[管理番号:5792]
性別:女性
年齢:41歳
41歳
女性
田澤先生お忙しい中このような機会を与えていただき本当にありがとうございます。
早速ですが術後、どの抗がん剤治療をするかで悩んでいます。
術後病理結果
Breast,rigth C area,prtial mastectomy,paraffin block consultation:
-Invasive carcinoma of no special type(invasive ductal carcinoma),scirrhous pttern Invasive tumor size: 9x8mm Histological grade: 3.
Extra-mammary adipose tissue invasion: Identified Lymph-vascular invasion
: Not identified
Margin: Negative (vertical 1mm, from DCIS)
Immunohistochemistry:
ER: Negative(0%)
PR: Negative(0%)
HER2: Negative(score0+)
Ki-67 index: 55.8%
Basal-like phenotype: CK5(+),EGFR(-),p63(-),vimentin(-) Other markers:
AR(-),claudin4(retained)
pTNM: pT1b pN0(sn)
– Ductul carcinoma in situ of high nuclear grade.
Lymph node,sentinel,dissection,paraffin block consultation:
-No evidence of metastasis(0 identified/ 3 examined).
[組織学的所見]
小胞巣状に増殖する浸潤性乳管癌です。
組織学的グレードの各スコアは
腺管形成:3,核多形性:3,核分裂数:2でGrade3です。
標本上の浸潤径は9x8mmです。
周囲には一部に面皰型壊死を伴う high grade DCISをみとめます。
断端陰性で、
腫瘍の垂直方向への最短距離は1mmです(DCIS)
センチネルリンパ節に転移はみとめられません。
非浸潤部分を含め2cmほどの広がりの中に9mmの浸潤部分がありました。
浸潤部分1cm以下ですがトリプルネガティブ、グレード3、Ki67高値なので抗がん剤治療することは迷わず決めました。
主治医からはAC+T(先にTをウィークリー×12その後AC4クール)かTC(4クール)のどちらかを選択するよう言われました。
一般的にはAC+Tの方が効果は高いが私の場合、浸潤部分9mmという事でTCでもいいんじゃないかとの事でした。
その2パターンの上乗せ効果が私の場合では1パーセントしか変わらないので
副作用とのメリット、デメリットを考慮してTCを薦めるがそこらへんは個人の考えか方
次第なので私が決めていいとの事です。
そこで質問です。
①TCにはアンスラ系が入っていませんがそれでも私の場合には効果がほぼ一緒なのでしょうか
もし私がアンスラ系が効くタイプなら?と考えるとそれが入っていないTCを選択するより
AC+Tの方が可能性がぐっと上がる気がするのですが
②田澤先生ならどちらの抗がん剤を選択されますか?その理由もお聞かせ願えますか?
③田澤先生の使用されている生存率を調べるサイトでの私の場合のAC+TとTCを比べた数値を出していただけますか?もし比較が無理なら抗がん剤治療した場合だけでも結構です
④田澤先生の長年の数多い経験からの感覚的な意見はどうですか?私の場合2パターンの効果は
ほぼ同じですか?
私としてはもちろん3ケ月で終われるならTCにしたいが生存率が3パーセント以上あがるならAC+Tにしたほうがいいかと思います
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
「①TCにはアンスラ系が入っていませんがそれでも私の場合には効果がほぼ一緒なのでしょうか」
⇒そう思います。
そもそも「TCとアンスラタキサンの直接比較はない」のです。
「②田澤先生ならどちらの抗がん剤を選択されますか?その理由もお聞かせ願えますか?」
⇒TCですね。(ご本人が希望するならアンスラタキサンでも構いません)
理由は、その主治医と一緒です。
「③田澤先生の使用されている生存率を調べるサイトでの私の場合のAC+TとTCを比べた数値を出していただけますか?」
⇒不明です。
「もし比較が無理なら抗がん剤治療した場合だけでも結構」
⇒再発率は10%です。
「④田澤先生の長年の数多い経験からの感覚的な意見はどうですか?
私の場合2パターンの効果はほぼ同じですか?」
⇒そう思います。
「私としてはもちろん3ケ月で終われるならTCにしたいが生存率が3パーセント以上あがるならAC+Tにしたほうがいいかと思います」
⇒(あっても)1-2%程度でしょう。
質問者様から 【質問2 】
温存乳房内再発について
性別:女性
年齢:43歳
病名:温存乳房内再発
症状:
投稿日:2020年6月12日
田澤先生、以前は質問にお答えいただきありがとうございました。
2017年10月右乳房温存手術→抗がん剤TC→放射線治療(追加ブースト5回含む)→無治療となり約2年半が過ぎたエコーで今回右温存乳房内再発が見つかりました(エコーでは9ミリ)現在妊娠中で来週出産予定です。
前回C領域外側脇近くトリプルネガティブ9ミリ。
今回c領域乳頭近く。
主治医より微妙に離れているので新規病変かもとの事
今回針生検病理組織所見
1-3.Invasive ductal carcinoma,scirrhous type,right breast,CNB specimenf Nuclear grade3(nuclear atypia 3, mitouic counts 3)
いずれにも繊維増生を伴って索状・胞巣上に浸潤・増殖する癌を見る。
一部で脂肪織浸潤を伴う。
上記と考える。
免疫染色結果
ER:ほぼ50%陽性
PgR:陰性
HER2:score 0
ki67陽性率:50%
主治医の先生より局所再発か新規病変かの区別は難しくどちらにせよ術式・術後治療は変わらないとの事、そこで質問です。
①術式について、温存乳房内再発は通常全摘、腋窩リンパ郭清(通常レベル2まで郭清するが今回エコーでは転移がなく、本当に転移がないか確認の為の郭清なのでレベル1までの郭清でよいかもとの事)その術式でよろしいですか?
②術後治療について、病理検査結果によるサブタイプに応じての治療となり今回針生検の結果通りだと抗がん剤とホルモン治療(前回のTCとは違う抗がん剤)しかし今回の検査会社は主治医が月3回出向している別医院から依頼した検査会社でERの染まり方が薄く調べなおしで違う結果になった前例もあるため、もう一度自分の病院で調べ直すとの事で現在結果待ちです。
最終は術後の病理検査結果によりますが私の認識では局所再発なら術後治療は必要ないと思っていました。
田澤先生のご意見はどうですか?
新規病変との区別が難しいため術後治療も必要という事でしょうか?
③妊娠中の為、全身の検査をまだ受けていません。
来週出産後
PET CTとMRIを受ける予定です。
それまでにカバサールで授乳を中止するように言われています。
全身検査はその内容で問題ないですか?
④主治医は今月末に特別に手術枠を空けてくれたのですが出産が間に合わず来月半ばの手術予定となりました。
妊娠中の乳がんは
急激に大きくなる可能性もありますか?だから主治医も早めの手術枠を空けてくれたのかと心配です。
(全身検査で遠隔転移が見つかった場合は手術は保留になるとの事です。
それも心配です)
以上よろしくお願い致します。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
局所再発は「乳房内再発」と「腋窩再発」に明確に区別しましょう。
★例えば、腋窩再発した際に、(ついでに)温存乳房を全摘する理由がないし、
逆に、乳房内再発した際に、(ついでに)腋窩郭清をする理由がありません。
「①術式について、温存乳房内再発は通常全摘、腋窩リンパ郭清(通常レベル2まで郭清するが今回エコーでは転移がなく、本当に転移がないか確認の為の郭清なのでレベル1までの郭清でよいかもとの事)その術式でよろしいですか?」
⇒上記コメント参照
今回は(腋窩再発ではなく)乳房内再発ですよね?
腋窩郭清をする意味が不明です。
初回手術でセンチネルリンパ節生検陰性であれば、(すでにリンパ管のルートはないのだから)不要だと思います。
「新規病変との区別が難しいため術後治療も必要という事でしょうか?」
⇒初回手術の部位の乳頭側ならば、(普通に考えて)乳頭側の取り残しと思います。
「初回手術の借りを返す=全摘する」
それでいいと思います。
「全身検査はその内容で問題ないですか?」
⇒MRIは何故必要?(全摘なのでは?)
「妊娠中の乳がんは
急激に大きくなる可能性もありますか?」
⇒考えすぎです。
「だから主治医も早めの手術枠を空けてくれたのかと心配」
⇒再発の場合には(術者として)多少は負い目があるのだと思います。
質問者様から 【質問3 】
前回の質問のつづき
性別:女性
年齢:43歳
病名:乳がん
症状:
投稿日:2020年7月1日
田澤先生、その後針生検の組織の調べなおしの結果トリプルネガティブとの結果がでました。
臨床経過
妊娠37週
右C領域stage1/TNBCにてBp+SLNB→RTx施行後術後、2年半ほ
どで右CA領域/9mmの病変出現。
前医CNCにて
IDC/Grade3/ER50%/PgR 0%/HER2 score 0/ki67 50%の診断
病理組織診断
Breast,right C area,CNB,block consultation:-Invasive breast carcinoma of no special type.
Histological grade 3(3-3-3)
Adipose invasion:Identified
ER:Negative(0%)
PR:Negative(0%)
HER2:Negative(score 0)
Ki67index:62.0%(310/500)
PD-L1(SP142):Negative(ICO 0%,TCO 0% )
Other
markers:CK5(+,60%),EGFR(-),claudin4(+,retained),AR(-),Vimentin(-)
DCIS component:Not identified
そして明後日入院して手術日も決まっていたのに主治医から急に術前抗がん剤への変更を提案されました。
その病院でプラチナ製剤の臨床試験中らしくトリプルネガティブの術前抗がん剤をする人が該当者でACT+プラチナ製剤です。
そちらを薦める理由として
①最初エコーで9ミリだったので1センチ以下であれば先に手術でいいが現在エコーで13ミリあるので術前抗がん剤でできる限りの治療をするべき。
最終MRIの結果を見て明日決定するとの事
②プラチナ製剤をプラスしてできるのと効果がない場合は術後飲むタイプの抗がん剤を追加してできる限りの全身療法ができる。
途中大きくなった場合は手術してもらえるとの事
③初発の時にTC療法をしたのに2年半後にまたガンが出てきた事からも効果を確認した方がよい。
主治医は新規病変と考えておられます。
どう思われますか?
田澤先生から 【回答3】
こんにちは。田澤です。
全くナンセンス!
乳房内再発に術前抗がん剤??
(本来)「初回手術の借り(局所)を返す(全摘)」だけでいいと思いますが、(不安なのであれば)前回の抗がん剤が非anthracycline(TC)なので、術後『この機会にanthracycline(ECx4)をやっておく』であれば、センスがいいと思います。
『今週のコラム 84回目 「初回手術の取り残しを摘出するだけでよい」と言う事なのです。』これをご参照ください。
「①最初エコーで9ミリだったので1センチ以下であれば先に手術でいいが現在エコーで13ミリあるので術前抗がん剤でできる限りの治療をするべき。」
⇒ナンセンス(議論の余地なし)
「主治医は新規病変と考えておられます。」
⇒全く馬鹿げている。
乳頭側に乳房内再発するのは乳管から癌が発生するのだから(それを意識していない)手術をすれば、十分あり得る話。
「トップページ」⇒「江戸川病院での診療」⇒「江戸川病院での手術」の中の「手術手技の特徴」その1「温存乳房内再発の克服」をご覧ください。(質問者は「乳頭側断端からの再発」の典型例と想像します)
★ これは「かなり大問題」
本来、温存手術は(万が一乳房内再発をしても、その際に全摘すれば)予後は(最初から全摘した場合と)一緒
温存手術はこの「大原則」が証明されたので、爆発的に認知されたのです。(それまでは全摘一択だったのです)
質問者は(最初から)全摘していれば(当然)今回の「乳房内再発」は起こらなかった。
それを(担当医は)新規病変ができた。これは「できるだけの(余計な)治療をしなくては大変だ」と言っている。
つまり、「温存手術を選択したばかりに、予後に黄色信号が点滅している」と言っているようなもの。
これでは上記「温存手術は全摘手術と予後は一緒」という大原則が無視されている。
そのような「乳房内再発を認めたくない」ばかりに、「温存手術の大原則を無視して、とんでもない治療を行う」ことは看過できない。
今週のコラムに取り上げます。