[管理番号:1828]
性別:女性
年齢:57歳
ホームページを拝見するたびに、お忙しい中患者の為に貴重なお時間を割いてくださっている先生に頭が下がります。
先月浸潤性乳がんで左胸を全摘出致しました。左胸には約15cm程の傷跡が残りました。
色々な検査でしこりは3つあるが、各々の大きさが2cm以下であること、顔つきの良いがんなのでステージは1であることから部分切除も可能と言われていました。
が、最術前の検査の結果、乳頭に近い部分にしこりがあるため最発をリスクを考えて全摘出を選択しました。
今現在、果たして私の選択は最良だったのか?術後の深くえぐれた様な傷跡を見てかなりのショックを感じています。
ステージ1なのに乳頭を含めて全摘出というのはよくあることなのでしょうか?
病理レポートは以下の通りです。
ご意見をいただければ、うれしく思います。
検体は全摘された左乳房。8スライス、26標本を作製した。
1.組織型:乳頭腺管癌
2.腫瘍の大きさ:浸潤部15×15mm approx、in siteを含む全体=40×16×60mm
3.浸潤の範囲:g、f
4.脈管侵襲:ly1、v0 (4段階評価:0-3)
5.リンパ節:左センチネルリンパ節 転移有りません(0/1)
6.核グレード:Grade2 (核異形スコア=3、核分裂スコア=1)
7.随伴するDSIS:Extensive(25%~)Grade及び
組織形態:int~high(3段階)、cribriform、comedo
8.切除縁:断端露出なし 水平方向(2mm、頭側、標本#3;DCIS成分)垂直方向(12mm、深部側、標本#9)
9.コメントその他
・全摘ですが、頭部側にDCISが伸展し、断端までの距離はわずかです。
・標本#15にFA、#20にbenign PT(径10mm程度)を認めます。
ER:+100%
PR:+100%
HAR2:score 0
Ki‐67 LI:1~3% approx
(いずれも標本#1にて施行)
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
ステージと「術式」確かに、考えると疑問になると思います。
ステージは「腫瘍径」と「リンパ節転移の状況」で決まります。
それに対して「術式」は「腫瘍の大きさ」及び「乳頭との位置関係」から決まります。
リンパ節転移の状況は考慮されない(リンパ節転移があるから温存ができないということはありません)
つまり、質問者の場合には「乳頭との位置関係」から「乳房温存はリスクが高い」と判断されたのだと思います。
「ステージ1なのに乳頭を含めて全摘出というのはよくあることなのでしょうか?」
⇒乳房全摘を選択する『第1の理由』は「腫瘍の拡がり=腫瘍径」つまり「腫瘍が大きいとか多発している」から「部分切除では残した乳腺で整容性が保てない」というものですが、
『第2の理由』として「乳頭近傍であり乳頭を安全に残せない」から「部分切除をしても乳頭が無いのでは整容性に難がでる」というものになります。
ステージ1で全摘する場合(質問者もそうですが)には、この『第2の理由』があてはまるのです(決して少なくはありません)
「in siteを含む全体=40×16×60mm」
⇒浸潤部分は15mmですが、「非浸潤癌としての拡がり」は広いので、結果として「安全な手術となった」と言えます。
pT1c(15mm), pN0, luminalA 十分な早期乳癌です。