[管理番号:2279]
性別:女性
年齢:44歳
はじめまして。
2014年の検診で、左乳房に石灰化があったものの、「悪性の石灰化の形とは違うから大丈夫」と言われ、12ヶ月後の検査でOKという結果が出たので、昨年の12月に予定通り検診に行ったところ、「石灰化が1年で増えすぎている」と言われ、直ぐ大きな病院で精密検査をしたところ、12/○○に乳がんと診断されて、1/○○に手術をした者です。
いつも先生の相談ページを拝見させて頂いております。
術後の病理結果が出た時点で、先生に今後の治療方針を是非伺たいと思っておりましたが、それまでいてもたってもいられず、ご連絡させて頂きました。
○術前診断
浸潤性乳管癌(乳管の中を這うように広がり、いくつもの腫瘍が浸潤している状態です)
腫瘍径1.5センチ位(2センチは無いと思うとの事)
ホルモン受容体 ER.PR共に50%以上(これより細かな数値は出さない病院だそうです)
HER2 1+
ki67 50%以上
MRIの結果、乳房内の広がりが大きかったので、左乳房全摘をしました。
術後の治療は、大抵の人は腫瘍径=浸潤径なんだけど、私の場合はどの程度浸潤しているか、手術後の病理結果をみてから決めます、という話でしたが、おそらく、浸潤径が6ミリを超えるものがありそうなので、そこのkiを調べて抗がん剤をするか決めます、と言われました。
リンパ節への転移は、術前では明らかな所見は無いが、一か所膨らんでいるところがあります。
術中にセンチネルをして、1個でも陽性があればレベル2まで郭清しますと言われました。
そして本題ですが結果、センチネル1つ取ったところ、肉眼的転移(5ミリ以上、病理にも出したとは言っていましたが)があったため、レベル2まで郭清しましたが、腋下にも肉眼的転移が3つ(3/8と言っていました。これはセンチネルも含めてなのかはわかりませんが)と言われました。
術前診断であるか無いかはっきり分からない状態だったのに、手術してみたらこんなに違っていたという事はあり得るのでしょうか?
肉眼的転移がこんなにあったら病理検査レベルでみる微小転移まで含めると相当な数になってしまうのではないでしょうか?
主治医は「減るかもしれないから」と言いましたが、転移だと思った物が病理検査で違ったという事はあるのでしょうか?
ステージ1か2Aだと言われていたのに、リンパ節転移数の結果によっては3Aになってしまうと思うとこれからどうしていけばいいのだろうと、希望が持てません。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
「術後の治療は、大抵の人は腫瘍径=浸潤径なんだけど、私の場合はどの程度浸潤しているか、手術後の病理結果をみてから決めます、という話でしたが、おそらく、浸潤径が6ミリを超えるものがありそうなので、そこのkiを調べて抗がん剤をするか決めます、と言われました。」
⇒正しい考え方です。
きちんと「最大浸潤径を理解」している担当医で良かったです。
○どんなサブタイプであれ『浸潤径5mm以下は化学療法の適応がない』のです。
「術前診断であるか無いかはっきり分からない状態だったのに、手術してみたらこんなに違っていたという事はあり得るのでしょうか?」
⇒残念ながら、ありえます。
リンパ節転移も(術前の)「画像診断で解り易いもの」と「そうでないもの」とがあるのです。
「肉眼的転移がこんなにあったら病理検査レベルでみる微小転移まで含めると相当な数になってしまうのではないでしょうか?」
⇒必ずしもそうではありません。
「主治医は「減るかもしれないから」と言いましたが、転移だと思った物が病理検査で違ったという事はあるのでしょうか?」
⇒これも時々あります。
「ステージ1か2Aだと言われていたのに、リンパ節転移数の結果によっては3Aになってしまうと思うとこれからどうしていけばいいのだろうと、希望が持てません。」
⇒お気持ちはお察ししますが…
「病理の結果を待ち」ましょう。
あらゆる「最悪の事態を想定」したところで、この場合には何の意味もありません。
リンパ節は(いくつ転移があるのか不明ですが)とにかく「手術で摘出した」のです。
これから、やるべき事は(病理を確認した上で)「適切な術後療法を選択すること」です。
リンパ節転移はあくまでも「リスク因子」にすぎません。(あくまでも局所であり、遠隔転移とは切り離して考えましょう)
質問者様から 【質問2】
こんにちは。
管理番号2279で以前ご相談させていただきました。
その後、再度先生にお伺いしたくお問い合わせさせて頂きました。
病理検査の結果、腫瘍は大きいもので6ミリ程、リンパ節転移は1個でし
た。
ki67は50~70でした。
広がりが大きかった事で全摘をしました。
先月まで抗ガン剤治療FEC+Tをし、今月からホルモン療法に入りまし
た。
本題ですが、私の乳房は脂肪がとても少なかったらしく、少し皮膚浸潤
をしていました。
病理検査で切除した範囲の境目に浸潤があったらし
く、もしかしたらまだ皮膚に取り残しがある可能性があるかもしれな
い、ので、何らかの追加療法が必要との事。
主治医は放射線なら病理検査でも分からなかった物まで照射出来る利点
があると言います。
でも再手術すれば境目は確実に除去できるので、どちらが有効なのかな
かなか結論が出せず迷っています。
出来る限り再発転移の可能性の少ない方法を選択したいと思っていま
す。
放射線で断端で残った物を確実に無くせるのでしょうか?
また、断端は増殖し全身転移をしたりする可能性があるのでしょうか?
または局所再発でとどまるのでしょうか?
先生でしたどちらの選択を勧められますか?
色々質問してしまい申し訳ありません。
是非とも先生のご意見をお聞かせ下さい。
宜しくお願い致します。
田澤先生から 【回答2】
こんにちは。田澤です。
全摘後の断端陽性というのは、どうもしっくりきません。
取るべきところがもう無いからです。
皮膚側断端陽性ということですが…
本当に「皮膚浸潤」しているのであれば、(それは腫瘍直上の皮膚ということになりますね?)その部分の皮膚は取らなくてはなりません。(通常、術中に気付く筈ですが…)
「もしかしたらまだ皮膚に取り残しがある可能性があるかもしれない、ので、何らかの追加療法が必要との事。」
⇒執刀医がこんなことを言うようでは困りものです。(手術時に細心の注意を払うべきものです)
ただ、「執刀医が残っていると自覚」しているようでは「皮膚切除すべき」かもしれません。
「再手術すれば境目は確実に除去できるので、どちらが有効なのかなかなか結論が出せず迷っています。」
⇒再手術とは「皮膚だけの切除」ですか?
それであれば、局麻で簡単にできるでしょう。(範囲にも依りますが、全摘後であれば、感覚がかなり鈍い筈です)
「出来る限り再発転移の可能性の少ない方法を選択したいと思っています。」
「放射線で断端で残った物を確実に無くせるのでしょうか?」
⇒局所治療としての「放射線」はあくまでも「手術できちんと取った」ことが前提(つまり手術の補助)となります。
その意味で「確実に無くせる」と断言できることはありません。
「また、断端は増殖し全身転移をしたりする可能性があるのでしょうか?
または局所再発でとどまるのでしょうか?」
⇒断端はあくまでも「局所」です。
余程、放っておかない限り(見える所なので、通常はそのようなことは無いでしょう)全身に拡がる事はありません。
「先生でしたどちらの選択を勧められますか?」
⇒執刀医が「皮膚に残存している」と自覚しているのであれば、切除です。