただきましたが、アポクリンADHについてはよくわからなかったので、教えていただきたいです。
⑤ 病理医のレポートでマージンはクリアとなっていますが、どれくらい取ったとは書いてないので、不安です。
こちらのサイトでは、マージンは2cmとるべきと拝見するのですが、病理医がクリアと言っているので、大丈夫でしょうか。
ただ上にも書きましたように、担当医によると、かなり多めに取ったよ、とのことなので、あまり心配する必要はないでしょうか。
⑥ 将来乳がんになる可能性が高い、とはどれくらい高いのでしょうか。
⑦ 経過観察について、田澤先生ならどのような経過観察を推奨されますか?
こちらのシステムでは通常マンモは放射線専門のレントゲン、エコー、MRI、CTなどをする専門のクリニックに行って撮ってもらうのですが(そのようなクリニックはイメージングセンターと呼ばれていて、そこでは撮ってもらって、放射線医による画像の分析のレポートを
出してもらうだけです。
そのレポートを専門医に持って行って病名など診断してもらう、というシステムです)、エコーもそのイメージングセンターでしてもらっていいものでしょうか。
それとも今回担当してもらった乳腺外科医のクリニックに行って、そこで医師本人にしてもらったほうが安心でしょうか。
これを担当の乳腺外科医に尋ねると、私の職場担当医の判断に任せる、ようなことを言っていました。
コストの関係から職場担当医はイメージングセンターを勧めると思いますが、私は自腹で払っても乳腺外科医に診てもらったほうが安心かもと思っています。
⑧ 病理医のセカンドオピニオンという言葉をよくこちらのサイトで拝見します。
摘出したものががん細胞だったら、oncotypeの検査などで客観的な結果が数字で出ると理解しましたが、わたしの病理結果のように、顕微鏡下で細胞の外見を判断しただけ(と理解しています)の場合、これをそのまま信用していいのでしょうか。
今回、私のマンモトームと外科生検の病理診断は同じ病理医によるものです。
(手術した病院には6人の病理医が在籍しているようで、おそらくこの病理医は乳腺担当・専門かなとも思われます。)それとも、摘出した病変について顕微鏡下の観察だけではなく、何かの検査をしてもらうことはできた、あるいはしてもらうべきだったのでしょうか。
質問ばかりで申し訳ありません。
自分では、DCISでなくてよかったと思う反面、こちらのサイトでADHは小さいだけでDCISと同じと拝見していたので、ADHであったことに少し落ち込んでいます。
それとも、私の場合、Atypicalな細胞があったという時点で、良性の乳腺症などの可能性はすでに排除されており、DCISかADHのどちらかの結果になるしかなかったので、ADHであったことを喜ぶべきでしょうか。
田澤先生の貴重なお時間をいただいて申し訳ありません。
医療システムの違いなどでわかりにくいところがあるかもしれませんが、どうぞよろしくお願いいたします。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
私は病理医ではないので「病理の詳細を説明する資格」まではないし、(そこまでの詳細を知る事が)質問者にとって意味があるようには思えません。(どうしても気になるのであれば、「病理医のサイト?」をご覧ください。)
ただ、質問者のケースではまさに『今週のコラム 134回目 これでADHならば「ADHは確定診断」してもいいのです。(FEAも同様)』に記載していることを参考にしていただければ十分なようです。
私がメール内容を読む限り、本筋から離れて「横道に逸れ過ぎている」と感じます。
物事はシンプルに考えましょう。
☆☆あくまでも、今回のケースは「excisional biopsyで摘出した組織に一部ADHが見つかった」だけの話です。 上記「今週のコラム」を読んでもらえば解りますが、excisional biopsyなのだから「ADHで確定」であり癌は無いのです。
♯ 担当医が「癌のリスクうんぬん」とコメントしていますが、これは誤りであり、
incisional biopsyであれば、「実は周辺に癌が有る可能性もある」ために、そう言われているだけです。(今回のようにexcisionalであれば、当て嵌まらないのです)
「ADHだったので、将来乳がんになる確率が他の人よりも高い」
⇒誤り(☆☆参照)
「エコーを半年に一回、マンモグラフィーを1年に一回受けるように言われました。」
⇒普通に…
年に1回のエコーとマンモで十分です。(通常の検診)
「毎月自分で触れて自己チェックするようにと言われた」
⇒別に特別なことではなく
一般的に、「月に1回の自己検診」は推奨されます。
「ADHのある乳腺症となりますが、良性で心配のない乳腺症ではなく、すでに悪性、または悪性になる可能性の高い乳腺症と理解していいのでしょうか。」
⇒誤り
単純にADHが見つかったが、「(excisional biopsyなので)
それ以上の病変は無い」と理解しましょう。(乳腺症に良性も悪性もありません)
「ADH(apocrine)と先生がウエブサイトでご説明されているADHとは何か違うのでしょうか。」
⇒同じもの(単に、アポクリン化生しているだけの話:本質的では無い)
「マージンは2cmとるべきと拝見する」
⇒これも「誤り」です。
もしも、この病変が癌だったら「2cm必要=(今回は)不十分だった」となりますが、ADHなのだから「exsicional biopsy(マージン無)で十分」だということです。
『今週のコラム 134回目 これでADHならば「ADHは確定診断」してもいいのです。(FEAも同様)』に載せた図を参照してもらいたいのですが、
(癌の確定診断が無くても)結果的に「癌であってもいいように」予め「marginをつけての部分切除」をする方法もあります。(そこには患者さんの意思が反映されるべきでしょう)
ただ今回は「ADHだった」ので、必要は無かった(結果オーライ)という事です。
「病理医がクリアと言っているので、大丈夫でしょうか。」
⇒理解していただけましたか?
ADHだったのだから、excisional biopsyでいいのです。
「将来乳がんになる可能性が高い、とはどれくらい高いのでしょうか。」
⇒勘違い(上記☆☆参照)
「ADHであったことを喜ぶべきでしょうか。」
⇒その通りです。
excisional biopsyなのだから「これで解決」なのです。