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抗がん剤を使うべきか

[管理番号:5064]
性別:女性
年齢:46歳
 
田澤 先生
いつも拝読しております。
本日は貴重なお時間を頂きまして感謝申し上げます。
抗がん剤をするべきか決めかねており、田澤先生のご意見を伺いたくメールさせて頂きました。
本年5月上旬に自身で左胸にしこりを感じ、中旬に乳がんの診断。
5月末に部分切除手術を受けました。
先週病理検査の結果を伺い、術前の見解よりやや悪い結果でした。
ふたつの異なる組織が見つかりました。
 
①割面最大径約15×13mm大。
g(+), f(+), s(-), ly(+), v(-), EIC(-), G2, NG3 ER(+:95%), PgR(+:80%), AgR(+:
20%), FOXA1(+:80%), GATA-3(+99%), HER2(1+)。
Ki-67
約25%。
核グレード 3(score 5=2+3) 組織学的異型度 2(score 7=5+2)
黄褐色~黄白色調の充実性腫瘤。
組織学的にクロマチンが増量し腫大した楕円形~類円形の異型核、明瞭な核小体を持ち、弱好酸性~好酸性の比較的豊富な胞体を有する腫瘍細胞が癒合腺管形成、不規則な胞巣状、索状を呈して浸潤性に増殖。
粘液産生が認められ、一方部分的には粘液産生が判然とせず、硬癌と考えられる成分も認められ、混合型の粘液癌。
腫瘍細胞は周囲脂肪織内に浸潤。
HE標本上でも認識できる比較的高度のリンパ管侵襲像が認められる。
CD31の免疫染色にて検索し、作製標本内には静脈侵襲像は認められない。
②組織学的にはlobular neoplasia。
ER(+:99%), PgR(+:99%), AgR(-:0%), FOXA1(+:90%), GATA-3(+99%), HER2(1+:小葉内)
Ki-67 約1%
 
非浸潤性小葉癌(LCIS)の成分が主体だが、一部では異型小葉過形成(ALH)相当と考えられる成分も認められる。
当初は粘液癌の見解でしたので放射線治療と投薬を予定しておりました。
(先週末より放射線治療25回が始まりました。
投薬は放射線治療終了後の予定です。)
混合型との結果が出たこと。
核グレードが高いこと。
Ki-67レベルがグレーゾーンであること。
 
また私の年齢、小学生の子供がいる環境も鑑み抗がん剤投与の選択肢も入れるべきか、先生も大変悩まれていらっしゃいました。
オンコタイプDXのご説明もして頂きました。
先生より放射線治療+投薬にて再発率は10%。
抗がん剤を使うことで上乗せ3%とのお話がございました。
 
・田澤先生でしたら、上記結果にてどのような治療方針をお考えになりますでしょうか。
・HER2が1+ですが、これはLuminal Bにはなりませんでしょうか。
・オンコタイプDXをお願いした方がよろしいでしょうか。
・また②組織については先生からは気にすることはないとのお話がありましたが、田澤先生はどのようにお考えでしょうか。
今回は非浸潤とのことではありましたが、小葉癌は検査では見つける事が困難。
もう一方への発症も少なくはないとの情報もあり、今後どのように生活すべきか、やや不安視しております。
 
ご多忙の折恐れ入りますが、お話を伺えますと幸いです。
宜しくお願い致します。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
 
「・田澤先生でしたら、上記結果にてどのような治療方針をお考えになりますでしょうか。」
⇒シンプルに、Ki67=25%をどう考えるかですが…
 ルミナールAの可能性が高いとして「ホルモン療法単独」とするでしょう。
 ただし、(確認のために)OncotypeDXを(可能なら)した方がいいとは思います。
 
「・HER2が1+ですが、これはLuminal Bにはなりませんでしょうか。」
⇒全くの勘違いです。
 HER2 0,1+:陰性
 HER2 2+  :FISHで確認すべき
 HER2 3+  :陽性
 ○質問者はシンプルにHER2陰性なのです。
 
「・オンコタイプDXをお願いした方がよろしいでしょうか。」
⇒Aの可能性が高いながら、「OncotypeDXした方が安心」ということです。
 
「・また②組織については先生からは気にすることはないとのお話がありましたが、田澤先生はどのようにお考えでしょうか。」
⇒同意見です。
 
「小葉癌は検査では見つける事が困難。」
「今後どのように生活すべきか、やや不安視」

⇒これも「いたってシンプル」
 (ホルモン療法で3カ月毎に通院する筈だから)「担当医に、3カ月に1回超音波してもらう」それしかありません。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

オンコタイプDXの結果
性別:女性
年齢:46歳
 
田澤先生
前回はご多忙の折早々にご回答頂き、本当にありがとうございました。
7月初旬、Ki数値がグレーゾーンでの抗がん剤治療の要不要について質問させて頂きました者です。
田澤先生のご助言もあり、依頼しましたオンコタイプDXの結果が分かりましたので、
ご報告方改めてご相談させて頂きます。
 
以下、検査結果です。
再発スコア 13
タキキシフェン単独療法での10年遠隔再発率 7%
タモキシフェン+化学療法での10年遠隔再発率 5%
上記結果により主治医の先生はタモキシフェン服用のみでの治療との診断でした。
 
・この結果より、やはり田澤先生も今後の治療方針を同様の判断とされますでしょうか。
 
・田澤先生がコラムにて記されていらっしゃいますエクオールにつきまして。
乳がんを患いましてからそれ以前までの食生活を見直し、和食中心の暮らしとなりました。
お味噌汁・お豆腐、納豆なども日々摂っております。
この様な現在の食事に加えエクエル等摂取するのは過剰にはなりませんでしょうか。
 
・最後に恥ずかしながら心理面からのお伺いとなりますが、再発につきまして。
田澤先生は局所再発と遠隔転移再発は別にして考えねばならない旨日頃より仰っていますが、
例えば再発率20%とするならば、そのうちどれくらいの比率が局所再発、どれくらいで遠隔転移再発、といった内訳は示されることは可能でしょうか。
また前回頂きましたご回答より、今後は3か月に一度のエコー検査を推していらっしゃい
ますが、エコー検査を継続する事は遠隔転移再発を見逃さずにする為の術のひとつとなりますでしょうか。
 
・今後の3か月に1度のエコー検査は、田澤先生の仰る早期(2年~5年)が経過するまで
は継続すべきでしょうか。
田澤先生のご助言のお陰でオンコタイプDXをする決断をし、その結果をもってようやく地に足をつけて今後の生活を前向きに進めるきっかけをつかむ事が出来ました。
 
田澤先生には心より感謝申し上げます。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
 
RS=13
良かったですね。勿論「ホルモン療法単独」です。
 
「・この結果より、やはり田澤先生も今後の治療方針を同様の判断とされますでしょうか。」
⇒勿論です。
 
「この様な現在の食事に加えエクエル等摂取するのは過剰にはなりませんでしょうか。」
⇒なりません。
 
「例えば再発率20%とするならば、そのうちどれくらいの比率が局所再発、どれくらいで遠隔転移再発、といった内訳は示されることは可能でしょうか。」
⇒「再発率」とは「すべて」遠隔転移再発のことです。
 是非『今週のコラム 84回目 「初回手術の取り残しを摘出するだけでよい」と言う事なのです。』をご一読ください。
 
「エコー検査を継続する事は遠隔転移再発を見逃さずにする為の術のひとつとなりますでしょうか。」
⇒無関係です。
 そのための指標が「採血腫瘍マーカー」なのです。(半年に1回程度でいいとは思います)
 
「・今後の3か月に1度のエコー検査は、田澤先生の仰る早期(2年~5年)が経過するまでは継続すべきでしょうか。」
⇒ホルモン療法で「3カ月毎に通院」している期間は、当然「3カ月」でいいと思います。
 
 

 

質問者様から 【質問3】

バストトップの発疹
性別:女性
年齢:46歳
 
田澤 先生。
 
先日はオンコタイプDX結果での治療方針等、ご教示頂きましてありがとうございました。
ご多忙の折いつも即時にご回答頂き、本当にありがとうございます。
8月の第1週にて無事25回の放射線治療を終え、先週半ばよりノルバデックスを朝夕に服用し始めました。
今のところ服用での目立った副作用はありませんが、1点温存手術しました左胸に変化がありご相談させて頂きます。
数日前より乳首の付け根=乳輪との境目に丘疹状の腫れが時間差にて3つほど出てきました。
どちらも2mm前後です。
 
赤みがあり、ソフトな素材の下着ですがバストトップでもあるため、時折下着が触れますとやや痛みも感じます。
横になり触手で確認する(この時は更に痛みを覚えます)限りではその下にはしこりのようなものは感じません。
(まだ胸そのものが固い板のような状態なのもあるのですが)
この数日にて少しずつ大きくなったきたかな?またひとつ増えたかな?
という状況です。
 
術前のしこり(左胸上部外側エリア)の延長線上に発疹があり、切除しましたしこりが(主治医の先生が一度全摘も考慮される一因となった)
乳頭に近い部分だったこともあり、取り残しなのでは?皮膚転移なのでは?と恥ずかしながら不安がよぎっております。
 
・田澤先生のご経験より、この発疹はどのように推察されますでしょうか。
どのような治療法を考えられますでしょうか。
主治医の先生に次回お目にかかりますのが1ヶ月強先なのもあり、自宅そばの皮膚科や乳腺外科等に行くだけでよいのか、と堂々巡りの状況です。
 
ご教示頂けますと幸いです。
 

田澤先生から 【回答3】

こんにちは。田澤です。
術後照射をしたばかりなのに「皮膚転移」など想像することはできません。
もう少し常識的に考えれば薬疹は候補に挙がります。
 
「田澤先生のご経験より、この発疹はどのように推察されますでしょうか。」
⇒上記通りです。
 
「どのような治療法を考えられますでしょうか。」
⇒ノルバデックスを休薬してみましょう。

 
 

 

質問者様から 【質問4 】

卵巣嚢腫
性別:女性
年齢:48歳
病名:乳がん
症状:
投稿日:2020年3月14日

田澤 先生

 貴重なお時間を頂戴しましてありがとうございます。
約3年前に乳がんの診断、部分切除手術。
放射線治療後よりホルモン療法単独(タモキシフェン)にて過ごしております。
不正出血等多少の変調はありましたが定期的な婦人科検診にも伺い、これまで日常生活に支障をきたすほどの重い副作用も無く過ごして参りました。

 掲題、あるあるQやこれまでのQ&Aも拝読してのお伺いです。
先月末(約半年ぶりの)地元婦人科での検診にて卵巣の腫れが見つかり、数日後に精密検査=MRIと腫瘍マーカーの検査を致しました。
(左記検査をする前に田澤先生の「タモキシフェンによる副作用」関連のご見解を拝読すればよかったと後悔しております)
結果は6cm強の卵巣嚢腫、腫瘍マーカーも上限値の半分ほどの数値でした。

 以下、①精密検査をして頂いた病院の婦人科の先生、②地元の婦人科の先生、③執刀頂いた乳腺科の先生のご意見です。

①茎捻転の懸念があるため腹腔鏡手術を勧める(タモキシフェン副作用とは考えにくい)
②MRI、腫瘍マーカーはあくまでも補助的診断方法=良性の判断も絶対ではない。
今後の乳がん治療に専念出来る点も鑑み早急の(可能ならばひと月以内での)開腹手術(子宮+両卵巣全摘)を勧める(腹腔鏡は医師により経験値に差があり、万が一手術時に卵巣が破れ、そこにがん組織があった場合「転移」の恐れがあるため勧めない)
③ホルモン療法を行っている現況、両卵巣の摘出(子宮摘出のお話は無し)もオプションとして考えてみてもいいのではないか
 私からは乳腺科の先生に、田澤先生がこれまでおっしゃっているタモキシフェン休薬+リュープリンにて様子を見たいとの意思を伝えましたがその日には判断されず、血液検査結果如何(勉強不足で申し訳ございません。
先生からは「ホルモン数値を確かめたい」という理由での採血でした)でのリュープリ
ン変更の判断にしましょう、との結論となりました。
次回結果を伺うまでは引き続きタモキシフェン服用とのご判断でした。

 先生お三方三様のご見解にて私自身も堂々巡りとなり、この様に田澤先生にご一報させて頂きました次第です。
以下お伺いです。

a)血液検査の結果に囚われず、リュープリンでの様子見を明確に伝えてもよろしいでしょうか。
また次回(約半月後)の診察時までタモキシフェンを服用すべきでしょうか。
(下腹部の膨満感や腰痛等の症状があります)
b)婦人科の先生方はやはり他科の「薬の副作用」の認識度合いに差があるのでしょうか。
(タモキシフェンの副作用ではないと開口一番におっしゃったので面食らったというのが正直なところです)
c)田澤先生に伺う事ではないかもしれませんが、もし休薬等での卵巣の改善が見られ
なかった場合はやはり摘出手術(子宮含む)を行うべきでしょうか。
また今後の予防策として閉経後等追って摘出する事も考えるべきでしょうか。

 ご見解を伺えますと幸いです。
宜しくお願い致します。

 

田澤先生から 【回答4】

こんにちは。田澤です。

非常によくあるケースと言えます。(だから「あるあるQ]に載っているわけです)

重要な点は
1.状況(タモキシフェン内服中の卵巣腫大)からして(卵巣腫瘍の可能性もゼロとは言えないが)、タモキシフェンによる反応性腫大である可能性が圧倒的に高い
2.卵巣腫大は(それが何が原因であれ)婦人科医のいうように「茎捻転(緊急手術の対象)」の原因となりうる。

私であれば、
 タモキシフェンを一時休薬してLH-RHagonistを行う。⇒それで卵巣が縮小すれば(摘出せずとも)腫瘍でない事の確定診断となる。

 ★ただ、LH-RHagonistによる縮小効果が起こるまでに(偶然にも)茎捻転が起こる可能性も無いわけでは無いので注意が必要

〇それにしても・
 その「精密検査をして頂いた病院の婦人科の先生」の「タモキシフェン副作用とは考えにくい」というコメントには、困ったことですね? 私自身の患者さんでも同様のケースは少なくないですし、このQAにも沢山登場し
ていますよね?
 質問者自身がLH-RHagonistを使用することで「その医師に教えてあげる」いい機会かもしれません。