[管理番号:4652]
性別:女性
年齢:45歳
田澤先生、こんにちは。
非常にお忙しい中、毎日沢山の質問に真摯にご回答いただき、本当にありがとうございます。
いつもQ&Aで勉強させていただいており、患者側としては、大変救われる思いでおります。
過去のQ&Aを読んでいるときに、「マージンは2cmつける」という記述を拝読し、自分の手術のことがとても不安になりましたので、ご相談させてください。
【診断までの経緯】
人間ドッグのエコー検査で再検査となり、都内大学病院でエコー、マンモグラフィーを受け、その翌週に造影MRI、針生検を行いました。
針生検ではがん細胞は検出されなかったのですが、dense breastのため、針がうまく狙ったところに刺さらなかった可能性があるので、
これでがん細胞がでなくても摘出生検をしましょうという先生のお話で、3月中旬にマージンを付けて全身麻酔下での乳房腫瘤切除を受けました。
その時に切り出された検体3 x 2 x 2cmを組織診断したところ(腫瘤の大きさは0.8x0.7cm)、断端陰性だったので、追加切除はなしでOKとなり、
腫瘤切除の翌週に全身麻酔下でのセンチネルリンパ節検査を受けました。
現在フェアストンを服用中、5月から放射線治療を受ける予定です。
【お伺いしたい点】
① 病理結果に断端陰性とはありますが、腫瘤・浸潤部の大きさが0.8x07cmなのに、切除したのが3 x 2 x 2cmというのは、十分なマージンが取れていないのではないでしょうか。
切除断片に癌巣が露出していないんだからいいだろう、といわれればそれまでなのですが、乳房温存手術の病理組織学的な断端検索方法は標準化されてはいないものの「施設によっては断端は病巣から5mm or10mmは離れているべき」という診断基準もある(乳癌診療ガイドラインCQ13より)等の文章を読むと、とても心配になります。
もう術後1か月程たつのですが、これからでも追加切除をお願いした方が宜しいでしょうか?
② 私の腫瘍タイプでの乳房内再発率、遠隔転移再発率はどれぐらいでしょうか?
③ LH-RHアゴニスト製剤は必要ないでしょうか?
【病理診断結果】
○肉眼所見
右乳房腫瘤切除検体 3.0cm x 2.0cm x 2.0xm大(追加切除検体を含む)。
割面において、径0.9cmの境界不明瞭な病変を認めます
○組織学的所見
管状構造や索状構造を呈し、浸潤性に増殖する腺癌を認めます。
腫瘍細胞は、類円形緊満核と明瞭な核小体、好酸性胞体を有しています。
浸潤性乳管癌(乳頭線管癌)と診断します。
組織学的浸潤径は0.8 x 0.7cm。
乳腺外脂肪織浸潤を認めます。
乳管内病変を認めますが、その広がりは浸潤径とほぼ一致しています。
切除断端に明らかに露出する腫瘍細胞は認めませんが、初回切除部断片に焼灼アーチファクトの加わった腫瘍細胞を認めます。
追加切除検体内に癌は認めません。
よって、断端陰性と判断します。
背景には、硬化性線症や嚢胞状拡張を示す線管を認め、乳腺症の所見です。
部位:Right C
腫瘤の大きさ:全体(浸潤部+管内性) 0.8 x 0.7 cm
浸潤部分のみ(多発の場合の最大):0.8 x 0.7 cm
組織型:Invasive ductal carcinoma(papillotubular
carcinoma)
Nuclear atypia Score: 2, 核分裂Score: 1(5個未満)、核グ
レード:Grade 1(2-3点)
WHO historical grade: Grade 1(Tubule and gland formation 1 + Nuclear pleomorphism 2 + Mitonic counts 1 = 4)
浸潤度:f
リンパ管侵襲:ly(-)、静脈侵襲:v(-)
断端:皮膚側(-)、筋膜側(-)、側方(-)
規約分類:pT1b, pN0
エストロゲン受容体:90%
プロゲステロン受容体:90%
Her2:1
Ki67:4.8%
ルミナールA
お忙しいところ申し訳ございません。
何卒宜しくお願い申し上げます。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
「① 病理結果に断端陰性とはありますが、腫瘤・浸潤部の大きさが0.8x07cmなのに、切除したのが3 x 2 x 2cmというのは、十分なマージンが取れていないのではないでしょうか。」
⇒もともとが(確定診断なしの)診断目的の「外科的生検」であるわけだから、通常の「癌の手術」のようにいかないのは仕方がありません。
考え方としては
「あくまでも診断目的」だから、「十分なマージンをつける」手術ではありません。
結果として「マージンマイナスなら儲けもの」ということになります。
「② 私の腫瘍タイプでの乳房内再発率、遠隔転移再発率はどれぐらいでしょうか?」
⇒私は、随所でコメントしていますが…
「乳房内再発率」を知ることなど不可能であり、「私の場合の」乳房内再発率など出し様がありません。
大雑把に、「放射線を照射することで10年で5%程度」を目安としましょう。
実際には、「腫瘍自体の因子」に加えて「手術の精度」「マージンの付け方」など様々な要因が入るため、「個別の乳房内再発率を推し量る」など不可能なのです。
「遠隔転移再発率」は9%となります。
「③ LH-RHアゴニスト製剤は必要ないでしょうか?」
⇒不要です。
「30歳代」もしくは「2期以上」で考慮されます。