[管理番号:3036]
性別:女性
年齢:67歳
田澤先生 初めまして。
勉強させていただきたいと思っております。
どうぞよろしくおねがい致します。
私の母の術後療法について質問させていただきます。
年齢67歳
今年4月に部分切除手術を終え、初期乳がんでリンパ節転移もなしとのことで、術後は放射線+ホルモン療法かと本人も家族も考えておりました。
ところが最近になり主治医から「少し元気なガンだから、僕としてはおすすめは抗がん(剤を追加)です。」と言われ、正直驚き遅ればせながらいろいろ調べているところです。
診断結果を書かせていただきます。
左C領域、1.0×0.6×0.5cm、pT1b,Bp+SN、Invasive ductal carcinoma,
scirrhous carcinoma,
f, ly(-), v(-),surgical margin(-),pNO(#SLN ;0/1),cMo
TNM pT1bN0, cM0, Stage 1
核異型スコア2、核分裂像スコア1、核グレード1
ER 3b, PgR 3b,
Ki67 20.2
HER2 なし
この場合、ルミナールAとB,どちらに分類されますでしょうか?
母は体力がなく、抗がん剤の副作用が心配です。
母の場合生活の質を落としてまで、
抗がん剤をする意味はあるのでしょうか?
私としては、放射線+ホルモン治療でいけるのであれば、そうして欲しいと考えて
いますが、主治医のおすすめの抗がん剤を断って、将来的に再発した場合、抗がん剤をしなかったことを後悔するレベルでしょうか?
また抗がん剤をプラスした場合の数値はどの位変わってきますでしょうか。
田澤先生でしたらどのような治療法をお薦めになりますか?
お忙しいところ大変恐縮ですが、何卒よろしくおねがいいたします。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
pT1b, pN0, luminal, NG1
十分な早期癌です。
「少し元気なガンだから、僕としてはおすすめは抗がん(剤を追加)です」
⇒この「元気な癌」という根拠は「Ki67=20.2%のこと」ですか???
グレーゾーンにはなりますが、「核分裂像スコア1」からは、(担当医の言うような)「元気な癌」には「程遠い」と思います。
実質「ルミナールA」でいいと思います。
「この場合、ルミナールAとB,どちらに分類されますでしょうか?」
⇒Ki67=20.2はたしかに「グレーゾーン」ですが…
この場合、核グレード1(しかも核分裂像スコア1)だから「ルミナールAである」可能性が高いと思います。
もしもOncotypeDXを行うと「低リスク=抗がん剤は不要」となるのではないかと想像します。
「母は体力がなく、抗がん剤の副作用が心配です。母の場合生活の質を落としてまで、抗がん剤をする意味はあるのでしょうか?」
⇒67歳と言う年齢(70歳以上での術後補助化学療法の有用性は証明されていない)ことも含めると「敢えて、化学療法を勧める」担当医には、正直「頸をかしげざるを得ない」思いです。
「主治医のおすすめの抗がん剤を断って、将来的に再発した場合、抗がん剤をしなかったことを後悔するレベルでしょうか?」
⇒そうは思いません。
「また抗がん剤をプラスした場合の数値はどの位変わってきますでしょうか。」
⇒Neoadjuvant.comを用いましたが…
何と「上乗せは0%」とでました。
「田澤先生でしたらどのような治療法をお薦めになりますか?」
⇒ホルモン療法単独です(温存術だから、当然温存乳房照射は行います)
この病理結果で「化学療法を勧める」のは「かなり稀有」なことだと思います。
質問者様から 【質問2】
田澤先生
先日はお忙しい中ご回答、誠にありがとうございました。
お蔭様で不安も吹っ切れ、家族として抗がん剤を選択しないという道が明確になり、
その後の診察で担当医にその旨を皆で伝え、放射線とホルモンでいきましょうということになりました。
ただその時担当医に、
Ki67=20.2 の値は中間なんだけれども、14(か16?すいません不確かで)%以上あるので、
ルミナルBということで、抗がん剤をおすすめすると言われましたので、
「ルミナルBでなく、ルミナルAではないのですか?」という事は申し上げずに、
母の体力的なことが不安なのと、現在肺がんステージⅣの父が抗がん剤治療で入院していたのが外来での抗がん剤治療となり自宅に戻ってくるのでのでそちらの世話をしたいので(副作用は避けたい)、という理由で納得していただきました。
おととい放射線5週間も最後の日をむかえ、これからホルモン治療が5年(か10年)始まるのかと思っておりましたが、
昨日母が担当医の診察を受けたところ、(家族は同席していませんでした)今後の治療について、抗がん剤をやりましょうとまた、言われたそうです。
母が抗がん剤は体力的に不安なのでやりたくありませんと言うと、
それなら副作用の軽いUFTというものがあるから、と強く勧められ、
断りきれずに薬を処方されてきました。
まだ飲んではいません。
UFT配合カプセルT100(これを2年間服用)
ホルモン剤フェアストン トレミフェン「サワイ」
の2種類になります。
ホルモン剤の方は、他に処方したいものもあったようなのですが、母の骨粗しょう症の関係で、そちらはなしになったそうです。
私としては、たとえ経口の、副作用の軽いものであっても、不利益より利益が勝ると思えない状況では、抗がん剤治療は必要ないのではと思い、今からでもお断りしたいです。
ホルモン療法だけではいけませんでしょうか。
それとも、UFTを飲むことで、再発予防や予後に何かいい変化があるので予防的に飲むことも検討した方がよろしいでしょうか?
田澤先生のご意見を、いまいちど伺いたいと思っております。
お忙しい中、読んでいただきありがとうございました。
どうぞよろしくおねがい致します。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
正直な話、この「担当医の反応」には『相当な驚き』を持ってメールを読みました。
pT1b, pN0, luminal, NG1, Ki67=20.2, 核グレード1(しかも核分裂像スコア1)
まず、上記で「化学療法を最初から勧める」医師がいるのか(そもそも)疑問です。
更に「67歳」という年齢があると、(例えば学会会場などで)「乳腺外科医にアンケート」をとったとしたら(少なく見積もっても)「90%以上は化学療法はしない。
ホルモン療法単独」となると思います。
更に、更に(今回は)「ご家族が化学療法は選択しない」という意思をしめしたのだから「駄目押しの駄目押し」という状況と言えます。
これでもまだ「UFTを勧める(そもそもUFTは標準療法でさえない)」ことに『疑問を通り越して疑念を禁じえない』ところです。
「Ki67=20.2 の値は中間なんだけれども、14(か16?すいません不確かで)%以上あるので」
⇒今時「Ki67のcut off値を14%と考えている」乳腺外科医は皆無でしょう。
実際には「20.2は中間ではない」低値です。「20代後半が中間」となるでしょう。
「今後の治療について、抗がん剤をやりましょうとまた、言われたそうです。母が抗がん剤は体力的に不安なのでやりたくありませんと言うと、それなら副作用の軽いUFTというものがあるから、と強く勧められ、断りきれずに薬を処方されてきました」
⇒全く「信じられない」ことです。
担当医は余程「抗ガン剤が好き」なのでしょうが、患者にとっては「堪ったものではない」実際に副作用などで苦労をするのは「担当医自身ではなく、患者さん」なのです。
あまりにも「バランスを失った」治療方針であり、(もしも私が家族だったら)
「怒鳴りつけてやる(言葉が悪くてすみません。実際にはそんなことしませんが、気持ちはそんな感じです)」ところです。
「ホルモン剤の方は、他に処方したいものもあったようなのですが、母の骨粗しょう症の関係で、そちらはなしになったそうです。」
⇒これは、むしろ逆であり「骨粗鬆症の治療(必要ならデノスマブ)を併用」した上で「アロマターゼインヒビターを選択すべき」です。
「抗ガン剤を強引におしつける」割には「ホルモン療法に甘い」ところが、どうも感覚的に「バランスを失っている」ように思います。
「今からでもお断りしたいです。ホルモン療法だけではいけませんでしょうか。」
⇒当然、断るべきです。
「それとも、UFTを飲むことで、再発予防や予後に何かいい変化があるので予防的に飲むことも検討した方がよろしいでしょうか?」
⇒前回、回答したように「化学療法による上乗せは全くなし」と思います
(NewAdjuant.comでは何と0%とでています)
通常の抗ガン剤でも「意味が無い」のに(それに非劣勢を証明できなかった、標準療法になりえなかった経緯のある)UFTを勧めるなど「言語道断」です。
○当然、断りましょう。
それでも強引に勧めるようならば(もはや、押し売りセールスに近いですね)「どの程度の上乗せ効果が期待できるのか?」聞いてみてください。(言葉に詰まる筈です)