[管理番号:5649]
性別:女性
年齢:70歳
田澤先生、はじめまして。
どうぞよろしくお願い致します。
70歳の母が乳がんにて右胸全摘、腋窩リンパ郭清をレベル2までとる手術をしました。
石灰化しており、悪性度も針生検の時はグレード1でしたが手術後3になりました。
センチネルが4つあり4つ全てに転移していました。
(#1:1.4ミリ#2:2.5ミリ、#3:3ミリ、#4:2.5ミリ)
腋窩リンパ郭清してもう4つリンパがあったのですが、それには転移はありませんでした。
(センチネル含む8個中4個転移)
組織所見は下記の通りです。
70×37ミリの範囲で不連続性に乳管周囲に浸潤ガンを観察します。
一部微小乳頭癌成分を含みます。
検体上における切除縁に腫瘍細胞は見られませんがら#1Gで胸壁から0.4ミリまで浸潤癌を観察します。
これはどういう意味なのでしょうか。
皮膚にも転移しているということですか?
この状態はステージだとどれくらいなのでしょうか。
抗がん剤治療などを行えば完治は可能でしょうか。
今後、AC療法、パクリタキセル、放射線、ホルモン療法と続きますが高齢の母が耐えられるかも不安です。
母は12年前に腎臓癌を患い腎臓を一つ摘出しています。
抗がん剤をすることにより、腎臓への負担も心配です。
今のところ腎臓の数値に異常はありません。
抗がん剤をしても大丈夫でしょうか。
抗がん剤をしない選択も知識がないため大変難しいです。
お忙しい中恐れ入りますがご回答よろしくお願い致します。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
このメールには「最も重要な情報であるサブタイプ」の記載がありません。
術後治療は「ステージ(進行度)」ではなく、「サブタイプ(性質:適材適所ということ)」で決めるのです。
ただし、ホルモン療法を予定している記載からは、「ルミナールタイプ」であることが垣間見れます。
○質問者の場合の焦点は「ルミナールAなのか?Bなのか?」ということです。
これには通常Ki67が代用されますが、一番いいのはOncotypeDXを用いることです。
♯今週のコラム98回目~101回目を是非、熟読してください。
・今週のコラム 98回目 ♯このグレーゾーンを「AとBに分ける」ためにOncotypeDXがあるのです。
・今週のコラム 99回目 ★グレードは「参考程度」ということでいいですね?
・今週のコラム 100回目! 「若いから」抗ガン剤をしましょう。は過ちなのです。
・今週のコラム 101回目 (Ki67が20代はluminal Aの可能性が圧倒的に高く)本当に「Aなのか、Bなのか迷うのは30代以降」と言えるのです。
「検体上における切除縁に腫瘍細胞は見られませんがら#1Gで胸壁から0.4ミリまで浸潤癌を観察します。これはどういう意味なのでしょうか。」
「皮膚にも転移しているということですか?」
⇒胸壁とは皮膚ではなく、大胸筋面(乳腺の裏側)のことです。
♯今週のコラム85回及び86回を熟読してください。
・今週のコラム 85回目 ○この層構造の理解が、「皮膚側断端」「深部側断端」の理解に役立つのです。
・今週のコラム86回目 このようにすれば、全摘で深部側断端が陽性となることはないのです
「この状態はステージだとどれくらいなのでしょうか。」
⇒pT3, pN2, pStage3Aとなります。
「抗がん剤治療などを行えば完治は可能でしょうか。」
⇒乳癌の過半数は根治します。
「抗がん剤をしても大丈夫でしょうか。」
⇒大丈夫だとは思いますが…
本当に必要なのかはサブタイプを見て考えましょう。
「抗がん剤をしない選択も知識がないため大変難しいです。」
⇒サブタイプで考えればいいのです。