[管理番号:1529]
性別:女性
年齢:38歳
質問者様の別の質問質問が新たな内容のため、別の管理番号としました。 |
こんにちは。いつも大変わかりやすい解説を興味深く拝読しています。
針生検を経て10月1日に乳がん(トリプリネガティブ)と診断されました。
その後の検査(MRT,骨シンチ、肺の検査等)で、現状ステージⅡAと診断されましたが、リンパ転位については、細胞診では大丈夫だったものの、エコーにその兆候があるとのことで、実際には手術後の診断になると主治医に説明を受けています。
現在、術前化学療法と術後どちらにするか判断を迫られてますが、過去の同様の質問に関して、先生は「トリプルネガティブの場合、手術先行を進める」と記載していらっしゃいます。私自身も、抗がん剤をしている期間に癌が進行するのが恐ろしく、先の手術を希望しているのですが、疑問があります。
主治医が、術後の科学両方では抗がん剤の効果がまったくわからないため、標準の抗がん剤(アドリアマイシン3カ月、リンパ転位があった場合はさらにタキサンを3カ月)
治療になると言っていましたが、疑問があります。
1手術後の抗がん剤の効果は、本当にまったくわからないのでしょうか。
2術前の場合は、もし抗がん剤の効果がない(しこりが小さくならない)場合は他のものを試すとのことですが、手術後より何か効くかをいろいろ試せるということなのでしょうか。
3術前、抗がん剤が合わなければしこりが逆に大きくなることがあり、その場合はすぐにその抗がん剤をやめるとネットの記事でみました。もし手術後に、本来自分に悪影響がある抗がん剤を使用しても、それには気がつかず癌を進行させてしまう可能性があるのでしょうか。
さまざまな情報を調べつつ、疑問が湧いてくるばかりで不安が募る一方です。
どうぞよろしくお願いします。
なお、手術は11月中旬の予定です。
田澤先生からの回答
こんにちは。田澤です。
質問者は一つ勘違いをされています。
『先生は「トリプルネガティブの場合、手術先行を進める」と記載していらっしゃい
ます』
⇒トリプルネガティブだけで「手術先行を勧めている」訳ではありません。
私が強調したい事は『術前化学療法には抗がん剤が効かないリスクがある』という
ことです。
(サブタイプとは無関係に)「小さくして温存」以外の(取ってつけた)理由で
「リスクを伴う」術前化学療法を(無責任に)勧めるべきでは無いと思っています
『主治医が、術後の科学両方では抗がん剤の効果がまったくわからないため、標準の
抗がん剤(アドリアマイシン3カ月、リンパ転位があった場合はさらにタキサンを3
カ月)治療になる』
⇒これには私は反対です。
「トリプルネガティブでの抗がん剤」の標準は(リンパ節転移があっても、無くて
も)「アンスラサイクリン+タキサン」です。
リンパ節転移が無ければ「タキサンを省略」すべきではありません。
また、「術後の科学両方では抗がん剤の効果がまったくわからないため」とありま
すが、「効果が解ったら」どうするのでしょうか?
「効果があっても無くても」「アンスラサイクリン+タキサン」をすべきなのです。
「目に見える腫瘍に対して効果があるから、とか無いから」で「本来の目的である
再発予防のための抗がん剤を省略することには大いに疑問」があります。
「手術後の抗がん剤の効果は、本当にまったくわからないのでしょうか」
⇒その通りです。
「術前の場合は、もし抗がん剤の効果がない(しこりが小さくならない)場合は他の
ものを試すとのこと」
⇒これは「大きな誤り」です。
術前術後の抗がん剤の適応は「アンスラサイクリンもしくはタキサン」しかありま
せん。
「危険を冒してまで」効果を試しても「何の足しにもならない」のです。
「手術後より何か効くかをいろいろ試せるということなのでしょうか」
⇒術前術後の化学療法の適応薬剤は「アンスラサイクリンもしくはタキサンだけ」な
のです。
いろいろ試す事はできないし、(そもそも)「効果が無かった時点」で(効かない
かもしれない抗がん剤に変更するべきではなく)『追い込まれる前に手術に切り替え
るべき』なのです。
「術前、抗がん剤が合わなければしこりが逆に大きくなることがあり、その場合はす
ぐにその抗がん剤をやめる」
⇒当然です。
「手術に切り替える」べきです。
手術不能となるリスクがあります。
「もし手術後に、本来自分に悪影響がある抗がん剤を使用しても、それには気がつか
ず癌を進行させてしまう可能性があるのでしょうか」
⇒これが質問者の「最大の誤解」と言えます。
術前抗がん剤で「大きくなった」というのは「悪影響があった」訳ではなく、「そ
の大きさの腫瘍を小さくするには効果が小さい」ということです。
つまり『腫瘍の増大スピードの方が抗がん剤の効果よりも勝っている=抗がん剤の効
果が小さい』ということであり、(目に見える腫瘍と比べて圧倒的に小さい=)「目
に見えない癌細胞の再発予防にも無効」と考えるべきではないのです。